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海外協力隊への応援歌

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2010年1月帰国、旧青年海外協力隊、イエメン、青少年活動隊員

青年海外協力隊 派遣前訓練

2013-03-25 | Weblog
【修士論文「民間企業の青年海外協力隊現職参加について-希望する社員への対応に関する一考察」(Copyright: 吉備国際大学大学院(通信制)連合国際協力研究科 国際協力専攻 学生番号:M931003 All rights reserved.)】

第2章 企業が支援する理由
- 企業の社会的責任からの考察 -

2. 企業の捉え方
(略)
◆ 訓練から派遣まで

青年海外協力隊の試験に合格した隊員は、派遣前に65日間の合宿訓練を受ける。この派遣前訓練は、隊員に提供される非常に貴重な経験のひとつである。この訓練は、独立行政法人国際協力機構法に基づいて実施される 。訓練も選考の一過程と位置付けられており、隊員になるためには訓練修了が要件となる。いっしょに訓練した隊員候補生は、いわば同期隊員で、訓練後約2週間後を目処に任国へ出発する。訓練は年に4回、主に長野県にある駒ヶ根訓練所と福島県にある二本松訓練所で行われている。4月に訓練が開始される隊次は1次隊、7月開始は2次隊、10月開始は3次隊、1月開始は4次隊と呼ばれる。この両訓練所でそれぞれ100名から250名程度の候補生が同時に訓練を受ける。訓練所は派遣国によって指定されるため、各々の訓練所には、隊員の職種8分野、さまざまな職種の隊員候補生がいる。平成19年度3次隊からはそれまで別々に実施されていた青年海外協力隊とシニア海外ボランティアの合同訓練が開始されたため、年齢的にも20歳から70歳前後までの隊員候補生がいっしょに訓練を受けている。

訓練所での隊員の構成は、平成19年度3次隊二本松訓練所の例では職種は7分野、58職種、男性62名、女性69名、計131名であった。内、青年海外協力隊隊員候補生は男性39名、女性62名、計101名、それ以外がシニア海外ボランティアである。候補生全員の平均年齢は男性40.6歳、女性30.4歳、総平均年齢35.2歳、このうち青年海外協力隊隊員候補生は男性28.3歳、女性27.7歳、総平均27.9歳であった。派遣予定国は3地域28ヵ国であった。

民間企業の実施する異業種交流会や各種セミナーでも、これほどバラエティに富んだ職種や年齢層が集まる交流会は見あたらないだろう。そこに参集している隊員候補生は、途上国での技術移転を志向して試験を受け合格した専門家たちである。訓練所を出たあとは、単独で見知らぬ途上国での活動がはじまるという緊張感のもと、同期の隊員候補生たちと65日間、寝食を共にし、語学と技術、知識に最後の磨きをかけ、派遣に備える。民間企業の社員もこの訓練所で同期の人材には大きな刺激を受ける。企業の中で大切に育てられ、企業名に守られてきた社員は、自分と同世代にこれほど多様な職種の専門家がおり、すべてが途上国での技術協力を志向したボランティアであることを目の当たりにし、それまで経験したことのない広い世界を垣間見ることになるのである。

語学修得もまた、隊員候補生となった社員に提供されるメニューのひとつである。派遣前訓練のメインは語学修得である。全387時間の講座の中で、語学が258時間、総時間の約2/3を占める。平成19年度3次隊二本松訓練所では英語を含めて13ヶ国語の訓練が実施された 。訓練所を出ると通常約2週間後にはその言葉しか通じない可能性のある国へ1人、もしくは多くても数名で赴くことになる。訓練が始まって1ヶ月になる頃から同じ語学クラスの隊員候補生とは現地語で話すように指示され、65日間の訓練を終えるころには、ある程度日常会話はできるようになる。現地へ行って相手の言うことがわからない可能性はあるが、こちらの伝えたいことは、少ない語彙でも初歩の文法を駆使すれば言える程度になる。

