貴重な情報源は、イタ飯屋のオーナーシェフ

　　　　　　　　　　　　　　　　　（下りてみたいけど、戻ってこられるかしら？）

　　　　　　　　　　　　　　　★登場人物：オーナーシェフ（）/私（）


お店に入って、にこやかに、いつものカウンター席に座る私を見て、


）あ、いらっしゃい。今夜は、ご主人は？

）泊まりなの。

）・・・・・・ふ－ん。また（あんたは）、サボリかぁ。


まぁ、なんて失礼な男なの。ダイジな常連客に向かって、サボリだなんて。
こうしてわざわざ来て、お店の売り上げに貢献してあげてるじゃないのよ。


　　　・・・・・・・・・・・・・


このオーナーシェフ、夫がワーカーホリックだって知っているから、泊まりも、仕事だ
と勘違いして、同情しているのだ。出張か、夜勤だとでも思っているらしい。

しかして、その実態は～→→竜宮城で鯛や平目の舞い踊りを見ながら、飲んで
騒いで大はしゃぎ、今ごろはストレス発散のワンマンショーを繰り広げてるわよ～～


　　　・・・・・・・・・・・・


）今夜は、娘も夕食はいらないって言うし、冷蔵庫もカラだしね。んじゃ、カルボナー
　ラをお願いするわ。あと、歯の調子がイマイチだから、メンは少しやわらかめにね。

）・・・また、・・・歯医者サボってるんですか？あれから、だいぶん経ちますよ。


　　　・・・・・・・・・・・・


）え、ええ。最初はマジメに通ってたんだけど、飽きちゃってね。もう、いいかなぁな
　んて思って。それに今は、小康状態だし。ははは・・・

）・・・・ったく子ども以下ですね。うちの子（小２）だって、健気に歯医者に通ってますよ。

）・・・・・・（やかましわ）・・・・・・


このエリアの詳細情報は、このオーナーシェフが私の情報提供者。彼は、お店にいなが
らにして、入れ替わり立ち代り来るお客さんとの会話の中で、すべてを把握している。


）先週ね、また食べ物情報誌が、取材させてくれって。

）ふ～ん。それはまぁ、良かったんじゃない。

）でも、あまり嬉しくないですよ。今でも手一杯だし、これ以上お客さんが増えても対
　応できないし。わざわざ店の休みの日に、取材のタメに料理作って、スタッフやカメ
　ラマンさんたちにも、食べさせなければならないなんてね。

）んじゃ、そんなテマヒマかかるのなら、断れば働きたくないんでしょ、どうせ。いつ
　だって、も～お～疲れた、も～お～働きたくないって、言ってるじゃない。

）い、いや、断ると感じ悪く思われるかとも思うし・・・（涙目で軽くニラミつける店主）


　　　・・・・・・・・・・・・



だからね、せっかくのアツアツ・カルボナーラが、もう、冷めて不味くなってるじゃないの～～
これでも帰りにお金を払う訳だから、吐きそうになりながらも死ぬ気でカンショクしたわ

ん？もしやこの男、さっきから食べようとすると話しかけてきて。。。これはきっと、冷めた
のを食べさせるイヤミな陰謀かも。当たりは柔らかいけど、なかなか喰えないヤツだわ


その後、この店のカウンターにおいては、カルボナーラは”私のメニュー表”から消えた
のであった





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