Lost And Found

人生失くしたもの・・みつけたもの・・

ドライバーのある一日 (午前編)

2020-10-21 08:25:00 | 僕がヤマトでウツになったワケ

6:30 (起床)


仕事の夢から目が覚める。

時間に追われる夢だ。

眠り浅い。ベッドから仕方なく出る。

体が重い。憂鬱。吐き気、めまいがする。

 

7:30 (自宅を出る)


吐き気とめまいが止まらない。

今日の荷物は少ないことを祈り自宅を出る。

トラブル無く、スムーズにいくよう、

"呪文"を唱えながら会社に向かう。

会社に近づくにつれて不安は大きくなる。

 

8:00  (出勤)


出勤すると朝のアルバイトさん達が

トラックに午前中及び時間指定無の配達の荷物の

仕分け・積み込み・持ち出しの端末入力の作業途中。

悪い予感が的中した。

その荷物量を見てまた吐き気がする。

気持ちばかりが焦る。

 

打刻をし、少しでも早く出発できるよう、アルバイトと一緒に作業する。

ここで荷物の持ち出し入力漏れ、持っていくべき荷物の積載忘れなどしたら致命的だ。

荷物を探しにセンターに取りに戻る時間がロスとなり、

一日の仕事に影響を及ぼすので非常に気が張る。

脳の回転はこの時点で既に120%。

この緊張が帰庫するまで続く。

 

8:30 (朝礼)


作業がまだまだ終わっていないのに朝礼に呼び出される。

ヤマト体操なるラジオ体操第一のパクリをやった後、

当番が今日の意気込みを発表し、

全員で社訓、安全喚呼、誓いの言葉を唱和する。

今日は自分が当番。憂鬱。

意気込みなんてねーよ。何しゃべろう?

さらに悪いことに、今朝は主管から妊娠したかのような腹の出たお偉いさんが、

"ありがたい"話をしに朝礼に顔を出すそうだ。

しかも話がクソ長い。1分でも早く出発したいのに。

この時間がとてもムダだ。

この忙しいのに「お褒めの言葉」をもらってこい、だとよ。

客がSDを評価するアンケート用紙の事だ。

これをできれば全軒に配れだと。

荷物だけでも多いのに仕事増やしやがって、アホかと。

 

8:45 (運航前点検)


トラックの点検。法で定められた全ての点検事項を確認する。

慌ただしい朝のこの短時間で異常を発見できなければ、

事故や業務の遅れ、クレームや会社からの叱責に繋がってしまう。

(過去、オイル不足を見逃した為エンジンブロー、会社から叱責、始末書、乗務停止を受けた社員も。)

当然のことながら、当日にウインカーランプ一つ切れていても出発できない。

 

8:50 (出発前の準備)


まだ積んでなかった冷凍・冷蔵の荷物、メール等の小物類を仕分けて積み込む。

総数を端末で確認すると、今日の午前中及び時間指定無の配達の荷物の持ち出しは150個程あった・・。

 

この時点で一度出発したらセンターに取りに戻らなくて済むように

軒先で客が要求するであろう各種伝票や、業務に必要な感熱プリンター用紙、

本日の集荷指示書、1万円分の釣銭、また客からの資材・物販商品の注文状況を確認し、間違いなく積み込む。

そうしないと突発的な集配の依頼にも遅れが出てしまい、

今日一日の全ての仕事が遅れてしまいクレームにつながる。

 

はぁ・・今日は配達だけでなく、個人の集荷依頼も多い・・。

会社は交通法規も配達品質も守れと言うけれど、

両方守るなんて明らかに無理と分かる仕事量だ・・。

 

8:55 (出発前点呼)


アルコールチェック、免許証チェック、体調チェック、運航前点検表のチェックを受けて出発。

出発前に忘れ物がないかもう一度よくチェックする。

 

9:00 (出発)


ドラレコ、デジタルタコグラフ起動。

この時点から帰庫するまで一切の言動・運転・位置が記録、監視される。

ドラレコはドライバーを守るために付いているという支店長の説明だが、

体のいい言い訳である。

ドライバーを監視する赤外線カメラが助手席Aピラーに、マイクがステアリング付近についている。

現在位置もGPSで一目瞭然。

正直気持ち悪い。

担当区域に向けてようやく出発。

 

9:15 (配達開始)


一軒目の配達。1150円の着払いの荷物に対し、客は臆せず1万円札を放り渡した。

8850円もの釣り銭が初っ端から消えてしまう。

一軒目でそれは困ると言ったが、

「ダメなんですか!?」と客は不機嫌そうに言う。

ここでダメだというとまたクレームを入れられるに違いない。

仕方なく受け取り、持ってきた釣銭を全て渡す。

用意してきた釣銭は意味をなさなくなってしまった・・。

最悪。

コンビニで何かを自腹で買って崩すか、センターに戻らねば。

 

今日はこのあとタイム(午前10時指定)の荷物の配達が待っている。

この荷物だけは別途料金をもらっているサービスの為、遅延配達は許されない。

何があっても荷物は優先してその時間までに届けなければならず、

達成できなければ成績として残り、当然叱責が待っている。

しかも最悪なことに配達場所は配達ルートの一番奥だ・・

予定変更。ルートを組みなおす。

 

