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天の時・地の利・人の和 ~理事就任・佐藤信行さんのご挨拶~

2019-06-02 19:50:43 | 日記
 この度、NPO法人縁パワーの理事を拝命しました佐藤信行です。私と理事長山田氏との出逢いは、妻が職を探していた時に副理事長の方より、元理事のKさんが主宰するカフェを紹介され、私が妻に付き添いカフェを訪れた時、店の片隅で妻と私の到着を待っておられた紳士が山田氏その人でありました。初夏の夕暮れ時、山田氏の語るNPO法人設立の主旨に私は深く共感しました。たまたま、カフェに貼られていた寺山修司の演劇公演ポスターをきっかけに、ボサノバのBGMが流れる中、山田氏と私の間で演劇談義が咲きました。その時山田氏の瞳は、私が遠い昔に師事した演劇の師匠と同じ瞳をしていました。



 私は、中学高校時代に登校拒否(不登校)をしていました。社会人になってからも心身を病み20代後半から30代前半まで数年間引きこもりをしていました。私が、少年期から青年期にわたる数度の社会不適応を経て社会復帰できたのは、その度に善い大人たちに出逢えたからです。演劇の師匠、教会の牧師先生、全寮制私立高校の先生、ミッション系大学の先生・・・。私は、善い大人たちとの出逢いに救済されたのです。善い大人たちとの出逢いが無ければ、間違いなく私は今でも引きこもりを続けていることでしょう。

 山田氏の瞳は、私の演劇の師匠と同じ瞳をしています。このタイミングで山田氏と出逢えたのは意味があると考えます。現在、山田氏は武蔵村山市でグループホームを立ち上げ、様々な事情を抱えている入居者さんの支援をしています。グループホームでは、定期的に誕生パーティーやイベント(カラオケ等)を催しています。妻と私は、度々誕生パーティーやイベントに招かれ、入居者さんたちと楽しい時を過ごして馴染みの関係を築くことができました。入居者さんたちは妻と私を温かく迎え入れてくれます。



 私が理事を拝命した理由は、恩返しをしたいからです。私を救済してくれた、善い大人たちに恩返ししたいからです。歴史の故事によれば、事を成すための大切な条件は、天の時・地の利・人の和の三つだそうです。このタイミングで武蔵村山市の山田氏に出逢えたことは、天啓であると私は捉えます。これから、善い大人たちから学んだことを縁パワーで役立ててゆきたいと思います。

 山田氏と私の出逢いを導いてくれた、元理事K氏と副理事長F氏に心から感謝します。

 理事 佐藤 信行

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優しさが仇となる時

2019-05-16 20:00:39 | 日記
「・・・寝てられないよ、私がこんなふうになっちゃって、お父さん(夫)や娘との関係がメチャクチャになっちゃったんだから・・・」。夜間、建物の中を徘徊し続ける認知症高齢者を、就寝させるべく居室のベッドに座らせた時に、彼女から言われた言葉です。

 「お父さん来る?・・・お父さん来る?・・・お父さん、いつ来るの?・・・」。しつこく、しつこく、一日中、職員に質問します。自分が望む答を得るまで、職員を掴まえて質問し続けます。「お父さん来る?」という質問は「お父さん来るよ」という答を得たいために発するものです。『お父さんが、私に会いに来る』という彼女の願い(世界観・妄想)を保障、承認してもらいたい承認欲求であると解釈します。認知症発症により、家庭崩壊を修正することは出来ないと知りつつも、一方で親子円満な家庭、お父さんは私のことが好き(世界観・妄想)を誰かに承認してもらいたい、闇の中で光を求める救いへの渇望と捉えます。



 男性職員が、彼女の世界観・妄想(親子円満な家庭、お父さんは私のことが好き)を肯定して、彼女の承認欲求を受容し「お父さん来るよ」と答え続けると、想定外のことが起こります。即ち、第三者的立場である職員が、彼女の欲求の対象(この場合お父さん)となり、結果として職員の優しさが仇となってしまうことです。徘徊、暴力、介護拒否という認知症の行動・心理症状は、認知症の心の痛みであると、私は解釈しています。存在を否定され続けた者の心の痛みの訴えです。私は、唯脳主義に寄って立つ者です。その人にとっての主観的真理(世界観・妄想)は、客観的に捉えて非現実的であっても、その人にとってはリアルです。その痛みを和らげるために、その人の世界観に飛び込み、主観的真理を共感する(妄想に寄り添う)ことが介護職員の務めと心得ていましたが、アプローチの仕方によっては事態を混乱させることをあらためて痛感しました。そもそも、私的な感情から発する優しさを職務に反映させる者はプロフェッショナルとして失格です。利用者と向かい合う時、特に精神疾患を患っている方の支援に私的な感情を交えないことは、基本中の基本です。それを怠ると、利用者のみならず、我が身さえも傷つけることになります。

しかし、現場に立つ者として同時に問いたいのは、主観的真理を共感するスキル以外に、その心の痛みを和らげるスキルはあるのでしょうか?

