クッシング症候群とは?
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシングシンドローム:Cushing syndrome)
「副腎皮質」から「コルチゾール」という「副腎皮質ホルモン(ステロイドホ
ルモン)」を過剰に分泌することによって起こる全身性の代謝異常。
「クッシング」は、この症状を発見したアメリカ人医師の名前。
進行して行くと糖尿病を併発したり、放置すれば死に至る。 自然発症性と医原性がある
☆ 自然発症性→副腎の機能亢進
(1)下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH )
自然発生性の約90%。
5 歳以上の犬に多く、雌でやや多い。
好発犬種はとくにない。小型犬が多い
(2)副腎(腫瘍性)依存性副腎皮質機能亢進症(AT )
自然発生性の約10%。
うち腺腫良性50%・腺腫悪性50%
老齢の犬・大型犬に多いが、国内ではシー・ズーに好発するようだ。
(http://mkivet.hp.infoseek.co.jp/endo-dx.pdf)
雌が多く、雄の3倍の発症。
☆ 医原性(外因性)→副腎の機能低下
(3)医原性副腎皮質機能亢進症
副腎皮質ホルモン剤を長期間投与した場合 発症年齢 平均12歳(6ヶ月~17歳)
原 因
(1)下垂体性クッシング(pituitary-dependent hyperadrenocorticism:PDH)
脳下垂体に腫瘍ができ、副腎皮質を刺激する副腎皮質ホルモン(ACTH)が
多量に作られる。
PDH の80~90%は下垂体腺腫・腺癌を原因とし、うち半数程度では下垂体
が下垂体窩を逸脱するほど腫大する。
PDH の残り10~20%ではACTH 産生細胞(コルチコトロフ) のびまん性過形
成が認められる。
(2) 副腎腫瘍性クッシング(adrenal tumor:AT)
副腎皮質に腫瘍ができ、たくさんのホルモンを分泌する。
AT の多くは腺癌であり、腺腫の場合もある。
(3) 医原性クッシング
副腎皮質ホルモン(ステロイド)の過剰摂取(外用薬でも起きる)。 症 状
☆皮膚症状:菲薄化、両側対称性脱毛、左右対称の脱毛 色素沈着、
皮膚感染症、 皮膚の石灰化、皮下出血など
これらは毛根の休止、コラーゲンの異化、免疫抑制などを原因とする。
痒みは出ないが、免疫力の低下により二次感染しやすく痒がることも。
セント:皮膚にできた湿疹がどんどん広がっていき、1~2日で固まった。
その皮膚の塊を触るとポロポロと崩れるように剥がれ落ちた(石灰化のため
だったのね!)
湿疹がひどくなっていったので、背中の毛は電気バリカンで刈ったため、脱毛
の程度は不明。ただ、足や尻尾、耳の毛は抜けていった・・・
痒みはほとんど訴えない。
☆ポットベリー(太鼓腹状態):腹部が膨満、下垂、肝臓の腫大、内臓脂肪の
増加、骨格筋の萎縮など
おなかのたるみはコルチゾールによって腹筋が薄くなるためで、内臓が重力に
したがって下方にせり出してくることによる。 セント:物心ついた時から肥満傾向にあったので、お腹の膨らみはそのせ
いだと思っていた。ただ、体重が減ってもお腹だけは膨らんでいるので変だとは
感じていたが・・・
☆多食,多飲多尿
抗利尿ホルモンの分泌が妨げられるため、尿の量が増え、水を大量に飲むよ
うになり、食欲が増す。
セント:皮膚症状以外で異常を感じていたのは飲水量が増えたこと。以前
に比べると1リットル入りの給水器の水がやたら早く減るようになったって?とは
思っていた。
食欲は以前から旺盛。お上品に飲食するラブに比べて、セントは水も食べ物も
ガツガツという感じだった。
☆パンティング(舌を出して、「ハアハア」と激しく呼吸)
呼吸筋の萎縮、肝腫大による胸腔の圧迫、気管や気管支の石灰化など セント:1歳半年上のラブの方が疲れ易く、セントのパンティングはほとんど
気にならなかった。
☆筋力低下と元気消失
ジャンプや階段登行が困難になったり,無気力になる.セント:ベッドやソファに上がる時、失敗して尻もちをついているのを何度か
目撃。ラブよりセントの方が老化が進んでる?とちょっとショック。
一人でベッドに上がれるようにクッションで階段を作ってやる。
歩道橋はラブより早く元気に登れたのに、最近ではなんとかやっと登れるほど
に筋力が落ちている・・・
☆その他合併症
僧帽弁閉鎖不全症
肺動脈血栓栓塞症
腎盂腎炎
膵炎
糖尿病
骨粗鬆症
感染症
疾患の再発を繰返す 診 断
まずクッシング症候群であることを確かめる
血液学的検査・血清生化学検査
X線撮影検査(気管支の石灰化、副腎、心拡大など)
尿検査
細胞診(皮膚)
↓
ホルモン検査
(a)ACTH 刺激試験
(b) 低用量デキサメタ ゾン抑制試験(LDDST)
クッシング症候群と確定されたら、次にPDH とAT を鑑別する
PDH とATでは治療法がまったく異なるため、必ず鑑別しなければならない。
(c) 副腎エコー検査(病変、形態、副腎腫瘍等の転移の有無)
(d) 高用量デキサメタゾン 抑制試験(HDDST)
(e) 血漿ACTH検査 治 療
☆内科的方法(薬物療法)
コルチゾールを過剰に分泌する副腎皮質の細胞を部分的に破壊する薬剤を
投与し、分泌量を必要最低限度に抑える(副腎皮質の細胞をすべて破壊する
と、活力が低下し過ぎる。反対に生き残った細胞が多いと再発する)。
もうひとつは、コルチゾールの分泌自体をコントロールする薬剤を投与する
治療。この薬剤は安全性が高いが、生涯投与し続けなければならない。
☆外科的方法(手術)
外科的方法は、上あごから頭部に穿孔(穴を開けること)して、脳下垂体に
至り、腫瘍を切除する治療法。しかし、まだ国内では実施する獣医療機関が
ごく限られている。
副腎腫瘍が良性の場合には摘出で治療効果も望めるが,悪性の場合には
腹腔内やその他に転移するので手術自体が不可能な場合も多く一般に予後
は悪い。
☆医原性のものは,徐々に副腎皮質ホルモンを休薬.
予 防
予防の方法はない
クッシング症候群を引き起こすような腫瘍が、脳下垂体や副腎皮質にできる
のを防ぐ方法はない。
ただし、高齢期の犬が発症しやすいため、6、7歳以降は特に体調の変化に
注意し、定期検査で血中のコルチゾール値をチェックしてもらい、早期発見・
早期治療を心掛けることが大切。