派遣前訓練では、語学のほかに、国際協力、ボランティア事業、安全管理・健康管理等の各種講座が提供され、隊員候補生が受講する。平成19年3次隊の訓練は目的別に6つの分野で構成されていた。語学講座、ボランティア講座、任国事情・異文化適応講座、安全管理講座、自主企画、その他行事やオリエンテーション等である。日本から国の事業として派遣されるボランティアとして必要最低限の知識は網羅されている。ボランティア講座の内容は、民間企業では企業側から提供されることはまずない内容であり、企業のグローバル化もすすむ中、最低限の国際関係、国際協力の知識は、企業人としても知っておいたほうがよい内容である。「国際関係と日本の国際協力」「人間の安全保障」のほか、JICAの事業内容や処遇、制度に関する講座、「青年海外協力隊事業の理念」といった講座が必修であった。異文化適応についての講座についても、「コミュニケーション手法」「異文化の理解と適応」「異文化体験シミュレーション」といった異文化に関する必修講座に加え、「生活技法講座」「イスラム教とは何か」「日本の近・現代史」といった講座も提供された。安全管理講座は派遣先が途上国であるという特徴を表し、感染症や狂犬病、交通安全に関する知識や初歩の救急法を習得する内容となっている 。

このほか、訓練所では隊員による自主活動として時間外に各分野の専門家たちが、途上国に行ったときにすぐに役立つ知識などを提供しあう。例えば日本語教師による超初級用日本語ワンポイントレッスンの仕方講座などがあった。また、特別行事として皇室接見もあった。予防接種は毎週火曜、講堂で該当感染症やそのワクチンについての副作用等を含めた説明を受けた後、A型肝炎2回、B型肝炎2回、狂犬病3回、破傷風1回のワクチン接種が行われた 。

(中略)

訓練所の最終日には修了式と壮行会が行われる。家族が迎えに来る隊員もいて会は盛り上がる。どこかにこれから任地で一人で活動することへの緊張感を持ちながら、65日間をいっしょにすごした候補生たちと交わす旅発ちの言葉は「ありがとう」と「生きて帰ってこようね」である。平成19年度3次隊二本松訓練所で訓練を受けた隊員たちは訓練修了数週間後、自治体の表敬訪問を経てそれぞれの任地、28カ国へ向かった。

◆ (中略)

平均年齢27~28歳、入社3年~10年目、民間企業の貴重な戦力であり、企業人としても育ち盛りである社員を2年余りもの間、青年海外協力隊活動に参加させるのであるから、企業としては、社員自身が自己実現のために企業を休職してボランティア活動に参加するとはいえ、自社でその社員にその2年余りで提供できるものと、少なくとも同等か、できればそれ以上の価値のある経験を得てきてほしいと考える。企業の勤務の中では出会えない人と出会い、社員の人生を豊かにするような活動ができることを望みながら派遣する。他人の釜の飯を食べ、たくましくなって戻ってこい、という、いわば武者修行に出すような心持であろう。海外協力隊事業は、企業のこの思いに応えることが可能な事業である。

修論(1) 民間企業の青年海外協力隊現職参加について

2013-01-27 | Weblog
 協力隊から帰国し、2012年3月、通信制の国際協力修士課程を修了しました。
 提出したレポートなどはおいおい掲載していこうと思っていましたが、修士論文も支障のない範囲で掲載したいと思います。本文は、学校へお問合せいただければ閲覧可能だと思います。

 <修士論文>
-------------------------------------------------
  民間企業の青年海外協力隊現職参加について
  - 希望する社員への対応に関する一考察
-------------------------------------------------
   吉備国際大学大学院(通信制)
   連合国際協力研究科 国際協力専攻
   学生番号:M931003

 ※ 引用等される場合の出典は上のとおりです。
   引用に耐えるような内容があれば光栄です。
   さらに詳細が必要な場合は、学校へお問合せください。
   Copyright (c) 2012-2016 「イエメン 風のたより」ブログ管理者. All Rights Reserved.

