CareTaker 's Log

主にスタートレックのことについて書くつもりが、
いつの間にやら日々思ったことについて徒然と。

失敗は成功の母か

2007-04-28 14:29:56 | お仕事
宮田秀明の「経営の設計学」 「失敗は成功の母」を信じるなかれ 狩猟民族的な組織がイノベーションを生む

「人は、失敗を重ねて成功に至る」というのは間違いである。失敗ばかりでは落ちていくだけだ。小さな成功体験を積み重ねてこそ、大きな成功を手にできる。

 負けてばかりいるサッカーチームは、いつまでたっても弱いチームでしかない。負け癖とはよく言ったもので、それを解消できない限り、いずれチームは消えてしまうだろう。負けてばかりいるチームに参加したいというフレッシュマンもいないに違いない。

 もちろん、失敗体験も大切だ。ただし、失敗から得られるのは成功への道筋ではなく、初心である。初心に帰ることが成功につながり、その成功をバネに人間は成長していく。

 技術開発でも、企業経営でも、成功を収めるために意識しなければならないことがある。それは、「機能」と「構造」の関係である。


ものづくりの歴史は機能と構造の追求にあり

 旅客機は単純化すると、円筒型の胴体に5つの翼がついた構造をしている。この構造によって、安全に効率よく空を飛ぶという機能を果す。同じ飛行機でもステルス戦闘機は、胴体と翼が一体になって区別できない、旅客機とは全く異なった構造になっている。これは、旅客機の2倍以上の速度で飛んで、なおかつ敵に探知されないという機能を優先するからだ。

 すべてのモノは、目的の機能を達成するための構造を備えている。構造と機能の関係は、モノを設計する時に大変重要で難しいことなのだ。空を飛ぶという機能はとても高度なので、構造を少しでも間違えると、飛ばなかったり、不安定な飛行をして危険性が高まったりする。

~略~

例えば、日本とイタリアを比べてみると、イタリアの1人当たり国民所得は日本の約85%である。すべての人がそうではないだろうが、滅多に残業しないで、夏は1カ月もバカンスを楽しむイタリア人の生活を考えれば、85%は大きい値ではないだろうか。時間給を計算すれば、きっとイタリア人の方が上に違いない。実際、社会経済生産性本部の調査によれば、2004年の日本の労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)に加盟する30カ国中で19位。イタリアは日本の約1.2倍で7位である。日本は、先進主要7カ国の中では11年連続で最下位だ。

~略~

イノベーション型と継続発展型で異なる組織構造

 適切な組織構造は、目的とする機能によって異なる。米ボーイングの普通の旅客機では、「ボーイング767」も「同777」も「同787」も、円筒型の胴体に5つの翼をつけた共通の構造なので、部課制のような機能型の組織構造によって開発設計を行うことができる。しかし、新規性の高いステルス戦闘機の開発では少数精鋭のスカンクワークスのような組織構造を採用しなければならない。前者の継続発展型の技術開発と、後者のイノベーション型の技術開発とでは、採るべき組織構造が異なるのだ。

 製造業が継続発展型の技術開発だけを手がけていると、半導体や液晶などの産業が象徴するように、厳しい消耗戦に突入して、目標の利益率に到達することが難しくなっていく。同時並行で、イノベーション型の技術開発を進めておかないと競争優位を維持することが困難になる。

 これら2種類の技術開発の手法は旅客機とステルス戦闘機の例のように異なるので、違う組織構造を採らなければ成功しない。継続発展型とイノベーション型の組織構造は、農耕民族的なものと狩猟民族的なものと例えていいくらい異質なものと思った方がいいだろう。異質のプロジェクトに対して同じ組織構造を押しつけていては、成功はおぼつかない。企業の中の組織構造に多様性が求められるゆえんである。

 イノベーション型の技術開発であるべき日本の国家的研究開発プロジェクトに成功事例が乏しいのも機能と組織構造がうまくかみ合っていないことが大きい。ロケットも、原子炉も、高速船も、お世辞にも成功しているとは言えない。失敗の連続と言っても言い過ぎではないだろう。

ロケットは、ようやく失敗がなくなってきたとはいえ、コスト面の国際競争力はない。そもそも人工衛星を上げるロケット技術が、21世紀になった今なおイノベーション型の技術開発に分類されるかどうかにも疑問が残る。旧ソ連がスプートニクを打ち上げてから、もう50年近くたっているのだ。

~略~

技術開発プロジェクトにおける組織構造、それをつくるマネジメント、マネジャーやアーキテクトといった人材、これらの大切さを早く認識しないと、日本ではイノベーション型の技術開発における成功事例が増えない。

 国家的研究開発プロジェクトで失敗に失敗を重ねていくと、使った国費ももったいないが、それ以上に問題なのが、技術力が疲弊していくことである。優れたマネジャーやア-キテクトが育たない風土も改められないままになってしまう。

