「こんな感じでどうかしら??」
「うん・・・ちょっと斜めやけど、いいんじゃないかねぇ。」
我が家にクリスマスツリーが出現した。ツリーとはいっても、県営住宅の狭い部屋だ。ツリーは布の刺しゅうで、壁から掛ける作りになっている。そんな訳で、大したものではないが、ちょっとあるだけで日常と違うクリスマスの雰囲気が家中に溢れるから不思議だ。母さんは、ツリーを平行に調節し直しながら、ニコニコして言う。
「今年はさらにクリスマスって感じよね!なんてったって、晃宏と佳昭が観察パークで作ってきたクリスマスリース!」
「・・・よかったね。」
こんな感じで、冬休みの初日、てかクリスマスイブをボヤーっと過ごしている僕。・・・何やってんだろ?
―数日前、伊豆背自然観察パーク
「ゴゴゴゴゴ、5万円!?!?」
僕は、真悟・佳昭(この日初めて観察パークに)・猿越さんと、双眼鏡について語りあっていたのだが・・・心臓が飛び出すほど驚いた!!そりゃ前から、高そうでいい双眼鏡なんだろうなとは思っていた。もちろん、ヒロタカおじちゃんのおさがりのことじゃない。
ゴリラの双眼鏡のことだ!
「なんじゃぁ。・・・内緒にしとったんか??」
猿越さんは、ばらしてしまって悪かったという顔をする。
「友達と日の山に登った時とか、双眼鏡の話題になったのに、そんな事全然言わないんですよ!?びっくりするじゃん、ゴリラ。」
「しんちゃんって、お金持ちなんじゃね!」
そう言って、佳昭は真悟の双眼鏡を輝く目で観察する。おい!頼むから壊すなよ!
「いやぁ、ごめんあっくん。隠す気はなくもなかったんやけど。みんなが引くかなと思って。」
僕は、今にもぶっ壊れそうな自分のボロ双眼鏡と、佳昭が今にもぶっ壊しそうな真悟の5万双眼鏡を見比べる。
「まぁええけどさ。そっかぁ・・・僕もこの双眼鏡、ある程度のに買い換えた方がいいんかなぁ・・・。」
「何を言っとるか!」
びっくりした!猿越さんが鋭い目つきでこっちを睨む。えぇ~?何か変なこと言いましたか??猿越さんが続ける。
「双眼鏡はのぉ・・・長く使い込んでこそその価値が出てくるんじゃ!性能は二の次!見たところ、晃宏君の双眼鏡は30年以上前のもんじゃろう。前に誰が使いよったんか俺はしらんが、これからも大事に使っちゃれ。」
「はい・・・わかりました。」
そうか、成る程。猿越さんの言う通りだ。30年以上も前にヒロタカおじちゃんが使っていた双眼鏡。もっと感謝の気持ちを込めて使わなければいけない気がした。そして今日気付いたが、猿越さんは一緒に話し込むと意外と面白い。教師経験はだてじゃないな。
「真悟君と藤村君きょうだ~い!」
マツボックリのたくさん入ったダンボールを抱えて、二町さんがやって来た。なんだ?真悟の表情が明るくなったぞ。
「もしかして、工作の時間ですか!?」
工作という響きを聞いて、佳昭の表情も変わった。こいつは大の工作好きなのだ。図画工作だけは評定が、『じゅうぶんたっせい♪』から下がったことがない。真悟の双眼鏡への興味は一気に吹き飛び、真悟の双眼鏡を放り投げた。僕は慌てて5万円をキャッチ。二町さんは、胸を張って説明する。
「伊豆背自然観察パークの土曜日といったら、工作無しには語れないわよ!今日はこのマツボックリと木のつるを使って、クリスマスリースを作ります。この工作の時間、親子連れに大人気なんだから!」
確かに。そう言われていみれば、この間来たのは工作のない日曜日だったな。今日は格段に、小さい子どもたちの数が多い。真悟は佳昭を引きつれ、あっという間に工作の部屋へ消えていった。
「・・・晃宏君も行ってこい。」
猿越さんに言われちゃしょうがないな。
「はい。行ってきます。」
こうして、幼稚園・保育園児から小学校低学年の子どもたち親子&小学4年1人&中学1年2人のクリスマスリース作りが始まった。佳昭は背が極限に低いので、小学1年生サイズ。確実に2人浮いている。
「・・・ねぇゴリラ。普段、僕がおらん時もさぁ、こうして工作しよん?」
「そうよ。」
・・・素直に真悟のことを凄いと思った。しかし!!これがまた不思議なことに、やってみると楽しいものだ。二町さんのわかりやすい指示を聞き、小さい子に負けじと手を動かす。熱中し過ぎて、ちっさい子と、本気で色塗りマジックの取り合いになるほどだ。
「・・・ふぅっ!」
無事、それぞれ個性的なリースが完成した!真悟のリースは特に変わっていて、みんながモミの葉を使っている部分が、バナナのイラストだ!僕と真悟、佳昭が二町さんに作品の見せ合いをしていると、すごい勢いで大人が1人飛び込んできた。
「すみません。今日の工作はもう・・・」
っと二町さんが言いかけたが・・・げ!?園長じゃん!
