インターネット失敗百選

ECコンサルタントがネットサービスの失敗事例を1日1個紹介しそのメカニズムを解剖。中尾政之著「失敗百選」のパロディです。

【その17】Hotmail

2006年01月31日 | Weblog



2000年ころは「WEBメール」の代名詞とも言われていたHotmail。

多くの人が、会社メールや自宅プロバイダのメールを通常のアカウントとし、
二番目のアカウントとしてHotmailを使用していた。

Hotmailのメリットは、以下の3つだった。

「使い捨て可能」
「匿名性が高い」
「会社や家族に見られたくない」


会社のメールを上司などに閲覧される可能性については、(実際に閲覧するかは別として)当時から企業で働く人々の共通認識となっていた。

勤務時間中の恋人との連絡や転職活動など、万が一にも社内の人間に見られては困る内容のメールは、HOTMAILを使うが多かった。

また、当時流行した出会い系や海外のアダルトサイト、掲示板など、怪しいサービスに登録する際の「捨てアカウント」としても多くの人に重宝された。


しかし、その後hotmailを日常的に使用する人は激減した。
なぜだろうか。


第一に、その「匿名性」「捨てアカウント」のイメージがゆえに、
HOTMAILを使うこと自体に怪しい印象がついてしまったことだろう。

ビジネスやオークションなどでHOTMAILを連絡先としている人物は
それだけで怪しいイメージを持ってしまう。

また、メールアドレス登録を必要とするWEBサービスは多いが、HOTMAILなどのアドレスはお断りという会社も出てきてしまった。

そもそも、いくらWEBメールを使用したとしても、インターネット上で完全なる匿名性を維持できないことも広く認知され、匿名メール自体のニーズがなくなったとも言える。


第二に、大量の迷惑メールの存在だ。
これはどのWEBメールでも同じことに思えるが実はそうではない。

迷惑メールの大部分は海外から英語で送られてくるものだ。
したがって、日本人と外国人が同じドメイン(@hotmail.com)を使用するHOTMAILと、@yahoo.comと@yahoo.co.jpとに使い分けているYahoo!メールとでは迷惑メールの受信数が圧倒的に異なる。
(迷惑メール送信者は@hotmail以前の文字列をランダムに送信している)

筆者のhotmailアドレスにも1日100件を超える迷惑メールが届くようになって利用をやめた。


第三にYahoo!メールの躍進だ。
Yahoo!メールももともとはHotmailと変わらない怪しいイメージがついていたが、ADSL事業に進出して一部アドレスの個人情報との紐付けを行ったことで、niftyやbiglobe等のプロバイダ発行アドレス並の正統イメージをかもし出すことになった(自宅でybb.ne.jpを、会社でyahoo.co.jpを利用する手法も後押しした)。

また、Yahoo!オークションIDと紐づいて落札後のやり取りに頻繁に利用されるようになったことからも広く市民権を得た。


以上3点見てきたが、私自身やめる原因となった「第二」の問題が一番大きいと思う。

どうしてHotmail.co.jpというアドレスを取得しなかったのか、今でも疑問に残る。



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【その16】イーウーマン

2006年01月30日 | Weblog


ewoman
http://www.ewoman.co.jp/

佐々木かをり氏が設立した有名な女性サイト。
iモード生みの親・松永真理氏が経営に参画したことでさらに注目された。
2006年1月現在、会社・サイトともに存続しているが、他の女性系情報サイトと同様にインターネット業界においてまったく存在感はない。

資本金を8億7190万円も調達し、2000年、2005年と二度もITバブルを経過しておきながら
いまだに株式上場をしていないし社会的に一定のポジションを得ていない状況は、
大企業の戦略的子会社という位置づけでもない限り許されないのではないか。
少なくとも億単位で出資した者に対しては利益配分をする時期に来ているだろう。

