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原ひろ子・大沢真理・丸山真人・山本泰編,1994,『ジェンダー (ライブラリ 相関社会科学2)』新世社.(8.24.2019)
東大相関社会科学コースの教員を中心に編まれた本書は、1990年代のジェンダー・スタディーズの一里塚ともいえる論考集であり、いま読んでも色あせていない論文も少くない。
近年、本書のような骨太の論考集があまり出版されなくなったのは残念であるが、ジェンダー・スタディーズの知的資産として後世に残していきたい知見は数多い。
目次
《労働・経済》
日本の社会科学とジェンダー―社会政策論と労働研究の系譜にそくして
離婚と女性の生活保障
高齢化社会における女性と年金
働き方とジェンダー―パートタイム労働を中心に
「自由時間社会」のジエンダー分析―ドイツの事例調査から
女性の社会参加―生活クラブ生協からのメッセージを読む
《政治》
女性の参政権とジェンダー
歴史のなかのジェンダー―明治社会主義者の言説に現れた女性・女性労働者
フランス法のなかの性差
政治思想史のフェミニスト的解釈によせて―政治的なものの、もうひとつの限界
一政治学者のみたジェンダー研究―社会科学の空白への反省
「従軍慰安婦」問題―運動とその意味
アジアの女たちのネットワークとNGO
《文化・社会》
性差の由来―発達心理学の立場から
家父長制の比較社会学―東アジアの女性の就労パターンの比較
『オール読物』にみられる「父の観念」―父‐娘関係と父‐息子関係
《開発》
「開発と女性」領域における女性の役割観の変遷
社会林業とジェンダー
女性と開発、そして政治参加―ザンビアの事例から
観光開発と女性―マレーシア・ペナン島における事例調査から
本書は、ジェンダーを「男性」「女性」という二項対立の構造および/または、その関係性としてとらえ、各々の論考をすすめている。その理由は、人間のありようや社会現象を理解しようとする際に、近代の学問が、あまりにも「ジェンダー無視」であったことを反省し、批判し、その上で新たな分析手法を構築しようとする姿勢に充ちているからであるといえるだろう。