殺された蛾の冒険

＊殺された蛾の冒険

『ナポレオンの剃刀の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1945年）

The Adventure of the Murdered Moths


☆登場人物

　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）…… 同上
　セス・ブラウン（Seth Brown）……レストランの主人
　ジェス・ペンドルトン（Jess Pendleton）……おそらく花婿になる青年
　ヴァージニア・ウェンダー（Virginia Wender）……おそらく花嫁になる娘
　ウェンダー（Mr. Wender）……その父
　モートン・ピングル（Morton Pingle）……婦人服の卸売業者


☆事件　

　ドライヴで道に迷い、暮れなずむ中立ち往生のエラリイ一行。やむなく行き当たったセス・ブラウンのロードハウスで夕食を待っていると、ジェスとヴァージニアの若いカップルが声をかけてきた。結婚式の証人が必要なのだという。快諾し、祝福する4人。
　ところがそこへ娘の父親のウェンダーと、袖にされた婚約者のピングルが乗り込んできて恋人たちを引き裂こうとする。しかもヴァージニアの年齢詐称が暴露され、駆け落ちは失敗に終わる。ウェンダーはジェスを馬の骨呼ばわりし、財産目当てだろうと侮辱する。そしてしばらく旅行にでも出してしまえば娘の気持ちも変わると言い放って、彼を怒らせる。
　結局、その晩はエラリイらとヴァージニア父娘、ピングルの7人はロードハウスに泊まることになった。しかしエラリイとニッキーは心配で休む気になれず、ウェンダーの部屋も煌々と灯がついたまま。案の定、憤激のあまり一旦はその場を去ったジェスが戻ってきてピングルと乱闘になり、熟睡していた警視とヴェリーまで叩き起こしてしまう。何とか取り押さえたエラリイは気がついた。ひとりだけ、この騒ぎにも関わらず現れない人がいる――果たせるかなウェンダーはベッドの中で、ガスにまかれて死んでいた！
　現場には同じく窒息した蛾の死骸が5つ。エラリイの目がらんらんと輝きだした。

(Ｍatorjiska)

ショート氏とロング氏の冒険

＊ショート氏とロング氏の冒険

『ナポレオンの剃刀の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1943年）


The Adventure of Mr. Short and Mr. Long

☆登場人物
　
　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……同上
　ナポレオン・ショート（Napoleon Short）……「20パーセント王」
　ジョナサン・ロング（Jonathan Long）……ショート氏の使用人
　電報配達人（Telegraph messenger）
　石炭運搬人（Coal Man）


☆事件

　クイーン警視は、高率の配当を謳い文句に大衆から金を集めている「20パーセント王」ことナポレオン・ショートを出資詐欺の容疑で逮捕すべく、ヴェリーが見張っている相手の家へ急いだ。ところがショートは感づいたのか、玄関先で空模様を気にするそぶりを見せたあと中へと引き返し、15分経っても出てこない。痺れを切らして突入すると、そこには使用人がひとりいるだけで、ショートは忽然と消え失せていた。必死に探し回る警官隊、しかし、どこにも隠れている様子は無い。
　頼みの知恵袋は風邪をひいて禁足状態。やむなくいったん帰宅した父親から相談を受けたエラリイは奮い立つ。「シャーロック・ホームズはこのケースでは失敗した。僕らはもっと運がいいかもしれないよ」
　かくしてアメリカ版ジェイムズ・フィリモアとの対決の火蓋が切って落とされた。


☆コメント

えー、ご覧のとおり『シャーロック・ホームズの災難』（1944）収録の「ジェイムズ・フィリモア氏の失踪（The Disappearance of Mr. James Phillimore）」の元ネタです。登場人物のネーミングが違うほか、エラリイがホームズ譚を引き合いに出すシーンが割愛されている以外は全く同じストーリー進行。

(Ｍatorjiska)

ジェイムズ・フィリモア氏の失踪

＜暗雲＞号の冒険

＊＜暗雲＞号の冒険

『ナポレオンの剃刀の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1940年）

The Adventure of the Dark Cloud

☆登場人物

　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　マーガレット・ヴァレンタイン（Margaret Valentine）……社交界の花形
　パーシー・ヴァレンタイン（Percy Valentine）……その弟
　ヴァレンタイン（Mr. Valentine）……「1929年の大富豪」
　アルフレッド・クロケット（Alfred Crockett） ……その義兄　
　バイ船長（Captain Bye）……≪暗雲≫号の船長
　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……同上