 「・・・寝てられないよ。私がこんなふうになっちゃって、お父さんや娘との関係がメチャクチャになっちゃったんだから・・・」。その一瞬、彼女の瞳は、確かに正気でした。

介護職員Aさんより

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ミラーニューロン

2019-05-04 04:26:50 | 日記
 映画やスボーツ観戦で、登場人物やブレーヤーの喜怒哀楽に感情移入することがありますね。これは、他人の身に起きた出来事を、我が身に起きた出来事として捉える作用「共感 エンパシー」です。介護や要支援者への支援に携わる者が、利用者さんに関わる(寄り添う)時、この力「共感力」が大切です。現場では、利用者さんの心の痛みを和らげるために、利用者さんの喜怒哀楽を共感することが支援者に求められる場合があります。



 共感力の脳の仕組みで、注目されているのが「ミラーニューロン」と云う脳神経細胞です。神経科学の研究では、他人の身体の動きを観た被験者の脳内で、自分が同じ身体の動きをした時と同様の活動電位が観察されるとのことです。例えば野球観戦で、ピッチャーがボールを投げた映像を観て、観た人の脳内でミラーニューロン細胞により、実際に自分がボールを投げた時に顕れる活動電位と同じ活動電位が顕れるのです。これと同様に、ドラマを観た時にドラマの登場人物の喜怒哀楽を共感する作用に、視聴者の脳内でミラーニューロン細胞が働いているとのことです。実際に自分の身に起きてないことでも、ミラーニューロン細胞により、自分の身に起きた如く心理的影響が作用されます。プラスの効果として「模倣学習」があげられます。霊長類人類はミラーニューロン細胞により進歩してきたと言えます。

 一方、マイナスの効果もあります。辛い体験をした要支援者に支援者が寄り添う時、要支援者の怒り・哀しみを、支援者が共感する過程で同じ怒り・哀しみを追体験することになり、マイナスの心理作用が支援者に心的外傷を負わせることがあります。私は、介護や支援の現場での、働き人の離職原因の一つに、この心的外傷があると考えます。支援者は、要支援者に寄り添う時、共感力は大切ですが、一方で心的外傷のリスクを伴うことも留意する必要があります。



 共感力を必要とする仕事に就く時、先ず自分の身を守る術を体得しなければなりません。その術は「心的外傷を負わない」か「心的外傷を癒す」です。私の持論は、要支援者への支援は必ず心的外傷を伴うと考えているので「心的外傷を負わない」の解はありません。故に「心的外傷を癒す術を身につける」が解となります。怒り・哀しみによる心的外傷は、喜び・楽しみの体験によって癒すことです。また、私たちは骨折したり、怪我をした時は、その患部を動かさないようにしたり、触らないようにします。心が外傷を受けた時も同様に、心に負担をかけないことが大切です。具体的には、心を空っぽにする時間を設けることです。

 音楽を聴く、映画を観る、旅行に行く、美術館に行く、スボーツをする、草花や農作物を育てる、動物と戯れる、創作活動を行う、宴会を催す 楽しいことを積極的にやりましょう。そして、好きなことに打ち込み心を空っぽにしましょう。


参考文献:善く死ぬための身体論 著者 内田樹 成瀬雅春 出版 集英社新書

 社会福祉士 佐藤 信行

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信州鉄道の夜 7(恵比寿様と大黒様)

2019-04-01 23:06:54 | 日記
 僕が就労継続支援B型事業所で、オリジナル木工玩具を作る工芸倶楽部活動をしていた時に、僕のデザインした木工玩具を、新作を出す度に誉めてくれた職員がいました。素人の僕のデザインを評価してもらったことが励みになり、工芸倶楽部活動の継続的な展開に繋がりました。どうやら、僕も誉められて伸びるタイプのようです。



 我が家の客間に桐の箪笥があります。この桐の箪笥は妻のお父さんが作ったもので、お父さんの仕事は「建具屋」でした。建具屋とは、大工が建物を作るのに対して、建物の襖や障子や欄間や鴨居といった建具を作る仕事です。群馬県北部の三国街道沿いの山里に居を構え、母屋の隣にある作業場(アトリエ)で、建具を作っていました。桐の箪笥のエピソードは、妻のお父さんの知人の娘さんの花嫁道具として、材料原価のみでお父さんが製作依頼されたものでしたが「完成した桐の箪笥は事情があって陽の目を見ることができず」、妻の姉妹を経由して妻の元に落ち着いたものです。桐の箪笥は現役バリバリで、妻や僕の衣類と猫のれん坊の食料が収納されています。
 家業は、妻のお兄さんが継ぎ建具作りをしています。妻の実家は、長閑な田園風景の中で僕にとって理想郷のような場所です。



 昭和40年代の中期頃まで「行商人」という商売方法がありました。背中に最大限背負える荷物(商品)を背負い、村から村へ商品を売り歩く商いです。その商品は、民藝品、薬、干物、練り製品、と多岐にわたり、商品をリクエストすれば、次回の行商で持参してくれる物もありました。当時、妻の実家に様々な行商人が訪れたそうです。

