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倒産回避コンサルタントからの救命ロープ

倒産回避コンサルタント・中逵努のブログです。
恩師村松謙一弁護士ご本人のブログではないことを予めご了解ください。

お知らせ

2007年01月13日 | 企業再建について
非常に長期間ブログの更新が出来ず申し訳ありませんでした。

1月11日にNHK総合で放送された「プロフェッショナル
仕事の流儀」に私の恩師である村松謙一弁護士が出演された
直後から、本ブログに対するアクセスが急増し、改めて
村松弁護士の流儀・哲学を必要としている方々が多いことを
痛感しました。

そこで本ブログも来週より再開させていただき、少しでも
多くの方々に村松弁護士のメッセージをお届けしながら、
私の活動報告をすることで、倒産回避のヒントを感じ取って
いただける草の根運動になればと思います。

改めまして今後とも宜しくお願い申し上げます。
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連鎖倒産回避方法

2006年08月01日 | 企業再建について
待ったなしの案件がいくつも重なってしまい
長い間投稿できず申し訳ありませんでした。
東京で感じる好況感とは裏腹に、出張で訪れる
東京など限られた場所以外の都市で感じる景気感には
かなりの温度差があります。さらに今年は例年にない
長い梅雨と豪雨の影響で、7月の売上が低迷して
しまった企業も多いと思います。従来から何度も
お話しているように、天変地異などの不可抗力による
売上低迷に対する最善の防御策は、決して無理をせず
金融機関に協力を仰ぐことです。できれば今後半年間の
簡単な資金繰りを作成して、お金の入りと出の予測を
立ててください。簡単な家計簿を作成する要領でも
効果的です。安易にお金を借りて借入金残高を増やす
前に、元金返済をしばらく猶予してもらう協力を
金融機関に仰ぐことを真っ先に考えてください。

コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年8月23日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

連鎖倒産を回避する方法(その1)
金融機関からの割引手形の買戻し要求対策

第1 自主再建方式のメリット
1.大規模な倒産事件が多発している半面、社歴の古い
地域に密着しているいわゆる老舗企業の倒産も多発
している。業界第3位、第4位といった中堅企業の
倒産も目につく。

批判を承知で言わせてもらえば、個人的には、破産や
会社更生といった法的倒産手続きにもっていくには
もったいないと思われる倒産も散在される。

私が法的倒産手続き(再建型にせよ、清算型にせよ)
を極力回避して、第一義的に、裁判所の関与しない
自主再建型の手続きを目指している理由のひとつ
には、法的手続きでは、関与先の債権者を、その
大小にかかわらず十把ひとかけらに取り込んでしまい
その被害、影響力が自主再建方式に比較し、大き
すぎるという点である。何も全債権者を対象に
しなくても、ある一定の大口債権者の協力だけで、
十分に再建できる企業も多数あるからである。
債権者の側においても、できる限り倒産の渦に
巻き込まれたくはないであろう。

2.そのひとつに、「割引手形の買戻し」という
問題がある。
①大企業、中堅企業、歴史の古い地元企業の倒産の
現場では、特に割引手形の買戻し要求による
連鎖倒産で、一般債権者までその傷口を広げる
傾向が顕著である。

これは、大企業や中堅企業ほど、取引高も多く、
必然その支払方法は、手形決済が多くなるからで
ある。取引先企業側も、受け取った手形をその
期日(サイト)である3~5ヶ月間も、後生
大事に自己の会社の金庫に眠らせておく企業は
少なく、多くは受取手形を直ちに取引先金融
機関に持ち込み、割り引いて現金化して、支払期日
までの数ヶ月を待つ余裕などなく、運転資金化
(現金化)しているはずである。

金融機関側においても、いくら「貸し渋り」と
いっても、大企業や著名企業、地元でのれんのある
老舗企業の手形ならば、割引にも応じていた
はずであろう。にもかかわらず、信用のある
はずの大企業、名門企業、老舗企業等が突然
潰れることは当事者以外、誰も予想だにしなかった
はずである。

そのため金融機関側としては、手形割引を申し込んだ
取引先に、「手形割引を直ちに引き取って、代金を
早急に返還せよ」と、いわゆる割引手形の買戻しを
要求してくるのである。

以下次回に続きます。
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金融機関には正直に窮状を訴える 6

2006年06月16日 | 企業再建について
出張続きでなかなか投稿できずに申し訳ありませんでした。
景気回復との報道があっても、それは限られたごく一部の
ようで、地方ではまだまだ不況感の拡散を実感しています。
大手都市銀行の不良債権処理が一段落した後、今後は
地方銀行・信用金庫の不良債権処理がスタートしています。
中小零細企業経営者の中には、必要な生活費すら削り
ながら、金融機関へ返済を続けておられる方も多いと
思います。そんな方はタイトルの通り「金融機関には
正直に窮状を訴えて」下さい。ただし、言葉だけでなく
メモ書きでも良いので、入金額と出金額を簡単な明細を
付けて説明してください。金融機関へは数字を使って
説明することが重要なポイントです。数字への落とし込み
方法をお知りになりたい方は、ご遠慮なくメールで
お問い合わせください。簡単な(でも効果的な)ポイント
をお伝えします。もちろん料金は一切いただきませんので
安心してお問い合わせください。

コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年8月16日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

5.清算貸借対照表の作成
1)前述の担保設定状況表とも関連しますが、今会社が
破産したなら、会社の資産を早急に処分して換金し、
債権者に配当した場合の配当率はどの位になるのかを
算出しておくのも得策です。

2)清算貸借対照表作成のポイント
なお、その際、忘れてはならないのは、現預金は
金融機関側の債権と相殺されゼロになること、
什器備品等はガラクタ価格となり、従業員の
解雇予告手当1か月分、退職金、裁判費用、
清算費用等は共益的債権として、一般債権者に
配当される前に優先的に換価金から支払われることに
なるということです。

3)更に、担保設定している不動産は全て担保権者に
配当されるため、担保などのない一般債権者への
配当実施にかかる期間はゆうに2~3年はかかるし、
その配当額も相当に低くならざるを得ず(通常は
2~3%)、この破産配当と再建計画による1~2年間
の返済額とを比較し、今破産しても、数%の返済
(実際に配当するのは更に2~3年先になることが
普通)であるならば、ここは再建に協力して、1~2年
以内に破産配当を上回る金額を回収して方が得策との
判断が確実に金融機関側にも働くのです。

6.社長の熱意と誠意
とかく経営者は金融機関に頭を下げるのが下手です。
もしくは、正直に窮状を打ち明けることが下手です。
 しかし、会社の一大事の時であり、大将自ら、
苦難を乗り切るために、率先して動かなければ、
誰が動くというのでしょうか。よく経理部長を
金融機関に行かせて説明させている方も見受けられ
ますが、金融機関側としても、「社長自身から
再建にかける熱意を読み取れるか」が、再建に
協力するか否かの重要な判断材料になっていることを
肝に銘じるべきです。(これは本当に重要なポイント
です)。
多くの会社の自主再建に携わってきた弁護士として
これだけは断言できます。
 取引先の会社がつぶれて歓喜する金融機関は
ひとつもないということです。むしろ金融機関こそ
被害者なのであり、相当なダメージを被ることに
なります。
「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」との格言があります。
早め早めに金融機関に相談を持ちかければ、金融機関
の方でいい知恵を出してくれるものです。あくまで
会社側の誠意が読み取れるかです。
 ゆめゆめ資産隠しなどを行ってはなりません。
経営者の方々に言います。
これからは融資に頼る経営ではなく、長期的展望に
立って、会社の収益力の範囲内での返済を実施する
企業が高く評価される時代です。いい機会です。
この際、会社のウミを出し切って、収益弁済を
柱にした会社に変身してください。
 叩けよ、さらば開かれんです。勇気を出して。



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金融機関には正直に窮状を訴える 5

2006年06月04日 | 企業再建について
前回の投稿以来長いインターバルとなってしまい大変
申し訳ありませんでした。更新頻度が低下していますが
これからも宜しくお願いします。

コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年8月16日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

信用不安の回避=倒産の回避(下の3)

3.返済計画書の作成
次に、前述の事業計画書から算出された返済原資並びに
その80%にあたる「具体的返済予定額」を頭にして
各金融機関、或いは未払金、未払租税公課の返済計画案
を算定することになります。

 ここで注意すべきことは、法的優先性のある返済と
一般債権の返済をまず区分けしておく必要があると
いうことです。

1)例えば、租税公課は破産法上、財団債権として、
最優先して支払われるべきであり、ユーザンスの
未払等についても、譲渡担保性を有する債権として、
優先して支払うことが公平でしょう。

2)又、工場等に担保設定していて、競売などを
されては再建計画が履行できないような担保権者に
対しては、別途、弁済協定書を取り交わし、返済を
続けている限りは、担保権の実行をしないで欲しい
旨の約束を取り付けることが肝要です。

3)一般債権者に対しては、全体の一般債権額を
分母に、個別の債権者の債権額を分子にして、
按分比率をした比率に基づいて、前述の「具体的
返済予定額」を割り付けていくことが、公平の
原則に合致します。

4)その際、極めて少額の債権者については、
実質上公平の原則、会社更生法上の少額債権者
救済の理念に基づき、一般債権者より若干返済額
において、有利に扱っても、不公平とは言えないし
その旨の理解は得られるものです。

4.担保設定状況表
1)会社の資産を全て明示し、各金融機関がどの
不動産に担保設定をし、その順位が全体として
どの位置にいて、自行の保全状況がどうなって
いるかを明確に示して、全金融機関に公示する
のが肝要です。

 これにより、金融機関側においても、自己の
担保のポジションが確認されると共に、万一
破産になってしまったら、保全状況がどの程度
悪化するか、換言すれば、破産せずに再建できれば
どの程度の保全状況の悪化(例えばマイナス3億
円)を防げるかの判断が可能となるからです。

2)担保設定状況表作成のポイント
 この担保設定状況表についても、再建時の
担保評価(ゴーイングコンサーンバリュー)と
破産となって会社を清算した場合の不動産の
処分評価(競売手続における評価)の2通りを
用意してあげると、両者の比較ができ、再建の
メリットをより強調できるでしょう。