☆事件

　黄金の陽光、紺碧の海。富豪ヴァレンタイン一家のゴージャスな週末。エラリイら4人は要請を受けてその集まりに加わっていた。招いたのは姻戚で、自身もダイヤモンドで一山当てたクロケット老。警視は密かにその真意を問い質したが、クロケットは言葉を濁し、ただあらゆることに気を配り、感じたことを伝えて欲しいとのみ答えた。
　一行が乗り込んだ≪暗雲≫号ではパントマイム合戦が行われていた。それぞれ自分と同じ名前の作家の作品を身体で表現し、他人に当てさせるもので、例えばマーガレットなら『風とともに去りぬ』という趣向。だがクロケットは参加せず、折りしも海が荒れ始めてゲームはお開きになる。
　夜、船酔いで眠れないエラリイたちのところへ船長のバイが駆け込んできた。キャビンに転がるクロケットの射殺体、そして傍らには録音機。再生されたのは故人の最新の遺言だった。曰く、ヴァレンタイン一家は恥知らずの詐欺師で、すでに破産しているにもかかわらず未だ裕福を装って自分を安心させ、あわよくば財産にありつこうとしていると非難。だが宝石の類は全て銀行で厳重に守られていると言いかけた直後に銃声がし、「宝石！　宝石！」と叫ぶ声で録音は終わっていた。
　一家の財政破綻は船長の証言で裏付けられたが、犯人は誰かとなると決め手が無い。捜査は暗礁に乗り上げたかに見えた。そんな矢先、現場を見張っていたヴェリーが何者かに襲撃され、証拠の音声記録を抜き取られてしまう。
　エラリイは躍り上がった。「大丈夫！　本物は僕が保管してたんだ。そして誰が犯人だか判ったぞ！」

(Ｍatorjiska)

忘れられた男たちの冒険

＊忘れられた男たちの冒険

『死せる案山子の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1940年）


The Adventure of the Forgotten Men


☆登場人物
　
　マンハッタン（Manhattan）……ホームレス
　カンサス（Kansas）…… 同上
　カリフォルニア（California）……同上
　ディキシー（Dixie）……同上
　ヤンク（Yank）……同上
　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……同上
　サディアス・V ・タイタス（Thaddeus V. Titus）……威張りちらす金満政治家
　マック（Mac）……ガードマン


☆事件

　男が殺された。彼は死ぬ1週間前、現場付近に屯する4人組のホームレスとトラブルを起こしていた。信義を裏切ったため、加わったばかりの仲間から叩きだされたのである。その際、自分が泊っていたバラックにもう一度だけ戻りたいと懇願したが、すげなく追い返されるという経緯があった。
　折もおり、その界隈ではスリの被害が多発していた。そして例のトラブルがあった頃、金持ちの政治家が高価な指輪をポケットから抜き取られるという事件が起きていた。
　被害者の目立って長くきれいな人差し指に注目したエラリイは言う。「この男が指輪を盗んだ犯人だ。そして獲物をあのバラックに隠したに違いない」
　だが推理どおりに政治家の札入れは見つかったものの、肝心の指輪は影も形もなかった。
　指輪はどこに？　そして殺人者は誰か？


(Ｍatorjiska)

黒衣の女の冒険

＊黒衣の女の冒険

【ラジオドラマ】（1940年）

『死せる案山子の冒険』（論創社）所収

The Adventure of the Woman in Black


☆登場人物

　フィリップ・ジャーニー（Philip Jurney）…… イギリス人の小説家
　ノーマ・ジャーニー（Norma Jurney）……その妻
　ランシング博士（Dr. Lansing）……ジャーニーの専属医師
　オージルヴィー（Ogilvie）……ジャーニー家の友人
　テベッツ（Tebbetts）……ロンドンっ子
　ジョン・キース（John Keith）……ジャーニーの片親違いの弟
　クレメンス・ハル（Clemence Hull）……ジャーニーの妹
　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……同上


