「………………ゴメンナサイ‥」
小さな女の子が小さな手で何かを包み込むようにしながら、うつむき、肩を震わせ、かぼそく、小さな声で何かにあやまっていました
ここは何時もの川っぺりの雑木林です
夜明けまであと少しというところ
小さな女の子が一人で外にいるには早すぎる時間でした
それだけ把握すると、彼女さんは女の子の方にゆっくりと近づいてゆきます
女の子の正面にゆっくり回り込みしゃがみこんでいる彼女さんに女の子の方はまだ気がついていないようです
女の子が胸に押し抱くように包み込んでいる手の中から、緑色の尾っぽがはみ出していました…どうやらセキセイインコのようですね
彼女さん「どうしたの?お姉ちゃん」
その一言で女の子は雷に撃たれたように(ビクッ!)と震えます
彼女さん(^^)「おはよ♪」
やっとふたりの目と目が合います
彼女さんがにっこりと微笑んでいると
女の子の目にはみるみる大きな水滴が…ひとつ、ふたつ、よっつ…
そしてすぐにとめどなく溢れる水流になってしまい、女の子の顔には小さな小川が出来てしまいました
ついでに鼻水も大変なことになっています
彼女さんはバッグから柔らかなタオルハンカチを取り出し女の子の目から、鼻からとめどなく溢れる水流を拭っています
涙は止まりませんけれど、声を上げない女の子を見ながら、彼女さんは心の中で(‥強い子ね)と思います
女の子「……ぐ…えぐっ!」
ハンカチの向こう側から大きな震えとともに、とうとう嗚咽が漏れて来ました
女の子「!!!………………うえっ!‥う!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーん」
おジョビちゃんも心配そうにふたりの後ろ姿を見つめていました
彼女さんの腕の中でひとしきり大泣きした女の子は、今、雑木林の中で彼女さんと並んで座っています
ようやく開かれた女の子の手の平には、やはり‥冷たくなったセキセイインコが横たわっていました
彼女さん「お姉ちゃんカフェオレ飲む?あったかいよ」
女の子「…………ぅ…いらない」
彼女さん「パン食べる?わたしがつくったの、おいしいよ」
女の子「…う…………イラナイ」
彼女さん「お腹、すいてないのかな?」
女の子「……………う、ん…………すいてる」
彼女さん「…そっか」
対岸からお日様が輝くお顔を見せ始めると、まるでそれまで彼女さんと女の子に気を使って静かにしていたような小鳥さんたちが、それぞれ「ピィーーッ♪」と声を掛け合って飛び立ちました
女の子「……ミコちゃんね…ピーちゃんにいじわるしたの‥」
彼女さん「‥うん」
ミコ「いじわるして、ごはんあげなかったの‥」
彼女さん「うん」
ミコ「ミコちゃんね、一日ごはんたべなかったことがあるの」
「‥くるしかったけどね、でもミコちゃん生きてた‥の」
彼女さん「うん」
ミコ「だからね…ピーちゃんもね……うびゅッ…動かなくなるって‥ぜんぜん、思わなかった、の」
それだけ振り絞るようにしゃべってくれたミコちゃんは、また目の端に大きな水滴をこしらえています
彼女さんは魔法のバッグから、また新しいふわふわのタオルハンカチを一枚取り出して、ミコちゃんの顔をやさしく拭いています(‥それにしても、一体何枚入っているのでしょうね?)
