ときどき、私は，こんなことまで考えている。これまでに、
いちばん人を殺したのは，どんな組織どんな人間だろうか。
ナチスドイツだろうか。ソビエトと中国の共産党だろうか。
南北アメリカ大陸にわけいった白人だろうか。だがやはり、
キリスト教会ではないだろうか。なんといっても２千年の
人殺しの歴史があるのだから。宗教の名のもとに、他者に
容赦のない鉄槌をくだす。あるいは同族で殺しあってきた。
太古から人は人を殺してきた。それは生き残るためだった
のだろうか。それとも何かべつのわけがあったのだろうか。
私は無為な思いをめぐらせている。個人では、ヒットラー
かスターリンか毛沢東だろうか。あるいはアレクサンダー
大王だろうか。だれかを忘れてはいないだろうか？ 遅れ
て世界に登場した日本人だろうか。北朝鮮の歴代の独裁者
だろうか。黒人を長く酷使しつづけたアメリカ人だろうか。
台風が近づいている。風が強くなった。ベランダにおいて
いる植物を、部屋に避難させておいたほうがいいだろうか。
だが今薬の効果があらわれはじめている。ふらふらなのだ。
横になって寝なければならない。人殺しの競争なんて私に
は関係ないのだ。だが、そうだろうか？ 消えゆく意識の
中で、人は最後の最後に、なにを思うのだろうか？
ホモサピエンスはネアンデルタールを絶滅させてはいない。
そんな研究の成果もあるらしいが。長い年月をかけて同化
吸収したのだと。もともとは、人殺しではなかったのかも。