当時、佐々木氏が掲げた「働く女性のためのサイト」というコンセプトは
誰もが認めるすばらしいものであった。

そして、無料の情報系サイトが相応の収益をあげるために必要な事業

・企業からお金を取る。
>広告
>リサーチ
>求人
>コンサル

・エンドユーザーからお金を取る。
>情報料
>物販

のうち、企業からお金を取るビジネスはほぼすべて実施しているようだ。

決算発表をしていないのではっきりしたことは言えないが、
現時点でもほぼ完璧なビジネスモデルであるように見える。

佐々木かをり氏や松永真理氏の個人的な能力を抜きにしても、
億単位での出資者が出現した理由もわかる完璧な(ようにみえる)ビジネスモデルだ。


ではいったい何がいけなかったのか。


1、コンテンツが魅力的でない点
筆者は女性ではないが、コンテンツが充実していない(金もかかっていない)ことは見ればすぐにわかる。少なくとも毎日見に来る性質の情報は皆無だ。
ほとんどのコンテンツは金で買えるが、それをしていない。
女性向けの株価情報など行っていれば証券口座獲得などの広がりも出てきたのではないか。

2、物販をやらなかった点
女性系サイトと相性の良いといわれるクライアントは、化粧品や健康食品、ファッション系である。しかし、これらの広告主は、ページビューの総量に対して広告料を払うので、ポータルサイトなど男女かまわず大量にトラフィックを消費させる「質より量」のサイトのほうが有利である。

イーウーマンのように顧客(ページビュー)を限定して優良会員を抱いこんでいるサイトであれば、1ページビューあたりいくらの広告よりも流通・小売を展開したほうが利幅も大きいはずだ。化粧品や健康食品は粗利が40%を越える商品も多いと聞く。


3、実はターゲットが「金を使わない」女性層だった点
上記2で女性系サイトといえば、コスメ、レディースファッションと書いたが、
イーウーマンの場合は冠に「働く」をつけている(働く女性のためのサイト)。

イーウーマンの対象がキャリアウーマンであり、17時に帰社するOLではない点だ。
キャリアウーマンと事務系OLとで、消費活動をどちらが多く行うかといえば、彼氏のためにダイエットをし、オシャレな洋服を買い込み、流行のお店で食事をし、小奇麗なブティックホテルを探す事務系OLであることは明白だ。
現にそういったOLを相手に商売をしているオズモールは比較的成功している。


4、営業マンの力不足
イーウーマンの社員を直接知っているわけではないので想像の域を出ないが、上記1、2については、クライアントに近い位置にいる営業マンから社内に対して改善提案が出るのが普通の会社である。また、これだけ知名度のあるサイトであれば、中身がなくても無理やり広告を取ってくる辣腕の営業マンがいてもいいのではないか。
女性サイトだからといって男性社員の採用に消極的になってはいなかったか。
(男性のほうが優秀という意味ではなく、社員の採用の段階で男性応募者との競争が正しく行われてたか)


5、資金の有効活用ができていない点
10億円近い資金を集めておいて、その資金の行き先が不明な点。イーウーマンはこれまでいったい何に投資してきたのか(私は株主でもないので追求する立場にはないが)。
業績良好という噂をまったく聞かないにもかかわらず、いままで会社が存続していることから、資金はすべて家賃と給与という会社のライフラインのために温存し、前向きな投資を怠ってきたのではないか。


6、松永真理氏の退任
佐々木かをり氏とソリが合わなかっただけのか、沈没しそうな船に乗り続けるのは自身のキャリアに傷が付くと判断したのかはわからないが、松永真理氏の退任はいただけない。

入社時に記者会見まで行ったのだから、上場企業でなくても退任時には明確に理由を述べるべきであったであろう。松永氏の退任そのものが悪影響を与えたとは思えないが(むしろ高額な人件費が減って良かったのかもしれない)、松永氏退任を契機に佐々木氏のワンマン体制がさらに進んだのではないかとみている。それが今のイーウーマンの状況悪化を招いたのだ。

余談だが、松永氏の退任は、松永氏本人にとっても大きなマイナスであったと思える。iモード立役者としての功績が「単に勝ち馬に乗っただけ」という批判にさらされるからだ。

