・・・はい??いやっ!!バードウォッチングやめるって、ちょっとちょっと!!
「え!?ちょい!オッキー!?冗談やろ!?」
ついつい電車の中だとわかっていても大声を出してしまった。周りの数少ない乗客はこちらをちらりと見たが、隣の真悟は目を覚まさない。
「声でかいって!まぁまぁ落ち着けってあっくん。」
バードウォッチングで一泊二日の帰り道にこんな話とは・・・。まぁ確かに騒いでいてもしょうがない。
「・・・わかった。落ち着くけ。ちょいちゃんと説明して。」
胸を撫で下ろしたオッキーは話し始めた。
「昨日さぁ風呂で話したじゃん?あっくんがバードウォッチングに向いちょるかどうか・・・みたいな。」
あぁ、そういえば。そしてオッキーはその時、なんとなくだが向いている気がする、と言ってくれた。
「俺あれからちょっと考えてさ、わかった気がするんよね。あっくんが何でバードウォッチングに向いちょるか。」
渡中さんも真悟も、僕はバードウォッチングに向いていると言ってくれた。でも誰からもそう思う理由だけは聞けていなかった。
「わかったって・・・何でと思うん?」
「やっぱバードウォッチングが好きやけやろ。」
ちょ~得意気なオッキーを見て思う。・・・期待して損したのかもしれない。も~周りの目とか関係ない!
「オッキー!!!それ全然解決になってないよ!ウッチンは・・・おだちゃんとかもやけど、別にバードウォッチングが嫌いなわけじゃないんよ!?でも自分は向いてないって言うんよ!?それでウッチンに『鳥の名前もろくに覚えられんのに、好きなだけじゃ向いてるとは言えん!』みたいなこと言われたんやん!てかオッキーはバードウォッチングやめるって、向いてないって思うってことやろ?つまりバードウォッチング好きじゃないって事!?どうなんそこんとこ!」
はぁ、喋り過ぎた。自宅でもそうだが、口喧嘩気味になるととまらなくなる。悪い癖だとは思うが、間違った事を言っているつもりはない。
「いや、俺だって・・・嫌いな訳じゃないし。むしろ好きやけど。」
よかった。これだけ一緒にナベヅルを観察して、いろいろ勉強した後に、バードウォッチングが嫌いでしたなんて言ってほしくない。でもだとしたらまた矛盾だ!
「んじゃ結局どうなん!?」
「好きっていうのにも種類があるって事!俺、めっちゃ考えたんよ。どうすればこの感じが伝わるか。あっくんの場合、部活のソフトテニスで考えるとわかりやすいと思う。」
・・・ソフトテニスですと??
ここから、オッキーの見事な追い込みが始まった!!
「まず、あっくんはソフトテニスが自分に向いちょると思う?」
「んや全然。」
即答。
「なんで?」
「だってどう見てもやん!ちょ~下手やし。向いてな~い。」
「んじゃ、今の部活嫌い?」
「そりゃもちろ・・・あ~ちょっと待って。」
また即答しかけたが、ふと疑問に思った。確かに部活はかったるい。体力使うし、まず対戦競技は嫌いだ。でも、部活には、真悟、オッキー、ウッチン、おだちゃん、そして何よりペアのタツがいる。一応、顧問のコウジも。先輩だっていい人ばっかりだ!そういう意味では・・・
「・・・ある意味好きかも。」
オッキーはこの返事を予想してたらしい。
「そう!それ!その感じが、俺とかウッチンの、“バードウォチングが好き”ね。」
「・・・ん!?」
もう少し!な~んかわかりそうだ!
