寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ⑰‐2(遺言執行者って?)

2010年07月07日 | 自筆証書遺言

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために活動をします。

例えば。
「甲不動産をAに遺贈する。遺言執行者はBとする。」
との遺言書があった場合、遺言執行者への就任を承諾したBは、甲不動産をAに取得させるべく、その登記名義をAに変更する手続をしなければなりません。

すると、遺言執行者と相続人との間で、衝突が起きる可能性があります。

「何でAなんかに不動産をやらにゃならんのじゃ。ワシは相続権を持っとんのじゃぞ。その遺贈、邪魔しちゃる。」
と考える相続人だって居るでしょう。

したがって。

民法1013条
「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」

と定められました。

この条文は、判例により、この様に考えられています。
「遺言執行者ある場合、相続人が相続財産につきした処分行為(売却等)は、絶対無効である。」
~コンサイス判例六法平成19年版(三省堂)

そして、「遺言執行者ある場合」とは、実際に遺言執行者が就任を承諾する前も含むとされています。

一方、遺言執行者の地位については、こんな条文があります。

民法1015条
「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」

この条文からだと、遺言執行者は相続人の指示に従わなければならない様に読めますが、そうではありません。
遺言執行者には、「遺言の内容を実現する」という使命があります。
したがって、相続人の利益と遺言内容の実現とが衝突する場合には、相続人の利益を無視し得ます。

しかし、だからと言って完全に相続人を無視して職務を行う事はできません。
遺言執行者は、相続人からの請求があれば、いつでもその職務遂行の内容を報告しなければならない義務があります。

また。
民法1011条1項
「遺言執行者は、(就任後)遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。」

とされていますし、その作成についても、

民法1011条2項
「遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。」

ともされています。

ちなみに。
サラッと書いてしまいましたが、民法1011条の「相続財産の目録の作成」は、遺言執行者に就任したら真っ先に取りかからなければならない仕事です。

次回は、遺言執行者の職務について、ご説明します。

…「自筆証書遺言の身だしなみ⑰‐3(遺言執行者って?)」につづく。