いずれにしても、今のままでは強力なパトロンがついているから店がつぶれない銀座のママに近い印象を受ける。



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【その15】1ch.tv

2006年01月26日 | Weblog


これも超鳴り物入りでスタートしたサービス。

西和彦氏が「アスキー立ち上げ時の10倍興奮した」という日本最大級の掲示板を目指したサービス。

当時2ちゃんねるが抱えていた3つの問題

 (1)サーバ負荷が耐え切れずに2chの運営が破綻する恐れがあった点
 (2)完全匿名制により投稿責任の所在が不明確であった点
 (3)アンダーグラウンドなイメージが付きまとう点

を改善して利用者を一気に呼び込む戦略だったが、

 (1)サーバ負荷問題は収束し、
 (2)匿名制については、ログを取得を開始したことでの投稿者責任がある程度明確化され、
 (3)アングライメージについても、老若男女が訪れるそのメジャー感から払拭された。

つまり、西氏が描いた戦略はその時点では正しかったはずだが、対抗馬の2ちゃんねるを取り巻く環境が大幅に改善されてしまったために、「2chに変わる健全な巨大掲示板」というニーズそのものがなくなってしまったといえる。


また、1ch.tvの画面デザインを見ると、高齢者向けのサイトと見間違うほどの文字の大きさだ。ロゴのセンスもプロのクリエイターが作ったものには見えない。ユーザービリティの悪さも敗因の一つと言えるだろう。プロデューサー西氏とエンジニアあめぞう氏に加えてデザイン的なセンスを持つ人間もいれば良かったように思う。


当時、西氏は「(2chなどの掲示板では)投稿者に対し適切な対価が払われていない」と指摘し、将来的に投稿者に利益を支払うビジネスモデルを検討していた。

その指摘は正しかった。数年後に2chから「電車男」が生み出され、はてなが有料検索を行っている。しかし、「電車男」はネットではなく紙媒体や映画に対する対価であるし、はてなは個人の情報発信というよりはまず質問者ありきの回答だ。

西氏が目論んだ、個人の情報発信者に対価が支払われるモデルはいまだ確立されていない。




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【その14】エスクロー

2006年01月25日 | Weblog


エスクローサービスとは、オークションの出品者と落札者の間に仲介業者が入り、代金徴収と発送を代行するサービス。

オークションによる詐欺の被害が社会問題になり始めた2000年の秋に、鳴り物入りでスタートした。

中間に企業が入ることで、振り込んだのに商品が届かないといった被害を防ぐことができるというすぐれものだ。



そして日本でサービスが始まってから5年が経過したが、このエスクローサービスはまったくと言っていいほど普及しなかった。

以下原因を探っていこう。

まず、オークション詐欺の被害者のほとんどが「落札者」であるにもかかわらず、エスクロー活用の主導権を持つのが「出品者」である点だ。

このエスクローは「出品者」が出品時に決済方法の一つとして設定しなければそもそも始まらない。手数料が発生し且つ入金タイミングが遅くなるこのサービスは、出品者にとってのメリットは皆無といえる。

したがって、ほとんどの出品者がこのエスクローサービスに関心を示さなかったのである。

それでは、逆に落札者側からエスクローを求める声は上がらなかったのだろうか。
これも「嫌なら買わなくて結構」という売り手市場のオークションの世界では通る主張ではなかったようだ。

信用できる出品者か否かの担保となるものは、エスクローではなく出品者の「評価」であるし、どうしても心配だという声に対しては、エスクローよりも早くて安心の「代金引換」という方法が結果として選ばれたのだ。



Yahoo!オークションのエスクロー業者である日本ロジスティクスは、平成17年3月にエスクローサービスをひっそりと終了させた。


サービス終了のお知らせ(日本ロジスティクス)
http://www.risksaver.ne.jp/




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【その13】TSUTAYAオンライン

2006年01月24日 | Weblog


CD/DVD/書籍の販売事業についてはアマゾンに大きく水を開けられ、オンラインレンタル事業「TSUTAYA DISCAS」についてはライブドアぽすれんの後塵を拝している。


TSUTAYAのネット通販事業が伸びない理由は、単にアマゾン・ドットコムが強すぎたからという簡単なものではない。TSUTAYAオンラインの商品は値段が高すぎるし、ラインナップも揃っていない。在庫切れも多い。本当に売る気があるのかと思うくらいだ。

