前回説話にあげた「転落する女」の典型が、夕顔と思えます。
彼女が、光源氏の乳母の邸の近く、五条の小家に来るまでは、
三位中将の娘 上流の端っこです。乳母が2人いたのは上流っぽいです。
→父母の死 乳母が婿などを探したのでしょうか。
→頭中将の愛人 娘も生まれたが、お坊ちゃまの夫は気配りが足りない。
→正妻の脅迫 弘徽殿女御の妹ですから、迫力あるでしょう。
→西の京の乳母の家 夫に危機を婉曲に訴えたのに、通じません。しかも、
来るのも途絶えがち。身の危険を感じたのかも。
→五条の小家
ここで、有名な場面になります。舞台みたいです。
上手に、乳母邸の大きな門。庶民の住む町並み。その中で、中央から下手に、
こぎれいな印象で、簾越しに女たちがやや上手の光源氏を覗く小家。板壁に匍う夕顔の花。
光 をちかた人に物申す
随身 かの白く咲けるをなむ夕顔と申し侍る
光 ひとふさをりて参れ
決まってますね。歌舞伎にそのままなりそうです。なってるのかな?
この夕顔に、「無意識の娼婦性」を読む方もおいでです。女たちの覗く家は、遊女の宿のように見えるとかも。
ご承知のように、夕顔の花を取りに行った随身に、きれいな召使いの少女が扇を渡します。無断で折り取ろうというのは、さすがに身分です。
扇の歌 ひょっとして光り輝くあなた様は?(源氏の君では?)
返歌(答えをずらして)近寄ってみなければ、あなたが誰だかわからない。
後に描かれる夕顔の造型からすると、積極的すぎる歌ですが、彼女の置かれた境遇、女房たちの意志を考えればあり得ることです。夕顔は、光源氏を誘ったのです。
そして光源氏は、「雨夜の品定め」に触発されて、場末とも感じられる五条で、「下の下」と思われる女の誘いに乗ったのです。