狐・狸・祭

フラメンコの故郷よりマイペースに発信、カンタオーラ小里彩のブログです

ボデガ見学へ

2014年01月23日 00時00分11秒 | 日記
cada vez que te has bebido gitana
te acuerdas de mi querer
quiera dio que tu te bebas
Sanlucar Puerto y Jerez

私の大好きなフラメンコの歌詞の一つですが、意味は「酔ったときに自分との恋を思い出してくれるというアナタ、是非ともジャンジャン飲んで欲しい!!」いう感じ。名前をつなげて読むだけで「ジャンジャン飲む」という意味になるだけあって、Sanlucar de Barrameda、Puerto de Santa Maria、Jerez de la Fronteraの3都市はボデガが多いことで知られています。

日本人の友人Mさんはベネンシアドーラで、シェリー酒についての本を執筆中。シェリーをこよなく愛し、情熱をもって仕事に取り組まれているとても素敵な方です。どちらかというと普段はおっとりと穏やかな雰囲気の彼女ですが、ベネンシアを持ってシェリーを注ぐ姿は凛として、まるでお酒の国の妖精のようだと思ったものです。そんな彼女の取材に同行し、今日はPuertoにあるOSBORNEという老舗のボデガ(酒蔵)見学をさせていただくことに。

フロール(酵母)の研究を15年ほどなさったというシェリー博士のようなIGNACIOさんと、一族のご令嬢で渉外担当のROCIOさん。お二人から色々な興味深い話を聞かせていただき、Mさんのおかげでとても楽しいひとときを過ごしました。

3つの都市で製造方法は一緒なのに味の異なるシェリーができるのは微妙な気候の差によるものだとか。人間でもたとえば海辺の町の人はおおらかな性格が多く、内陸の街は保守的な人が多かったりしますが、酵母たちも全く同じこと。育ちによって各々キャラが違うのです。なんだか親近感を覚えるではありませんか!温度、湿度、酵母の活動状況をコントロールするための空気中酸素の濃度、アルコール度数などなど、デリケートな品質管理をして、「ストレスを除いてあげることでいい仕事をしてくれる」っていう部分も我々人間と一緒ですね。

200年も前から続く酵母たちの息吹。世代交代されながら脈々と古樽という小宇宙の中でプチプチ酵母たちの命が受け継がれて行くのだと思うと、なんともロマンチックだ。

また、ボデガ内には闘牛の古いポスターなどスペイン最古を誇るコレクションが飾られていた。闘牛もフラメンコも、お金のあるボデガ経営者がパトロンとしての役割を担い発展していった芸術なので、切っても切り離せない深い関係があるのだ。

文化とは、ひとつの角度から見るものではなく、時間をかけて味わい感動しながら学んでいくものなのだなあとしみじみ感じつつ帰途についたのでした。

後日談:Mさんの勤務するヘレスのボデガも見学させていただきました。実験的に、ベネンシア(長い柄杓のような道具で、シェリー酒を高い位置からカタビーノという専用のグラスに注ぐ行為。シェリー酒を酸素に触れさせることでより美味しく飲めるそうです)をしたオロロソとしないでそのまま注いだ同じオロロソを飲み比べさせていただきました。驚いたことに全く香りの開き方が違う!ド素人の私でもはっきり違いに気づくことができました。すごいですねえ。まさに妖精の魔法。奥の深い世界です。