最期の祭り!

 もう、未来無いんでヤケクソ。 最期の祭り的なノリで行きます!

 バンド・ストーリー   3

2011-06-30 13:56:05 | Story 1 バンド・ストーリー
 その時、トムが The morbidz の方向性について、有益な示唆をする。


 「 The morbidz の未来はドイツ観念論のヘーゲルにあるという事に気が付いた。 
 ヘーゲルは弁証法という観念を唱えたんだ。

 この観念とは、あらゆる事物は矛盾をはらんでいる。


 だが、矛盾がいつかは高次元で結びついて、更に高度に発展していくという考え方だ。 
 The morbidz の方向性もこれと同じじゃないか! 」


 メンバー「 流石はドイツ文学科だな。
 これは今の俺達にもそのまま当てはまる事だ。 」



 そこで、ナオがマイケルジャクソンが亡くなったというニュースを話す。

 その後、メンバーと沙耶はマイケル談義に熱中する。



 「 マイケルの鼻は、父親に削り取られたようなものさ。

 父親が子供の頃、マイケルにいつも鼻がでかい、鼻がでかいと文句を言っていた。
 マイケルはそれを気にしすぎたんだ。 

 だが、元のマイケルの顔を見ても、別に整形をする必要などないと思ったね。 
 元のままでも十分通用する。 」


 「 マイケルはスリラーとバッドのプロデューサーをクインシー・ジョーンズに頼んでいたんだけど、それらのヒットを常にクインシーが俺のお陰だと恩に着せていたんだ。 

 マイケルはそれが嫌でクインシーを起用しなくなったんだ。 」


 「 それは殆どクインシーのお陰でしょう。 」

 「 マイケルってのは結局、アメリカのショウビズの犠牲者なのさ。 」
 
 「 若い頃、世界的にヒットして金銭感覚が狂ってしまった。

 アメリカのミュージシャン、スポーツマンによくあるタイプさ。

 俺だったら、成功しても倹約生活を守るね。 」


 「 俺は、スリラー、バッド、We are the world などは余りにポップすぎるから余り好きじゃなかったね。

 だけど色々な人に聞いたらスリラー、バッドの頃はよく聴いていたけどその後は聴かなくなったという人が多いね。 」


 「 俺は音楽よりヴィデオ・クリップのダンスや大規模世界公演で興味を持った。
 あのダンスは独特だったよな・・・ 

 他の人には真似できないね。 
 だからある意味凄い人だったよな。 」


 「 マイケルは子供の頃に3つの夢があったんだ。

 一つはお城のような家を建てる。
 二つ目は世の中を楽しませる。
 もう一つは世界を平和にする。 

 だけど、結局お城は売却、世界は平和にできなかった。 

 世の中を楽しませる夢は叶った。 」


 「 俺の周りの人はマイケルについて聞いたら、かわいそう、悲愴感の塊だとかいう人が多かったね。 

 お前、ああいう風になりたいか? 」

 「 なりたかないね。」

 「 死因は結局、薬物中毒みたいだな。
 単なるジャンキーのオーヴァードーズみたいな。」


 「 マイケルはスリラー、バッドの頃から死ぬんじゃないか、自殺するんじゃないかってずっと言われ続けてきたんだ。

 だけど50まで生きたんだから、まあよくもった方だね。

 幸せだったかどうかは本人に聞いてみないとわからないね。
 まああんだけやりたい放題やって世の中騒がせたんだから・・・ 」


 「 エンタメの為に生き、エンタメの為に死んでいった人といった印象だな。 俺の感じじゃ。 」


 「 マイケルを好きな人も嫌いな人も、マイケルにある種のカリスマ性があった事は誰しも認める所だろう。 」



 
  The morbidz は、般若派に 対バンをよくぶつけられていた。  


 その内に、ライブになると、反ジェンフリ論者の客 とフェミ・ナチ論者の客 が対立するようになっていく。   

 
 そしてバトルの時間が設けられるようになる。 

 The morbidz と左翼バンド が演奏を終えると、ドラムとミュートの連打が叩き出され、反ジェンフリとフェミナチがフロアでバトルを始める。


 お互いに左右に別れ、体をぶつけ合う。
  

 