<謝辞>
 本論文の執筆にあたり、お世話になりましたすべてのみなさまに、心より御礼を申し上げます。
 主指導教官として最初から最後まで丁寧にご指導をいただきました元研究科長高橋睦子先生、メルヴィオ・ミカ先生に。
 的確なご助言をいただきました研究科長末吉秀二先生に。
 そして2年間にわたり国際協力についてのご指導をいただきました橋本由紀子先生はじめ吉備国際大学大学院(通信制)連合国際協力研究科のすべての先生に。
 在学した2年の間サポートし続けてくださった事務局スタッフの方々に。
 応援し続けてくださった先輩のみなさま、そして励ましあった仲間たちに。
 ご多用の中、インタビューやアンケート、問い合わせ等に快くご対応くださった全ての皆様に。
 企業人としてこれまで育ててくださったすべての関係者のみなさま、協力隊関係者のみなさま、協力隊活動にあたり惜しみない支援をしてくださったすべての方々に。
 そして、家族と、論文の執筆の間長期の無沙汰をそっと見守ってくれた友人たちに。
 みなさまのお陰で本論文を完成することができました。ありがとうございました。

修論(2) 目次

2013-01-27 | Weblog
【修士論文「民間企業の青年海外協力隊現職参加について-希望する社員への対応に関する一考察」(Copyright: 吉備国際大学大学院(通信制)連合国際協力研究科 国際協力専攻 学生番号:M931003 All rights reserved.)】

<目次>
第1章

第2章 民間企業の現職参加対応状況
1.派遣状況
2.現職参加の必然性
3.企業の対応状況
 3.1. 現職参加支援策の4類型
 3.2. 休職制度導入状況
 3.3. 現職参加規定内容
 3.4. 企業との交渉
 3.5. 企業の対応事例

第3章 企業が支援する理由
1.企業の社会的責任
2.企業の捉え方
 2.1. 企業が果たそうとしているCSR
 2.2. 社員にもたらされるもの
3.実際果たされているCSR
 3.1. 青年海外協力隊はどのようなボランティアか
 3.2. ボランティア事業評価調査の結果に見る青年海外協力隊の国際貢献
 3.3. 協力隊の活動によって日本にもたらされたもの
 3.4. ボランティア事業評価調査の結果に見る途上国との友好親善・相互理解の深化
4.企業にもたらされるもの
 4.1. 本業に直結している例
 4.2. 活動が復職後の業務に直接役に立っている例
 4.3. 展開例
 4.4. 社員の成長と企業にもたらされるもの

第4章 企業が支援を見送る理由
1.企業の負担
 1.1. 費用負担、事務負担、安全確保
 1.2. 良質労働力の不在期間
2.企業のリスク
 2.1. 社員の退職リスク
 2.2. 継続雇用しなければならないリスク
 2.3. どんどんあとに続く社員が出てくるリスク
 2.4. 広報的なリスク
3.支援見送りの決断による影響の少なさ
 3.1. 協力隊認知度と評価の低さ
 3.2. ボランティアに対する理解のばらつき
4.支援を見送るその他の理由
 4.1. CSRの方向性とのギャップ
 4.2. グローバル人材像間のギャップ
 4.3. 研修としての可能性

第5章 結論
1.結論
2.新しい動き
3.おわりに

図表出典(複数出典で脚注に示していないもの)
謝辞

引用文献、引用ウェブページ
主要参考文献、主要参考ウェブページ

添付資料

修論(3) 第1章

2013-01-27 | Weblog
【修士論文「民間企業の青年海外協力隊現職参加について-希望する社員への対応に関する一考察」(Copyright: 吉備国際大学大学院(通信制)連合国際協力研究科 国際協力専攻 学生番号:M931003 All rights reserved.)】

※ テキストコピーのため、字下げなどの処理がされていません。
  読みづらい点ご了承ください。

第1章

1.研究の課題
青年海外協力隊事業には、勤務先のある有職者が退職しないで参加することのできる「現職参加」という制度がある 。民間企業の社員で勤務先を退職せずに協力隊活動に参加する隊員には例外なくこの制度が適用される。毎年100人近い民間企業の社員がこの制度の下で派遣され、帰国後はその企業に復職する。一方で、毎回、勤務先の企業からこの制度の適用を認められずに退職したり、無給休職で参加する例も継続している。
45年以上にわたる国家事業であり事業開始当初より現職参加の実績もある青年海外協力隊事業において未だにこのように企業の対応にばらつきがあるのはなぜか、またそれが容認されているのはなぜか。これが、本研究で解明したい課題であった。

