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高校野球に見る球数制限よりバットの反発係数問題

2020-04-17 19:01:34 | 日々徒然
ここ数年で叫ばれるようになった高校野球の投手の投げすぎ問題。最近では金足農業で活躍した現日本ハムの吉田輝星投手が県予選から甲子園を10試合連続完投し、プロ入り後は投げすぎの影響が少なからずあるような成績になっています。ちょっと前で言えば斎藤佑樹投手や安樂智大投手も投げすぎの影響が見られた選手です。

いち早く投げすぎ問題に一石を投じたのが新潟県。先発投手の一試合の球数を100球までに制限するという規定を設け県予選を行おうとしました。しかし高野連は「ちょっと待ってくれ」という形でノーを示しました。あくまで県内での規定であって、甲子園や北信越大会では適用されません。公平性がない点がまずかったなという印象です。ただし、最近では(COVID-19の影響で高校野球は行われていませんが)球数制限の導入に高野連が前向きなのは確かです。

球数制限と同時に話題になったのがバットの問題です。現在高校野球で9割9分9厘使用されているのは金属バットです。規定でいえば太さ6.7cm以下で900g以上のバットです。ただしこの金属バット、規定では「使用してもよい」という許可されただけのバットなんです。本来は木製バットを使用するのが普通とされているのが高校野球規定です。
ご存じの通り金属バットの方が木製バットより反発力がある上に芯の範囲も広く、少し腕力があれば甲子園という広い球場でもホームランを打つことができます。飛距離でいえば90m~120mくらい(木製バットと比較して)簡単に飛ばせます。芯に当たりやすく、さらに芯に当たると凄まじい打球速度が生まれます。そんな状態で投手は何とか打ち取ろうとするのでストライクだけでは勝負せずにボール球を使います。結果的に球数は多くなりますね。「動くボール使えばいいじゃん」という話も聞きますが、前述したとおりに金属バットの芯は広いです。少しボールが動くようなカットファスト、ツーシームのようなボールは芯で捉えられヒットにされてしまいます。甲子園で活躍するピッチャーの多くが、スライダーやフォークのようなバットに当てさせない変化球を得意とするのはそのためだとも言えます。
話を戻してバット問題です。金属バットは前述の通りに芯が広く反発力があるために簡単に強い打球が打てます。そのため高校野球でホームランを多く打ったバッターが注目され、ドラフト上位で指名されますが、木製バットに対応できずに数年で戦力外になることも多々起きています。近年でいえば広島東洋カープの中村奨成捕手でしょう。捕手という重要なポジションであることも重なっていますが、二軍でも思うような打撃ができていません。所謂「金属打ち」になってしまっていると多くの人は言います。おそらく金属打ちというのはあると思いますが、それが絶対ではないとも思えます。よく木製バットで飛ばすには引手(右バッターなら左腕、左バッターなら右腕)の脇を締めて打てと言われます。確かにこの打ち方だと体の近くでバットが出るコンパクトなスイングになり、脇を締めてることでボールに対して体重を乗せやすいことになります。ただこれに当てはまらずにホームランを打つバッターがいるのも事実です。横浜ベイスターズホセ・ロペス選手、SBホークス松田宣浩、中日ドラゴンズ平田良介選手などです。ミートポイントを体の前にして腕が伸び切った状態で打つタイプの選手です。僕の自論としては、脇が空いていようが締まっていようが構わない。ボールに対してしっかりと力を加えられる、押し込めるスイングができれば関係ない。といった感じです。
ただし簡単に打球を飛ばせる日本の金属バットが弊害になってるのは、多くの例を見ると事実と認めざるを得ません。「じゃあ高校野球にも木製バットを!昔は木製バットだったんだし」という声も聞かれます。ナンセンスな声です。今高校野球に木製バットを導入するとどうなるか。木製バットの単価が跳ね上がります。現在木製バットの主な原料のメイプルは、各メーカーがより良い材質を取り合っていて価格が上昇しつつあります。プロ野球でもそんな状態なのに高校野球に導入されると需要が一気に高まり、価格が高騰し、部費で賄えない高校の硬式野球部は潰れていきます。ただでさえ折れて消耗品度が激しい木製バットは、硬式デビューした高校生には手を出すことも扱うことも難しい物です。「木製硬式と金属硬式で分ければいい」という声も聞きますが、これもナンセンス。すでに日本は軟式野球という別カテゴリーが存在するのに、これ以上微細化すると競技人口が分かれ、結果的に野球自体が衰退すると考えられます。少子化の影響以上に高校野球部員の減少は著しい事態になっているので避けるべきです。