彼女さん「そっかー、それじゃあわたしも、ミコちゃんがごはんを食べてくれなくて、それから、もしもミコちゃんが動かなくなっちゃったら…」
「わたしも、スッゴくこまるなー」
ミコ「‥!」
彼女さん「はい、どーぞ♪」
差し出されたカフェオレからは温かそうな湯気がのぼり、サンドイッチはとってもおいしそうで…
ミコちゃんの視線は完全に釘付けになってしまいました
ミコ「…うん……いただきます」
彼女さん「はい、おあがんなさい♪」
ふたりは彼女さんのお弁当を半分こにして、お日様が照らしはじめた世界を眺めながらごはんをいただいています
ミコ「…あのね、どうして一回ごはんをたべなかっただけで…ピーちゃんは死んじゃったの?」
…3秒の沈黙
なかなか難しいミコちゃんの質問に彼女さん大ピンチです
彼女さん「…ピーちゃん、軽いでしょ?」
ミコ「うん」
彼女さん「鳥さんはね、みんな体を軽くしているの」
ミコ「…うん…なんで?」
彼女さん「飛ぶために」
ミコ「‥あ」
彼女さん「ピーちゃんはミコちゃんのおうちで飛んでいた?」
ミコ「ううん…」
「‥あ!でもね、かごの中でときどきぴょんぴょんしてた!」
彼女さん「そう。ミコちゃんは一日だから‥三回もごはんをがまんしたことがあったのよね?」
ミコ「うん」
彼女さん「ミコちゃんは一回のごはんをどのくらい食べるの?」
ミコ「ミコちゃんのちゃわんにひとつ‥おかずのお皿がひとつ‥」
彼女さん「ピーちゃんはごはん、どのくらい食べる?」
ミコ「…ちょびっと」
彼女さん「そうね、わたしたちに比べたら鳥さんたちはほんのちょびっとしか食べないわよね」
ミコ「…うん」
彼女さん「‥ほら、あれみて」
彼女さんはおジョビちゃんに目配せしてから、ミコちゃんにおジョビちゃんのいる方を指し示します
おジョビ(゜∀゜)!!(はっ!はい!カナメ様~♪分かってまーす!!♪)
ミコ ((((*゜O゜*)♡! 「…わぁ!まんまるだぁ♪」
すると、おジョビちゃんはササッと木の実をひとつ啄み…
…勢い余ってくちばしに実が刺さってしまったことは…うん、ミコちゃんにはひみつです
そしておジョビちゃんはパパっと梢の先に舞い上がって見せてくれました
ミコ.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.「…すごぉぃ!」
彼女さん(^^)「すごいよね♪」
「わたしたちは飛べないけれど、ミコちゃんがお腹いっぱいだったらあんなにたくさん動けるかなあ?」
ミコ「だめー♪お腹いっぱいだったら動けなーい!」
彼女さん「そうね、だから鳥さんたちもちょびっとしか食べないの」
ミコ「…そうか~♪」
「…あっ!だから一回のごはんが…」
彼女さん「そうね」
ミコ「………ピーちゃん」
「…ごめんね…」
そしてミコちゃんと彼女さんは、またしても彼女さんの魔法のバッグから小さな多目的ナイフを取り出して、ピーちゃんの小さなお墓をつくりました
(うーん、一度じっくり持ち物検査をしてみたいですね。彼女さんのバッグの中‥)
彼女さん「さあミコちゃん帰ろっか。送ってあげる♪」
ミコ(〃▽〃)「…だいじょうぶ!」
彼女さん「そお?」
ミコ「ねえ…お姉ちゃんのお名前は?」
彼女さん「 彼方 花菜女(かのかた かなめ)よ。カナちゃんでいいわよ♪」
ミコ「うー‥カノちゃん?」
彼女さん「‥う」
ミコ「じゃ、カノジョちゃん!」
彼女さん「あう」
そういうとミコちゃんは元気いっぱいで駆け出して行きました
(^^)「またきていーーい?!」
振り向き様にミコちゃんが大声で聞くと
(^^)「いいよーー!またねー♪」
~と、彼女さんも返します
今回、彼女さんの信頼にバッチリ応えられたおジョビちゃんも、目をうるうるさせながらふたりを見つめています
今朝も平和な真冬の雑木林で、彼女さんにもやっと人間のお友達がひとり出来ました
どうぞよい一日を
230 拝
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