夜である。カメラが私を、こっそり見ていた。
私は考えた。この個体は、これまで、どこで
何を、あるいは、だれを写してきたのだろう。
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たとえば、このヤシカの35-MEは、1973年の春に発売が
開始されている。いつまで製造されたのかは知らないが、
今年、2009年の夏に、我が家にやって来た、この個体は、
間違いなく30年以上は生きてきたはず。カメラにとって、
長い年月だ。多くのさまざまな記憶があることだろう。
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ネットで調べたら、このカメラは輸出専用だったらしい。
逆輸入され、日本で、だれかが使い、そして私のもとへ。
オークションで安価に落札されて、静岡から九州へ送ら
れてきた。外観はきれいに掃除をされたが、無理に分解
をされtw逆に内部は汚くなってしまった。それでもこの
個体は、生き返った思いがしているにちがいない。長い
長い眠りから、我が家でようやく目ざめたのだ。
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そして,現実はファンタジーなので、私と、この個体は、
これから異世界の夢を見るのである。記憶の変容の中を、
さまようのだ。もはや私もカメラも違いはない。
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夜が深い。カメラに見られる私は、孤独を生きている。
だから時間を切り取る。日々を自分のものにするため。