以下次回に続きます。
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金融機関には正直に窮状を訴える 4

2006年05月16日 | 企業再建について
しばらく投稿できず申し訳ありませんでした。
せめて週に1度は更新できるように頑張りますので
これからもこのブログに立ち寄っていただければ
有難く思います。

以前から何度か説明しているように、倒産回避に際して
金融機関に正直な現状を打ち明けることが大きな
ポイントです。さらに言えば、例えばご自身の年金まで
返済に充てているような場合は特に配慮が必要です。

人間の生存権を脅かす意味もあり、年金の差押は基本的
には認められないほど本来法的に保護されているものですが
年金からの任意での返済は個人の自由行為として認められて
います。つまり年金での返済を本来強要できるものでは
ないのです。

だからもし任意で年金を返済原資に充てているような方が
いらっしゃれば、年金部分を除いた資金繰り表を一度
作成して金融機関に交渉するのが大きなポイントなのです。



コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年8月9日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

信用不安の回避=倒産の回避(下の2)
第7 金融機関側として、取引先会社の再建に
   協力るべきか否かのメルクマール(指標)

1.資金繰り表(約定資金繰り表と変更資金繰り表)
 金融機関側としては、まず会社の現状を正確に
把握し直す必要があります。
 なぜなら取引先会社が、金融機関に会社の窮状
を知れれまいとして、早晩資金不足に陥ることを
承知で、せっせと約定返済を続け、その内実は
かえってますます資金繰りが悪化しているという
例は枚挙にいとまがないからです。

 そこで、現在の当行に対する返済額を全債権者に
対する返済に置き直せば過剰返済であり、このまま
の返済を続けていると早晩資金ショートして、
ひいては、手形不渡り倒産、従業員の給料未払い、
信用不安等、経営危機に陥る事態にあることを、
まずは正しく知ってもらう必要があります。

 案外、金融機関側は、自己の返済のみしか見て
おらず、債権者全体に対する総返済額を見ていない
ことが多いからです。
 そのために必要なものが、「約定資金繰り表」
(過去実績3カ月、将来の予想6カ月)です。

 これにより、金融機関側にも資金ショートに
陥らせない何らかの方策を考えざるを得ないと
気づかせることになります。
 「資金ショートさせないための何らかの方策とは
何か」が次の問題となります。

これには、2つの方向があります。
①社内にあっては、経費削減により、営業収支を
黒字化する方策です。
 この点をまとめ上げたのが、「合理化実施要領」
です。

 具体的には、人件費の削減、その他経費の削減
により、どれくらいの営業収支の好転が見込めるか
です。
 遊休資産等があれば、その処分により、有利子
負債がどれだけ減らせるかです。

②社外にあっては、経常収支の部分です。即ち、
金融機関との金利低減、毎月の元本返済の
低減により、翌月繰越金が毎月安定して、人件費の
2~3ヶ月分残せるかという視点です。

2.事業計画書の作成
 これらの資金繰り表が企業でいう車の前輪とすれば、
後輪としては、事業計画書の作成、提出です。

 ここで大切なことは、過去三ヵ年の事業実績を
必ず記載し、その実績の延長線上に将来五ヵ年の
事業計画案を位置付けることです。

 そして、将来右肩上がりに売上高が増加する方式の
事業計画は、消費不況の今日では全く信用性が
ありません。

 私共は、直前六ヶ月間の売上動向から、前年比
30%乃至40%前後の売上減を試算してスタート時の
売上高とし、以後も三ヵ年或いは五ヵ年は、売上増は
見込めないか、三ヵ年毎に若干の見直しをする手法を
用いています。

 売上が今後、相当落ち込んだとしても、どの程度の
収益弁済なら安定して確実に履行出来るかを算出
するためです。

 ここで大事なことは、経営危機の原因が、
(1)営業利益の段階で赤字が続く、いわゆる放漫経営
型に起因するのか、

それとも、

(2)営業利益、経常利益上は黒字であるが、資金繰り上
資金ショートが発生する、過剰返済、黒字倒産型に起因
するものなのか

の見極めです。

 前者であれば、合理化の実施が再建の可否を握る
のに対し、後者の場合は、金融機関側の強調で十分に
再建に導くことが可能だからです。

 そして、返済方法いかんで十分に再建に導くことが
可能である以上、銀行法上も公的、社会性を有する
金融機関側には、債権回収の視点及び企業支援の
社会的役割の視点から、会社側の調整案を協議
すべき「善管注意義務」を有していると私は考えて
おります。

 換言すれば、あまりに理不尽な要求、公平性を無視
する要求を一方的に自己の都合のみ押し付ける
ことは、その社会性、公共性からみて権利「濫用」に
該当する場合も出てくると私は考えています。

 次に、上記の事業計画書から、年間の返済原資を
算出するのでありますが、ここで注意すべきは、
返済原資(減価償却費+税引後利益)をそのまま
そっくり返済に充ててはいけないということです。

