(映)八月の狂詩曲(ラプソディー)

2010年11月07日 | 映画 レビュー


1991年(平成3年)公開の黒澤作品です。
この2年後の公開作品が黒澤明の監督遺作であり、
これは、そのひとつ前の作品となります。

旧い黒澤作品を中心に観てきて、
まだまだとは言え、
有名どころは概ね観たつもりですから、
これからは、まだ観ていない作品を、
ぼちぼち観ていこうかと思います。

一部では評価の高い作品ですが、
私の率直な感想として、
ほとんど終盤までは、
凡庸とした退屈なものでした。

監督の意図、メッセージは伝わりますが、
脚本、演出、キャスティングに、
今ひとつ、インパクトが感じられず。

ところどころに黒澤らしさはあれど、
ただそれだけの感じに終わりそうでした。

しかしながら、
ラストシーンに近い部分からは、
惹きこまれていくような雰囲気に包まれました。
そのままに映画が終わりましたから、
随分と余韻が残りました。

ボクシングに例えると、
当たる当たらないに関わらず、
ゴング開始から延々とボディブローを打ち続け、
最終ラウンドの後半から、
急に効きだした、という感じでしょうか。

題材もありふれたもので、
ハッキリ言って、地味な作品です。
あまり、お薦めしようとは思いません。
しかしながら、非常に心に残りました。
ここまで執拗に、物語の核心からブレルことなく、
余計な色気もなく、
伝えたいことの中心だけを、
ひたすら打ち続け、
ひたすら描ききろうとした作品。

商業的な意図の薄い、
真面目で真摯な映画。
駆け出しの、
あるいはインディーズ的な、
無名の監督にありがちな描き方のようにも感じられ、
それを作ったのが、世界に名だたる黒澤明。

個人的には、印象深い作品となりました。


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