ショルティの8番

2010年06月08日 20時21分27秒 | 巻八 ショスタコーヴィチが私に語ること
ショスタコーヴィチ 交響曲第8番交響曲第8番 ハ短調 作品65

作曲年は1943年夏。
時期的には、対ドイツ戦においてソ連が巻き返しに出たタイミング。
軍オタ的に言えば、クルスクの戦い(チタデレ作戦)の頃ってか。

そんな時期に作曲される交響曲。
しかも、ある程度国民的認知度があったと思われるショスタコの新曲。
やはり、「戦意高揚」的な勇ましい曲調を、陰に陽に期待されてたに違いない。
そこであえて、こんな曲である。
間違っても、明るい未来(戦勝)に向かって高らかに進撃する雰囲気ではない。
あくまで、内省的、悲劇的。破滅的空気をまとい、最後にかすかに希望の兆し。

ソ連国内では決して高評価ではなかったらしいのも、頷ける。
ある意味、反戦歌だもんなあ。
俺は好きだよ。表向き「典型的戦意高揚歌」に聞こえがちな第7に比べても。

---------- キリトリ -----------

で、ショルティの「ショスタコーヴィチ交響曲集」。
今回、タワーレコードから再販の形で取りまとめられた。
ショルティの第8は、そもそも名演に挙げられつつ入手困難だったもの。

まずは言っちゃおう。
ジャケット買いに値する、と。
ショスタコの交響曲は、もともと戦争や革命と親和性が高いので、
死体や戦車や軍用機が普通にジャケットにデザインされるのだが、
そうした中でもこのジャケ写は秀逸。
東部戦線だよ~。ハリコフだよ~。雰囲気的に。
今回の選集化にあたって、第8のジャケットが採用されたのは、
タワレコの卓見だろうか?

肝心の演奏。
さすがショルティ&シカゴ響。
ブラスバンド的文脈で、大興奮大満足。
だが、そんな「爆演」的要素だけではないのはいつもの通り。
スケルツォやアレグロは、極端な話誰が演っても演奏効果は出る。
第1楽章こそ聴きどころ。
すさまじいまでの緊迫感と、威圧感。
暴力的なトロンボーン。
そしてイングリッシュホルンソロの寂寥感。

ついでに言えば、第2楽章最後の締め。
この部分は各指揮者の個性が出まくるので面白い。
ショルティのはちょっと笑ってしまった。

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