 なぜなら、将来的に売上高が計画に反して更に
低下することもあり、加えて、設備の老朽化による
修理費、賞与等、将来特別に発生する経費に対応
する借入がもはや出来ないという事情を前提に
すれば、返済原資の80%程度を返済に回し、
残り20%相当額は、将来の不測の事態に備える
予備費として、会社に残しておくべきです。

 債権者側から見ても、余裕をもった返済であれば
こそ、長期的かつ安定的な返済履行の確実性を
読み取ることができるからです。
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金融機関には正直に窮状を訴える 3

2006年05月04日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年7月26日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

信用不安の回避=倒産の回避(下の1)
第5  資金ショート3カ月前には金融機関に相談を

警察庁がまとめた98年度の自殺者は3万2863人に
上り、初めて3万人を突破した。そのうち、会社倒産、
失業等の「経済・生活苦」に起因した自殺者は
6058人となり、97年が3556人であったから、
実に2502人も一挙に増加したことになります。
 一日に換算すると、実に16人の尊い命が倒産・
不況苦に亡くなっている計算です。加えて、中高年の
家出も増えているとの事です。

 長引く不況の影響が、このような数字となって訴えて
いることを関係各位は決して目をそらせてはなりません。
社会的サポート体制が急務となっています。

 多くの倒産事件に関与してきた弁護士として、
経営者の自殺に遭遇した例はいくつかあります。
 悲嘆の苦しみに耐えなければならない者は、
亡くなった者よりもむしろ残された遺族であることを、
会社経営者は胸に刻まなければなりません。

 自殺の直接の引き金は「孤独感」だそうです。
自分自身が「一人ぼっち」と感じるところから死に
向かいはじめているのです。そして必ずその予兆は
あるものです。妻、役員管理職らが、経営者の
孤独感を早めに見抜き、開放してあげ、精神科医の
カウンセリングを受けさせられれば、十分に防げる
こともわかっています。

 また、弁護士会においても、リストラや過労に対する
相談窓口を用意しており、経営危機と感じたならば、
顧問弁護士、税理士らに直ちに相談すべきです。
 顧問弁護士・税理士はそのときのためにこそいる
ようなものです。
 金融機関側の不用意な発言をきっかけに、経営者が
命を絶った例も多数見受けます。
 金融機関と取引先企業は、切って切れない夫婦、
親子のような関係にあり、本来の金融機関の役割は
取引先企業が苦境に立たされた時の駆け込み寺で
なければならないはずです。
 然るに、経営危機に陥った原因たる放漫経営をなじる
ばかりでは、傷口に塩を塗りつけるようなものであり、
最悪の場合は、自滅へと足を引っ張ることになります。
損失の拡大となるばかりです。
 風邪をこじらせて熱を出している子供に、どうして
風邪を引いたんだとどなってみても仕方がないで
あろう。どうしたら熱が下がるかを考えるのが先決
だろう。

 絶対的な情報量と組織、人材と資金力を備えた金融
機関と、資金力の乏しい中小零細企業の関係は、
親子の関係として、苦境に立たされた企業を救うために
常に直接接している金融機関こそが、真っ先に援助の
手を差し出してあげなければならない位置にいるのです。

 他方、金融機関の援助をお願いするために、中小企業
側としては、経営危機に陥った理由を自己分析し、
①その除去の可否と具体的除去方法、②危機の原因が
赤字体質の放漫経営に由来するのであれば経費削減
の具体化を明らかにし、もって債権の見通しを示す
ために、以下の資料を作成して、資金ショートに陥る
少なくとも3カ月位前には、金融機関に相談に行くべき
です。

 金融機関側として、支援してあげるために最低必要と
なる判断資料は、以下の7つの書類に要約されるから
です。
 私はこれを「再建のための7つ道具」と呼んでいます。
①現状通りの資金繰り表(資金ショート時期のわかるもの)
②資金ショートを回避し、且つ安定的に資金が回る
ことを示せる変更資金繰り表
③過去実績と比較した向こう五ヵ年程度の事業計画書
④上記の事業計画書に基づいた公平・公正なる
各金融機関に対する返済予定表
⑤担保設定状況表
⑥清算貸借対照表と清算時配当率試算表
⑦会社側の努力の跡を示す合理化予定・実績表

 なお、少なくとも以上の7つの書類は、現在会社が
好調であっても、いつ何時経営が危うくなるやもしれない
今日では、会社の常備薬よろしく、常に会社に用意
しておく配慮が、経営者には必要です。

第6 会社を再建に導くための基本ルール
1.さて、勇気を出して金融機関に会社の窮状を打ち明け、
窮地脱出の助言を得ることが、雪山で遭難せずにすむ
最善の方策であることを述べました。おそらく読者の
方々は、今まで自分が考えていたことと正反対のことを
私が言うので戸惑っている方々も多いことと思います。

 金融機関を鬼のすみかと考えているのではないで
しょうか。
 そこで以下、私共の事務所でこれまでに扱った
数多くの会社再建の事例を通して、金融機関側としても
助け舟を出したくなるような再建に導くための書類の
重要性とその作成上の注意点(ノウハウ)について
説明することとします。

2.会社の窮状を訴えられ、助けて欲しいと要請された
とき、金融機関側審査部としては、取引先会社に対し、
再建のための協力・支援をすべきか、逆にもはや
救済の余地なしとして、清算を勧めるかを検討する
必要に迫られます。

