Dr.木本のちょっと面白い話

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最近の症例3例

2007-05-24 12:42:02 | Weblog
症例  のぼせと数年続く食後の胃のもたれ
  44才女性。164cm、45kg。もともとのぼせがあり、そこへ数年前から食後の胃のもたれが加わり困っている。六君子湯で胃の調子はよくなるがのぼせがきつくなり、加味逍遥散を併用するとのぼせはよくなるが、加味逍遥散2gで胃の調子が悪くなり、2gより少なくするとのぼせが残る。いろいろな漢方医や薬局に通ったがよくならず2007年1月26日来院。
  身体は冷え症で手と膝から下がよく冷える。夕方に足が少しむくむが、半年前には足は緊緊に腫れていた。のぼせは強く扇風機に顔だけ当てるほどである。両頬に潮紅がある。目が充血する。疲れやすい。のぼせると口渇し常温の水分を少しずつ飲む。舌先は3年前にやけどして以来、温かいもの・歯磨き粉・すっぱいもの・辛いもので痛く、赤くなり粘膜がはがれる。冷たいものや醤油は大丈夫。食欲は少し食べただけで腹が脹ってあまり多く食べられない。脂っこいものや甘いものは胃がもたれる。便秘があり弱い下剤を飲んでいる。尿は回数も一回量も少なく色は濃い。皮膚は火傷や傷で化膿しやすい。あざができやすい。寝つきはよいが、いやな夢で目が覚めると目が冴えて寝られず睡眠時間は少ない。皮膚は冬に乾燥。性格は神経質。月経周期は早いときと遅いときがある。舌淡紅、やや胖大、苔黄膩。脈浮緊細無力。
エキス剤で数年間のいろいろな症状が、毎日薄皮をはぐようによくなり、患者さんは「はじめてよくなっているのを感じます。漢方はすごい」と言った。3ヶ月で完治した。
症例 ヘルペス後遺症による8年間の左肩の激痛
  92才女性。150cm、45kg。8年前に左肩に帯状疱疹を患う。治癒後も痛みは残り、内科医院に3年、次に病院のペインクリニックに3年通院したが、悪化の一途で、遠近問わずいろいろ通ったが、体力が落ちてしまい、ついに寝付いてしまった。昼夜を問わず何かの拍子での左肩の激痛に大声を上げ転げまわり、救急車で病院に行ったこともあるが、医師からは治療しても何の効果もみられず、性格か頭が変なのではと言われ帰された。2006年6月26日「かわいそうで見ていられない。何とかして欲しい」と69才の息子さんがひとりで来院。
  身体はもともと丈夫で、寒熱はやや冷え症で、口が渇くと温かいものをコップに半分ずつ飲む。食欲は正常だが、年とともに少なくはなっている。便通は2日に1回。舌象と脈象は本人が来院していないので不明。
 92才で四六時中激痛でわめき転げまわっている女性の体質の情報は乏しいが、まずは最小限必要なことを息子さんから聞いて、体質を弁証した。そしてエキス剤の処方したところ痛みが和らいだ。処方の結果を聞いて少し変方し、また新しい情報を得て少し変方することで、本人の来院がなくても正しい治療が決定され、どんどんよくなり18日後には痛みは訴えなくなり、二ヵ月後には体力も回復し本人の希望でデイサービスに週一回そして週三回に増やしてもらいニコニコして行くようになった。六ヶ月服用した。
症例  躁鬱病(狂躁)
  30才女性。150cm、45kg。問診表の「いつから、どのような症状がありますか?」という記載に対し、「いつからって言われてもわかりません。10年前から?ただ生きてるだけで焦るし、自分を傷つけたり、物を壊したり、・・・・音に敏感で・・・うまく言えません。自分の存在がわからない。時計を見るのもしんどく思うときがある。自分が考え事をしているとき、家事をしているときに、主人や誰かに何か言われると分からなくなる(パニックになる)。死にたいと思ってしまう。何が?って言われてもわかりません」とのこと。
  2007年1月16日佐賀県から母親と来院。5年以上前から少しずつ心身ともに疲れやすくなっていたようである。5年前鬱病の父親が娘に二人でこれからもがんばろうと言って別れた直後に自殺。その後結婚したが、今はないが拒食症や過食症になる。体も疲れやすく、神経が研ぎ澄まされたように神経質になり、そのうえ夫の仕事が不規則で一緒にいる時間が少なく、何のために生きているのかわからなくなった。この一ヶ月、特に調子が悪く、体がだるく、主人のためにいろいろしたいのにできないので、生きてるだけで焦り、物を壊したり、自分の頭や腕をコンクリートの壁にぶつけて大声でわめいている。
夫から自分の不在の間が心配だからと広島の実家に帰され、本人は早く主人のところへ戻りたいが、拒否され母親に大声でなじり、暴れている。窓を開けて「殺せー」と叫んだりして、母親も一緒に死のうかと考えてしまう。神経科の薬の副作用で困っている。デパスが3~4時間で切れるとだるくて辛い。
  身体は冷え症。疲れやすく、1日寝ている日もある。顔・手・足がむくむ。食が細い。甘い物胸やけし脂っこい物は苦手。梅核気がある。便秘は7日以上。尿は濃い。動悸がある。びっくりしやすい。悪い夢をよく見る。寝つき悪く何度も目が覚める。あざがよくできる。舌淡紅、苔黄膩、舌下瘀。脈浮緊。
 診察時に付き添いに来た母親を入れずに、まず自分の言いたいことを言うつもりでいる。とりとめなく感情のままにしゃべるが、日常の彼女の姿をイメージできない。また急に黙ってしまう。私はとりあえず診察をして終了とする。そこで彼女に母親にも強力が必要なので一緒に説明したいと言って了解の上、母親から見た彼女についても聞いておく。神経科の薬はいろいろな副作用のためやめてしまっているが、デパスが1日三回は必要で切れるとだるくて困る。何人も経験しているので漢方で必ず治ると説明し、しかしまずエキス剤で治療してみて、効果がなければ煎じ薬にすることを了解していただいた。つまりまず躁鬱症で治療した。しかしエキス治療の結果、躁鬱でも狂躁に等しいので煎じ薬で治療を強めたのである。煎じ薬の初めての一服で、その夜はぐっすり眠ったと母親から電話があった。7日服用してもまだ時に不眠の日があるのと便秘したままである。ただ喚いたり暴れることも泣いたりけんかすることもなく、2週間経ち更に精神的な調子はよくなり自転車で外出もできるようになった。もう以前のおしとやかな女性である。薬を少し加減しながら3ヶ月経ち、便通もよくなり元気も戻りつつある。もっと元気が戻ってから仕事に行ければと思うが、根がまじめで頑張り屋なので、もう働いている。