インターネット失敗百選

ECコンサルタントがネットサービスの失敗事例を1日1個紹介しそのメカニズムを解剖。中尾政之著「失敗百選」のパロディです。

【その16】イーウーマン

2006年01月30日 | Weblog


ewoman
http://www.ewoman.co.jp/

佐々木かをり氏が設立した有名な女性サイト。
iモード生みの親・松永真理氏が経営に参画したことでさらに注目された。
2006年1月現在、会社・サイトともに存続しているが、他の女性系情報サイトと同様にインターネット業界においてまったく存在感はない。

資本金を8億7190万円も調達し、2000年、2005年と二度もITバブルを経過しておきながら
いまだに株式上場をしていないし社会的に一定のポジションを得ていない状況は、
大企業の戦略的子会社という位置づけでもない限り許されないのではないか。
少なくとも億単位で出資した者に対しては利益配分をする時期に来ているだろう。

当時、佐々木氏が掲げた「働く女性のためのサイト」というコンセプトは
誰もが認めるすばらしいものであった。

そして、無料の情報系サイトが相応の収益をあげるために必要な事業

・企業からお金を取る。
>広告
>リサーチ
>求人
>コンサル

・エンドユーザーからお金を取る。
>情報料
>物販

のうち、企業からお金を取るビジネスはほぼすべて実施しているようだ。

決算発表をしていないのではっきりしたことは言えないが、
現時点でもほぼ完璧なビジネスモデルであるように見える。

佐々木かをり氏や松永真理氏の個人的な能力を抜きにしても、
億単位での出資者が出現した理由もわかる完璧な(ようにみえる)ビジネスモデルだ。


ではいったい何がいけなかったのか。


1、コンテンツが魅力的でない点
筆者は女性ではないが、コンテンツが充実していない(金もかかっていない)ことは見ればすぐにわかる。少なくとも毎日見に来る性質の情報は皆無だ。
ほとんどのコンテンツは金で買えるが、それをしていない。
女性向けの株価情報など行っていれば証券口座獲得などの広がりも出てきたのではないか。

2、物販をやらなかった点
女性系サイトと相性の良いといわれるクライアントは、化粧品や健康食品、ファッション系である。しかし、これらの広告主は、ページビューの総量に対して広告料を払うので、ポータルサイトなど男女かまわず大量にトラフィックを消費させる「質より量」のサイトのほうが有利である。

イーウーマンのように顧客(ページビュー)を限定して優良会員を抱いこんでいるサイトであれば、1ページビューあたりいくらの広告よりも流通・小売を展開したほうが利幅も大きいはずだ。化粧品や健康食品は粗利が40%を越える商品も多いと聞く。


3、実はターゲットが「金を使わない」女性層だった点
上記2で女性系サイトといえば、コスメ、レディースファッションと書いたが、
イーウーマンの場合は冠に「働く」をつけている(働く女性のためのサイト)。

イーウーマンの対象がキャリアウーマンであり、17時に帰社するOLではない点だ。
キャリアウーマンと事務系OLとで、消費活動をどちらが多く行うかといえば、彼氏のためにダイエットをし、オシャレな洋服を買い込み、流行のお店で食事をし、小奇麗なブティックホテルを探す事務系OLであることは明白だ。
現にそういったOLを相手に商売をしているオズモールは比較的成功している。


4、営業マンの力不足
イーウーマンの社員を直接知っているわけではないので想像の域を出ないが、上記1、2については、クライアントに近い位置にいる営業マンから社内に対して改善提案が出るのが普通の会社である。また、これだけ知名度のあるサイトであれば、中身がなくても無理やり広告を取ってくる辣腕の営業マンがいてもいいのではないか。
女性サイトだからといって男性社員の採用に消極的になってはいなかったか。
(男性のほうが優秀という意味ではなく、社員の採用の段階で男性応募者との競争が正しく行われてたか)


5、資金の有効活用ができていない点
10億円近い資金を集めておいて、その資金の行き先が不明な点。イーウーマンはこれまでいったい何に投資してきたのか(私は株主でもないので追求する立場にはないが)。
業績良好という噂をまったく聞かないにもかかわらず、いままで会社が存続していることから、資金はすべて家賃と給与という会社のライフラインのために温存し、前向きな投資を怠ってきたのではないか。


6、松永真理氏の退任
佐々木かをり氏とソリが合わなかっただけのか、沈没しそうな船に乗り続けるのは自身のキャリアに傷が付くと判断したのかはわからないが、松永真理氏の退任はいただけない。

入社時に記者会見まで行ったのだから、上場企業でなくても退任時には明確に理由を述べるべきであったであろう。松永氏の退任そのものが悪影響を与えたとは思えないが(むしろ高額な人件費が減って良かったのかもしれない)、松永氏退任を契機に佐々木氏のワンマン体制がさらに進んだのではないかとみている。それが今のイーウーマンの状況悪化を招いたのだ。

余談だが、松永氏の退任は、松永氏本人にとっても大きなマイナスであったと思える。iモード立役者としての功績が「単に勝ち馬に乗っただけ」という批判にさらされるからだ。

いずれにしても、今のままでは強力なパトロンがついているから店がつぶれない銀座のママに近い印象を受ける。



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