 ここで大切なことは、金融機関側としても、再建できる
のならば企業に再建してもらって、貸金の全額(100%)
回収の実をあげたいと考えていることであります。
 換言すれば、原則再建協力であり、再建反対は
あくまで例外であるという図式であります。

 この大前提を企業経営者は、しかと認識しておいて
下さい(発想の転換です)。

3.本音の部分は以上の通りとしても、金融機関側にも
稟議等決済のための手順があり、軽々しく、再建に
協力しましょうと言えないことも事実です。

 ここで絶対にしてはならない過ちは、不公平弁済、
公私混同、会社資産の隠匿(名義変更)等、悪質な
資産保全に走ることです。
 後に詐欺破産罪、過怠破産罪という刑事罰を伴う
ペナルティーが待っています。

 会社を再建に導くための大前提は、「等しからざるを
憂う」「知らざるを憂う」という債権者心理、「公平、公正
なる返済」という基本ルールにあります。このルールを
ないがしろにすれば、せっかくの原則「賛成」が、
たちどころに例外たる「反対」となって地獄に落とされて
しまいます。

4.以上、この債権者心理及び基本ルールを守って
いれば、おのずと道に迷った山中から灯火親しむ集落
に出ることができるのです。
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金融機関には正直に窮状を打ち明ける 2

2006年04月23日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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99年7月12日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(中)

第4 借主側からの金利引き下げの具体的根拠

1. 金利に関する銀行との取り決めは、銀行取引
約定書第3条に規定されています。

 なお、「金利」についての様々な問題は、紙面の
都合上省略します。(興味のある方は、村松弁護士
著「貸し渋り対策マニュアル」(オーエス出版刊)
をご覧下さい)

2. 結論から言えば、金融機関側からの一方的な
金利の引き上げに無条件に応ずる必要はないと
いうことです。

3. 逆に、公定歩合が0.1%にまで下がっており、
政府において、企業の倒産防止、経営の安定化を
図るため、長きにわたり、金利の低利誘導を
している今日においては、約定書第3条1項にいう
「金融情勢の変化、その他相当の事由がある場合」
に該当し、借主側から積極的に金利の引き下げを
求めても、決して条項違反ではないと考えています。
否、従業員を守る立場の経営者の姿勢として、
積極的に金利の引き下げをお願いすべきでしょう。

4. この点、「借主側から金利の引き下げを求め
られるか?」については、約定書の規定の仕方から
議論がありましたが、通説、実務上は、借主側にも
金利の変更申出権があることで一致しております。

5. 特筆すべきは、住友銀行が独占禁止法の視点に
おいても、これまでの銀行取引約定書があまりに
銀行側に有利に作成されているとの批判を真摯に
受け止め、他の銀行に先駆けて、独自に新銀行取引
約定書を作成し、平成11年(99年)4月1日より運用
し、それまでの「差し入れ書形式」を「当事者調印
方式」に改め、また、金利変更の点についても、
「借主側にも変更の申出権を明記している」点は、
当事者公平の視点に立って開かれた銀行として
十分に評価に値するものです。

 但し、せっかく住友銀行が当事者対等の立場を
明らかにしているにもかかわらず、残念ながら追随
する金融機関の出足が遅いのが残念です。

6. 早急に金融機関の側でも、取引先の支援につき
弱者の気持ちを理解した、生まれ変わった金融機関
として、再度その協力を積極的に進めるべきで
あろう。

 公的資金の注入とは、金融機関の社会性、公的
性格を目覚めさせる意味であったはずだからです。

村松弁護士のコラム引用終わり

 再生の方向性や再生スキームのストラクチャーに
ついて金融機関の方々と打ち合わせする際に、重要な
ポイントとして実感するのが債務者である企業経営者
ご自身の日頃の姿勢なのです。

 債権者である金融機関の方々も債権者以前に人間
であり、日頃からその方なりに精一杯経営努力されて
いて債権者に対しても真摯に誠実に対応されている
企業に対しては、何とか救いの手を差し伸べて
あげたいという気持ちを持たれている銀行マンも実は
大勢いらっしゃるのです。
 債権者である金融機関には決して怖がらずに早い
段階で窮状を相談されることが重要なのです。

 また経営者の方々は早い段階で相談できるような
資料(資金繰り予定表・月次決算予定表)を作成の上、
常に経営状態を把握した上で早期に相談されることが
非常に重要なのです。

 さらに債務者からの要請として追加融資という形
での金融支援が一般的に期待されるのですが、
追加融資よりも元金返済凍結もしくは利息の一部減免
のほうが倒産回避・企業再生にははるかに効果的
なのです。

 追加融資を受ければ、返済額が増加してしまい、
目先の資金繰りは凌げても、その負担がその後
ボディブローのように効いてくるのです。

以前バスタブの例でご説明させていただいたように
資金収支(収入と支出)のバランスを常に監視
しながら、入りが減少すれば、出も減らすという
対応こそが倒産回避の鉄則なのです。どんなに
経費削減して販売管理費を減らしても収支の
バランスが合わないのなら、迷うことなく金融機関
へ返済軽減の依頼をするべきなのです。
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金融機関には正直に窮状を打ち明ける