 飛騨高山から民藝品を背負った行商人、越中富山から薬を背負った行商人、日本海から水揚げされた魚の干物や練り製品を、三国街道を経て入手した商品を背負った行商人・・・。行商人とは、店を構えないで商売する人たちです。しかし、僕には今日のセールスマンとは違った哀しい響きが感じられます。その行商人たちが妻の実家訪れた時に、お父さんやお母さんは、売れ残った商品を買ってあげていたそうです。だから、行商人たちは、行商の最後に妻の実家に寄るようになったそうです。そんな行商人が来ると、幼少時代の妻とその兄妹は「来た!来た!電気を消して!」と、居留守をつかおうとしましたが、お父さんやお母さんは「そんなことをしては、いけないよ」と、行商人を家に招き入れたそうです。



 行商人の背負う売れ残った商品を買った、妻のお父さんやお母さんの行為は、今日の言葉で「セーフティーネット」と表現できると思います。背負った商品が完売しなければ行商人の生活が成り立たない訳ですから、在庫を買いあげることは、妻のお父さんやお母さんの倫理規範に則った「生活困窮者への支援」と、僕は捉えます。
 妻のお父さんは、飛騨高山から来た行商人の売る民藝品の恵比寿様と大黒様の一刀彫(二体で一組)を、行商人が来る度にセット購入して、娘たちが嫁ぐ時に、一人一人に花嫁道具として渡しました。

 就労継続支援B型事業所で、僕のデザインしたオリジナル木工玩具を誉めてくれた職員は、恵比寿様と大黒様の一刀彫を持って、僕に嫁いでくれました。今、恵比寿様と大黒様は、我が家の守り神です。

 社会福祉士 佐藤 信行

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信州鉄道の夜 6(ワインオープナー)

2019-03-31 18:38:53 | 日記
 前回の投稿で、就労継続支援B型事業所勤務時代に企画した自主製品に、木工玩具を選んだ理由をいくつか述べましたが、カミングアウトすると、それらは全て後づけの理由です。本当の理由は「木が好きだから」です。

 今回は、僕が日々の生活の中で常使いしている、木を肌で感じることのできる道具「ワインオープナー」を紹介します。



 ワインオープナー ライヨール (写真左側) ライヨールとは、南フランス・アバロン県にある村の名前です。昔、村の鍛治屋が村人の生活道具として作ったナイフがルーツです。牛や羊の放牧を生業としていた村人は、冬の間スペインに出稼ぎに出ることが多かったそうです。出稼ぎ先のスペインでサラセン(アラビア系イスラム)流にデザインされた粋なナイフに出逢いました。

 ライヨール村の出稼ぎ人たちが出逢ったサラセン流のナイフは、サラセン人(アラビア系イスラム教徒)の影響を受けたナイフです。8世紀~15世紀にサラセン人に支配されたイベリア半島(スペイン)では、サラセン文化が根強いのです。そのサラセン人がイベリア半島まで侵略して来たルートは、アラビア半島から地中海の南海岸を通り、ジブラルタル海峡を渡るルートでした。このルートは、※ジプシーの西進ルート(地中海南岸経由、北岸経由)とも一致します。※ジプシーとは、エジプト人という意味で、ドイツではチゴイネル、フランスではジダンと呼ばれる放浪の民です。定住せず、移動を繰り返す彼らの主だった職業は、表向きには曲芸、馬の売買、器用な手先で作る籘の細工物や角製のスプーンや櫛、女性は占い師などでした。中世から近代に至るまで、通常のヨーロッパ社会から差別されてきた被差別民たちでした。

 ※ジプシーの中には、優秀な技術を持った金属細工師や鍛治屋もいました。金敷きとハンマーと小さな炉一つで、鍋釜の修理をしたり、売ったりする「鋳掛け屋」には、斧や釘、馬の蹄鉄、そしてナイフまで作って売っていた者も相当数いたそうです。※ジプシーの西進ルートの地中海北岸の地域では、その製品が安価で手に入るため歓迎されました。



 そして、近世にライヨール村の出稼ぎ人たちが、※ジプシーの作ったサラセン流と出逢いました。ライヨール村の出稼ぎ人たちは、このサラセン流ナイフを村に持ち帰り、村の鍛治屋にフォルムを真似たナイフを作らせました。これが、現在のライヨールナイフの始まりです。アラビア系イスラム様式の道具が、放浪の民の技術を経て、南仏からの出稼ぎ人との出逢いにより、美しいフォルムを持つ民藝ナイフを誕生させたのです。

 僕が使用する、ライヨール ワインオープナーのバンドル材は柘植です。柘植は、日本でも櫛の材料として重宝されてますね。

 ライヨール村の出稼ぎ人たちの中には、街の居酒屋で働いた者もいました。彼らは村から持参した、愛用のコルクスクリューが付いたライヨールナイフで、客の注文したワインのコルクを抜きました。これがソムリエナイフのルーツです。我が家の週末の宴にも、ライヨールは欠かせません。


※ジプシー は現在使用されない言葉ですが、参考文献中に使用されている言葉なので、そのまま使用しました。

参考文献:ナイフマスターブック 出版 (株)スタジオ タック クリエイティブ

 社会福祉士 佐藤 信行

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