☆事件

　「黒衣の女」は死の前兆――仕事中毒の小説家ジャーニーは、友人のランシング医師から銃を取り上げるといきなりサマーハウスに向けて発砲した。窓際に黒い服を着た女が佇んでいたのだと言う。それは彼の一家に代々ついて回る不吉な存在で、その姿を三度見た者には必ず死が訪れるのだ。
　話を聞いたエラリイはすぐに行動を起こした。問題の屋敷を訪れ、調査を始める。夫の容態を気遣う妻、疲弊した神経の産物だと主張する医師、伝説は正しいとの見解を曲げないもうひとりの友人、そして屋敷の持ち主である彼の弟妹。亡霊は実在するようであり、そうでないようでもあった……サマーハウスの壁には弾痕が残っており、もしそこにいたのが血肉をそなえた存在なら、確実に仕留められていたはずだから。エラリイはニッキーをタイピストとして住み込ませ、同時にヴェリーを護衛につけた。まもなくジャーニーが再度女を目撃し、恐怖のあまり心臓発作を起こして倒れる。
　その晩、興奮したジャーニーから電話がかかってきた。読書中に不意に霊感がひらめき、その瞬間、一連の騒動のからくりが解ったのだと叫ぶ。だが会話は悲鳴とともに途中で断ち切られた。エラリイは急いでジャーニーの安否を確かめるが、すでに時遅く、彼の死がニッキーによって伝えられた。
　エラリイは故人が直前に読んでいた『オスカー・ワイルド短編集』を手がかりに推理を進める……

(Ｍatorjiska)

死せる案山子の冒険

＊死せる案山子の冒険

『死せる案山子の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1940年）

The Adventure of the Dying Scarecrow

☆登場人物

　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……同上
　パパ・マシュー（Paw Mathew）……農夫
　ママ・マシュー（Maw Mathew）……その妻
　ジョナサン・マシュー（Jonathan Mathew）……その息子、登場せず
　ジェッド・ビゲロウ（Jed Bigelow）……その使用人
　ホーマー・クレイ（Homer Clay）……農夫
　ジュリー・クレイ（Julie Clay）…… その妻
　ハークネス（Dr. Harkness）……医者
　その他看護婦、ウェイトレス（Nurse, Waitress）


☆事件　

　美しい農場の風景に誘われ、嬉々として16ミリカメラを回すエラリイの視界に突如飛び込んできた青年――彼は開口一番、「案山子が血を流している！」と叫ぶ。一行が駆けつけてみると、それは実際には杭に縛りつけられた人間で、刺されてひどく負傷していたがまだ息は残っていた。エラリイは病院に連絡し、搬送の手配を整えるとともに被害者の顔写真を撮って聞き込みを始める。だが農場の関係者はそろって心当たりがないと証言し、その上意識を回復した怪我人が病室を脱走するに及んで、案山子男事件は迷宮入りとなる。
　5ヵ月後の12月。とある市役所の元判事から案山子男に関する情報が寄せられた。早速出向く一行。ところが一足遅く、元判事は彼らの到着を待たず急死してしまった。その帰り道、事のついでに件の農場に立ち寄った彼らは、道路が雪で埋まって動けないせいもあって一夜の宿を借りることになった。その晩、眠れずにいたニッキーはふと窓の外に目をやり、悲鳴を上げる。庭の雪だるまの胸が真っ赤に染まっていたのだ！　そして中にはあの案山子男の死体が……


☆コメント

30分ヴァージョンの邦訳を持っていますが、キャラクターの名称が違うだけで、ストーリー構成は同じです。ただ、短い方は余分なセリフや描写が刈り込まれているためあっさり風味。長編の悲劇的なムードは感じられませんでした。実際、かなりブルーでグルーミー。どっちが好みかは人によって分かれるでしょう。
ついでに“The Adventure of The Scarecrow and the Snowman”の登場人物リストも上げておきます。EQ1999年1月号より。

　エラリー・クイーン　……　探偵
　リチャード・クイーン警視　……　エラリーの父
　ニッキー・ポーター　……　エラリーの秘書
　ヴェリー部長刑事　……　警察官
　ヨシュア・ブレン　……　農夫
　ジョシイ・メイフィールド・ブレン　……　ヨシュアの妻
　パパ・メイフィールド　……　ジョシイの父
　ママ・メイフィールド　……　ジョシイの母
　ジェンキンズ医師　……　医者
　案山子男（スケアクロウ・マン）　……　謎の男

(Ｍatorjiska)

ブラック・シークレットの冒険

＊ブラック・シークレットの冒険

『ナポレオンの剃刀の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1939年）

The Adventure of the Black Secret

☆登場人物　

　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……同上
　マイク・キャラハン（Mike Callahan）……ワールドワイド保険会社」の調査員
　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……アマチュア調査員
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　エドマンド・ブラック（Edmund Black）……「C・D・ブラック社」オーナー
　アブナー・ワトスン（Abner Watson）……その共同経営者
　バーベイジ（Mr. Burbage）……帳簿係
　キャスパー・ライデル（Casper Rydell）……「ブラック社」社員
　フランダース（Miss Flanders）　　　　　　　　 　 　　同上
　その他警察官、顧客、髭を生やした男（Police officer, customer, bearded man）