2006年04月20日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年7月12日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(中)

第3 資金繰り交渉における借入金の金利交渉
について

1. そこで考え出されたのが、信用不安を回避すると
共に、資金繰り上も毎月の資金繰りを安定させる
ため、銀行等借入先との返済条件の変更や
金利減免の交渉がぜひ必要となるのです。

 金融機関は、「銀行秘密」という一種の守秘義務を
有しており、前述した取引先や下請先に猶予を
申し述べる場合と異なり、その猶予の申し出が
立ちどころに各取引先に知れ渡る→信用不安の
惹起ということはありません。

2. また、どの企業においても、金融機関への元利
合計の約定返済額は、毎月の様々な支払額の中
でも大きな比重を占めております。

 大体の会社は借入金を5年~7年で返済する予定
となっているでしょう。この毎月の借入金の元利金額
の返済について、内にあっては、社内経費の削減を
実施すると共に、外にあっては、金融機関に協議を
持ち掛けることは、決して悪いことではありません。

 むしろ、苦しいながらも無理をして、返済し続ける
ことで、ある日突然、寝耳に水の手形不渡り事故を
起こすことの方が、債権者としての金融機関にとって
も迷惑な話であり、避けたいことなのです。

 最近の例ですが、私の知り合いの銀行の支店長も
「もっと早く現状を打ち明けていてくれたら、もっと良い
アドバイス(返済条件の緩和等)を出してあげられた
のに、突然に、「このままでは、明日手形が不渡りに
なってしまう。お金を貸してくれ。なんとかしてくれ」
では助け舟すら出せやしない」と悔やんでいたもの
です。

3. この点、経営者の方々の考えは、全く逆で、
「銀行に窮状を打ち明けたなら、立ちどころに全てを
取られておしまいになってしまう」という考えの経営者
がいまだに多いことに驚かされます。

 もちろん、何の用意もなく、「会社が苦しい。だから
返済できない」といきなり飛び込んでは、かえって
不安を助長し、誤った情報により、債権回収に
走らせることになりかねません。

 正確な情報と金融機関が支援したくなるような内容
の説明書、正確な資料を用意することが必要です。

 金融機関が支援のために必要とする資料等に
ついては、次のコラムで説明する予定です。

4. むしろ、今回は、現在借入れている借入金の
「金利」のことについて触れたいと思います。

 仮に、10億円の借入金がある会社があるとします。
3%から2%へ金利を1%減額してもらうだけで、
年間1000万円の節減になります。

 ところで、この1000万円を売上によって稼ごうと
すると、営業利益率2%の比較的優良な会社ですら、
5億円の売上を従来の売上とは別個に獲得しなけれ
ばなりません。

 ただでさえ、売上が減少してきているこの時期に、
それとは別の売上を5億円も増やせとは、至難の
わざといっても過言ではありません。

 だからこそ、売上減少傾向のこの時期こそ、
「金利の引き下げ」は、売上増にかわるものとして、
強く意味を持つのです。

 しかも、決して貸倒れ等焦げ付くことのない売上
として、安心して計上できることも魅力のひとつです。

5. このように、重要な意味を有する「金利」の問題
にもかかわらず、企業経営者は、意外と「金利」に
ついては、触れることをタブー視しているようで、
企業経営が苦しくても、金利に触らない経営者が
なんと多いことか。(もちろん、金利に触る前に、
社内体質改善のため、全ての原価管理の見直し
や役員報酬はもちろんのこと、販管費の削減を
しておくことが大前提であるが)

次回に続きます。
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信用不安回避の重要性 2

2006年04月14日 | 企業再建について
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99年7月5日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(上)

第2 信用不安を回避するための資金繰りの
優先順位

1.私が会社を再建する際に、最も苦悩することが、
乏しい資金繰りの中でこの「信用不安」をいかに
回避するかなのです。

 そこで、乏しい資金繰りの中で、金融機関からの
新規借入に頼ることなく、いかに資金ショートをせずに
信用不安を回避するかについては、以下の点を考慮
する必要があります。

 第1に、決済日の支払いをしなくても、信用不安に
ならない相手先はどこか。

 第2に、その支払いを受けられないことで、直ちに
経営危機や生活に支障が生ずる相手先か否か。

 第3に、法律上の優先債権的扱いをされている支払い
はどれか。

 第4に、その支払いをしないと、立ち所に会社自身、
息の根を止められてしまうような支払いか否か。

 第5に、担保により保全されている相手方、或いは
保護されている相手方か否か。

 このような5つの視点を考慮して、毎月の支払内容に
ついて吟味し直すと、各支払先におのずと優先順位が
出てくるのです。

 私が自主再建をするにあたり、考慮する支払いの
優先順位は、次の通りです。
(1)従業員の給料
(2)支払手形の決済
(3)買掛金の支払い
(4)社内経費
(5)借入金の利息
(6)租税公課
(7)借入金の元本

