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駄文迷宮

☆ 麻介の日常 ☆

帰宅

2006年05月04日 13時19分33秒 | 小説作製
帰ってきた。

 背後では列車の扉がまるで世界を切り離すように閉まり、
滑るように車輪を軋ませながら走り出す。
まだ星の瞬く上空は次第に東の空が朱色に輝き始めていた。

「ただいま」

無人のホームで誰に言うでもない、
帰ってきた自分に実感がわくように呟いたのだ。
しかしそれは、朝方の闇の中に返事は帰って来ることは無く虚しく消えた。
帰ってくるつもりはなかった、
特に行き場所を求めていた訳でもないけれど。
彼女も無事に帰れたのだろうか?
僕は線路の続く先を見つめて物思いにふける。
駅を出て駐輪場で自転車を探した。
見つからなかった。当たり前か、鍵なんて掛けていかなかったからだ。
久しぶりに家路に向かって歩き出す。
電灯の光で照らし出された路地に人影はなく、
時折どこかの犬が人気に気づいて吠えたてる。

懐かしい我が家、玄関先の鉢植えの下から鍵を取り出す。

ガチャリ。

鍵穴に差し込んだ鍵を引き抜き、ドアノブに手をかける。
ドアは開かなかった。今思えば、戸締まりをして家を出た覚えがない。
自分でも不用心この上ないと思いながらも
取られて困るようなものが無かったことに気がつく。
切なくなった。
家を出た時の精神状態からすればただの笑い話にすぎないだろう。
もう一度鍵を差し込み回す。一応、恐る恐るドアを開く。
そこには、出かける前と何も変わっていない玄関と
出かける前とは違うつい先ほど別れた時のままな彼女が立っていた。

「ただいま」

「おかえり」

今度はしっかりとした返事が帰ってきた。

僕の頬を涙が伝った。


終わり


回転椅子

2006年05月03日 13時10分29秒 | 小説作製
 その空間はだいたいトイレの個室ほどの大きさで
壁はドアや窓が一切なく白一色で統一されていた。
その空間の中央には固定された回転イスがあり
今、私はそのイスに座らされている。
最初は退屈しのぎに回転していたが
不思議と目は回らなかった。
遠心力で椅子から滑り落ちないのは
私が椅子に固定されているからだろう。
椅子が回る金属音がキリキリ鳴っている。

最初は退屈しのぎに回転していたが
私は考え始めた。回転しながら考える。


一体私は誰なのか? 何故、私はこの場所にいる?・・・・

しかし

私は考えるほど混乱し

何モ分カラナイ

イスの回転速度も増していく

俺ハ?

殺シタ?

ぐるぐる
人ヲ?
ぐるぐるぐる
沢山?
ぐるぐるぐるぐる
コノ手デ?
グルグルグルグルグル

そして私は回り続ける
考エ続ケル
ぐるぐる
ぐるぐるぐる
ぐるぐるぐるぐる
グルグルグルグルグル
「ぐるぐるグルグル・・・」


そこには四つのモニターがあり白衣を着た一人が
既に興味を無くした様に中の映像を監視していた。
モニターには小さく白い空間で回転イスに座りただ回り続ける
特S級犯罪者、『万人殺の男』が特殊な方法で
記憶を消され座らされていた。

「実験は失敗だ。全く、つまらんな」

白衣の一人はニヤリと笑いそう呟くと、
モニターの前にある操作ホードの赤いボタンを押して
その場を立ち去った。
モニタルームには冷えたコーヒーカップが残される。
電気が消えた。

モニターの画面には壁が赤黒く染まり床には奇妙な黒い塊がいくつも落ちている。
さっきとはまるで正反対の色をした空間が写しだされる。
ただ違うのは男も赤黒く変色した服を着て顔や手も血が付着させている。
しかし、男は変わりなく回転イスに座り、椅子の回転は止まっていた。

彼に怪我は一つも無く、手には人を殺すことのできる彼愛用の武器を持っている。
男を椅子と固定していた物はいつの間にか消えていた。

笑っている。

モニタ越しに、男は狂ったように笑っているように見える。

男は空間を見渡してぞっとするような笑みを浮かべた。

大声で笑い始めるのだが、音声出力が無い為に

余計に奇妙に映し出される。

男はまるで全てを思い出したかのように立ち上がり、
そしてふらつきながら倒れた。




モニターの画面が消えてそこには闇だけが残った。
 



(高校の時に書き上げたssにちょっと修正を加えたもの。
今読み返して、修正してみて何が書きたかったか少しは分かるように
なったかなぁ・・・?訳分かんない? ごめんなさい OTZ)

タワー

2006年05月02日 09時14分42秒 | 小説作製
僕が見下す目下300メートルには、まるで人でさえも神によって作られた玩具のようだ。

「僕は今、風を感じています」

これだけの高さだ、無論地上とは違う風が吹いている。
破綻した世界、僕の目にそう見えるのは僕が破綻しているからだろうか。
塔の先端は風の影響か少し揺れている。
地上はほぼ無風だった。
僕がここへ来た理由、それは地上の景色を眺めるため?それともより天に近づくため?

