櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

「CODA」と「GGG」(坂本龍一さんの、、、)

2018-11-11 | アート・音楽・その他
ピアノの音はゆっくり消えてゆく、減衰する響きだ。(踊りも、やはり消えてゆく)
坂本龍一さんを撮った記録映画「CODA」がテレビ放送されたのを観て感銘を受けた。
そして「GGG」という演奏会で聴いた、坂本氏のピアノ演奏を思い返していた。
あれは冬だったから、もう一年近くたつ。
あれはグレン・グールドを偲んで開かれた演奏会で青山の草月ホールだった。
トリスターノの斬新な演奏には息をのんだし、アルヴァ・ノートの構築した音響世界は焼き付いている。
しかし、坂本龍一氏が弾くピアノの音は、まったく別の時間を生み出して優しく響いた。
とりわけ、バッハのコラール前奏曲は素晴らしく、それは記録映画「CODA」のなかにも少し出てきた。
とても有名な ”Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ” だった。
(今まで何度も踊ったが何度踊っても辿り着けない深い淵を感じてきた)
演奏会でも録音でも沢山の演奏を聴いた。
あの日の草月ホールで坂本氏が演奏したそれは、いままで聴いたことがないような説得力のある演奏だった。
心がそのまま鳴っているみたいだった。
わずか数分のなかに、つらかったことも、うれしかったことも、溶かされて消えて、心臓だけがただただ脈打っているような感覚になった。
映画の中で、これと同じ曲を少し演奏して、昔の人は一音一音を祈りながら書いた、と、氏は説明された。
そして、この曲から出発された新しい音楽が、映画の中で紹介されてゆくその経過には特別な感銘を受けた。
演奏会を思い出しつつ、また映画の映像を見つつ、ふと、時の流れを意識してしまうのだった。
時が流れて、消えてゆくものがあり、忘れられてゆくものがあり、新しい何かが訪れ、胎動がはじまり、また時が流れ、、、。
そのようなことを、坂本氏の音楽から深く思うのだった。

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