2.ところが、多くの経営者は、むしろこの順序とは全く
逆の(7) → (1)に向かって、支払っているのでは
ないでしょうか。

 乏しい資金を金融機関等の借入金の元利返済に
あてがい、いよいよ手形決済日には、資金がショートし、
手形不渡りにより事実上倒産し、倒産現場には、
従業員の給料が未払いとして残っているという
パターンです。

3.ここで特に注意していただきたいのは、はじめにも
申し上げた通り、この資金繰りの優先順位は、
「あくまで資金ショートを発見した際の会社延命の
ための緊急避難的な一時措置だ」ということです。

 この延命措置を使う大前提は、損益ベースで
営業利益が黒字化する見込みが十分に見込まれる
ことが大前提です。

 黒字化が見込まれてこそ初めて会社再建を
債権者の積極・消極の支援を仰ぎながら目指せる
からです。

 黒字化の見込みがないにもかかわらず、単に
資金繰りを操作しても一時の延命に過ぎず、
結局は、損害を拡大して、かえって債権者の方々
に迷惑をかけることになってしまうからです。
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信用不安回避の重要性

2006年04月09日 | 企業再建について
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99年7月5日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(上)

第1 信用不安が生ずる仕組み
1.経営者の方々の中には、未だに売上高至上主義の
固定観念から逃げられずに、売上高の減少を
信用不安に結び付け、売上高の減少を隠そうと
粉飾操作をする経営者がおられるが、絶対に
やめて下さい。

 信用不安は、とどのつまり資金不足からくるもので
あり、売上高の減少は、遠因となっても直接の
原因とはならないからです。

 否、最近の経済状況下では、減収でも増益の体質
となっているか否か、また、そのように体質改善が
進んでいるかが、経営者に問われているのです。

2.そこで、信用不安を招く資金繰りのショートなの
ですが、現実に倒産してしまった経営者の方々に
一様にいえることは、残念ながら、資金繰りに計画性
がみられなかったということです。

 山道で乏しい食糧のまま遭難したならば、一日でも
長く生き延びるために、一日に食する量を考える
でしょう。

現在の経済情勢においては、大会社であれ、中小企業
であれ、皆雪山で遭難した旅人といっても過言では
ありません。

 少なくとも向こう3カ月及至6カ月程度の資金繰りが
明確になっていなければ、そもそも経営の舵取りは
困難です。最近よく言われるところのキャッシュフロー
経営です。

 ところが多くの経営者は、盲目的に日付のとおり、
支払日の順序で支払いをしていき、結局、月末
或いは数ヶ月先に資金ショートをして、はじめて、
どうしようかと頭を抱えてしまいます。(これを泥縄方式
或いはドンブリ勘定と呼んでいます)

 そこで、顔見知りの取引先に頼み込んでその支払い
を待ってもらったり、融通手形を出し合ったり、最悪の
場合は、街金融の魔の手にかかり、ズルズルと泥沼へ
はまり込んでしまうといったケースが目立ちます。

 人の口には戸が立てられないの如く、取引先に対する
支払猶予や手形ジャンプの依頼は、立ち所に取引先
全てに知れ渡り、申し入れとは逆に現金決済を要求
されたり、担保や保証人を要求され、結局資金繰りの
悪化に拍車をかける自滅への道を早める結果に
なります。

 信用不安の怖さは、与信取引から現金取引に転化
させられ、助けられる企業をも殺してしまうという
怖さなのです。最も怖いのは、取付騒ぎです。

次回に続きます。
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中小零細企業再建への両輪

2006年04月06日 | 企業再建について
倒産回避・企業再生案件に携わる中で、業種・規模
が違えど、経営不振を招くことになった原因として
二つの要因が共通して見受けられる。それは
①資金繰り管理 と ②損益管理 がほとんど
的確に行われていないことである。
真の会社再建・再生のためには、この両輪を
正確に実施することが不可欠となる。

①資金繰り管理
経営危機に陥った企業から相談・依頼を受けた時に
まず最初に行うのが資金繰りの確認である。
企業の血液ともいえるお金の流れを正確に把握
して、今後の資金繰りを維持するための止血を図る
作業である。

相談・依頼を受ける企業のみならず、ほとんどの
中小零細企業の資金繰りの現状は、例えて言えば
足元だけを照らす懐中電灯を持って、暗闇を歩く
ような資金繰りではないでしょうか。少なくとも
3~6ヶ月後の資金繰り状況が予測できなければ
突然のアクシデント(取引先の倒産や売掛金の
回収遅延)に対して、目先の対処・問題先送りでしか
対応できず、どんどん傷口が広がってしまうような
対処療法に結果的にならざるを得ない。

そのような状況になってしまってからでは、普段の
金融機関からの資金調達は難しくなってしまい
利率の高い先からの調達で凌ぐしか無くなってしまい
急速に資金繰りが悪化してしまい、倒産への坂道を
転げ落ちる結果になってしまう。

目先を凌ぐのような管理ではなく、最低3~6ヶ月の
資金繰りが予測できる資金繰り管理が中小零細企業に
とって会社を守るためには絶対に必要なのです。

②本業の損益管理
倒産回避・企業再生で資金繰り管理と双璧を成すのが
損益管理です。簡単に言えば、いくら儲けた・損したの
把握です。目先の資金繰りに追われ、来月の手形を
落とすために必要な資金を確保するための営業活動
ではなく、単月ごとの儲け・損失を予想・把握する
ことで、徒労に終わることのない地に足のついた
経営が実現するのです。

