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世代の痛み

上野千鶴子・雨宮処凛,2017,世代の痛み──団塊ジュニアから団塊への質問状,中央公論新社.(6.30.2022)

 上野さんが指摘するとおり、団塊ジュニアが、ロストジェネレーション(就職氷河期世代)として生活困窮に苦しめられてきたことは、まこと「人災」である。
 団塊世代は、たんに高度経済成長という僥倖のおかげで階層上昇移動を果たしただけであるのに、それをおのれの努力の成果だと思い違いをし、また己惚れて、自分たちの雇用を守るためもあって切り捨てられたロスジェネに対し、「努力が足らない」と嘯く。
 バブル経済による1,000兆円規模の不良債権処理にあたって、超長期償還国債を発行するなり、年功賃金制度を改め、時短を推進し、ワークシェアリングをするなりして、当時の若者を包摂することは可能であった。
 しかし、労働力の非正規化によって経営改善をもくろむ大企業経営者を忖度する政府は、労働者派遣法を改悪し、それが、さらなるロスジェネの労働環境、条件の悪化につながった。
 当時の企業経営者、労組幹部、政治家、官僚の多くが団塊世代であったことを思い起こすと、この世代の罪ははかりしれない。
 団塊世代の上野さんと、団塊ジュニア世代の雨宮さんとのこの対談から、ロスジェネも含めて、1,200万人を超える「アンダークラス」が形成された経緯が鮮やかに蘇る。

高度経済成長とともに年を重ねた「団塊世代」。就職氷河期のため安定した雇用に恵まれなかった「団塊ジュニア」。二つの世代間の親子関係に今、想定外の未婚・長寿・介護などの家族リスクが襲いかかっている。両世代を代表する論客の二人が、私たちを取り巻く社会・経済的な現実と、その対策について論じ合った。この時代を心豊かに生き抜くためのヒントが満載!

目次
第1章 余はいかにして右翼となりしか
第2章 政治なんてまっぴら?自己責任社会がやってきた
第3章 正社員も非正規層も追いつめられる時代
第4章 第三次ベビーブームはなぜ起きなかったのか
第5章 団塊世代は年老いた
第6章 フェミニズムはなぜ継承されなかったのか
第7章 「みんなが弱者」の時代にわたしたちができること

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