「じゃぁもしよ!あっくんが、ちょ~運動神経良くてソフトテニスがバリバリ上手かったとするやろ?そしたら、ソフトテニスを本当に好きになって、しかも自分に向いちょると思うと思う??」
もし上手くても・・・想像してみて以外だった。心からソフトテニスを好きだとは思えない気がする。
「あ~!!お~!!多分、やっぱ向いてないってなる!つまり、ソフトテニスもバードウォッチングも、向き不向きに能力は関係ないって事か!!」
「そう!でもあっくんさっき、『ちょ~下手やし。向いてな~い。』って能力のせいみたいに言ったよね。」
確かに言った。これがウッチンの“鳥の名前わからんかったら、結局は楽しくなくね?”発言に当たる訳か!なんだこのわかりやすさ!すごいぞオッキー。
「結局オッキーはソフトテニスが大好きで・・・
僕はバードウォッチングが大好きって事か。」
「そうやね。勿論、俺もバードウォッチング行く事は賛成なんやけど、今はテニスを練習して上手くなりたいんよ。まずは絶対・・・
今の東岐波の1番になる!!」
オッキーの固い決意がこっちにまで伝わってきた。まぁ現段階でも1年生に限って見れば、前衛でオッキーと勝負出来るのは、横で寝ているゴリラさんくらいだが・・・。
「やけあっくんも、バードウォッチング頑張れよ!」
「おぅ!」
―3日後
「晃宏~。なんか届いたよ~。」
学校から帰ってきた僕は母さんから、そのなんかを受け取る。かなり大きめの封筒だ。裏には“東南新聞”の文字が。まさか・・・。僕は微妙な気分で封を切る。中に入っている紙を取り出そうとひっくり返したら、小さな紙が落ちてきた。名刺だ!
『東南新聞 砂井あゆみ』
・・・やはりか。名刺は一先ずテーブルに置いて残りの紙を取り出す。
「うわぁ!ちゃんと記事になったんや!!」
それを見て、僕は真悟とあゆみちゃんの会話を思い出した。
“ナベヅル資料館を撮ってたときだけなんですけど、新聞に載せる写真とか大丈夫なんですか?”
“ひゃぁーーーーー!!!・・・とか言うと思った??ふふふ。大丈夫よ。”
もう一枚、紙が出てきた。こっちはあゆみちゃんの手書きらしい。
『お別れの挨拶も出来ずに帰っちゃってごめんね。私のモットー覚えてる?いい写真が撮れたと思います。』
あゆみちゃんのモットー。“自然なままを記事に”でしたっけ?タケさん、オッキー、真悟、僕。
4人ともが自然ないい表情で、ツルを観察している写真だ!!
ツルの里を守る為に頑張っているタケさん。ソフトテニスにかけるオッキー。・・・寝てた真悟。
そして僕は、もっとバードウォッチングを!
そう思った。
第二章―完―
「え!?ちょい!オッキー!?冗談やろ!?」
ついつい電車の中だとわかっていても大声を出してしまった。周りの数少ない乗客はこちらをちらりと見たが、隣の真悟は目を覚まさない。
「声でかいって!まぁまぁ落ち着けってあっくん。」
バードウォッチングで一泊二日の帰り道にこんな話とは・・・。まぁ確かに騒いでいてもしょうがない。
「・・・わかった。落ち着くけ。ちょいちゃんと説明して。」
胸を撫で下ろしたオッキーは話し始めた。
「昨日さぁ風呂で話したじゃん?あっくんがバードウォッチングに向いちょるかどうか・・・みたいな。」
あぁ、そういえば。そしてオッキーはその時、なんとなくだが向いている気がする、と言ってくれた。
「俺あれからちょっと考えてさ、わかった気がするんよね。あっくんが何でバードウォッチングに向いちょるか。」
渡中さんも真悟も、僕はバードウォッチングに向いていると言ってくれた。でも誰からもそう思う理由だけは聞けていなかった。
「わかったって・・・何でと思うん?」
「やっぱバードウォッチングが好きやけやろ。」
ちょ~得意気なオッキーを見て思う。・・・期待して損したのかもしれない。も~周りの目とか関係ない!
「オッキー!!!それ全然解決になってないよ!ウッチンは・・・おだちゃんとかもやけど、別にバードウォッチングが嫌いなわけじゃないんよ!?でも自分は向いてないって言うんよ!?それでウッチンに『鳥の名前もろくに覚えられんのに、好きなだけじゃ向いてるとは言えん!』みたいなこと言われたんやん!てかオッキーはバードウォッチングやめるって、向いてないって思うってことやろ?つまりバードウォッチング好きじゃないって事!?どうなんそこんとこ!」
はぁ、喋り過ぎた。自宅でもそうだが、口喧嘩気味になるととまらなくなる。悪い癖だとは思うが、間違った事を言っているつもりはない。
「いや、俺だって・・・嫌いな訳じゃないし。むしろ好きやけど。」
よかった。これだけ一緒にナベヅルを観察して、いろいろ勉強した後に、バードウォッチングが嫌いでしたなんて言ってほしくない。でもだとしたらまた矛盾だ!
