「長良川市民学習会」メモ

徳山ダムの水を長良川・木曽川に流すという「大事件」について学習する「私的」ブログ

「官僚の不作為」

2008-03-05 18:35:47 | リバーリバイバル研究所
例えば、こんなことを考えてみる。

N川に「特定外来生物X」が繁殖している。
そのN川から隣のK川に水を流す計画があるとする。
流される方のK川には「外来生物X」はいない。


「外来生物X」が水道水、農業用水、工業用水などで利用され暗渠(暗い水路)で運ばれると水路の中で固着して繁殖する。
 ▼この時点で、
 例えば塩素投入、暗渠の清掃等の「社会的な負担が生ずる」
 ▼
 「外来生物X」が剥がれ、また繁殖場所が広がり末端で配管内につまる。水を利用する個人(農家など)に負担が生じる。
 ▼
 「外来生物X」が数年後に大量死して水が異臭を放つ。
  水路、配管の内部が詰まる。
 ▼
  剥がれた部分に新たに「外来生物X」が固着して繁殖する。
 以下、これの繰り返しをおこなう。

 これは、長良川に生息するカワヒバリガイを木曽川に導水することによって「移入」させてしまった場合の影響についての予測なのだが、このことを事前に「官僚」に情報として示したとしたら、被害があった場合には「官僚の不作為」を問うことが出来るのではないかぁ!



薬害エイズ上告審 元厚生省課長 有罪確定へ 官僚の「不作為」初認定(産経新聞) - goo ニュース

判決 要旨 毎日jp より

★テキスト版
薬害エイズ上告審 元厚生省課長 有罪確定へ 官僚の「不作為」初認定
2008年3月5日(水)08:25

* 産経新聞

 薬害エイズ事件で、エイズウイルス(HIV)に汚染された非加熱血液製剤の回収措置などを怠り、投与を受けた大阪の肝機能障害患者をエイズで死亡させたとして、業務上過失致死の罪に問われた元厚生省生物製剤課長、松村明仁被告(66)の上告審で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は、松村被告の上告を棄却する決定をした。決定は3日付。松村被告を禁固1年、執行猶予2年とした1、2審判決が確定する。

 官僚がやるべきことをしなかった「不作為」が、業務上過失致死罪に当たると最高裁が認めたのは初めて。薬害エイズ事件では5人が起訴され、すでに元ミドリ十字社長ら2人の実刑が確定。1審で無罪になった安部英(たけし)・元帝京大副学長ら2人は死亡により公訴棄却になり、松村被告に対する判断だけが残っていた。

 第2小法廷は、安全な加熱製剤が供給可能となった昭和60年末から、被害者に非加熱製剤が投与された61年初頭の状況について検討。

 その結果、(1)非加熱製剤でHIVに感染する患者が出ており、エイズを発症すれば死亡することは予測できた(2)非加熱製剤のHIV汚染を医師、患者レベルで見分けることは不可能(3)製薬会社に任せれば安易に販売される具体的な危険性があった-などを指摘した。

 その上で「このような状況では、薬害発生防止のための刑事法上の注意義務が生じていた」と述べ、血液製剤行政を所管していた生物製剤課の課長だった松村被告の刑事責任を認めた。

 松村被告は59年7月から61年6月まで生物製剤課長。60年5~6月の帝京大の患者への投与(帝京大ルート)と、61年4月の大阪の肝機能障害の患者への投与(ミドリ十字ルート)で、計2人を死亡させたとして起訴された。帝京大ルートでは無罪が確定している。


判決要旨

テキスト版
<薬害エイズ事件>松村被告・上告棄却決定(要旨)
2008年3月5日(水)05:43

* 毎日新聞

 薬害エイズ事件で、元厚生省生物製剤課長、松村明仁被告側の上告を棄却した最高裁決定の要旨は次の通り。

 被告と弁護人の上告趣意は、実質は事実誤認、単なる法令違反の主張であり、上告理由に当たらない。

 弁護側の主張にかんがみ、業務上過失致死罪の成否について職権で判断する。

 弁護側は、被告には刑事法上の過失を認めるべき作為義務が存在しないと主張する。

 確かに、行政指導自体は任意の措置を促すものであって、これを行うことが法的に義務付けられるとはいえない。また、薬害発生の防止は一次的には製薬会社や医師の責任で、国の監督権限は二次的・後見的なものであって、その発動については公権力による介入であることから種々の要素を考慮して行う必要があることなどからすれば、これらの措置に関する不作為が公務員の服務上の責任や国の賠償責任を生じさせる場合があるとしても、これを超えて公務員に個人としての刑事法上の責任を直ちに生じさせるものではない。

 しかし、当時広範に使用されていた非加熱製剤中にはHIVに汚染されていたものが相当量含まれており、医学的には未解明の部分があったとしても、これを使用した場合、HIVに感染してエイズを発症する者が出現し、いったんエイズを発症すると有効な治療の方法がなく、多数の者が高度のがい然性をもって死に至ること自体はほぼ必然的なものとして予測された。

 当時は同製剤の危険性についての認識が関係者に必ずしも共有されていたとはいえず、かつ、医師及び患者が同製剤を使用する場合、これがHIVに汚染されたものかどうか見分けることも不可能であって、医師や患者においてHIV感染の結果を回避することは期待できなかった。

 同製剤は、国によって承認が与えられていたものであり、その危険性にかんがみれば、本来その販売、使用が中止され、少なくとも医療上やむを得ない場合以外は、使用が控えられるべきものであるにもかかわらず、国が明確な方針を示さなければ、引き続き安易な販売や使用が行われる恐れがあった。その取り扱いを製薬会社等に委ねれば、その恐れが現実化する具体的な危険が存在していた。

 このような状況の下では、薬品による危害発生を防止するため、薬事法69条の2の緊急命令など、厚相が薬事法上付与された各種の強制的な監督権限を行使することが許容される前提となるべき重大な危険の存在が認められ、薬務行政上、その防止のために必要かつ十分な措置を取るべき具体的義務が生じたといえるのみならず、刑事法上も、非加熱製剤の製造、使用や安全確保に係る薬務行政を担当する者には、社会生活上、薬品による危害発生の防止の業務に従事する者としての注意義務が生じていた。

 そして、防止措置の中には、必ずしも法律上の強制監督措置だけではなく、任意の措置を促すことで防止の目的を達成することが合理的に期待できる時は、これを行政指導というかどうかはともかく、そのような措置も含まれるというべきである。本件においては、厚相が監督権限を有する製薬会社等に対する措置であることからすれば、そのような措置も防止措置として合理性を有するものと認められる。

 被告は、エイズとの関連が問題となった非加熱製剤が、生物製剤課の所管に係る血液製剤であることから、厚生省における同製剤に係るエイズ対策に関して中心的な立場にあった。厚相を補佐して、薬品による危害の防止という薬務行政を一体的に遂行すべき立場にあったのであるから、被告には、必要に応じて他の部局等と協議して所要の措置を取ることを促すことを含め、薬務行政上必要かつ十分な対応を図るべき義務があったことも明らかである。

 かつ、高裁が指摘したような措置(非加熱製剤の販売中止・回収や、医師に不要不急の投与を控えさせる措置)を取ることを不可能または困難とするような重大な法律上または事実上の支障も認められないのであって、被害者の死亡について専ら被告の責任に帰すべきものでないことはもとよりとしても、被告においてその責任を免れるものではない。

 以上と同旨の高裁の判断は、正当なものとして是認できる。