司馬遼太郎「項羽と劉邦」上中下

2014年02月26日 22時26分07秒 | 巻十六 読書感想
実は上巻を20年前に買っていて
そのくせなぜか読まずに放置していて
なぜかこの年明けに急に読みたくなって、という。
だから上巻だけやたら経年変色しているw

白状すると、
読んでいる間の登場人物の脳内イメージは
横山光輝版「項羽と劉邦」の絵柄。
プラスして、光栄の「項劉記」であった。
刷り込みって怖い。

項羽と劉邦 (上) (新潮文庫)
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項羽と劉邦〈中〉 (新潮文庫)
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項羽と劉邦〈下〉 (新潮文庫)
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自慢ではないが司馬氏の著作を読むのは初めてだ。
いやあ、面白いな。これは。
司馬史観とか小難しいことを考えずとも
語り口の旨さでだれずに読み進めることが出来た。

基本的には秦末動乱期の群像劇なのだが、
人物の性格や行動を描写するだけではなく
たとえば中原や関中や江南の風土を鮮明に対比させたり
戦国時代からの流れのなかで諸子百家の位置づけをしっかり描いたり
当時の中国人の義侠心を丹念に説明したり、
そういう背景画というか物語の土台となる部分が安定しているので
個性豊かなキャラクターたちが一層引き立つ。

そのキャラクターについても
劉邦の憎めないダメ親父っぷりとか
良くも悪くも情に生きた項羽とか
世渡り下手な軍略オタクとしか思えぬ韓信とか
不器用を絵にかいたような屈折者の紀信とか
人物それぞれがとても「キャラ立ち」していている。
まあ、みんな押しなべて不器用な感じではあるな。

物語中、とても印象的だったのは
広武山の劉邦項羽直接対決の場面。
そして、その後休戦となるも
張良たちが劉邦を煽って、休戦を破棄させようとしたシーン。
項羽追撃を決断した劉邦が一心に肉を食い始めるあたりは
決意や不安がないまぜになった劉邦の心情をよく表していた。



ポイントは補給戦略。
そして気前よく褒賞を与え敵を増やさないこと。
適度に臆病であり自信過剰じゃないこと。
そういうことか。
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