2.研究の背景
青年海外協力隊事業は、技術協力による開発途上国の発展への貢献と友好親善、派遣される日本の青年育成を目的とする国家事業である。独立行政法人国際協力機構(Japan International Corporation Agency、以下JICA )により実施され、予算は日本政府の政府開発援助(Official Development Assistance, 以下ODA)である。1965年(昭和40年)に初代隊員が派遣されてから45年以上、3万5千人を超える隊員が派遣されている。隊員の平均年齢は27~28歳、訓練及び派遣は年4回実施され、現地での任期は通常2年である。
隊員の募集は年2回、20歳以上39歳 の日本国籍を持つ青年が広く一般から募集され、現在の職業の有無にかかわらず自由に応募できる。その中で、勤務先を退職しないで参加することを「現職参加」と呼び、これを実現できる制度が「現職参加制度」と呼ばれる。民間企業の社員で勤務先を退職せずに協力隊活動に参加する隊員にはこの制度が適用される。
協力隊事業開始当初より途上国からの要請を満たすのに必要な人材を質、量ともに確保することは、日本全国からの公募といえども無職の人からだけでは難しかった。しかし、終身雇用という日本の雇用環境の下で2年のボランティア活動への参加のために退職することは、有職者にとってはリスクが大きく、休職という形で退職しないで参加できることが望まれた。
これを解決するのが「現職参加」であり、「現職参加制度」であった。社員は勤務先を退職しないで協力隊活動に参加でき、企業は社員を失わずに社員の国際協力を支援することができる。国は企業で実務経験を積んだ、途上国の要請を満たす能力と技術を持った隊員を派遣することができ、その隊員の帰国後の就職先の心配もない。
現職参加者に対する民間企業のスタンスは、一般的に一定期間社外業務に従事するための休職を認可であり、協力隊活動に参加したいと手を挙げた社員に、自社の支援制度を適用して2年間の個人的なボランティア活動に従事するための休職を認めその後の復職を保証するという支援のスタンスである。この支援の根拠は、CSR (Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任、以下CSR)を果たすことであり、社員は企業のCSR上のステークホルダーのひとつである。社員の協力隊活動への現職参加を支援することが企業の基本的なスタンスであるが、青年海外協力隊事業の内容上、その支援が国家事業への協力、国際協力、国際貢献にもつながることになる。
一方で、協力隊への参加志願者が、所属先の企業から現職参加制度の適用を認められずに退職して参加する例、有給休職を可能にする協力隊事業の制度の適用が認められず無給休職で参加する例が継続しているなど現状は企業による対応の振れ幅が大きい。CSRの考え方は、消費者の購買行動に影響を及ぼすほど日本の一般社会にも浸透しており、企業でも自社の存続要件として看過できなくなっている。青年海外協力隊事業は歴史もあり、現職参加を支援するJICAの制度も比較的整い、その利用実績も多く、民間企業にとっては社員の多様性を認め自己実現を支援する意味でも無視できないCSRメニューのひとつである。この環境の中にありながら企業によって対応の差が存在し、それが許容されているのはなぜかという疑問が浮上し、本研究のテーマに至った。

3.研究の目的と意義
本研究は、青年海外協力隊事業への現職参加を希望する社員に対する民間企業の対応の現状を把握し、対応に至る理由を解析することにより今後の企業の対応について考える一助とすることを目的とする。
また、研究の意義としては、次項のように先行研究の調査の中で民間企業の視点からの青年海外協力隊への社員の現職参加派遣についての研究は見当たらなかったため、これまでの研究にこの視点を補うと考えられる。

