Ekrino書簡

頭の整理&ひまつぶしに適当なことを書く

俺と蟹とAterm

2020年07月02日 | PC
IPoE関係のエントリの最後の方で、テキトーに国内メーカーをディスった。

それでもNECについてはまだ信頼していたのだが、現行のAtermのラインナップについて、
使用してるコントローラを調べてみたら、予想以上に蟹に侵食されていたので、今日はそれについて書く。

はじめに、Atermのミドルレンジ~ローエンドについて、搭載するSoCとおおよその性能(DMIPS)を書く。
(蟹のクロックが分からなかったので、GPLのbootcodeからの推測値を書いている)

4ストリーム
 WG2600HP3 Qualcomm IPQ8064(ARMv7a:Krait Dual@1.4GHz) 9240DMIPS相当 512MB
 WG2600HS  MediaTek MT7621(MIPS1004Kc Dual@880MHz) 2816DMIPS相当
3ストリーム
 WG1900HP2 Realtek RTL8198C(MIPS1074Kc Dual@800MHz) 3200DMIPS相当 128MB
 WG1800HP4 Realtek RTL8198C(MIPS1074Kc Dual@800MHz) 3200DMIPS相当 128MB
2ストリーム
 WG1200HP3 Realtek RTL8197F(MIPS24Kc Single@1GHz)  1600DMIPS   128MB
 WG1200HS3 Realtek RTL8197F(MIPS24Kc Single@1GHz)  1600DMIPS   128MB
 WG1200CR  Atheros QCA9563(MIPS74Kc Single@750MHz) 1500DMIPS   128MB
レガシー(WR8750N,WR9500N,WG600HP)
       Atheros AR9344(MIPS74Kc Single@560MHz)  1120DMIPS   128MB

このうち、WG1200HS3についてはネット上ではRTL8198Cとの情報もあり、
公開しているGPL自体も不可解なところがあるので、まずは保留する。

まず言えることは、蟹がやたら多い。ローエンドのWG1200CRがAtherosチップを使ってるのを除けば、全てと言っていい状況だ。
次にいえることは、MIPSアーキテクチャの比重が多い。これは、これまでずっと使われてきたことが大きいと思われる。

まずはMIPSについて軽く触れると、
ヘネパタのヘネの方が、80年代の初期に、マイクロコントローラーの命令セットが複雑なのが性能向上を阻害してる!!「シンプルに高速」をコンセプトで作ったるって設計した初期のRISCプロセッサである。

90年代の初期には、R2000やR3000がNEWSやONIXといったワークステーションに使われていたし、中期には、R3000はPS1に、R4000(のカスタム版)はN64に採用されたし、00年代もPS2やPSPにはR4000系統のプロセッサが使われていた

華々しいのはここまでで、いまでは落ち穂拾いみたいな感じになっている。
時系列無視でMIPSにまつわることを書くと、いまのようなファウンダリの無い時代のファブレス企業だったため、高性能プロセッサの新規開発は設計負担が大きく、MIPSの新プロセッサを当て込んでいたSGI(信濃町にない方)が、新プロセッサを作らせるために買収した。

が、90年代の中ごろにはx86+WindowsNTの躍進があり、ワークステーション市場のシェアが変動する。SGIもx86を使うこととなり、MIPSも使うけど新しいのはいりませんって具合になり、要らない子になる。

比較的高性能なプロセッサだったため、コンピューティング用途から引退しても、組込で細々とやってはいけた(PowerPCルート)のだが、
低性能プロセッサはH8やらARMがガッチリ固めてる中で、高性能プロセッサもARMの性能向上で一方的に食われるといった流れである。
その辺は、元アイドルがMUTEKI堕ちして話題になるも、新人の台頭で、、、というのと同じ。

あとは、組込シェアを奪ったARMへの当てつけのようにMIPSにandroidを移植したことと、ARMがグラフィックコアを内製した当てつけでImagination(PowerVR作ってた)に買収されたことくらいで、Imaginationの死亡により今は中華系に買収されている。
MIPSの現在地は、良く分からん中華系ガジェットのSoCに中華MIPSが入ってたりする感じで、有名人が新興宗教の広告塔やってるのを見たときのような気持ちになる(個人の感想です)。

龍芯とかの話は、長くなるので書かない。

さて、軽く触れるのはここまでにして、ネットワーク用のMIPSについて触れる。
といっても、長々書いてもしょうがないので、PC Watchからの引用で済ませる。



組込向けの4Kシリーズを、
ネットワーク用(早い話がルータ用)に派生させたのが24K
24Kをマルチスレッド(ハイパースレッディング)化したのが34K
   デュアルコアにしたのが1004K
24Kをアウトオブオーダーにして改良したのが74K
   74Kをデュアルコアにしたのが1074K            …となる。

シングルコアのDMIPS/MHzで性能順に並べると、1074K(2.0) > 74K(2.0) > 1004K(1.6) > 34K(1.6) > 24K(1.6)
Coremarkだと、1074K(3.49) > 74K(3.48) > 24K(3.1) > 1004K(3.05) > 34K(3.05) といった感じで、
乱暴に言えば、ARMv6(ARM11)あたりまでは勝っていたが、ARMv7(CortexのAシリーズ)で並ばれて、一気に抜かれたことが分かる。
組込向けのPPC(MPC8241)も1.8DMIPS/MHzくらいあったが、クロックは266MHz程度に留まったので、同じように食われた。

なんとなくMIPS系のルータが、ローエンドで1000アッパーミドルで2000程度という相場観は見えてくる。
上記の中では、RTL8198Cの性能がかなり高いと言えるだろう。

11axルータについて軽く触れると、
インテル入ってる感が前面に出てる奴は、AX3000(GRX350+WAV654)である。
GRX350というプロセッサは、Intelではあるが買収した旧Lantiqのチップで、MIPSが1004Kの後継として対ARM用に開発したAptiVという、
IBMのパソコンみたいな名前のコアを使っている。といっても1.7DMIPS/MHzなので、Dual@800MHzだとして2720DMIPSとなる。MT7621と大差ないやん…

インテルのwebサイトでは、AX3000のモデルとしてNetgear Nighthawk RAX40、エレコムWRC-X3000GS、TP-LINK Archer AX50が挙げられている。多分、AX3000ベースで開発した場合は表記するような取り決めがあったのだろう。

非インテル系については、asusの一覧がよくまとまっている。
基本的に各社横並びとなるため、他社製ルータのSoCを推定する上で、この手の情報が有益である。

たとえばTP-LINKは、Archer AX6000はBCM49408にWi-FiコントローラBCM43684を2つくっ付けた構成と推定できる。
AX20がBCM6755(Quad)、AX10がBCM6750(Triple)となる。
2x2どまりではあるが、SoCとWi-Fiがワンチップ化されてる分、恐らくはインテルのAX3000より安いのだろう。
ARM CortexA7なので、シングルコアの性能で2850DMIPS(1.9DMIPS/MHz)となり、正直GRX350より性能がいい

Netgearでは、RAX80とRAX200がBCM49408、RAX40がGRX350、RAX20がBCM6755(Quad)とみられる。
TP-LINKとほぼ横並びであるが、RAX120については、IPQ8074+QCN5054というQualcomm系となる。

軽く書こうとしたら、結構長くなってしまった。
インテルの価値はMIPS系という1点だけで、性能面では見劣りするなぁ…というのが、ここまで整理した感想である。
そして、そのMIPS系という1点が、他に尾を引いているようにも思うのである。いい加減にAtermの話題に戻したいので、つづく。

コメントを投稿