
人気劇作家の横山拓也が書き下ろした新作のファンタジックコメディー。
江口のりこ、松岡茉優、千葉雄大、松尾諭、入野自由、富山えり子、尾
方宣久、橋爪未萌里が出演している。
演出は、若手実力派でこれからが楽しな小山ゆうな。
40歳になったワタシ(江口のりこ)は15歳から文通しているノリヒト
(松尾諭)との手紙を元に、SNSに小説を書き始めた。これが大バズリ
し、世間の話題をさらい、本にするだの、映画化するだのとの話が進ん
でいく。まだ、ラストは決まっていないが、当の本人たちはハッピーエ
ンドではなく、ノリヒトは違う女性と結婚し、子どもがいる。“30歳に
なってもお互いが結婚していなければ、結婚するのはどう?”そんな約束
は果たされず、ワタシは40歳まで誰でも書ける文章をウェブ記事に上げ
て生計を立ててきた。
そんなときに、かつての手紙のやりとりを使った小説をネットに書くよ
うになった。手紙は本物、今の本人の気持ちは空想まじり。彼も実際の
顔のイメージではなく、推しの顔をイメージして書き進めている。
ワタシの書くモノガタリの中では、ワタシはミコ(松岡茉優)となり、
ノリヒトはリヒト(千葉雄大)だった。
小説の内容を松岡茉優と千葉雄大が演じる。空想の世界を実現化して舞
台は進む。江口のりこと松尾諭はネイティブな関西人。その関西ことば
によって台詞が語られていく。観劇したのは大阪公演。芝居が、ものす
ごい勢いで消化され、言葉が浸透していく。関西ことばの独特の間が伝
わることもあり、わくわくしながら観劇することができた。なぜ、二人
が文通を何年も続けてきたのかの理由もおもしろいが、納得できる。
江口のりこと松尾諭以外は、役をいくつかこなす。髪型も服も、話し方
も変えて登場するのでプロとしか言いようがない。
ラストシーンはいわゆるみんなが望むハッピーエンドとなるのか、現実
と同じにするのか、それ以外にするのか今は編集者となっているノリヒ
トと考えることになる。
だが、本当のラストは観客に投げかけられていると思う。幸せとは何か、
ハッピーエンドとは何なのかが問われているかのようだ。
シンプルな舞台構成もよかったし、何よりめっちゃおもしろかった。
(森ノ宮ピロティホールにて)