狐・狸・祭

フラメンコの故郷よりマイペースに発信、カンタオーラ小里彩のブログです

第48回 フィエスタ・デ・ブレリア

2015年09月06日 03時05分58秒 | 日記
ローレがヘレスで歌うということで、今年は久しぶりにフィエスタ・デ・ブレリアを鑑賞しました。

最近目が悪いソリさんからは「遠くだと良く分からないから一列目で見たい!門が空く時間には並んでいたい!」との気合の入った指示。10時スタートのところ8時に待ち合わせ。久しぶりにフラメンコが見られるので私も張り切って並びました。「あこがれの歌姫を近くで存分に聞いて来い」と子守を引き受けてくれた彼には大感謝です。

例年、闘牛場で行われていましたが、昨年はマメロン広場で無料開催、今年は有料(20ユーロ)に戻り、初めてアルカサルで行われました。

ローレは独特の静けさと重みを持って舞台に登場し、ローレ・イ・マヌエル時代のナンバーに新しいアラブ音階を取り入れたタンゴ、アレグリアスなどを織り交ぜて歌い、観客はその独自の世界に少しずつ引き込まれて行きました。
先だって亡くなったマヌエル・モリーナに捧げたロメロ・ベルデ、ヘレスにて歌うということでモライートに捧げたベルデ・アセイトゥーナ。
妹のアンディーナ・モントージャも登場し、コーラスを交えて歌い上げるスタイルはいかにもモントージャ家のフラメンコここにありという貫禄でとてもよかったです。
ローレはアントニオ・マチンやチャベラ・バルガス、メルセデス・ソーサなどフラメンコではない巨匠の歌を歌う試みも多くしており、音楽ファンとして個人的にはとても興味深いのですが、今回はレパートリーの中からよりフラメンコらしいテーマのみを扱って歌っていたようでした。

続いてヘレスのご長老チームによるクアドロ。私としてはソリさんもプログラムに入れていただきたかったと残念に思っていたのですが、始まってまもなく舞台からどなたか機転を利かせてくださったのか「ソリはどこだ?」と搜索が!途中から舞台に参戦、ミヒータ(父)の歌で風を切るように身軽に踊り出て行きました。ああ、あの時は我がことのように嬉しかったなあ~。ソリさんが「自分はギャラがなくても踊りたい、踊るのが自分の生きがいだからただそれだけなのに、こういう時声をかけてもらえない」とこぼしていたのを知っていたので・・・。(ん?さては一列目に座りたかったのはこのためか?)

友人のKさんによると、税金の関係か出場できる人数が決まっていて以前は皆舞台に上がっていたがコントロールが厳しくなって自由が効かなくなってしまった。そのため「偶然のノリでこうなったので仕方がない」という風に見せかけないとプログラムに載っていない人は舞台に簡単に上がれないそう(事前の口約束ができないとのこと)。
このクアドロでは病身にもかかわらず深みのある声で気合を感じさせてくれたリポールの歌が心に響きました。大舞台で音響が遠いのか、音程外しまくりのチコ・パコーテにドミンゴとニーニョ・ヘロが焦ってカポダストを変えて音程を探す優しいプロフェッショナルな姿もまたをかし。皆いつまでもお元気で長生きしていただきたいものです。

続いてレメディオス・アマジャ!カリスマを感じさせる堂々たる演技は実に爽快でした。声の使い方が見事で、どんな雰囲気のレトラを歌っても聞かせます。そして引っ張った挙句に爆発力あるレマーテに持ち込みひと振り踊るタンゴやブレリアの粋なことといったら。初めてこの人のタンゴを聞いた?年前、「タンゴでも歌う人によってはカンテホンドになるのだなあ」と思いましたが今回もしみじみそう思います。

印象に残ったのはトルタが生前ルイ・デ・ラ・ピカに捧げた素晴らしいタンゴを歌っていましたが(ルイ・デ・ラ・ピカのブレリアのレトラを作品中でタンゴで歌っていたりして、とても良い曲です)、その歌詞を引用してブレリアで見事に歌い上げ、今度は彼女からトルタへと捧げていました。きっと天国ではルイもトルタも大喜びで聞いていたのではないでしょうか?歌唱力のみならず、このようなセンスの良さもフラメンコファンをうならせます。その後もカマロンに捧げた歌詞へと続き、ますます大きな盛り上がりを見せました。

二部はヘレスの踊り手、マヌエラ・カルピオの率いるクアドロでブレリア、ソレアなど。初めて見た踊りでとても興味深かったです。どことなくキャラはマドリードの踊り手ラ・タティを彷彿させるような・・・。
ブレリアに関してはキニの存在によってコンパスがぐっと多面的に縁どられるのをいつも感じますが、今回もよい味を出していました。
終盤でファニジョーロの歌に合わせてひらりと踊り出たパルメーロの弟さん(お兄さんかも?)のカチョーロの動きがまた良かった!ソックリな二人が仲良しの二匹の熊さんのように向かい合ってコンパスを醸し出す姿はとても絵になり楽しい一瞬でした。

続いて全員によるフィン・デ・フィエスタがあり、終了は午前2時。出るときちょうどタイミングよくローレに出会うことができ、ほんの一瞬ですがご挨拶できました。これで日本に帰国するパワーがチャージできた気がします。

これからも良いフラメンコに出会えますように。