4.先行研究について
先行研究の調査では、「青年海外協力隊」を題に含む論文は多数存在するが民間企業の現職参加という視点で取り上げた研究を見つけることはできなかった。青年海外協力隊に関する文献調査については、社団法人青年海外協力協会(Japan Overseas Cooperative Association, 以下JOCA)の受託を受けて実施された東京大学大学院総合文化研究科による調査で詳細に報告されている 。
国立情報学研究所CiNii論文検索サイトで検索語「青年海外協力隊」の検索では450件表示された が、本研究と同様の内容、「青年海外協力隊」「現職参加」「民間企業」の3つのキーワードをタイトルに含む論文を検索したところ該当する論文は表示されなかった。
450件の研究の内容は、青年海外協力隊事業内容の研究、青年海外協力隊隊員の活動内容やその効果に関する研究、活動中の隊員の状態について異文化適応、メンタル面やストレスについての研究、隊員の帰国後についてのキャリアパス、日本再適応、社会還元に関する研究等であった。
「青年海外協力隊」「民間企業」で検索すると、いくつかの論文が表示されたが、内容は青年海外協力隊の民間企業の社員の現職参加についてではなく、民間企業が青年海外協力隊員と連携して行った事業等についての研究や論文であった。「青年海外協力隊」に「現職参加」という検索語を加え表示された論文は、「現職参加」の対象である公務員、教員と民間企業のうち教員への現職参加制度導入に関する論文だった。このうち、文部科学省のプロジェクトでの斉藤泰雄の報告 は、研究を開始した当時、資料を暗中模索していた中で最初に現職参加についての歴史や考えかたの糸口となった報告書でその後も研究の基本としてたびたび参照し非常に参考になった。
範囲を広げインターネットの通常検索を行った。「青年海外協力隊」「現職参加」「民間企業」の3語に加え、「論文」という検索後を追加して検索を行った結果 、1件本研究と非常に類似している題を含む修士論文が存在したが非公開であったため参照できていない 。また、現職参加自体を扱った研究ではないが、次の2つの論文が非常に参考になった。1つは岡部恵子の修士学位論文 で、第2章「青年海外協力隊の変容」部分は協力隊事業の開始に先立つアメリカ平和部隊の創設から協力隊事業の開始、その後の変容について体系だって詳細に述べられており、協力隊事業の基礎概念や変化の流れを理解する上で非常に参考になった。もう1つは堀江新子の博士論文 で、3つの点で非常に参考になった。1つは他国との比較等興味深いデータも交えて詳細に述べられていた青年海外協力隊事業の概要の把握、2つ目は、筆者が一旦断念した青年海外協力隊隊員報告書を隊員活動の重要な情報源として収集し、丁寧に読み込み分析、解析して結論に至っていること、そして3つ目は、筆者が研究を始めてから、初めて現職参加について否定的な意見の所在 の情報を示していた資料であったことである。斉藤の報告を含め、研究開始当初にこれら3本の報告書や論文に出会い、手がかりとなって資料収集も広がっていった。
以上のように、先行研究の調査では本研究の扱う青年海外協力隊への現職参加について民間企業の対応という視点での研究は見当たらなかったため、本研究は、青年海外協力隊事業が国家予算であるODAによって実施されている公共事業であることから、この事業についての記録や評価といった公開された資料の存在が予想され、次の方法でこれらの情報収集に基づく論考を試みることとした。