「ふ、二町レンジャー!池にツル・・・」
僕と真悟と二町さんは口をそろえる。
「アオサギです。」
てか“二町レンジャー”って・・・。戦隊ものじゃないんだから。面白い人だな。
―我が家、クリスマスの朝
眼が覚めて、かすれた眼を擦る。あっ。枕の奥にプレゼントが入っていると思われる紙袋が。もちろん流石にサンタの正体は知っているが、雰囲気は大事だ。布団から手だけ出して、器用にさぐる。まず・・・シャンパンだ。これは毎年入っている気がする。その他、小物もろもろの奥にメインと思われるものが。ここ2,3年は、特にこれがほしい!っという物もなく、両親のセンスに任せてあるのだ。長四角で包装用紙にくるんである。それを綺麗にはがす。A型だからか・・・。バリバリ破るのは、なんとなく嫌いだ。
「おっ。」
僕は1人ニヤけた。こりゃ、図書館の人もやっと返ってきたと喜ぶかもしれない。
僕が、返しては借りを繰り返している野鳥図鑑!!
メリークリスマス。
「うん・・・ちょっと斜めやけど、いいんじゃないかねぇ。」
我が家にクリスマスツリーが出現した。ツリーとはいっても、県営住宅の狭い部屋だ。ツリーは布の刺しゅうで、壁から掛ける作りになっている。そんな訳で、大したものではないが、ちょっとあるだけで日常と違うクリスマスの雰囲気が家中に溢れるから不思議だ。母さんは、ツリーを平行に調節し直しながら、ニコニコして言う。
「今年はさらにクリスマスって感じよね!なんてったって、晃宏と佳昭が観察パークで作ってきたクリスマスリース!」
「・・・よかったね。」
こんな感じで、冬休みの初日、てかクリスマスイブをボヤーっと過ごしている僕。・・・何やってんだろ?
―数日前、伊豆背自然観察パーク
「ゴゴゴゴゴ、5万円!?!?」
僕は、真悟・佳昭(この日初めて観察パークに)・猿越さんと、双眼鏡について語りあっていたのだが・・・心臓が飛び出すほど驚いた!!そりゃ前から、高そうでいい双眼鏡なんだろうなとは思っていた。もちろん、ヒロタカおじちゃんのおさがりのことじゃない。
ゴリラの双眼鏡のことだ!
「なんじゃぁ。・・・内緒にしとったんか??」
猿越さんは、ばらしてしまって悪かったという顔をする。
「友達と日の山に登った時とか、双眼鏡の話題になったのに、そんな事全然言わないんですよ!?びっくりするじゃん、ゴリラ。」
「しんちゃんって、お金持ちなんじゃね!」
そう言って、佳昭は真悟の双眼鏡を輝く目で観察する。おい!頼むから壊すなよ!