一方、オンラインレンタル事業については、サービス自体は良いのだが、如何せん認知度がぽすれんと比べて低すぎる。TSUTAYAの店舗でもっと告知をしたら良いと思うのは筆者だけではないはずだ。

では、なぜTSUTAYA、いや、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)はインターネット事業に対するやる気を「見せない」のだろうか。

それは、TSUTAYAがフランチャイズのビジネスだからだ。
実際の店舗はCCCではなく各店舗の地元の有力企業が運営している。CCCは、店舗に対する商品の卸やコンサルティング、ブランディング的なところを管轄している。

つまりTSUTAYAの各店舗はCCCにとっての重要なお客様なのだ。そのお客様の売り上げを下げるような「インターネット直販」「インターネットのレンタル」は風当たりが強く、本気で取り組めないのである。

これはコンビニエンスストアのネット直販(セブンドリーム等)が本気で物を売れないのと同じである(コンビニ系ネットサービスについては後述したい)。

但し、CCCにもネット事業拡大のチャンスが訪れた。ライブドア事件の発生により、ぽすれん事業が売りに出され、その結果CCCが買収することも可能になったからだ。「ライブドアがこのような状態だからCCCが引き受ざるを得なかった」という言い訳にも聞こえない言い分は加盟店企業を納得させることができるのではないか。

なお、クリック&モルタルで有名なTSUTAYA店舗への来店誘導型ケータイ向け販促は大成功している。TSUTAYA加盟店企業のためになるサービスであるから、CCCが「本気で」実施できたサービスだったのだろう。

このTSUTAYA現象は、リアル店舗を運営する会社のネット事業全般に対して言えるものである。



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【その12】ライブドア(堀江社長)のニッポン放送株取得

2006年01月23日 | Weblog


ライブドアの失敗の理由についてはすでに数多くの意見が出ているので、改めてここでまとめる必要はなさそうな気もするが、せっかくなので特捜部がライブドア事件の「本丸」として捜査の対象としているものが何かを予想してみたい。


ニッポン放送の株式取得に関して


2005年2月8日、ライブドアはニッポン放送の株を買い集める際に「立会外取引」を行った(それ自体は違法性はない)。

しかし、ライブドアと売り手との間に売買に関する「事前合意」があれば話は別だ。堀江社長が2月8日の東証の取引開始後わずか30分の間のうちに6件の巨額時間外取引を成立させて、ニッポン放送の株式の35%を一挙に押さえたと言われるが、これは偶然(堀江氏は売り手の顔を知らない)ということになっている。合法の根拠となる部分だ。

もし、今回押収された堀江社長や宮内取締役のパソコン内に、上記の立会外取引の売り手(村上ファンド含む)との間に、事前に売買の約束を記録したメールが残されていたら一大事だ。各ファンドがライブドアの代理で、ニッポン放送株を買い集めていたことになるからだ。

このメール(証拠)があれば、フジテレビとライブドアの裁判でもフジテレビが勝訴していただろう。(裁判では立会外取引の違法性を立証できなかった)

いまさらニッポン放送の株取得は無効にはならないだろうが、
これが東京地検特捜部が狙うライブドア事件の本丸であると予想する。


時間外取引、村上ファンド、顧問弁護士解任の舞台裏(立花 隆)
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050325butaiura/index1.html




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【その11】デジキューブ

2006年01月20日 | Weblog


コンビニ向けのゲーム専門の問屋としてスクウェア(現スクウェア・エニックス)が設立。また、キオスク端末での音楽配信事業も実施。

ゲーム会社→玩具卸問屋→小売店  という既存の流通に対し、
ゲーム会社→デジキューブ→コンビニ   という新しい流通を作ろうとした。


当時、ゲーム業界は任天堂系の問屋(初心会)がほぼゲームソフトの流通を仕切り、小売は初心会の言うがままにされていたが、そんな初心会主導のゲーム流通を変えようという改革路線がデジキューブが流通業界の内外から注目された理由だ。