 だが、The morbidz ファンはいつも人数で勝る左翼バンドに負けていた。

 何しろ、左翼バンドはメジャー路線で人数が増えて行ったからだ。

 
 The morbidz ファンは、知恵を絞り、バトルの直前に赤唐辛子をかじる様になる。  

 そしてフェミナチが飲むドリンクに下剤を混ぜる。

 
 バトルの時間になると、フェミナチは次々にトイレに駆け込み、満員になり、駅のトイレまで駆け込む騒ぎとなる。 


 誤って飲んだThe morbidz ファンもトイレを探して大騒ぎしている。


 逃げ遅れたフェミナチは、赤唐辛子でいきり立ったThe morbidz ファンにボコボコにやられる。






 沙耶の芝居に一杯喰わされ,バトルでもやられた般若派は、報復する為に強化合宿を行う。

 しこめ城に100人近くの思想戦士が結集する。

 中央線沿線の部隊が、地域ごとにまとまる。 
 それぞれにはリーダーが任命されている。


 午前と午後の部に別れ、 午前は知的武装。
 午後は 肉体訓練をしている。

 般若派は完全な分業制で、それぞれの領域に専門の情報員をつけている。


 皆が自分の興味・得意分野・専門を徹底的に研究し、リーダーがそれらを統括している。  
 こうした方が圧倒的にパフォーマンスが良くなる。

 しかも情報部門と行動部隊がそれぞれ役割を分担している。


 武器や盗聴器などの調達・操作を担当していたのは理工系の大学院レヴェルの人々である。  

 機材や、部品などを買ってきて自分達で組み立てる事ができる。


 
 まず始めに般若派の歌を歌う。リーダーと姉御があいさつして隊員達に檄を飛ばす。

 リーダーは坊主頭で髭を生やし、東条英機ににている。

隊員は全員、お揃いの戦闘服を身にまとっている。

 壁には般若派の旗が貼られ、のぼりが立っている。



 次に般若派を裏切った隊員が前に出される。

 裏切った者には容赦なく制裁が加えられる。

 リーダーは「 この裏切り者! 」といってムチでしばく。



 行動部隊には行動する際のマニュアルが配布される。 


 それらには警察との対応、法律や条令、Law-Tech ( 裁判・訴訟で訴えられた際に、刑罰・刑期を軽くする為の様々な対応方法 ) と 闘争を有利に有効的にする為の過程がワーク・フローのように解説されている。


 その他、過去に於ける成功・失敗の事例集も読まされる。


 更にはヴィデオの映像でも教育が施される。


 重信房子、日本赤軍、反日武装戦線狼など・・・


 左翼バンドは3階に設けられたスタジオで、歌詞、メロディー、演奏などを訓練している。



 

 般若派が強化合宿を行っている間に The morbidz と Mother Fuckers と Ugly Gals は、ソフト・コア 3羽ガラス と名うって関西ツアーを行う事とする。


 場所は 大阪 キタの梅田のライブハウス、ミナミのクラブ、京都のライブハウスなどとする。

 早速、ネットなどで噂が伝わり、関西の大学生が集まってくる。

 

 般若派はこの情報を得て、部下にライブの模様を録画してくるように指令を下す。


 ライブでは若手の Mother Fuckers と Ugly Gals の成長が目覚しかった。   まだ不慣れで未熟な所が目立ったが、これから十分補う事ができる。