そして最近、球数制限と同時に言われるようになったのが金属バットの反発係数の調整です。木製バットかそれに近いような反発係数のバットで野球をする。もしくは芯を狭くしたバットというのも考えられますね。実際アメリカではそういうバットを使用してカレッジリーグ(大学野球)は行われています。高校でもそうです。よく「アメリカは高校野球でも木製バットだ!」という人がいますが間違いです。高校野球で木製バットを使うのは韓国です(ちなみに韓国高校野球は木製バット使用に変わったことでホームランバッターが減り、投高打低になっているそうです。結果的にKBOでも打高がやや改善されてきてるとか)。アメリカの金属バットはBBCORという規制の下で反発係数と芯の広さと太さが決められています。しっかりとしたパワーと狭い芯に当てる技術を持ったバッターだけがホームランを打てることになっています。元々の体の大きさが違うので、大学生でもNPB選手よりパワーがあるバッターはたくさんいるのも確かなことですが。
勿論日本の高校野球でも「練習で」木製バットを使う高校はあります。しかし、試合ではありません。どうしても勝つためなら飛ばせる金属バットを使ってしまいます。ならばその金属バットを変えてしまおうという話が出ています。とあるメーカーでは先んじて日本でBBCORのバットを開発し、販売しています。R社はアメリカで使われているBBCORのバットを日本で販売してもいます。ただしR社は米国基準のバットなので、日本のバット事情とはちょっと合わない物になっています。アメリカでは33/30とか34/31とかそういう方式でバットが作られています。33/30であれば33インチで30オンスのバット(83.8cmで850g)になります。バットの長さと重さを-3とか-1とか設定することになります。基本的に-3が主流になっているそうです。なので現在の日本の金属バットより50gも軽いバットを、よりパワーのある大学生たちが振っていることになります。そして軽めのバットを使うというのは、MLBでも主流になりかけています。理由の一つは、平均球速の上昇による振り遅れないため。軽いバットでスイングスピードをことです。二つ目は動くボールへの対応。軽いバットの方がバットコントロールはしやすいため、動くボールを芯で捉え自分のパワーで打球を飛ばそうという考え方です。実際昨今のフライボール革命と合わさりMLBのホームラン数は激増しました。
果たしてこの考え方が日本の高校野球にも合うかと言われれば、どうしても疑問は残ってしまいます。反発係数を下げたことによりホームランの減少は避けられないでしょう。そもそもの話でいうと、高校野球=プロへの道になってしまうのか。高校野球は高校野球というものではないのかということにもなります。100人高校野球児がいたら100人ともプロ野球を目指しているでしょうか。また高校野球がプロ野球養成期間になってしまうことも危惧されます。さらにホームランや得点が減少すると野球自体の面白みも薄れていきます。これはNPBでも2011年から統一球。所謂低反発球が使用されたせいでホームランが減少し、息詰まる投手戦という名の塩試合が多くなってしまったこともあります。野球の面白みが薄れることは、やはり競技人口の減少を加速させかねません。
僕個人の考え方からすると、高校野球のバットは
・反発係数の見直し。極端に低くするのではなく。現状から-3%ほどでいい。
・芯を木製バットのように狭くする。打者は芯に当てる技術を、投手は芯を外す技術をつけてもらう。
・バットバランスを木製バットのようにする。振りやすい900gより、木製バットのような850gのヘッドバランスのバットで振り抜く力をつける。
ことが望ましいかなと思います。いずれにしても高校野球はちょっと変わらなければいけない過渡期に来ていますね。勿論高校野球は高校野球ですが、その中から真(芯)のスラッガーが多く出てくることを、僕は願っています。頑張れ中村奨成。頑張れ未来のスラッガーたち。




木製=メイプルになっている高校生が大変多いという話を聞きました。そうではない、という話も近いうちにできたらと思います。
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