倒産の主要因は、キオスク端末向けの音楽配信事業の失敗と発表されたが、ゲーム流通事業も赤字が膨らむ一方だったという。

ゲーム流通の赤字の原因は、巨大なコンビニ販路と引き換えに大幅に減った利益幅と、初心会とか異なり在庫の返品を受け付けていたために、コンビニ側でリスクなく過剰出荷を要求できてしまったことだろう。また、ゲーム不況と時期も重なりファイナルファンタジー以外にはろくなヒット作も出なかったことも響いたはずだ。

一方で、音楽配信やタレントのプロマイド発売への参入を発表したことで、利害関係者と思われる団体から会社に銃弾を打ち込まれたり、いろいろな面で話題を振りまいた会社であった。

しかし、デジキューブのゲーム流通事業は、その後プレイステーションドットコムやセブンドリームドットコムなどを生み出すノウハウとして蓄積されたため、ゲーム業界やコンビニ業界をIT化に進めた影の立役者とも言われる。


関連記事
デジキューブ、自己破産を申請
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20031126/digicube.htm




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【その10】Yahoo!モバイル

2006年01月19日 | Weblog


Yahoo! JAPANの圧倒的な知名度と優位性がありながら、いまだDoCoMoやAU、vodafoneの公式メニューの牙城を崩せていないばかりか、非キャリアサイトの中ですらNo.1を名乗ることも覚束ない現状は明らかに失敗といえる。

Yahoo!モバイルの利用者が爆発的に増えなかった原因はコンテンツ不足に尽きる。

PC、Mobile問わずYahoo!のサービスモデルはコンテンツプロバイダ(以下CP)から買った情報をユーザーに「無料」で閲覧させ、そこで稼いだページビューで広告収入を得ることだが、Yahoo!モバイルには一つ誤算があった。

有力なコンテンツを持つ会社ほど、モバイル無料サービスへは情報提供に非協力的であったことだ。
理由は簡単で、PCサイトで無料配信している同じ情報が携帯では「売れる」からだ。

例えば、各新聞社はPCのサイト上で無料で記事を閲覧させているが、携帯電話では同じ記事を月額200~300円の情報料で販売している。

この小額決済は携帯電話の通話料と一緒に行うからこそ可能であるのだが、Yahoo!オークションとYahoo!BB会員以外へは課金手段を持たないYahoo!は、モバイルで特定多数向けに有料情報サービスを行うことはもともと不可能だったのである。

したがって広告収入に活路を見い出すしかなかったが、サービス開始から5年が経過した今日に至ってもメニューがたいして増えないことから、CPとの交渉、説得が不調に終わったと結論付けて問題ないだろう。

昨年10月にYahoo!モバイル内に「Yahoo!コンテンツストア」を開設すると華やかな記者会見内で発表された。

着メロ、占い、電子書籍など約60社、120種類のコンテンツが用意され、Yahoo!はプラットフォームとして決済の回収代行を担当するという。
いよいよYahoo!モバイルもコンテンツ課金ビジネスに本腰を入れるとうことらしい。

しかし、このYahoo!コンテンツストアの誕生は、モバイル上での無料サービスおよび広告ビジネスをYahoo!が諦めた象徴的な出来事といえるだろう。

2006年11月にナンバーポータビリティが始まれば、確かにダウンロードしたコンテンツを他キャリアの携帯電話に持っていったり、共通して使えるメールアドレスの需要はあるかもしれない。

しかし、仮にCPが端末のコンテンツ移行を許したとしても、その役割を果たすのはYahoo!ではなく、miniSDカードなどの記録メディアとなるであろうし、携帯版Yahoo!メールについても、Yahoo!メールアプリの対応機種が現時点でこの程度の数では、消費者を馬鹿にしているといわざるを得ない(携帯でWEBメールというのも論外である)。



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【その9】GAZOO(トヨタ)

2006年01月18日 | Weblog


まだサービス自体は継続しているようだが、開始当初に比べると、
まったく存在感も話題性もなくなってしまったという点で、失敗百選入りさせた。

次期社長候補の一人である豊田家の御曹司が2000年にGAZOOについて
収益事業にするということではなく,責任を持つということです。
などと発言しているあたりから先行きの暗さを読み取れたのかもしれない。

