櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー◉メンバー募集中◉新作ダンス公演=2021年7月17〜18東京

犬の静脈に嫉妬することから(土方巽さんの命日に、、、)

2021-01-22 | ダンスノート(からだ、くらし)

きょうは、土方巽さんの命日でした。夜『踊り入門』のレッスンが重なりましたので、集まった方々といっしょに、土方氏の文章をいくつか、読み、踊り、味わいました。

氏の文章の中でも、僕の場合、特に惹かれるのが『犬の静脈に嫉妬することから』と題された断章で、この文章を読むたび、痛覚が連動するようで、どうにもじっとしていることができない、生理の奥からの痛いような悲しいような、咽がからからに乾いてゆくような感触がしてなりません。そして、子どもの頃の淀んだ川や粉っぽい空気の記憶とともに、生々しい暮らしの匂いが蘇り押し寄せてきます。いまの東京には居ない犬が、土方氏の言葉の中には低いうなり声をたてながら、じっとコチラを睨みつけているように感じます。昭和44年の美術手帖が初出のようですから、僕が小学校のころです。筑摩の単行本『美貌の青空』にも入っています。上の写真がそれ。装幀は詩人の吉岡実さんです。

土方巽さんは1986年に亡くなり、当時の僕はまだ21歳でしたが、最後になってしまったシリーズ公演を、いまもよく覚えていて、脳みそに染み付いてしまったシーンもあります。あるときは、舞台が交差点のように組まれていたのが、真っ黒な十字架に見えてしまったり、その十字架と田んぼの畦道が、なぜかダブり重なってしまった、という妄想も覚えています。池袋西武のスタジオ200で展開されていました。亡くなられた時、いや、もしかすると、ご危篤という時点だったかもしれないのですが、その場所の廊下に大きな貼り紙がされていたような記憶も幽かにあります。この人が亡くなるということが、ある季節の終わりであるように感じたのは確かです。寺山修司氏が亡くなり天井桟敷が解散したときから数年しか経っていない頃で、なんとなく、ひとつの大きな波が引いてゆくような感じもしていました。

当時は、劇場にも書物にもギャラリーにも、湿り気や暗さや重さを嫌うかのような新しい波が来ていましたが、その波は明るく開放的なのに、なぜか親しくなることができなくて、対して、土方さんの舞台はそれとは真逆で、暗さ重さが極まり、湿度も高い感じだったのですが、ものすごく近しく懐かしい感じがあったのです。

土方氏の公演を初めて観たのは18歳のときでしたが、異様な緊張感に巻き込まれそうになりつつ、その反面、どこか違和感も感じ、その違和感にまた心を動かされる、という、矛盾や混沌がある独特の経験をしました。以来、亡くなるまで、わずかの間でしたが、観れるだけの回を観ました。

異なる肉体、異なる心、異なる存在、というようなものが、非常にくっきりと目の前に在って、それを感じることから、理由はいまだにわからないのだけれど、強い違和感と強い肯定感が同時に湧いてくる、という、非常に独特の感覚を体験しました。そういう複雑な気持ちのまま魅せられ続けた経験は、土方氏の舞台以外では、いまだありません。

土方巽さんの命日。この日が来るたび、何か書きたいと思いつつ、どうにも書けないということが続いております。思いは色々で複雑で、それゆえ、簡単にコトバにすることができないままなのですが、それは、氏の作品や言動が、いまだに僕の心を動かし続けているということなのかもしれません。

コロナ禍の東京の夜を歩きながら、ひしめきあうようにして見つめた、土方さんの舞台の光景を、ふと、思い出します。

 

 

 

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