寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ⑮(相続人への遺贈では)

2010年06月04日 | 自筆証書遺言

今回は、遺言書の記載についての注意点です。

キーワードは…

①特定の相続人にあげる。
②特定の財産をあげる(特定遺贈)。
③「相続させる」と書く。

要するに…

特定の財産特定の相続人にあげる、という遺言書を作成する際には、「だれだれに○○をあげる」ではなく、「だれだれに○○を相続させる」と記載しましょう。

以下、その理由のご説明です。

たとえば…。

AとBの夫婦に、子どもCとDがいました。
遺言者はAです。
Aには、不動産(千葉県市川市○○のマンション)があります。

特定の相続人はB、特定の財産は千葉県市川市○○のマンションです。

このケースで、

①Aが「Bに千葉県市川市○○のマンションをあげる(譲り渡す、遺贈する、贈与するetc)」という遺言書
 を作成した場合(あげる型)。
②「Bに千葉県市川市○○のマンションを相続させる」という遺言書を作成した場合(相続させる型)。

とで、Aが死んだ後の手続を比較してみましょう。
なお、検認等が必要な場合には、それらを済ませなければなりません。

①あげる型の場合

Aの死亡により、マンションはBに遺贈されたことになります。
したがって、マンションの名義を、AからBに変更する手続をとります。
この手続を、遺贈による所有権移転登記手続と言います。

この名義変更の手続ですが、2つのパターンが考えられます。
それは、遺言書に、遺言執行者の記載があるか否かによります。
遺言執行者とは、遺言の効力が発生した後、遺言書の内容を実現するために活動する代理人です。

・遺言執行者の記載がある場合
 遺言執行者とBとで手続をとります。
 マンションの権利証、遺言書、遺言執行者の印鑑証明書、AとBの戸籍謄本、AとBの住民票が必要
 です。
・遺言執行者の記載がない場合
 Aの相続人であるB、C、Dの全員で手続をとります。
 マンションの権利証、遺言書、BCDの印鑑証明書、Aの出生から死亡までの戸(除)籍謄本、BCDの
 戸籍謄本、AとBの住民票が必要です。

②相続させる型の場合

Aの死亡により、マンションはBが相続したことになります。
したがって、マンションの名義を、AからBに変更する手続をとります。
この手続を、相続による所有権移転登記手続と言います。

この名義変更の手続は、Bが単独で行えます。
必要なのは、遺言書、AとBの戸籍謄本、AとBの住民票だけです。

相続させる型の方が、Aの死亡後の手続が簡単です。

…「自筆証書遺言の身だしなみ⑯(共同遺言の禁止)」につづく。