もともと総合的な商品を扱うECサイトとして立ち上がったにもかかわらず、
現在は自動車の資料請求サイトの体裁に成り下がっている(失敗を隠している)。

主原因は上記豊田章一郎氏の「収益事業にすることではない」発言に集約されるだろう。
人間や会社は設定した目標以上の結果を出すことはできない。

GAZOOは世界有数の資金力を持つ大企業がネットサービスで失敗した事例として
米国からももっと議論されるべきだろう。


【サービス名称】GAZOO
【URL】http://gazoo.com/
【サービス概要】インターネットによるアクセスだけではなく様々な場所で利用できる
   「車でインターネット」のコンセプトで売り出そうとしたサービス。
    カーライフを始めとしたさまざまな情報提供をするトヨタの総合Eコマースサイト。
【参考記事】
  Gazoo事業はとんとんであればいい~トヨタ取締役 豊田 章男氏
   http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/NC/ITARTICLE/20001130/2/



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【その8】クリック保障型広告

2006年01月17日 | Weblog
クリック保障型広告とは、消費者がクリックするごとに広告主から媒体サイトに広告料が支払われる広告。

広告の効果があるのかが不明確なバナー広告に比べ、確実にトラフィックを誘導できることが評価され、クリック保障型広告市場も拡大した。

しかし、

・自己クリック(明らかに不正だと思われる同一人物からの大量のクリック)
・クリックはするが何もしないで帰ってしまうお客の急増(物を買わないし会員登録も資料請求もしない)
・アフィリエイト広告(物が売れなければお金を払わなくてもよい)の登場

などを理由に広告主から敬遠されるようになり、WEB広告の表舞台からはほぼ姿を消す。

ただし、現在もモバイル広告においてはクリック広告は快調で、DoCoMoの公式メニューのランキング上げを目的とした「順位上げ」と呼ばれる携帯クリック保障広告は相変わらず売れている。

ケータイのキャリア公式メニューはユニークユーザー数で表示順位が決まり、且つ表示順位で上に行くことが最大の集客方法であるため、買おうが買うまいが集客さえしてくれれば目的達成と考える広告主がまだまだ多い。

しかしキャリアのランキングのロジック変更という大きな事件が起きる場合は存在意義が問われることになるだろう。

主流となるネット広告の移り変わり
 バナー広告
  ↓
 クリック保証型広告
  ↓
 アフィリエイト広告
  ↓
 ???



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【その7】2003年までのYahoo!ショッピング

2006年01月16日 | Weblog


最近はモール事業でようやく楽天の背中が見えてきた感もあるYahoo!ショッピングだが、2003年までは利用者から見てまだまだ魅力に足らないモールであった。

2003年までのYahoo!ショッピングはオンラインやリアルで実績のある優良店舗のみしか出店を認めない「少数精鋭主義」をとっており、店舗数、商品数ともに「来る店拒まず」の楽天を大幅に下回っていたからだ。(Internet Watchの記事によると、2003年5月の時点で、Yahoo!ショッピングは231店舗、商品数は約141万品目。一方の楽天市場の当時の取扱い商品総数は約220万点。)

当時、インターネット利用者にとって、情報量が多ければ多いほど良いのか、またはノイズの少ない激選された情報のほうが良いのかは賛否が分かれていた。Yahoo!ショッピングの伸び悩みが、前者が求められているのではないかという結論を導くひとつの材料になった。
「フリーワード」「絞込み」「価格順並び替え」という検索技術が発達したインターネットの世界では、商品点数は多ければ多いほど良いのだ。

楽天に売上げで差を広げられた状況を見れば、Yahoo!が少数精鋭主義からの方向転換をもっと早い段階でとることもできたはずだが、2003年までまったく進まなかった理由としては、その少数精鋭主義こそが楽天との最大の違いとして強調されていた点と、少数精鋭に選ばれた既得権を持つ店舗側からの市場開放への圧力があったのではないかという点が考えられる。