☆事件

　警視の元部下で、現在は保険会社の調査員を務めているキャラハンがクイーン家を訪ねてきた。稀覯　　本取扱業の老舗C・D・ブラック社を調査中なのだが、そこの古参社員がエラリイと面会の約束を取り付けたのを知って、自分もその場に同席させてほしいと頼みにきたのだ。
　現れた帳簿係のバーベイジは、高価な古書の紛失が頻繁に起きていると訴えた。だがオーナーのブラックは経営に身を入れず、共同経営者のワトスンに全て任せきりなのだという。しかもバーベイジは明かそうとしないが、さらに重大な秘密が隠されているらしい。かくしてエラリイとキャラハンはブラック社の秘密を解明すべく、それぞれのルートで乗り出すことになる。
　早速エラリイはニッキーと一緒に書店へ向かうが、とんだハプニングで本泥棒に間違われる始末。警察まで連れていかれてようやく身の証を立てることができたが、キャラハンに対して完全に出遅れる。その矢先、ワトスンが何者かに射殺された！
　残された血文字“Black's secret”は何を意味するのか？　エラリイとキャラハンの決着の行方は？

(Ｍatorjiska)

ナポレオンの剃刀の冒険

＊ナポレオンの剃刀の冒険

『ナポレオンの剃刀の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1939）

The Adventure of Napoleon’s Razor

☆登場人物
　
　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　ジョージ・ラサム（George Latham）……セールスマン
　スミス、ジョーンズ、ブラウン（Smith, Jones, and Brown）
　……小賢しい一団
　リリー・ドッド（Lili Dodd）……映画女優
　ヘンリー・スタイルズ夫妻（Mr. and Mrs. Henry Stiles）…… 新婚夫婦
　マルセル・コザール・グザンティップ・デュボア
（Marcel Cossart Xanthippe Dubois）……フランス人
　保安官（Sheriff）……テキサス州アマリロ郡勤務
　ハワード・マクナルティー上院議員（Senator Howard McNulty）
　……ミズーリ州議会議員
　リチャード・クイーン警視（Inspector Richard Queen）……　ニューヨーク市警察勤務
　トマス・ヴェリー部長刑事（Sergeant Thomas Velie） 同上
　その他タクシーの運転手、車掌、赤帽
　（Cab driver, conductor, porter）


☆事件

　サンタフェ駅。あと一歩のところで特急を逃したエラリイとニッキーはやむなく、直近の普通長距離列車でニューヨークへ向かう羽目になる。乗り合わせたのは宝石のセールスマン、人気に翳りが見え始めた映画女優、新婚旅行中の夫婦、エルキュール・ポアロのファンでナポレオンを専攻しているというフランス人教授、そして何やらいわくありげな三人組。
　教授が、ジョセフィーヌ皇后が夫に贈ったとされるお宝ものの剃刀をつい先ほど車内で紛失したと告白した後、セールスマンが行方不明になり、やがて他人の寝台で惨殺されているのが見つかる。凶器は件の剃刀。そして持ち歩いていたはずのエメラルドは影も形もなかった。
　その後、セールスマンというのは隠れ蓑で、彼は実は宝石泥棒だったことが判明する。
　一報を受けて、途中から捜査に加わった保安官とクイーン警視が車内を探し回るが、エメラルドはどこにも見つからない。例の三人組についても、いろいろ怪しい節が見受けられるものの、決定的な証拠が無い。足止めされて思うに動けない乗客の不満は募るばかり、おまけに女優の婚約者で、彼女の窮を知った州議会議員がわざわざ首を突っ込んでくるに至ってついに警視は大博打を決意する。
　奇策は成功するか？　終点のニューヨーク到着までに、事件は無事解決されるのか？

(Ｍatorjiska)