 楽屋で対面して、お互いに反ジェンフリ・反フェミニズムの志や夢を語り合う。 


 このライブではギターのナオが超絶速弾きを披露した。  関西の大学生や会社員達が熱狂する。


 京都では京大、同志社大(どーやん)、立命館大(りっちゃん)などのサブカル系の大学生達が集まって、悪質なジェンダーフリー思想に反対する決意を固めて行く。


 ライブハウスには悪臭を漂わせる。  


 スクリーンにはしこめや堂本の画像が映される。






            ブス像






 ソフトコア3羽ガラスは、女性に嫌われるような言動を敢えてとっていた為に、女性客は殆ど来ていない。


 フロアはファイヤー・ダンスを踊るファン達で壮観な眺めである。



 般若派の部下はこれらの模様を録画し、リーダーにライブ・ツアーの模様や状況を報告する。


 リーダーはしこめ城の司令塔のスクリーンで VHS のヴィデオで、ライブの模様を眺めている。


 リーダーは、その映像を見ながら不気味な高笑いをする。


 幹部達はその高笑いにゾッとするモノを感じる・・・






 般若派の隊員からマサに極秘にコンタクトがある。


 「 実は、俺は般若派を脱退したくてしかたがないが、リーダーの制裁が怖くて逃げる事ができません。  

 脱退に協力して頂けませんか?  
 その代り、般若派の極秘情報を教えましょう。 」


 マサ 「 そうか、君も可哀想だな。
 別にこっちに被害が無ければ構わないよ。 」


 「 実は・・・  

 般若派がマサさんの暗殺計画を企んでいるんです。
 その計画には我々が遂行の担当を任されそうなんです。 
 私は殺人事件などには関わりたくありません。

 ですから、マサさんに逆に捕らえられた事にして逃してもらいたのです。 」


 メンバー「 何?! 」


 般若派の The morbidz 殲滅計画もそんな段階にまで進んでいたのか・・・   


 「 私は、般若派の左翼思想やジェンダーフリー思想には賛同していますが、 The morbidz には何の恨みも持っていません。

 そんな事の為に殺人に関与したくないんです。 」


 マサ「 そうか、それだったら、君達が暗殺しに来た所を、俺達が察知して、君だけ捕らえた事にして逃してやろう。 」


 「 そうして頂けると有難いのですが・・・ 」



 その後、その隊員は般若派としこめ城の事情を一通りマサに説明する。

 その隊員によれば、般若派は中央線沿線で合法・不法なビジネスを展開していて、それが資金源になってきたという。


 ラーメン屋のチェーン店、古本屋、キャバクラ、パソコン器具の売買。不法なものでは性風俗まで手がけているそうだ。

 運営を担っているのは、隊員、女性隊員で、経営は経営担当者に任せきりだという。 
 リーダーには経営などのセンスは無いそうだ。



 
 マサの暗殺計画は、事前に The morbidz が全貌を掌握していた。

 あの隊員が時間から詳細に至るまで、全て流していたからである。

 暗殺場所はマサの襤褸アパート。  時間は午後の4時。 

 新聞配達の勧誘を装い、お土産を持参して部屋に入るというものだった。  
 隊員は情報を漏らしてくれた隊員を含めた5人だった。

 犯行の際、その隊員だけ捕らえて、他の4人を撃退するというものだった。



 マサの襤褸アパートはその日はいつになく開放的にしておく。

 そして隠れた所にメンバーを伏兵として配置しておく。

 メンバーは木刀を持っている。 

 マサは防弾チョッキを着てソファーに座ってくつろいでいる。

 

 予定の時刻に般若派が新聞配達を装って来る。


 他の4人は陰で待機している。


 「 杉並教育新聞ですが・・・ 」 

 マサは「 ハイ・・・ 」と答えると、隊員はお土産を床に置いたと思うと、ピストルを持ってアパートに押し入って来る。 

 隊員はピストルを撃つと、マサは弾丸を指で受け止める


 その瞬間、メンバーが隊員を横から木刀で殴り倒す。 

 他の4人の隊員が襲い掛かって来る。 

 情報を漏らしてくれた隊員だけ捕獲し、他の隊員は木刀によって倒される。







 般若派の暗殺計画を撃退した The morbidz は次の下北沢の屋根裏で演奏する為にスタジオで練習に励んでいる。  

 沙耶は演劇学校で演劇、音楽を習っている。 

 たまたま暇ができたので、スタジオにひやかしに行く。



 メンバーがタバコをくわえながら休憩していると、沙耶がキーボードを演奏しているではないか!