もうひとつ、Amazonや楽天は同一商品の新品商品と中古品がうまく連動しているが、Yahoo!ショッピングは規模が10倍あるYahoo!オークションとはまったくと言って良いほど連動していない。Yahoo!のような大企業になると悪い意味でのセクショナリズムが出てきているのではないか。

店舗側はYahoo!ショッピングとオークション双方への同時申込みが可能となっているが、サービス自体はまだまだ別のものだ。今後利用者側から見たYahoo!ショッピングとYahoo!オークションの統合が実現されるといよいよ楽天の牙城も崩れるのではないかと考える(というか、オークションの取扱高を足せばすでにYahooo!が楽天を圧倒的に超えている)。

また、Yahoo!の社員が手で登録していたYahoo!検索が、ロボット型のGoogle検索に事実上、敗れてYSTに移行したことも本件と酷似しているので近いうちに取り上げたい。


【参考記事】
ヤフー、「Yahoo!ショッピング」の出店枠を拡大。商品数で国内トップ目指す
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0513/yahoos.htm



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【その6】切込隊長BLOG(ブログ) ~俺様キングダム~

2006年01月13日 | Weblog


ネットビジネスというくくりで語っても良いのかわからないが、
間違いなく日本のEコマースに影響を与えた情報サービスだろう。

Eコマース企業がこれからブログを導入していくに際して、
俺様キングダムのような人気ブログを研究するのは当たり前のこと。

この作者である切込隊長氏は、資産数百億円をはじめとした華麗なる経歴を紹介されていたが
実はその経歴に疑惑がもたれているらしい。

嘘をつくのは良くないことだが、ポイントはこの作者が「自作自演」テクニックを使ったという点だ。
マーケティングの観点からは、自作自演それ自体は悪いことではないからだ。
(もっともそれが自作自演だとバレることは悪である)

例えば、渋谷の女子高生に謝礼を渡して商品サンプルを使ってもらい、
学校でその商品を褒めちぎってもらうというマーケティング手法は有名だが、
これは企業による「自作自演」ともいえる。

安っぽい物を立派な物に見せる、悪い物を良い物に見せる、
黒いものを白く見せる--。それがマーケティングの基本である。

山本一郎という安っぽい人間(失礼)を「切込隊長」というブランド名で世に売り出し、
数年もの間そのブランド力を維持してきたその力は、
間違いなくマーケティングのプロに匹敵し、賞賛に値する。
売れっ子芸能人でも2年も持たないことを考えれば充分な期間だ。

ネット上の自作自演によりブランドを形成するマーケティング手法を
「切込マーケティング」と命名したいくらいだ。

切込氏の失敗の要因は、言わずもがな、口コミの情報操作をしていたことが発覚してしまったことだろう。
マーケティングはそれがマーケティングであると消費者に察知されてはいけない。
特に商品スペックの誇大広告的な告知は絶対に自社(自分)で行ってはならない。

以前切込氏が
「型落ちして在庫過剰になったデジカメをアルバイトを使った
 ネット上の口コミ(自作自演)を大量に行ったことで完売させた」
という日経ビジネスの記事があったが、まさにそのようなマーケティング力を企業は求めている。(仮にそのデジカメの話が事実でなかったとしても、である)

かくして切込隊長というブランドは、消費者からはそっぽを向かれ地に落ちたが、
人間・山本氏は数年後、消費者がこの事実を忘れても良いと思い始めた時効成立時に、
「切込隊長」とは別ブランド、且つ、自作自演とは別のマーケティング手法で復活することであろう。


企業が注目するブログ、そのブログの大手の一角がひとつの役割を終えたのであえて取り上げた。



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【その5】キュリオシティ(三井物産)

2006年01月12日 | Weblog



大手商社の三井物産が始めたサービス。
昔はモールといえば楽天かキュリオかと言われたほどサービス開始時期は早く、
鳴り物入りでスタートした事業であった。

今やそんな二つのサービスを比べる人もおらず、
2005年にひっそりとYahoo! JAPANに買収されて幕を閉じた。
(買収金額は1億円少々なので、パソコン、机や人員、取引先などの資産を
 タダ同然で引き取ってもらったと見るべきだろう)

