迷ったところで・・・地球の上

迷ったところで・・・地球の上

再び走り出す!・・・・・がっ!

2011年08月12日 | 青海省

 

「高山病で死ぬ人もいる」という文字が何度も頭の中を廻った。

 

寝たはずの自分は、気がつけば肩で息をし、四つん這いになって地面をこぶしで叩いていた。苦しくて苦しくてどうする事も出来ず、地面を叩くしか無かったのだ。しかしその振動が頭痛に響き、更に苦しくなる。横たわっていても頭痛が波のように押し寄せてくる。新呼吸をしても半分くらいしか酸素が入ってこない。額には脂汗が浮かぶ。吐き気も酷い。ただの高山病だと云い聞かせ、落ち着こうとするが、なかなか治まらない。

高山病は困った事に、寝ると症状が悪くなるというもの。寝てしまうと呼吸が浅くなり、体内に酸素を取り込む量が減るのだ。だから、起きている方が症状が出にくいのだ。

あまりの痛みにのたうち回っている内にそれでも時折症状が軽くなる。そこへ睡魔が訪れる。眠りに落ちると酸素量が減って、再び悪夢のような頭痛に襲われる・・・・。これをひたすら繰り返して朝を迎えた。ゴルムドから車で一気に4,600mまで駆け上がってきたせいだろうか。前回の高山病以上の苦痛だった。しかし慣れるまでこの高所にいる事は出来ないし、これから走る道を思うと・・・・正直、うんざりしてきた。

痛みで頭を片手で押さえつつテントを撤収する。チベットの子供たちが興味津津で見ていたので、彼らに手と撤収を"やらせてあげる"事にした。勿論、大喜びで彼らはテントを畳んでくれた。(ラッキィー)

 

気温の上昇とともに頭痛も徐々に治まり、いよいよ村を離れた。ゆっくりと砂利道を走りだす。天気は今日も快晴!暑くも寒くもなく最高の自転車日和だ。漕ぎ出すこと一時間。そろそろ休もうかと思った矢先、事件が起きた。

 

こんな気持ちのいい日は、草原で昼寝でもしたい・・・・と思っていたら、犬が昼寝していた。

 

・・・・そう。例の「超大型犬」!

 

僕が彼に気がついた瞬間、彼もまた僕に気がついた。彼は一瞬寝ぼけていたが、次の瞬間には野太い声で吠え始めた。

7/20の日記にも書いたが、彼らはオオカミを退治するための闘犬。体重は75kgはあり、獰猛な事この上ない。

普通の犬なら無視して走れば、ある程度まで吠えると諦めてくれる。ところが彼らは、僕を「エイリアン」とみているので諦めない。仮に逃げたとしても、この自転車、この砂利道ではどう頑張ってもかれらの方が早いに決まっている。しかし、自転車の真横(つまり僕の真横)を並走しながら、大声で吠えつづけ、ふくらはぎに咬みつこうとしてくる。さすがに怖くなり、一か八か逃げてみる事にした。

スピードを上げてみたが、やはり彼らにしてみれば楽勝らしい。更に悪い事に「応援」が来てしまった。75kg×2頭。

 

全く笑えない状況になった。スタンガンはフロントバックの中。この砂利道で漕ぎながらは取り出せない。

ついに一頭が僕に体当たりしてきた。自転車ごと大きくヨロけたがコケる訳にはいかない。反対側にももう一頭いるし、ここで止まってしまえばマジで噛み殺される・・・・。失速した自転車を再度力いっぱい漕ぎだすが、思うように進まない。何か変だ!と思ったら、犬が自転車の横のカバンに噛みついて自転車を止めようとしているではないか!

「!!!!っ」  左足で犬の鼻っぱしを蹴とばして、もう全速力で逃げまくった。

もう一頭は諦めずに並走しているが、逆に自転車を彼に体当たりさせて追い払う。

5分ほどで彼らは諦めて去って行ったのだが・・・・・。寝不足・酸素不足・砂利道・上り坂の5分間は生きた心地がしなかった。彼らがいない事を確かめて地面にへたり込んだ。ここから先はオオカミ地帯。考えたくもないが・・・・・・どうしよう。

かれこれ1時間ほど座り込んだまま動けなかったが、仕方無いのでボツボツと歩き始めた。今日は60km走れば村がある。とにかくそこに着いてから明日の事を考えようっと。

 

犬から逃げてきた峠

 

相変わらずどかない毛牛!

 

体調と景色がアンバランス

 

村に到着する直前の川。赤く見えるのは川底。水はクリアー。

 

到着した「曲麻河」(チュー・マー・フー)

 

夕方、村に到着。ここには食堂がある。食欲も無いのだが、この前みたいに体重が落ちないように無理やり食べる。

まだ明るいので、もう少し進んでテント張ろうか。。。と歩きだしたら、なんと安宿があるではないか!30元!風呂トイレ無しだが、今朝の犬騒ぎの恐怖もあるし、氷点下の中でまたのたうち回るのは苦しすぎる。 泊まる事にした。

この村は、昨日3台目をヒッチハイクした場所と、自転車の置いてあった村の先にある大きな村までのちょうど中間点。砂利を運ぶトラックの休憩地点になっているようだ。全長500mの村。まだ日が明るいので、宿の前で日向ぼっこをしていたら、宿の子供が来て話しかけてきた。彼は13歳。学校には行った事がないらしい。しかしとても礼儀正しく、母親の手伝いを一生懸命にこなし、村人たちも通るたびに彼に声をかけていく。見かけは子供だが、仕草や物腰が大人びている。タバコなんかをふかしたら似合いそうな雰囲気を持っていた。

彼にこれまで走ってきた町の事を話してあげた。彼はこの村から出た事はないので、今まで撮った写真などを見せると2時間以上眺めていた。

彼にここから先の道の事を聞いてみた。去年、外人が二人で走って行ったらしい。・・・行けない事はないみたいだな。

ただ、やはりオオカミが多く地元の人も危ない目に合っているという。特にこの一帯には国が保護している動物が多くいて、オオカミはそれを狙って生息しているとの事。 この砂利道は残り150km。まだこの先には4,600mの峠が三つほどある。

ゴルムドに向かう車はあるのか?と聞いてみたが、「時々ね」と言う答えだった。確かに、彼と3時間ほど並んで座っているが、一台も車は通らない。「時々」・・・というのはどのくらいの事なのか・・・・尋ねようと思ったが、意味のない事に気がついて聞かなかった。

21:00。ようやく暗くなり始めた頃、僕が走ってきた方角から石油タンクローリーが村に来た。22個のタイヤの内、なんと3個が破裂している。彼らは宿の隣にある修理店の前にトレーラーを止めた。 

日が暮れると一気に寒くなる。また頭痛が始まる予感がしたので、薬を飲んで臭いベッドに横になる。

・・・・明日、どうしよう。。。

 

部屋には僕一人。暖炉はあるが夏なので火はない。・・・・寒い・・・。

 

 

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