「いやぁ、ごめんあっくん。隠す気はなくもなかったんやけど。みんなが引くかなと思って。」
僕は、今にもぶっ壊れそうな自分のボロ双眼鏡と、佳昭が今にもぶっ壊しそうな真悟の5万双眼鏡を見比べる。
「まぁええけどさ。そっかぁ・・・僕もこの双眼鏡、ある程度のに買い換えた方がいいんかなぁ・・・。」
「何を言っとるか!」
びっくりした!猿越さんが鋭い目つきでこっちを睨む。えぇ~?何か変なこと言いましたか??猿越さんが続ける。
「双眼鏡はのぉ・・・長く使い込んでこそその価値が出てくるんじゃ!性能は二の次!見たところ、晃宏君の双眼鏡は30年以上前のもんじゃろう。前に誰が使いよったんか俺はしらんが、これからも大事に使っちゃれ。」
「はい・・・わかりました。」
そうか、成る程。猿越さんの言う通りだ。30年以上も前にヒロタカおじちゃんが使っていた双眼鏡。もっと感謝の気持ちを込めて使わなければいけない気がした。そして今日気付いたが、猿越さんは一緒に話し込むと意外と面白い。教師経験はだてじゃないな。
「真悟君と藤村君きょうだ~い!」
マツボックリのたくさん入ったダンボールを抱えて、二町さんがやって来た。なんだ?真悟の表情が明るくなったぞ。
「もしかして、工作の時間ですか!?」
工作という響きを聞いて、佳昭の表情も変わった。こいつは大の工作好きなのだ。図画工作だけは評定が、『じゅうぶんたっせい♪』から下がったことがない。真悟の双眼鏡への興味は一気に吹き飛び、真悟の双眼鏡を放り投げた。僕は慌てて5万円をキャッチ。二町さんは、胸を張って説明する。
「伊豆背自然観察パークの土曜日といったら、工作無しには語れないわよ!今日はこのマツボックリと木のつるを使って、クリスマスリースを作ります。この工作の時間、親子連れに大人気なんだから!」
確かに。そう言われていみれば、この間来たのは工作のない日曜日だったな。今日は格段に、小さい子どもたちの数が多い。真悟は佳昭を引きつれ、あっという間に工作の部屋へ消えていった。
「・・・晃宏君も行ってこい。」
猿越さんに言われちゃしょうがないな。
「はい。行ってきます。」
こうして、幼稚園・保育園児から小学校低学年の子どもたち親子&小学4年1人&中学1年2人のクリスマスリース作りが始まった。佳昭は背が極限に低いので、小学1年生サイズ。確実に2人浮いている。
「・・・ねぇゴリラ。普段、僕がおらん時もさぁ、こうして工作しよん?」
「そうよ。」
・・・素直に真悟のことを凄いと思った。しかし!!これがまた不思議なことに、やってみると楽しいものだ。二町さんのわかりやすい指示を聞き、小さい子に負けじと手を動かす。熱中し過ぎて、ちっさい子と、本気で色塗りマジックの取り合いになるほどだ。
「・・・ふぅっ!」
無事、それぞれ個性的なリースが完成した!真悟のリースは特に変わっていて、みんながモミの葉を使っている部分が、バナナのイラストだ!僕と真悟、佳昭が二町さんに作品の見せ合いをしていると、すごい勢いで大人が1人飛び込んできた。
「すみません。今日の工作はもう・・・」
っと二町さんが言いかけたが・・・げ!?園長じゃん!
「ふ、二町レンジャー!池にツル・・・」
僕と真悟と二町さんは口をそろえる。
「アオサギです。」
てか“二町レンジャー”って・・・。戦隊ものじゃないんだから。面白い人だな。
―我が家、クリスマスの朝
眼が覚めて、かすれた眼を擦る。あっ。枕の奥にプレゼントが入っていると思われる紙袋が。もちろん流石にサンタの正体は知っているが、雰囲気は大事だ。布団から手だけ出して、器用にさぐる。まず・・・シャンパンだ。これは毎年入っている気がする。その他、小物もろもろの奥にメインと思われるものが。ここ2,3年は、特にこれがほしい!っという物もなく、両親のセンスに任せてあるのだ。長四角で包装用紙にくるんである。それを綺麗にはがす。A型だからか・・・。バリバリ破るのは、なんとなく嫌いだ。
「おっ。」
僕は1人ニヤけた。こりゃ、図書館の人もやっと返ってきたと喜ぶかもしれない。
僕が、返しては借りを繰り返している野鳥図鑑!!
メリークリスマス。