さて、失敗の原因は、商社の人間には消費者向けビジネスが創造できなかったと言えばそれまでだが、
要はモールにとってお客様は、店舗側なのか利用者側なのかを履き違えたということだろう。


1、売れもしない時期から、店舗側の参加料金が高かった(三井物産だから契約が取れた)。
 この高い料金設定が「お客様とは、利用者ではなく店舗です」のようなスタンスに陥ったのだ。

2、店舗側ばかり向いた結果として、利用者からみて画面遷移等がわかりずらく使いにくいまま改善されなかった。

3、その結果として、リピーターも増えず、ブランドイメージも浸透しなかった。楽天が独走した。
 (IT業界以外でキュリオシティって知ってる人います?)



【参考記事】Yahoo!、キュリオシティを買収
  http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0503/31/news061.html



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【その4】Lモード(NTT)

2006年01月11日 | Weblog


NTTがNTTドコモ「iモード」の二番煎じを狙ったiモードの固定電話版サービス

家庭の電話機から情報閲覧・メール利用ができるというもの。

2000年当時は"iモードは儲かる"という声もあって、
このLモードにも期待が集まり、私もCP(コンテンツプロバイダ)として説明会に参加してしまった。

携帯電話に続く新しい情報の窓口ができるものと期待したがまったく普及しなかった。

不振の理由
1、WEB/メール機能搭載の携帯電話を一人一台持つ時代にLモードのニーズはなかった。

2、電話機の買い替えが必要であった。
  (わざわざ買い換えてまでほしいサービスではない)

3、認知不足。


NTTとしては失敗の原因は電話機端末の売価が高かったことや
コンテンツ不足と言いたいところだろうが、これはやはり
NTTが単にiモードの二番煎じを狙っただけの短絡的な戦略が
原因だろう。

しかし私はこのサービスは流行するのではないかと当時思ってしまった。
NTTが莫大なTVコマーシャルを流し、一家に一台Lモード対応電話機が普及する
主婦やお年寄りが操作するという日本の家庭の姿を
想像してしまった。実現には至らなかったが……。





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【その3】イーベイ (ジャパン)

2006年01月10日 | Weblog



1、サービス開始が遅れた。
2、金を払う価値がない(コミュニティが成熟していない)時期から有料制にした。
3、自らの成功体験に固執した。

以下、すべて栗潔氏の記事(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/0203/11/02031188.html)からの引用



イーベイの日本進出はヤフーに遅れるところ5カ月だったが,この5カ月が取り返しのつかない失敗の原因となってしまっというわけだ。

 また,ヤフージャパンが無料制で会員数を伸ばす中,イーベイジャパンは米国と同じ有料制に固執し,キャッチアップできる唯一の機会を逃してしまった。その後,2001年に無料制を採用したがあまりにも遅すぎた。既にコミュニティの価値で大きな差をつけられてしまったからだ。

 それは,イーベイが米国であまりにも成功しすぎたがゆえに,チャレンジャーとして戦うことに慣れていなかったためだろう。つまり,同社は,自らの成功体験の犠牲となってしまったわけだ。ガートナーのレポートにおいても,業績が悪化した企業の原因分析に,「victim of its own success」という表現が頻繁に登場する。

 例えば,前述の有料制の問題にしても,ヤフージャパンが先行者,無償サービス,(日本国内における)知名度という点で圧倒的に有利な状況の中で,イーベイ側がさしたる策を採らなかったのは,米国ではヤフーが無料オークションを提供していながら,最初から有料制であったイーベイが勝利を収めたという成功体験から来た驕り以外の何者でもないだろう。

 このような教訓は,成功の後に新規市場に進出しようとするあらゆる企業に当てはめられるだろう。例えば,iモードの海外展開を進めているNTTドコモなどだ。個人的には日本発のテクノロジーとして,iモードには成功してほしいと思っているが,そこで,最大の障害となるのは,ドコモ自身の日本での成功体験ではないかとも考えている。




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