答えはそのどちらでもない。無論ここから堕ちて自らの命を絶つなんて答えた野郎はどうしようもなく馬鹿な奴だと思う。そんなことをするならもっといくらでも良い方法があるだろう。
僕の目的はそんなくだらない事じゃない
それは大切な約束を果たすためなのだ
言うならば使命ってやつかな?

それにしても、遅い

指定した時間からすでに30分が経過している
あの人は時間に律儀な人だ、何かあったんだろうかと心配になる

「ごめんなさい、待ったでしょ?」
エレベータルームの扉が開き、その人は僕に歩みを寄せてくる
「はい、30分待ちました」
相変わらず正直なのねとその女性は微笑む
「昔の僕なら、飛び降りていたかもしれませんよ。先生」
「でも、そうはしなかった。それは今、あなたが安定しているからよ」
そうですねと僕も笑う
「うん、良い笑顔」

「でも、それだけじゃないんです」
先生は不思議そうに首を傾ける
「えっと、それはどう言うことかしら?」
「僕にも想いが出来たんです。先生がいつも言っていた'想い'が」
先生はますます困った顔をしている
「私、何か言ったかしら?」
「想いは人を変えることが出来る」
先生はそう言っていたのだ
「あぁ!確かに言ったと思う。想う事は良い事よ」

強い風が塔を優しく揺らして消えていく
「先生、僕は変われますか?」
僕は、過去に何度と無く問いかけた質問を繰り返す
「心配しないで。その答え、すでにあなたはわかっているわ」

僕は風になびく先生のきれいな黒髪を見て、もう一度、下界を眺める
それはとても素晴らしい眺めにみえた



終わり


試験

2006年05月01日 08時53分54秒 | 小説作製
桜吹雪が舞散る通りを僕は自転車で走りながら、
頭の中では今日受験する試験の事を考え始めていた


試験会場に着き、受験番号を確認して指定の教室に入った
そこは私立大学のいたって普通な講義室で机は階段状に配置され、
机の一つ一つに受験番号のテープが着いている

教室はすでに受験者で埋まり、教卓にはスーツ姿の試験官の姿もある
どうやら受験上の注意を説明しているようだ
試験開始まであと10分、急いで自分の番号の席につく
机の上に受験票と筆記用具を出して待機していると程なくして
問題と解答用紙が配られ始めた
「うっし!がんばろ」
小声で気合いを入れてみる
苦手なんだよな、この試験開始直前の雰囲気
異変が起きたのは試験開始直後の事だ
開始の合図と同時に窓には鉄格子が降ろされ、
入り口の扉は重々しくロックされた後、シャッターの降りる音が聞こえた

どうなっているんだ?
なにが起こっているのか全く分からず、
周りからも困惑の声が波紋のように教室内を満たしていく

「ただ今から一時間は退出禁止ですので」

教官はぞっとするような笑顔でニヤリと笑った



「そんなことあるはずねぇって」
僕は一人そう呟いて、我ながらまたおかしな妄想をしたものだと思う

花びらも大分減り葉桜になりゆく木下で、
遅れないようにペダルを踏む足に力を入れた

ただ、自転車の車輪が散って積もった花びらを舞上げた


終わり


全ての雨は私に降り注ぐ

2006年04月10日 08時25分23秒 | 小説作製
静寂の中、春雨の降る朝に桜の花びらも落ちてややいつもより駆け足気味に時間が過ぎていく。
私の小さなビニール傘は横降りの雨に無力で少しずつパーカーの肩を濡らす。
耳元では英人女性歌手の柔らかな歌声が心地よく響き、雨の憂鬱さを無効化する。
雨の朝も悪くないな。
春の雨は梅雨のような湿気も無く、ただただ私の体温を奪っていくように感じる事ができるのだ。
一粒一粒の水滴がとても清々しい。

そして、私は今日も学校へ向かう。




駄文終了