5.研究の方法
本研究にあたっては、青年海外協力隊事業に関連して公表、開示されている誰でもアクセスが可能である情報、資料、データを基本として収集し、これに基づいて考察を行った。これらの情報源は、青年海外協力隊が政府のODA予算によって実施されている公共事業であることからその公共性を考慮し、客観性、中立性、公平性、公正性、透明性のある情報を取得するよう配慮した。
主な情報源として、青年海外協力隊事業についてはJICA(国際協力機構)や協力隊の支援団体、政府関係から開示されている資料や調査研究から、民間企業については、経済団体連合会(以下、経団連)や経済同友会(以下、同友会)等の資料から収集した 。公開されているデータが古い場合、該当団体に直接問合せをして更新されたデータを入手したものもある。更新されたデータが入手できなかったものについては、入手できた範囲で最新のものを利用し、データの期日を明記した。また、協力隊活動における具体的な内容等は、公開、公刊されている資料のほか、青年海外協力隊隊員に配布される資料等を参照したものもある。これらの資料を利用する際には、内容に大きな変更がないかJICAに問合せをし、変更がある部分は内容を更新して利用した。
情報管理については細心の注意と配慮を行う。企業や個人から得た情報で非公開情報の場合は個人、企業が特定されないよう配慮する。書き起こしたデータの管理も、外部へ漏洩することのないよう情報管理には細心の注意を払い、個人の同意を得て保持する資料以外は研究の終了後に完全に滅却する。また、筆者は青年海外協力隊OGであるため、2011年11月に青年海外協力隊事務局と電子メールのやりとりにより「青年海外協力隊隊員の派遣に関する合意書」第7条(禁止行為)規定に基づき必要な届出等手続きについて青年海外協力隊事務局に確認したところ、活動期間を終えている元隊員の修士論文提出についての届出は不要であるが、本文の中でJICAの資料を使用する際は出典を明記すること、また、個人が特定される記述で現在活動中の隊員の情報を記載する場合には、隊員自身が所轄の在外事務所に届出を出して承認を得る必要があるとの回答であった。これら留意点に従って適切な情報管理を行うにあたり、本論中、出典が複数にわたる数点の図表については、脚注ではなく巻末に図表出典を添付した。

6.本論文の構成
本論文は、5章から構成される。
第1章では、研究の課題、研究の背景、先行研究調査の状況、研究の方法、目的と意義、論文の構成を記述し、本研究の枠組みを提示した。
本論第2章は「民間企業からの現職参加状況」として、青年海外協力隊への民間企業からの現職参加について、派遣実績や企業の制度整備状況等から企業の対応の現状を把握する。
第3章「企業が支援する理由」では、民間企業が現職参加を支援する理由を主にCSRの観点から考察する。企業は一般的に、青年海外協力隊事業への社員の現職参加については、社員というステークホルダーの自己実現への支援というスタンスである。が実際は、青年海外協力隊事業は国家事業であり、その協力先が途上国であることから、国家や途上国、国際社会というステークホルダーへの責任も果たすことになる。企業の支援によってこれらそれぞれのステークホルダーにもたらされるものを確認し、この支援によって企業がどのようなCSRを果たしているかを検証した。また、事例からこの支援によって企業自身にもたらされる果実も考察した。
第4章「支援を見送る理由」では、第3章で見たようにCSRが企業の存続要件と言われるほどの社会的要請の中で、民間企業が青年海外協力隊への社員の現職参加の支援を見送るという決断をする企業側の理由を考察する。社員の現職参加を支援することによって生じる企業の負担やリスク、企業への影響、その他の要因等からの考察である。
第5章「結論」では、以上の民間企業の青年海外協力隊事業への社員の現職参加支援の現状とその現状が容認されている理由について解析、検証、考察の結論を述べる。また今後について、青年海外協力隊事業の新しい動きに言及し、本研究を総括する。
巻末には、文献リストのほか、図表出典、資料を添付した。

