かまわぬ

成田屋贔屓が「思いつくまま」の落書き。

長唄「京鹿子娘道成寺」

2005-07-15 13:03:13 | 伝統芸能
最近、iPod shuffleを購入。これまでのウォークマンと比べものにならない軽さ、コンパクトさに、どこに行くのにも携行している。なかでも、毎月の病院通いには、いまや手放せないものになっている。

では、いったい、どんな音楽を聴いているのかというと、最初はいろいろと試してみたが、近ごろの音楽は聴いていて頭が痛くなるようなものばかりで、諦めかけていたとき、長唄のCDを持っているのを思い出した。

試しに自分ひとりでCDからインポートしてみた。なぜこんな素晴らしいものがあることに気づかなかったのだろうか。電車の中でも、散歩中でも、iPodから流れてくる邦楽に酔いしれている今日である。

長唄「京鹿子娘道成寺」を記してみる。

鐘に恨みは数々ござる、初夜の鐘を撞く時は諸行無常とひゞくなり。
後夜の鐘を撞く時は、是生滅法とひゞくなり、晨朝のひゞきは生滅滅已、
入相は寂滅為楽とひゞくなり。聞いて驚く人もなし、我も五障の雲晴れて、
真如の月を眺めあかさん。

言わず語らずわが心、乱れし髪の乱るゝも、つれなきは唯うつり気な、
どうでも男は悪性者、桜さくらとうたわれて、いうて袂のわけ二つ、
勤めさえただうかうかと、どうでも女子(おなごは)悪性者、都そだちは蓮葉なものじゃえ。

恋のわけ里、武士も道具を、伏せ編笠で、張と意気地の吉原

花の都は歌で和らぐ、敷島原に、勤めする身は、誰と伏見の墨染

煩悩菩提の撞木町より、難波四筋に通い木辻に禿立ちから、
室の早咲き、それがほんに色じゃ、一イ二ウ三イ夜露雪の日、
下の関路も、ともにこの身を、なじみ重ねて仲は円山、たゞ円かれと、
思いそめたが縁じゃえ。

梅とさんさん、桜はいずれ兄やら弟やら、わきて言われぬ花の色エ、
あやめ杜若、いずれ姉やら妹やら、わきて言われぬ花の色エ。
    
西も東もみんな 見にきた花の顔、さよおエ、見れば恋ぞ増すエ、さよおエ、かわゆらしさの花娘。

恋の手習い、つい見習いて、誰に見しょとて紅鉄漿つきょぞ、
みんな主への 心中だて、オヽうれしオオうれし

末はこうじゃにエ、そうなるまでは、とんと言わずにナ済まそうぞエと、
誓紙さえ偽りか、嘘かまことか、ともならぬ程逢いに来た

ふっつり悋気せまいぞと、たしなんで見ても情なや、女子には何がなる、
殿御々々の気が知れぬ気が知れぬ、悪性な悪性な気が知れぬ、恨み恨みて
かこち泣き、露をふくみし桜ばな、さわらば落ちん風情なり。

面白の四季の詠めや、三国一の富士の山、雪かと見れば花吹雪か吉野山、
散り来るは散り来るは嵐山、朝日山々を見渡せば、歌の中山石山の、末の松山、いつか大江山、生野の道の遠けれど、恋路に迷う浅間山、一夜のなさけ有馬山、いなせの言の葉飛鳥木曽山待乳山、三上山、祈り北山稲荷山、縁の結びし妹背山、二人が中の金山、花咲く栄このこの姥捨山、峰の松風音羽山、

入相の鐘を筑波山、東叡山の月のかんばせ、三笠山。

たゞ頼め、氏神さんが可愛がらしゃんす、出雲の神さんと約束あれば、
つい新枕、廓に恋すれば浮世じゃえ、深い仲じゃといいたてゝ、こちゃ、
こちゃこちゃ、よい首尾で、にくてらしい程いとしらし。

花に心を深見草、園に色よく咲きそめて、紅をさすが品よく形より、あゝ
姿やさしやしおらしや、さアさアそうじゃいなそうじゃいな、皐月五月雨
早乙女早乙女田植歌、裾や袂を濡らしたさっさ

花の姿の乱れ髪、思えば思えば恨めしやとて、竜頭に手をかけ
飛ぶよと見えしが、引きかついでぞ失せにける。