9:30


トラックから降りて配達中は常に小走り。

どんなに仕事量が多くても毎回シートベルトを脱着。

事故防止のためバックは厳禁。

裏通りでは交差点ごとにサイドブレーキで完全停止。と同時に指さし安全喚呼。

停車時は毎回ハンドル左切、ギア入れ、サイドブレーキ、鍵抜き、輪留め必須。

トラックは基本配達中左折しか許されないヤマトの謎ルール。

こんなんじゃ指定時間なんて守れるわけないじゃん・・。

 

ああ・・この家も不在かよ・・一軒でも荷物減らしたいのに今日は荷物の持ち戻りが多いな。

不在票発行に大切な時間を消費。

タイムに遅れるかも、と焦り。

スピードが法定速度を上回ったり、少しでも車体に縦振動があれば装置から警告がなる。

その一挙手一投足がタコグラフとドラレコに録画されている。

いちいちストレス。

 

9:58 


指定時間2分前にタイム配達のお宅にギリギリ到着。

正直ここにくるまで、仕事量からして安全確認は100%とまではいかなかった。

配達完了後即、その情報を入力する。

入力が10時回ると苦情、クレーム、ダメ出し、問い合わせ、ペナルティ、いろいろ面倒なことになる。

 

10:20


代金引換の荷物の配達に。家主は財布を取りに家の奥へ。

体感的に5分ほど戻ってこない。

5分でも大切な時間。

この後の配達に遅れそう・・。イライラする。

こんなことなら予め荷物の存在を電話しておけば良かった・・。

(代引きには事前の電話が必要。でもする時間がみつけられなかったんだよ・・)

配達すべき荷物の残り、まだ130個・・

 

10:45


指定時間に集荷依頼のあった個人宅に集荷へ。

配達の荷物も出来るだけ減らしたいのに・・・。

引っ越しの荷物らしく、大型の荷物が10個ほど軒先に見受けられる・・

マジかよ・・

 

当然一つずつ三辺測って計算。合計金額を現金でお客からもらう。

金額を間違えないように、何度も数えなおす。

不足があれば当然「自腹」だからだ。

 

トラックに積み込む。一つずつクソ重い。

が、・・・品名書いてないことに気づく・・・・

返却の可能性がある旨を説明し書いてもらう。

客が書いた品名、「雑貨」。

 

あのう・・雑貨ではなくて具体的に書いてください・・・

 

ああ時間ロス・・。

つか、まだ配達の荷物が120個ほどあるのに、集荷した荷物置く場所がねえよ!!!!!(怒)

 

11:10


荷台をふと見ると、さっき配達に行ったばかりのお宅の別の荷物発見!!

しかも午前中指定!!!!! 

今何時!?!?!? 11時10分じゃん!!!!

 

端末で検索するが端末に登録されていない荷物だった。

無断持ち出し・・。

あーまた俺の無断持ち出しの成績が下がっちまった・・

もしやまたアルバイトさんが持ち出し入力を忘れたか・・・

アルバイトさんだし責めるわけにもいかない。

あーーまた配達に行かないと・・二度手間じゃん・・・(焦り)

 

荷物の残り、あと100個・・。

作戦を変更し、時間指定なしの荷物は無視。

午前中指定の荷物だけを配達するプランに変更するがすでに時遅し。

午前指定の荷物、全て午前中に配れそうにない。確定・・

 

11:30


不在票見た客から電話。車を路肩に止める。

荷物を配達指定先から「実家」がある場所に「転送」してほしいとのこと。

指定時間と住所を書き留める。また一つ面倒な仕事が増えた・・。

荷物の残り、あと85個。

 

11:45


客から集荷依頼の電話。荷物1個あるから取りに来てくれとのこと。

1時には外出するからそれまでに来てくれと・・。

客はこちらの状況などお構いなしだ。

 

12:00


とうとう12時を迎え、午前中指定の荷物が10個、それ以外が60個残った。

60個は仕方なく午後にしわ寄せになるとして、残り10個の午前指定の荷物の配達を急ぐ。

どんな事情であれ、時間の遅れは会社に記録として残る。

 

12:15


サービスセンターから荷物の問い合わせの電話。

路肩に車を止める。

午前中配達指定の荷物がまだ届いていないとの客からの問い合わせあり。

焦燥感でいっぱい。

タイムロス。

 

12:30


事情を説明して午前中指定最後の荷物の配達へ。

遅れを詫びるが、家主は怒り心頭。

時間指定お届けは「サービスの一環」であり、絶対ではないことを説明しても逆上するであろうから、

とにかく謝るが、謝れば謝るほど家主の怒りは増長する。

しまいには、「荷物は受け取らない」「責任者を電話に出せ!」と怒鳴る。

土下座を要求し、損害を弁償しろとゴネはじめた。

責任者と電話で話をした客は荷物を受け取り一件落着したかのように見えたが、

怒りが収まらない客は、のちにサービスセンターに苦情を入れた。

 

「ドライバーの態度が悪い」

 

その情報は県下の全ドライバーに即メールで共有された。

まるですべてが事実かのように誇張された内容。

しかし身に覚えがない。

ストレスが襲う。

メールを見た上司から携帯に事実確認の電話が入る。

疑惑の目が向けられる。

どれだけ説明しても言い訳になってしまう。

 

荷物の残りは60個。

もう午後1時。

センターには午後配達指定の荷物が残されており、

また追加の荷物が2便で10トントラックで到着しているころ・・。

 

あーーー配達もそこそこに午後配達の荷物を積みにセンターに帰らないと・・・。

今日もまた休憩はとれそうもない。

今日の仕事量を考えたら、休憩したことにして仕事を続けないと難しそうだ・・。