 メンバーは「 アレッ! 沙耶はキーボード弾けたのか?! 」


 「 エッ?  言ってなかったっけ!  私、子供の頃2年位習っていた事があるの。
 でも、大して弾けないわ。  」


 マサ「 そんだったら、伴奏のコード進行や間奏のソロなどを付けてくれないか。 」


 沙耶「 いいけど、あんまり弾けないわよ。 」



 
  The morbidz は下北沢にある屋根裏というライブ・ハウスで演奏する。 
 ここはミッシェル・ガン・エレファントが下積みを積んでいた頃によく出ていた所だそうだ。 

 97年あたりの富士ロックで一気に有名になったが、結局は解散してしまった。



 マサは観客に向かって

「 幸せそうなフリしてんじゃねえよ!

 楽しそうなフリしてんじゃねえよ! 

 未来あるフリしてんじゃねえよ! 

 お前の恋人、本当は好きでも何でもないんだろ! 

 打算と妥協の相手なんだろ! 」


 などと煽り立てていた。

 それ以外にも、下北沢のジェントリフィケーションに反対する声明を打ち出す。



 ライブを終え、マサが高円寺の襤褸アパートに戻ろうとしているとき、3人の男に囲まれ、羽交い絞めにされ殴る蹴るの暴行を受ける。


 「 テメエ! 口には気を付けろよ! 
 言いたい放題言いやがってよ! 」 などと怒鳴っている。


 マサは病院に行き、肋骨が折れたという診断を受け入院する。



 マサは初めて挫折・失敗に遭遇して、病院では柄にも無く内省的になっていた。  

 この事件の後 The morbidz の歌詞は、風景や自然の美しさを歌ったり内面的な暗い歌詞となっていく。

 これが The morbids 第三の転機となった事件である。



 退院したマサは療養中に杉並区立図書館に籠もり、詩の研究に励む。


 戦前の日本、フランスなどの詩を読んでいる。



 マサの退院を祝う為、ソフト・コア3羽ガラス のメンバーで都合のいい人が集まり、居酒屋で祝う。

 焼き鳥のつくね、ねぎ間と梅サワーなどを頼む。



 「 マサさん。 大変でしたね。
 でもこんな事位でめげないで、もっともっとやって下さいよ。 」


 
 反フェミニズムのソフト・コア3羽ガラスでも、右翼と左翼の思想を持つ人が居る。

 Ugly Gals のヴォーカルは、三島由紀夫に似たバリバリの右翼で、ライブの際には背景に日の丸を貼り、君が代を歌う程である。


 「 俺は女性の権利を否定はしない。
 それどころか十分尊重する。

 だが今のフェミニズムは異常だ。
夫婦別称とか、家庭や社会のまとまりを壊すものだ。

 俺は右翼だからこんな日本民族の心を破壊するような奴等は断固として許せない。 

 Ugly Gals で活動しているのは、こうした理由からだ。 」 


 

Mother Fuckers のドラムスは左翼で、左翼的な視点からフェミニズムに反対している。


 「 俺は、バイトでおばさん連中の態度にむかついたね。  
 何か問題が起こると全部男の責任にするんだ。

 後、客のわがままなおばさん連中や、のぼせ上がった若い女性にもむかついている。 

 労働者の人格を無視して資本家の搾取に貢献しているような奴等には反対すべきだ! 」



 「 だが、右翼の連中ってのは赤尾先生、野村烈士以降は何をやってきたんだ。 
 全然本来の役割を果たしてないじゃないか。 」


 「 左翼なんてもっと酷いぜ。
 日本の資本家の横暴をあれほど放置してきたのはどこのどいつなんだ! 

 昔は日本赤軍、反日武装戦線狼などが、日帝の亜細亜経済侵略・搾取に身を以って闘って来たんだぜ!

