blueな日々

( Art で逢いましょう)

謎めいた絵のような作品(カフカ感想1)

2006年04月25日 | 読書メモ

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あと数日は、カフカだけの読書になるかもしれない。
今回は、図書館から4冊の関連本を借りている。
(感想を2回に分けて書く)

………
『カフカのかなたへ』
 著者:池内 紀 出版:講談社 発行:1998.01(文庫本)
 出版社の内容紹介:20世紀の悪夢を予兆した作家として、
 第2次世界大戦後に爆発的なブームが生じたユダヤ人作家
 カフカ。その明晰透明な表現法はリアルであり大きな謎を
 はらんでいて、これまでさまざまな解釈がなされてきた。
 著者は性急な意味付けをしりぞけ、カフカの文学はたぐい
 まれな想像力による読んで楽しい〈大人のためのメルヘン〉
 であると説く。作品そのものに即してカフカの魅力の源泉
 を語った好著。

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いい本だった。読んでよかった。カフカの作品創作の過程や、
時代背景、関連する人々、生きた街など、多くの小さな断片
が重なりあって、彼カフカ自身と、作品の姿が浮かびあがる。
短いエッセイの積み重ねなので、人によっては散漫な印象を
受けるかもしれないが、私には興味深く読むことができた。
先日、読んだ同じ著者の『ちいさなカフカ』(みすず書房)
以上に楽しめた。さらにカフカに~この著者に、魅了された。

友人とオートグラフ(マニア)のことも話したが、カフカ
に関しては~私も「直筆のメモ」など、彼の遺品が欲しい。
高額だろうが。これはカフカの直筆「『判決』のノート」

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………
『カフカの生涯』
 著者:池内 紀 出版:新書館 発行:2004.07(単行本)
 出版社の内容紹介:明るくてちょっとおかしな、まったく
 新しいカフカ像が見えてくる。カフカ自身の言葉、日記や
 手紙、また作品という~精神の証言をよりどころに、これ
 までの壮大な「カフカ神話」からこぼれ落ちた小さな事柄
 を拾いあげる評伝。

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カフカの祖父ヤーコプ(の代)から「物語」がはじまる。
ただの伝記・評伝ではなく、映画のような文学作品のような
期待が高まり感極まってしまう~そんな素晴らしいイントロ。

父へルマンを経てから、ようやくカフカの誕生へ。この絶妙
で確実な時間の流れ。ゆっくりと書き込まれていることこそ
が擬似体験を可能にさせている。私の意識も時をさかのぼり
彼らに同化する。読書中ずっと不思議な感覚を体験していた。
主人公カフカに私自身を重ねあわせることもできそうなほど。

これまで読んだ多くの~先人たちの生涯の物語~そんな中で、
もっとも、すぐれた「作品」といえるかもしれない。

ドイツ文学者でありエッセイストでもある著者。カフカへの
傾倒、愛情などが、文章のうまさや、構成の妙にあいまって、
非常に魅力的なものになっている。また著者はきちんと事実
に即した記述を心がけていると信じられる。文章のはしばし
にも真摯な姿勢がうかがえる。

カフカの創作姿勢がどうも理解しづらく、さらに彼の恋愛に
いたっては、私は困惑してしまった。かなりの変人?らしさ。
唯一、退屈に感じたのが~彼の恋愛に関する~その記述部分。
私には優柔不断で意味不明な行動としか受け取れないような、
さまざまなあるいは、何度も繰り返す、愚かな彼の行動など。
病的なまでに、創作活動と結婚(家庭生活)の間に横たわる
かもしれないジレンマを、恐れていたのだろうか?

彼の、街や人などを観察して書くという行為。書きつづける
というその強迫観念?こそが、彼を偉大なそして奇妙な存在
に高めて、しかし不安にもさせたのだろうか。
カフカは、不思議な人。

カフカの家族も友人たちも、その多く?が、カフカの死後
間もなく、強制収容所で死亡。その時代だったのだ。私は、
考えてみたたこともなかった。

………
長い年月、書籍の森を歩き「何かを求めて」さまよっていた。
すると必ずいい本が「与えられて」きた。そんな、ささやか
だが希望を持てるイメージを、ずっと私は抱いて生きてきた。
その森にはいつも、本という名の美味しい果実が、たわわに
実っているのだ。そうでなければ~精神が満足できなければ
~生きている意味も、読書の価値も、ない。

カフカに関する本は、もっと読んでみるつもり。そろそろ
彼の作品自体も再読してみたいと思う。今、私は、彼自身
についての謎が深まるばかり。記事も長くなってしまった。
カフカについては何度か書くと思う。


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