 繰り返すが、どんなに失敗を積み重ねても大きな成功には結びつかない。最初は小さな成功でもいい。勝てるチーム、成功する組織構造をつくって、成功を誇り高く社会に示すことが大切である。若人がイノベーション型の成功を目指したくなるような社会をつくらなければ、技術立国は幻になるのだ。

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読んでいて疑問に思ったところがいくつかあったので取り上げてみました。

失敗ばかりでは落ちていくだけという指摘は確かにそうだと思います。成功しなきゃ金は入らず飯が食えませんから。

ただ、失敗は成功の母というのは、単に失敗をすればいいというものではなく、失敗からその原因を見つけ分析し、次回に生かすことで成功させるという考え方ではないでしょうか。それは普通の会社の技術開発において肝心なことだと思います。
すべてのプロジェクトが成功するわけではないでしょうし、失敗から学べないようでは成功も覚束きません。

「空を飛ぶという機能はとても高度なので、構造を少しでも間違えると、飛ばなかったり、不安定な飛行をして危険性が高まったりする。 」
ええっと、旅客機とステルス戦闘機の構造が違うのは機能が違うからってのは正しい。目的が違えば手段は異なる。ですが、最近の戦闘機について言えば、わざと安定して飛ばないように設計されています。安定する=鈍重であり、機敏な動きを要求される戦闘機には不適であるため、最新の戦闘機はコンピュータ制御なしではほぼ100%墜落します。

「イタリアの1人当たり国民所得は日本の約85%である。すべての人がそうではないだろうが、滅多に残業しないで、夏は1カ月もバカンスを楽しむイタリア人の生活を考えれば、85%は大きい値ではないだろうか。時間給を計算すれば、きっとイタリア人の方が上に違いない。」
この85%という数字がどこからでたものかがわからないが、とりあえず、日本でめったに残業せず、1ヶ月もバカンスをとる人間が85%の収入を得られるかという問題があります。特別な職業でもない限り、普通の仕事であれば、そういう人間のところに仕事がいくだろうか。それに1ヶ月のバカンスをとったところで、日本人が有意義なバカンスを過ごせるかどうか疑問に思います。日本人にあった休暇のすごし方もあるだろうし、両国の産業の違いも考えないで単純比較は難しいと思う。もし、時間単価の上昇のみ考えれば、日本人全員が蟹漁か海女をすればよい。そうすれば平均時間給は10倍以上に跳ね上がる。ほかの産業が成り立たなくなりますが。

「適切な組織構造は、目的とする機能によって異なる。米ボーイングの普通の旅客機では、「ボーイング767」も「同777」も「同787」も、円筒型の胴体に5つの翼をつけた共通の構造なので、部課制のような機能型の組織構造によって開発設計を行うことができる。しかし、新規性の高いステルス戦闘機の開発では少数精鋭のスカンクワークスのような組織構造を採用しなければならない。前者の継続発展型の技術開発と、後者のイノベーション型の技術開発とでは、採るべき組織構造が異なるのだ。 」
国際的なプロジェクトで先端技術を集めて作られる大型旅客機と、最高度の機密が求められる戦闘機では人数が違うのは当たり前ではないでしょうか。イノベーションどうこう以前のように思います。実際、先進的なステルス戦闘機でありながらF-35ライトニングⅡでは、F-22と同じくロッキード・マーティン社が中心となって開発していますが、スカンク・ワークスのような少数精鋭ではなく、イギリス、イタリア、オランダ等々の多くの国々が関わっています。

「イノベーション型の技術開発であるべき日本の国家的研究開発プロジェクトに成功事例が乏しいのも機能と組織構造がうまくかみ合っていないことが大きい。ロケットも、原子炉も、高速船も、お世辞にも成功しているとは言えない。失敗の連続と言っても言い過ぎではないだろう。 」
はやぶさとか、大成功ですよね・・・高速船も船そのものは成功です。ただ、需要がなかっただけで、それは開発方法や組織よりも目標の設定の仕方の問題ではないでしょう。

「国家的研究開発プロジェクトで失敗に失敗を重ねていくと、使った国費ももったいないが、それ以上に問題なのが、技術力が疲弊していくことである。優れたマネジャーやア-キテクトが育たない風土も改められないままになってしまう。

 繰り返すが、どんなに失敗を積み重ねても大きな成功には結びつかない。最初は小さな成功でもいい。勝てるチーム、成功する組織構造をつくって、成功を誇り高く社会に示すことが大切である。若人がイノベーション型の成功を目指したくなるような社会をつくらなければ、技術立国は幻になるのだ。 」

部課制のような機能型の組織構造と、少数精鋭によるイノベーション型の組織構造。どちらが失敗の可能性が高いでしょうか。

開発にはどちらのタイプも必要でそれぞれ選択する必要はあるでしょう。なんでもかんでも”最先端は少数精鋭で”とは限らないのではと思います。それよりもきちんとした目標設定であり、それによって必要となる組織形態や必要な人材や物資が決まってくるのではないでしょうか。



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