注)<すみません、脚注の掲載は編集中です 2013/1/27現在>
1) 添付資料1「現職参加とは?」参考
2) 「JICA」の略称が使われるようになったのは、1974年(昭和49年)以降であるが、本文中はそれ以前もJICAと表記した。添付資料2「JICAの変遷(青年海外協力隊関連)」参考
3) 募集〆切日の満年齢
4) 東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム(2009)『国際協力における海外ボランティア活動の有効性の検証』青年海外協力隊(JOCA)受託調査研究報告書2007年-2009年,東京大学大学院総合文化研究科 (2012年12月10日取得, http://www.joca.or.jp/upload/item/43/File/report01.pdf).
5) (2011年12月4日再度取得, http://ci.nii.ac.jp/search?q=%E9%9D%92%E5%B9%B4%E6%B5%B7%E5%A4%96%E5%8D%94%E5%8A%9B%E9%9A%8A&range=0&count=20&sortorder=1&type=0).
6) 斉藤泰雄(2009)「青年海外協力隊『現職教員特別参加制度』の成立経緯と制度的特色」文部科学省平成21年度国際開発協力サポートセンタープロジェクト「青年海外協力隊『現職教員特別参加制度』による派遣教員の社会貢献と組織的支援・活用の可能性」第Ⅰ部第二章。
7) 2370件表示(2011年12月4日再度取得, http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4ADBS_jaYE318YE336&q=%e9%9d%92%e5%b9%b4%e6%b5%b7%e5%a4%96%e5%8d%94%e5%8a%9b%e9%9a%8a%e3%80%80%e6%b0%91%e9%96%93%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%80%80%e7%8f%be%e8%81%b7%e5%8f%82%e5%8a%a0%e3%80%80%e8%ab%96%e6%96%87).
8) 立教大学大学院修士論文(筆者名非公表、表題のみ)(2008)『民間企業社員の青年海外協力隊現職参加における現状と課題』(2011年12月3日取得, http://www.rikkyo.ac.jp/grad/i-c/program02.html#s08).
9) 岡部恵子(2006)「青年海外協力隊帰国後のキャリア形成―国際協力人材情報の共有にむけて」, 東京大学大学院総合文化研究所 超域文化科学専攻(文化人類学分野)「人間の安全保障」プログラム2006年度修士論文
10) 堀江新子(2008)「青年海外協力隊の国際協力活動に関する研究」, 山口大学大学院東アジア研究科 平成20年度博士論文
11) 添付資料6「経済団体概要」参考

協力隊秋募集

2012-10-21 | Weblog
2012年秋募集もいよいよ佳境です。締切日も近くなってきました。

みなさん、合格されるといいですね。
一次を通らないと二次へすすめませんので(当然ですが)、ぜひ応募書類はがんばって書いてください。

私は2007年に青少年活動で応募しました。
いろいろ迷いながらの応募だったことを思い出します。

応援しています!

協力隊〆切まであと3日です。

2011-11-05 | Weblog
 迷ってるかた、応募してみてはいかがでしょう。合格するかどうかわからないですし、合格して二次試験の通知がきてから考えることもできます。まずは一歩踏み出してみて、自分がどう感じるか見てみるというのもひとつかと。健康診断が間に合わないかな。とりあえず諦めないで、7日(月)に協力隊事務局へお電話ででも問合せをしてみるとか。(これが奏効するかどうかはまったくわかりませんが。半分お役所みたいなところもあるし無理だったらごめんなさいね。)
 あわてないで、次回春募集っていう手もありますけれどね。39歳の人はご注意ください。青年海外協力隊は、募集〆切日の年齢が39歳以下だったと思います。

青年海外協力隊 秋募集〆切 11/7です

2011-10-25 | business
協力隊への応募を考えているみなさん、平成23年度秋募集の〆切は11月7日です。
応募書類、がんばって書いてください。現職参加も応援しています!

青年海外協力隊平成23年度春募集期間変更(6/13まで)

2011-05-22 | business
青年海外協力隊平成23年度春募集の募集期間が変更になっていました。
6月13日までです。JICA、青年海外協力隊のホームページでご確認ください。

横浜の説明会に行ってまいりました。
天気予報どおり、午後だんだん雨模様、風も強く吹く中の説明会でした。

・・・
説明側の隊員OVの事前打合の折、JICA横浜のスタッフのかたから、世界130カ国から、震災へのお見舞いが届いているという話をきいた。世界190カ国あまりの国の中の130カ国、お金のない途上国からは、自分たちのつくった農産物を、という申し出もあったという。日本のODAがなかったら、これだけの国からの心の応援があっただろうか。1万円持っている人の10円と、2円しかない人の1円。食べるのにも困る国の人が、足りていない自分の食べ物を提供しようとしてくれる。

