「先輩、そう言えば今日は七夕ですよね~」
先輩と僕は初夏の夕暮れに照らされた商店街を歩いている。
そう、7月7日、今日は年に一度の七夕の日。
「せんぱ~い?聞いてますか?」
目の前の見慣れた商店街には大きな笹の葉が設置され、既にいくつもの想いが込められた短冊(願い)が下がっていた。
商店街が毎年恒例で行っているイベントだ。
街行く人が自由に願いを短冊に書いて提げられる。
あれ?さっきまで横にいたはずの女装大好き探偵はドコに行ったんだ?
並んで歩いていたはずなのに気が付いたら居なくなってるよ。
「おい、長田屋!こっち!こっちだよ!」
声のする方を見やるとそこにはいなくなった本人が楽しそうに手招きをしていた。
「俺らも短冊書くぜッ!」
筆ペンを持った先輩は書く気満々。
この男、ノリノリである。
僕もとりあえず、紙と筆ペンを手に取ってみた。
願い事か…僕の願いは何だろう?
書きたいことは沢山あるはずなんだけど、いざ書くとなるとなかなか書けなくなるもんだ。
そうだ、あれを書いておこうかな?
僕の、今願えるささやかな願い。
先輩はサラサラと筆を滑らせて、あっと言う間に5枚の札を書き終えていた。
人の願いは気になるもの。
ついつい、横目で覗き見てしまう。
『事務所がほしい 快』
(うん、まあそうだろうなぁ…)
『カワイい服がほしい 快』
(あぁ、ね。もう箪笥の中パンパンなのに…)
『何か難解な事件が起こりますように 快』
(……ぇ?なんて不吉な。)
『てか、俺に事件を!サクッと解決してやるぜ!依頼の際は○○○-○○○○まで!
東城探偵事務所』
(おいおい。短冊で宣伝するなよ…)
そして、最後の一枚。
『長田屋猟介の初…… 快』
何だこれぇ!!!
すかさず隠されて大事なところが見えなかったぞ!
僕の何を願ったんだ?
「よし!あとはこの札を笹の葉に……」
「ちょっと待ったぁ!」
僕は楽しそうに笹の葉に歩み寄る先輩の前に立ちはだかった。
「その5枚目の札、拝見させて下さい!」
「えぇ?ヤダ。」
超気になるなぁ……くそぅ。
「むふふ…。そんなことより、長田屋君はなんて書いたんだい?」
先輩は僕の手から札を取り上げた。
「あっ!」
短冊が破れなかったのはもはや奇跡だ。
まるでジ○イアンですね、わかります。
「さぁて、何て書かいてるのかなぁ?」
僕の書いた札をまじまじと見つめる先輩。
改めて書いた願いを他人に見られるのはこの上なく恥ずかしい。
どこの子供だよ、まったく。
(人の事は言えないか。)
しかし、後に残ったのは今までのおちゃらけモードがまるで嘘のような顔で、取り上げられた札はヨレヨレになって僕の手元に戻された。
「え?」
「そんな真面目な事を書かれちまったらへらへら笑えねぇよ」
そうか…それはそうかもね。
日頃はあんなにもおちゃらけモード全快な先輩でも、その芯ではしっかり考えてくれてるんだなぁ。
少しだけ、昔した約束を思い出して安心した。
「あんまり深く考えんじゃねぇぞ」
そして、僕らはそれぞれの願いを提げる。
(5枚目の札は僕がどうやっても見えないような位置に提げられてしまった)
明るかった西の空は少しずつ闇が覆いはじめ、星達が輝きだす。
二人が提げた6つの願いは静かに夜風に揺られ続けていた。
『今が、続いていきますように 長田屋 猟介』
それが、今の僕が願える最善の願い。
推理終了
先輩と僕は初夏の夕暮れに照らされた商店街を歩いている。
そう、7月7日、今日は年に一度の七夕の日。
「せんぱ~い?聞いてますか?」
目の前の見慣れた商店街には大きな笹の葉が設置され、既にいくつもの想いが込められた短冊(願い)が下がっていた。
商店街が毎年恒例で行っているイベントだ。
街行く人が自由に願いを短冊に書いて提げられる。
あれ?さっきまで横にいたはずの女装大好き探偵はドコに行ったんだ?
並んで歩いていたはずなのに気が付いたら居なくなってるよ。
「おい、長田屋!こっち!こっちだよ!」
声のする方を見やるとそこにはいなくなった本人が楽しそうに手招きをしていた。
「俺らも短冊書くぜッ!」
筆ペンを持った先輩は書く気満々。
この男、ノリノリである。
僕もとりあえず、紙と筆ペンを手に取ってみた。
願い事か…僕の願いは何だろう?
書きたいことは沢山あるはずなんだけど、いざ書くとなるとなかなか書けなくなるもんだ。
そうだ、あれを書いておこうかな?
僕の、今願えるささやかな願い。
先輩はサラサラと筆を滑らせて、あっと言う間に5枚の札を書き終えていた。
人の願いは気になるもの。
ついつい、横目で覗き見てしまう。
『事務所がほしい 快』
(うん、まあそうだろうなぁ…)
『カワイい服がほしい 快』
(あぁ、ね。もう箪笥の中パンパンなのに…)
『何か難解な事件が起こりますように 快』
(……ぇ?なんて不吉な。)
『てか、俺に事件を!サクッと解決してやるぜ!依頼の際は○○○-○○○○まで!
東城探偵事務所』
(おいおい。短冊で宣伝するなよ…)
そして、最後の一枚。
『長田屋猟介の初…… 快』
何だこれぇ!!!
すかさず隠されて大事なところが見えなかったぞ!
僕の何を願ったんだ?
「よし!あとはこの札を笹の葉に……」
「ちょっと待ったぁ!」
僕は楽しそうに笹の葉に歩み寄る先輩の前に立ちはだかった。
「その5枚目の札、拝見させて下さい!」
「えぇ?ヤダ。」
超気になるなぁ……くそぅ。
「むふふ…。そんなことより、長田屋君はなんて書いたんだい?」
先輩は僕の手から札を取り上げた。
「あっ!」
短冊が破れなかったのはもはや奇跡だ。
まるでジ○イアンですね、わかります。
「さぁて、何て書かいてるのかなぁ?」
僕の書いた札をまじまじと見つめる先輩。
改めて書いた願いを他人に見られるのはこの上なく恥ずかしい。
どこの子供だよ、まったく。
(人の事は言えないか。)
しかし、後に残ったのは今までのおちゃらけモードがまるで嘘のような顔で、取り上げられた札はヨレヨレになって僕の手元に戻された。
「え?」
「そんな真面目な事を書かれちまったらへらへら笑えねぇよ」
そうか…それはそうかもね。
日頃はあんなにもおちゃらけモード全快な先輩でも、その芯ではしっかり考えてくれてるんだなぁ。
少しだけ、昔した約束を思い出して安心した。
「あんまり深く考えんじゃねぇぞ」
そして、僕らはそれぞれの願いを提げる。
(5枚目の札は僕がどうやっても見えないような位置に提げられてしまった)
明るかった西の空は少しずつ闇が覆いはじめ、星達が輝きだす。
二人が提げた6つの願いは静かに夜風に揺られ続けていた。
『今が、続いていきますように 長田屋 猟介』
それが、今の僕が願える最善の願い。
推理終了