姿を消した少女の冒険

＊姿を消した少女の冒険

『死せる案山子の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1939年）

The Adventure of the Lost Child


☆登場人物

　ハーヴェイ・モレル（Harvey Morrell）……「ヘシアン・クロニクル」紙オーナー
　エルシー・モレル（Elsie Morrell）……その妻
　アリス・モレル（Alice Morrell）……モレル夫妻の娘
　アーサー・リヴィングストン（Arthur Livingston）……政治家
　ビル・フリン（Bill Flynn）……編集長
　ドーリー嬢（Miss Dorley）……モレルの秘書
　グリーシャ・ドルブニイ（Grischa Dorubny）……発明家
　シルキー・バレット（Silky Barrett）……ギャングの親玉
　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ニッキー・ポーター（Nikki Porter）……その秘書
　クイーン警視（Inspector Queen）……ニューヨーク市警察勤務
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……同上
　その他新聞記者多数（Newspapermen）


☆事件

　「ヘシアン・クロニクル」紙のオーナー、モレルのひとり娘が誘拐された。彼はその論調から政治家と激しく対立しており、また最近では収益分配率の問題で発明家と衝突していて、部下から身辺に警戒するよう忠告された矢先の出来事だった。
　たまたま、ニッキーと一緒にモレル邸を訪れていたエラリイは否応なしに渦中の人となってしまう。犯人が屋敷を見張っていることが予想されるので、迂闊には動けない。それでも何とか警視と連絡を取ることに成功、極秘裏に捜査を要請。予想どおり、報告では社屋付近をギャングがうろついているらしい。
　だが事態は急展開を見せる。身代金を持ってモレルが受け渡し場所へ向かった後、事件発生以来ずっとナーヴァスだった夫人が悲観のあまり、夫を追って飛び出してしまう。動転して駆けつける一行。そこで発見したのは、無惨にも撲殺されたモレルと、冷たくなった子供を抱きしめてヒステリックに泣き叫ぶ夫人の姿だった。
　周囲を検分したエラリイは言う。「誰が誘拐犯で殺人者か、僕は知っている」

(Ｍatorjiska)

死を招くマーチの冒険

＊死を招くマーチの冒険

『死せる案山子の冒険』（論創社）所収

【ラジオドラマ】（1939年）


The Adventure of the March of Death


☆登場人物

　エラリイ・クイーン（Ellery Queen）……探偵
　ヴェリー部長刑事（Sergeant Velie）……ニューヨーク市警察勤務
　クイーン警視（Inspector Queen）……同上
　サミュエル・マーチ（Samuel March）……金満家
　ジャスパー・ベイツ（Jasper Bates）……その秘書
　パトリック・マーチ中尉（Lt. Patrick March）……マーチの息子
　ロバート・マーチ（Robert March）……同上
　エドウィナ・フェイ（Edwina Fay）……ロバートの妻
　ロバータ・マーチ（Roberta March）……マーチの娘
　グレインジ侯爵（Marquis of Grange）……ロバータの夫
　フィッツロイ（Mr. Fitzroy）…… マーチの弁護士
　その他陸軍大佐、病棟勤務員、フィリピン・アルゼンチン・ペルー・モンテカルロ・プエルトリコ・フランス・アルジェリア・エジプトの各電話交換手、医者
（Army Colonel, orderly, Philippine, Argentinian, Peruvian, Monte Carlo, Puerto Rican, French, Algerian, and Egyptian telephone operator, doctor）


☆事件

　ニッキーが休暇旅行中で不在なためか、いつになく憔悴気味のエラリイ。気分転換に富豪マーチの呼び出しに応じてみる。世界各地に散らばったまま音信不通の子供たちと連絡を取り、ニューヨークへ連れ戻せという横柄な態度に反発はしたものの、好奇心が勝って引き受けることにしたエラリイは危篤と偽ってパトリック、ロバート、ロバータの三人とその配偶者らを帰国させるのに成功する。
　親子の再会は険悪をきわめた。騙されたことで最初から不満が燻っているところへ、さらにマーチが期待に背いたと難詰して追い討ちをかける。あまりの仕打ちに彼らは激昂して罵り返した。しまいに老人は遺言状を改めること、すなわち子供たちをいずれも相続から外し秘書のベイツを受益者にすることを宣言、弁護士だけを残して全員を退出させた。
　最悪の結果を恐れたエラリイは、ヴェリーにマーチ邸を見張るよう要請するが案の定、老人が殺されたとの知らせが届く。電話で出動を促してきた警視の声は困惑に満ちていた。被害者はダイイング・メッセージを残していたという――M・A・R・C・Hと！
　マーチだらけの関係者の中から、エラリイは“唯一可能な”犯人を見出せるのだろうか？

(Ｍatorjiska)