blueな日々

( Art で逢いましょう)

虚しさのみが

2006年10月14日 | 私が好きな?映画

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先日、見たかった『シリアナ』はなかった。かわりにレンタル
ショップで借りた映画『ミュンヘン』~この原作?や関連本も
昔、何冊か読んでいる。殺し殺される人間たち。テロも報復も、
絶対に何も解決しないと、本人たちも充分にわかっているはず。

………
『ミュンヘン』Munich
製作・監督:  スティーブン・スピルバーグ
制作:2005.アメリカ 時間: 163分
出演:  エリック・バナ, ダニエル・クレイグ、
   ジェフリー・ラッシュ、キアラン・ハインズ
参考図書:ジョージ・ジョナス著
 『標的は11人~モサド暗殺チームの記録』(新潮文庫刊)
DVD発売日:2006.8.18 販売元:角川エンタテインメント

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Amazonでの紹介:1972年のミュンヘン五輪。パレスチナ人の
ゲリラが、11人のイスラエル選手を人質にとる。結局、人質は
全員死亡。スピルバーグ監督が、歴史の暗部を直視した本作は、
その後、イスラエル側による報復作戦にフォーカスが当てられ
ている。暗殺グループとして組織された5人の工作員が事件に
関与したとされるパレスチナの重要人物を標的に、ヨーロッパ
各国で暗躍。次々と彼らを暗殺していく。

………
イスラエル側の視点のみで作られた映画だから、公平ではない、
したたかなプロパガンダである、といった批判があるようだが、
それが事実であっても仕方ないではないか。誰にも立場や思想
や心情や祖国などがあり、対立する国々や組織や主義のことも
正当に描くことはできないはず。いくら有名な監督であろうと、
公平な視点などありえないのだ。不可能ではないだろうか。

アラブ人青年と主人公~イスラエル側の暗殺チームのリーダー
との会話のシーンがあるが、その前後の場面もふくめて両者の
視点をかろうじて描いている。いかにも中途半端なものである。

映画自体が「ある視点で描く」表現方法だし、提供された作品
~ある視点に対して、受け止め、判断を加えるのは、見る者の
問題である。責任であり権利である。意識や認識しだいである。

そんな現実の中で、スピルバーグは、よく描いているとは思う。
彼の視点は、暴力と報復の虚しさ、これにつきると私は思うが。

この事件について書かれた、ある程度は信頼できそうな書物に
よれば、当然ではあろうが、イスラエルによる報復の過程など
~その詳細が微妙に異なっている。スピルバーグはわからない
部分は想像で補ったらしい。政治的な問題でもあるので、この
映画はイスラエルからもパレスチナからも批判を受けたらしい。

終盤の主人公の、翻弄される家族の、国家からの重圧の、より
過激化するテロと報復の連鎖の、それらの恐怖や現実感などは、
しっかりと確認しておく必要がある。恐ろしいこの世界である。

トップのビジュアルは『標的は11人~モサド暗殺チームの記録』
の表紙を加工。この本は10年以上前と数年前の2回読んでいる。


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