「んじゃ結局どうなん!?」
「好きっていうのにも種類があるって事!俺、めっちゃ考えたんよ。どうすればこの感じが伝わるか。あっくんの場合、部活のソフトテニスで考えるとわかりやすいと思う。」
・・・ソフトテニスですと??
ここから、オッキーの見事な追い込みが始まった!!
「まず、あっくんはソフトテニスが自分に向いちょると思う?」
「んや全然。」
即答。
「なんで?」
「だってどう見てもやん!ちょ~下手やし。向いてな~い。」
「んじゃ、今の部活嫌い?」
「そりゃもちろ・・・あ~ちょっと待って。」
また即答しかけたが、ふと疑問に思った。確かに部活はかったるい。体力使うし、まず対戦競技は嫌いだ。でも、部活には、真悟、オッキー、ウッチン、おだちゃん、そして何よりペアのタツがいる。一応、顧問のコウジも。先輩だっていい人ばっかりだ!そういう意味では・・・
「・・・ある意味好きかも。」
オッキーはこの返事を予想してたらしい。
「そう!それ!その感じが、俺とかウッチンの、“バードウォチングが好き”ね。」
「・・・ん!?」
もう少し!な~んかわかりそうだ!
「じゃぁもしよ!あっくんが、ちょ~運動神経良くてソフトテニスがバリバリ上手かったとするやろ?そしたら、ソフトテニスを本当に好きになって、しかも自分に向いちょると思うと思う??」
もし上手くても・・・想像してみて以外だった。心からソフトテニスを好きだとは思えない気がする。
「あ~!!お~!!多分、やっぱ向いてないってなる!つまり、ソフトテニスもバードウォッチングも、向き不向きに能力は関係ないって事か!!」
「そう!でもあっくんさっき、『ちょ~下手やし。向いてな~い。』って能力のせいみたいに言ったよね。」
確かに言った。これがウッチンの“鳥の名前わからんかったら、結局は楽しくなくね?”発言に当たる訳か!なんだこのわかりやすさ!すごいぞオッキー。
「結局オッキーはソフトテニスが大好きで・・・
僕はバードウォッチングが大好きって事か。」
「そうやね。勿論、俺もバードウォッチング行く事は賛成なんやけど、今はテニスを練習して上手くなりたいんよ。まずは絶対・・・
今の東岐波の1番になる!!」
オッキーの固い決意がこっちにまで伝わってきた。まぁ現段階でも1年生に限って見れば、前衛でオッキーと勝負出来るのは、横で寝ているゴリラさんくらいだが・・・。
「やけあっくんも、バードウォッチング頑張れよ!」
「おぅ!」
―3日後
「晃宏~。なんか届いたよ~。」
学校から帰ってきた僕は母さんから、そのなんかを受け取る。かなり大きめの封筒だ。裏には“東南新聞”の文字が。まさか・・・。僕は微妙な気分で封を切る。中に入っている紙を取り出そうとひっくり返したら、小さな紙が落ちてきた。名刺だ!
『東南新聞 砂井あゆみ』
・・・やはりか。名刺は一先ずテーブルに置いて残りの紙を取り出す。
「うわぁ!ちゃんと記事になったんや!!」
それを見て、僕は真悟とあゆみちゃんの会話を思い出した。
“ナベヅル資料館を撮ってたときだけなんですけど、新聞に載せる写真とか大丈夫なんですか?”
“ひゃぁーーーーー!!!・・・とか言うと思った??ふふふ。大丈夫よ。”
もう一枚、紙が出てきた。こっちはあゆみちゃんの手書きらしい。
『お別れの挨拶も出来ずに帰っちゃってごめんね。私のモットー覚えてる?いい写真が撮れたと思います。』
あゆみちゃんのモットー。“自然なままを記事に”でしたっけ?タケさん、オッキー、真悟、僕。
4人ともが自然ないい表情で、ツルを観察している写真だ!!
ツルの里を守る為に頑張っているタケさん。ソフトテニスにかけるオッキー。・・・寝てた真悟。
そして僕は、もっとバードウォッチングを!
そう思った。
第二章―完―