 だが、その後左翼連中のやって来た事と言えば内ゲバだけじゃないか。

 その点、右翼じゃ内ゲバで死んだという話は聞いた事が無い。 」



 マサ「 右翼も左翼も宗教も本物なんて殆ど居ないのさ。 

 日本の反体制文化人だって、どうでもいい末端の政治家や文化人は批判する癖して、肝心の財界経営者の非難になると、皆口をつぐんでしまう・・・


  俺が今まで、日本のメディアに不満を持ってきたのも、この点だったという事に最近気が付いてきた・・・ 」


 「 マサさん。まだ批判精神旺盛ですね。 
 安心しました。

 その調子でがんばってくださいよ。 」


 「 これからの俺達がやろうとしている事は日本社会や世界から見たら所詮サブカルに過ぎない。

 だがそれに人生を賭けていくんだ。 」



 マサは骨折のリハビリも兼ねて、タイに10日間の旅行に行く事にする。

 沙耶や他のメンバーは都合がつかず、一人で行く事とする。

 初めての海外旅行で不安もあったが、旅行している友人も多いので大丈夫だろうと考える。

 バンコクに着き、カオサン・ロードへと向かう。
 
 バンコクでは、トムヤムクンを食べながらタイダンスを見たり、お寺を見て回ったりする。
 
 その後、バスでコ・サメットへ向かい、ゆっくり静養して海で軽く泳いだりして骨折のリハビリをする。

 タイの民俗音楽やポップ・カルチャーに触れもする。

 マサはすっかり元気を取り戻した。

 又、 The morbidz でがんばるぞ! という気がしてくる。

 又、タイでのセブン・イレブンの経済侵略は想像以上の規模で進行していた。

 バンドで、この事を訴えてやる! と決意を固める。




 日本に戻ると、メンバーから The morbidz のライブの海賊版が巷で出回っているという話を聞く。  

 音源と映像を伴ったものが。


 一体、どこで誰が録音、撮影したのだろうか?


 それらを見聞きしてみると、全く不本意なモノである。

 
 マサはハラワタが煮えくり返る思いがしてくる。


 折角タイでやる気満々になって帰ってきたのに・・・


 
 他のメンバーは
 「 まあ、いいじゃん。
 それだけ隠れファンが居るって事だからさ・・・ 」 とマサを諌める。


 どうやら、誰かがブート・レックしたり、盗撮したりして流れたものらしい。  


 だが問題はその質である。


 「 この演奏が The morbidz だと思われたら嫌だな・・・ 」


 「 まあ、これから俺達の実力を思い知らせてやるがいいさ。 」


 マサはタイから戻り、早速トムヤム(タイのあえものスープ)やキェーン・キョーワーン・ガーイ(グリーン・チキン・カレー)などを作ってみる。


 
 沙耶は「 何これ?!  酸っぱくて食べられないわ! 」




  マサはロックな波乱に満ちた荒れた生活をしていたが、ナオやトムは、マサに比べるとマトモな生活を送っている。 

 ナオは空いた時間にはギターの練習ばかりに打ち込んでいる。

 ピッキング、スケール、アドリヴ、速弾き・・・

 ギターのレッスンで教えてもらった特殊な練習法で練習すると、マジカルな効果が上がる。

 休みの日には一日8時間から10時間練習していた事もある。

 
 
 トムは、一応大学の授業に通い続けていた。
 ドイツ語会話も少しづつ上達して行く。


 リュウは電子メトロノームとスティックと練習台を常に持ち歩き、暇と場所があれば練習をしている。








 ある時、沙耶がマサに「 お願いがあるの・・・ 」と言ってくる。

 「 何だい? 」

 「 ブスって言葉使うのやめて 」


 マサはひっくりかえりそうになる。 何故今頃こんな事を言うようになったのか?


 「 私、その言葉聞くと耐えられないの・・・ 」


 「 そんな事、今頃急に言われたって、それじゃ The morbidz はどうなるんだい? 」


 「 私どうしても耐えられないの・・・ 」


 マサはしばらく考え込む。

 ブスという言葉を使えなくなったら、ソフト・コアというジャンル自体が成り立たなくなる。 

  何故ならジェンダーフリーやウーマン・リヴやフェミナチを非難するのに最も効果が上がりソフト・コアというジャンルには不可欠な言葉・中核的な言葉だからだ。


 沙耶と The morbidz だったら、 The morbidz を選ぶしかない。




 「 沙耶がそんな事を言うんだったら、もう別れるしかないな・・・ 」

 


 沙耶「 分かったわ、御免ね。

 唯、マサがどの位信念を持っているのか確かめたくて聞いてみただけ。

 それだけ信念と自信を持ってバンドやっていたのね。 」



  その後、 The morbidz は ブス という言葉の代わりに  という言葉を使うようになったそうな・・・




 ――――  劇終  ―――― 





最新の画像もっと見る