日本もかつては先進国の援助を受けて復興した国だ。いつまでも感謝の気持ちを持ち、その気持ちを世界にあらわし続けたい。

青年海外協力隊事業を、私は日本のとても大切な事業だと考えている。隊員たちの活動をよく見てほしい。日本人の勤勉さ、まじめさ、やさしさ、思いやり、協調性、人の見ていないところで手を抜かない自律心、見えないところまでそうじするきめ細かさ、途上国の人たちは、身近なところで同じ目線で活動する隊員をちゃんと見ている。

「先生、どうしてイエメンへ来たんですか?こんな国へ・・・」
いつだったか、学生に言われたことがある。彼ら自身も一部の高級官僚による汚職と不正、援助の着服などにより本来国益となるはずのものがどこかしらに消えていくという自分たちの国の問題を知っている。この状態がおそらくかわらないことも。そのときの私の返事はたしか、気の利いたことも言えず、「It was an assignment.」とでもいったと思う。JICAの指示だったから。事実だ。二次試験の合格通知に「派遣国;イエメン」と書いてあったから。

応募したときは、国はどこでもよかった。教育を受けたくても受けられない子供たちに寄り添い、その子供の未来を、その国の前途をいっしょに夢見たかった。assignmentはまったく違う内容だったが、結果的に、イエメンで、イエメン日本友好協会はこれ以上自分に合った配属先はないくらいどんぴしゃだったと思う。

おそらくかわらないからといって何もしなかったら絶対にかわらない。彼らは、そのことも知っている。その道のりが気が遠くなるほど遠いだけの話だ。

・・・
応募を考えているみなさん、青年海外協力隊の活動はたいへんなこともたくさんあります。危険もあります。「それでもやるのか?」自分によくきいてください。そして、やっぱりできない、となっても、それはそれでよいと思います。これだけ世間の協力隊事業に対する評価が低い中(評価できるほど知られていない)、そのほうがふつうで賢い選択です。もし、やらないですむのならやらないほうがいいでしょう。それでもやらざるを得ないくらい居ても立ってもいられなくなったら、あるいは、それでもやる、と決めたら、それはそれは魅力ある挑戦が待っています。ようこそ。

途上国で、「あなた」を、待っている人たちがいます。

本日、5/22(日)14:30、協力隊説明会(JICA横浜)

2011-05-22 | business
今日、青年海外協力隊説明会があります。
JICA横浜にて。
雨かと思っていたら東京は晴れています。
勝手にリンクを貼れないので、お手数ですが、詳細は「青年海外協力隊 説明会 横浜」で検索してみてください。トップに出てきていました。

<説明会日時>
5/22(日)
・ 10:30~ シニア海外ボランティア
・ 14:30~ 青年海外協力隊

<会場、アクセス>
JICA横浜体育館
〒231-0001 横浜市中区新港2-3-1

(1)電車
・ 桜木町駅から:
  汽車道、ワールドポーターズ、サークルウォークを通り徒歩15分
・ 関内駅北口から:
  馬車道経由でワールドポーターズ方向に徒歩15分
・ 馬車道駅(みなとみらい線)4番万国橋出口から:
  ワールドポーターズ方向に徒歩8分
(2)バス
・ 横浜駅から:
  市営バス8/58系統、本町4丁目下車、ワールドポーターズ方向に徒歩8分
  市営バス26系統、横浜第2合同庁舎下車、ワールドポーターズ方向に徒歩7分
・ 桜木町駅から(100円バス):
  桜木町駅から港の見える丘公園前行き100円バスでワールドポーターズ下車、サークルウォークを通り徒歩3分

青年海外協力隊春募集

2011-05-12 | business
青年海外協力隊平成23年度春募集が始まりました。説明会もかなりの数見送られましたが各地で数回開催されます。

民間企業からの現職参加を考えておいでの方、青少年活動や日本語教師をお考えの方、迷っていらっしゃる方、お気軽にコメントに入れてください。わかる範囲でお答えいたします。(コメントは非公開ですので、ご返信用メールアドレスをお書きくださいませ。)

制度などは、JICAの青年海外協力隊事務局におききになるのがよいと思います。募集説明会や応募相談など、きちんと相談にのってくれます。OBOGもたくさんいます。