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須賀敦子さんの本(4) 遠い朝の本たち

2005-08-28 01:27:42 | 須賀敦子さんの本
須賀さんの文庫本をベッドの上に並べて、どれにしようか迷っています。 ヴェネツィアの宿、遠い朝の本たち、ミラノ 霧の風景、ユルスナールの靴。 そうですね、「遠い朝の本たち」にしましょう。

keikoさん、こんばんは。

関東では台風11号が通過してから、秋の気配に包まれています。どんなに暑くても秋は秋、どこかがちがいますね。
空の高さでしょうか。ミンミンゼミが鼻詰まりの鳴き声をたてるせいでしょうか。
8月になってから、働く×5、休み×2を単純に繰り返していたら、27日の夜になってしまいました。
「寝て起きて食べてを繰り返していれば、特に努力しなくても人生は全うできる」
アフォリストでもある?私の母親の言葉ですが、わたしがそれを実演してしまいそうで恐い。


「遠い朝の本たち」は須賀敦子さんの少女から大学生時代を中心に、想い出の中を行きつ戻りつしながら当時読んでいた本について書いたエッセイです。
留学時代のヨーロッパでのシーンもちらちら出てきますが、日本話題がほとんどを占めていました。

須賀さんがどういう人なのか知っておきたい、というかたは「遠い朝の本たち」を最初に読むのがいいかもしれません。
関西版・向田邦子という雰囲気もありますね、世代的には同じくらいでしょう。ええと・・・
向田さんは1929年11月28日生まれ、同い年だわ。すごい、すごい。

向田さんはチャキチャキしていかにも江戸っ子風、須賀さんは関西の裕福な商家の
おっとりとしたお嬢さま、それでも共通した何かがあったので、似ていると思っていました。
ふたりをくっつけて取り上げたのはもしかしたら私が最初?なんてことはないですよねぇ。(大笑い)

須賀さんは不自由なく育っていらっしゃいますが、家庭内は将来の物書きにふさわしくほどほどに問題があったようです。
彼女の両親は仲がよいとはいえず、原因については「遠い朝の本たち」には登場しませんが、父親がふたつの家庭を持っていたから、に尽きるでしょう。

須賀さんの父は趣味人というのかしらね、多才で教養があって、でも、それを自分では
生かすことはできなかった人ですが、娘の敦子さんは、この父親から教養の手ほどきを受けて「須賀敦子」という人格を作り上げたのですから、結果的にはよしということになります。

あら、本の内容について何もお話ししていないじゃないですか。

少女時代、妹とふたりで競って読んだ本や雑誌の話は、読んでいた本の内容よりもふたりの個性が目に見えるように書いてあってとても楽しかったです。
この少女時代の何編かのエッセイは向田邦子さんの書きっぷりにも似ていて、昭和10年代の独特の雰囲気がありました。

「葦の中の声」は、この本の中でも特に短いエッセイです。
飛行家のリンドバーグ夫妻が乗った飛行機が北海道に不時着したことがあって、アン・モロウ・リンドバーグ(海からの贈物を書いた女性)がこの時のことをエッセイにしているんですね。

須賀さんは少女時代(15、6歳頃)にこのエッセイを読んでいました。
「アンの文章はあのとき私の肉体の一部になった。 いやそういうことにならない読書は、やっぱり根本的に不毛といっていいのかもしれない」
須賀さんはそう書いています。
もう一度、海からの贈物を読まなくてはなりません。


「星と地球のあいだで」
大学時代、須賀さんはフランス語を勉強していて「ル・プティ・プランス」という本に出会いました。
そうです、星の王子さまのことです。
まだ日本語訳の本がなかった時代、日本語が話せず、カタコトの英語しかできないフランス語教師がテキストとしてこの物語をとりあげたのですね。

須賀さんは "apprivoiser" という動詞をこの時におぼえたそうです。
飼い慣らすという意味ですが、星の王子さまのどこで出てきたか憶えていらっしゃるでしょうか。 あたしは最近、倉橋由美子の訳で読んだばかりですから憶えております。
「いきなりはむりだよ、
だんだんと相手になついたとき、私たちは相手にとってかけがえのないものになるんだよ」

倉橋由美子訳ではここはこうなっていました。
「おれとあんたが仲良しになると、おれたちは互いに相手が必要になる。
あんたはおれにとってこの世でたったひとりの男の子になるし、おれはあんたにとって
この世でたった一匹の狐になる」
たかが星の王子さま、されど星の王子さま、ですね。


須賀さんは、少女から大学生の時代に印象に残った本が飛行家の本であったことは、
どうしてだろうと書いています。
「アン・リンドバーグにせよ、サンテグジュペリにせよ、飛行機をつかって空から地球を見てしまった作家たちが、人間について、それまでになかった総合的な視野をもつようになるのは当然かもしれない」

keikoさんは、少女時代に読んだ本では何の影響を受けていらっしゃいますか。
わたしは、わたしはなんだろうか。


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