①資金繰り管理のためには月次資金繰り予定表
②本業の損益管理のためには月次決算予定表

この2つの予定表を作成して、初めて正確な経営
状況が把握できるのです。例えて言えば、視界ゼロの
雲の中を飛行機が飛ぶためには、このふたつの
メーターがなくては安全な運行ができないようなもの
です。

具体的なフォーマットが必要な方は、会社名・住所・
電話番号・担当者名を明記の上、下記メールアドレス
までご請求いただければ、ご説明させていただきます。
この2つのメーターを導入するだけで、会社経営が
劇的に変わることは多くの担当先で実証済みです。
  
メールアドレス t.nakatsuji@funai-zc.co.jp


この2つのメーターはあくまで、会社を生き返らせる
ためのスタートにすぎません。もちろんこのスタートを
切れるだけでも倒産回避可能性は一気に高まるのは
間違いありません。しかしターンアラウンドマネージャー
として是非皆さんにお伝えしたいのは、そこから
先の話なのです。2つのメーターを完全に装備して
からが、本当の事業再生の始まりであり、中小企業・
零細企業の抱えた本質的な問題点にメスを入れる
ことで、組織に活力がよみがえり、社員の皆さんが
生き生きと働く職場へと生まれ変わるのです。
そのキーワードは「仕組み作り」です。

「仕組み作り」については別コラムで書かせていただき
ます。
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リストラに対する考察

2006年04月05日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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99年6月21日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

第2 安易な人員整理(整理解雇)は慎むべし

みんなで渡れば怖くないの掛け声よろしく、世間では
リストラの名を借りた安易な人員整理には厳しい
警鐘を鳴らす必要があろう。

1.会社経営者にとって、会社の従業員はいわば自分
の子供と同様である。
 いかに経営者といっても、当該従業員とその家族
の人生を左右するような独裁者的権限を与えられて
いるものではないし、決して支配者などではないので
ある。
 自分が助かりたいからといって、子供を見捨てる
ような親がどこにいようか。

 会社経営者としては、まず自己の食いぶちを減らし
てでも、子たる従業員の食事は確保してあげる姿勢
が肝要である。
 それをあの人とあの人は辞めてくれという名指しの
解雇は、最後の最後の手段でなければならないし、
労働法上も、色々な手を尽くした、その後での
「せざるを得ない」といった最後の手段であることが
必要である。
 整理解雇の適正要件としては、①客観的な必要性
逼迫性、②解雇回避の処置済み、③人選の妥当性
客観性、④労働者との十分なる協議との厳格な
4条件を全て満たす必要がある。
 現在行われているリストラの名のもとの整理解雇が
これらの4条件を全て満たしているかは、大いに疑問
が残るところである。
 そもそも従業員は、家族を守るために働いている
のである。
 その従業員の気持ち、生活を無視する権限は、
いくら会社経営者といえども与えられてはいない。

2.かといって、沈没しそうな船に潤沢な食糧などありは
しないことも十分に承知している。
 とすれば、乏しい食糧を皆で計画的に分け合って
食べるしかない。
 賃金を1人当たり20%ダウンすることで、5人に1人
を解雇しなくて済むのである。
 親たる経営者はもちろんのこと、従業員同士も
みんなで苦難を分け合い、1人の犠牲者をも出さない
工夫をすべきた。賃金が右肩上がりなどとは誰も
決めていないのである。ないものねだりは、もはや
やめなければならない。
 役員の報酬は、半減してもやむを得ないであろう。
何も一生そうしなければならないというのではない。
危機水準を脱するための1~2年の辛抱だ。

3.そこで今の会社の人件費等が現在の販管費総額の
約50%を超えているようだと、明らかに人件費水準は
高額傾向といえる。人件費の削減=賃金ダウンを
考える必要があろう。

 案の定、賃金ダウンの指示を受けて、会社に文句を
いう社員が出てくるであろう。
 そのような自己中心的社員は、沈没しかかっている
船の乗組員としては不向きであり、その時は、脱出
してもらって結構だ。
 要は、危機的状況下の会社は、会社全体で犠牲
(リスク)を分散することが肝要であり、何の落ち度も
ない特定少数の従業員を犠牲(スケープゴート)に
してはならない。

4.具体例として、従業員数100人規模の会社を想定
しよう。
 平均給与30万円(賞与割付済み、福利厚生費含む)
として、月額3000万円の人件費が必要となる。
このうち、20名の解雇を実施したとしよう。人件費と
して、月額600万円の節約になる。(年間7200万円)
 これに対し、全従業員に対して、平均15%(4万5千
円)の賃金ダウンをしたとする、月額450万円の節約
になる。(年間5400万円)
 併せて、銀行にも、金利の引き下げ協力依頼をする。
(銀行取引約定書第3条1項の公定歩合の引き下げ
による条件変更)
 ちなみに、従業員100人で人件費年間3億6000万円
規模の会社としては、年商は少なくとも50億円は超えて
いなければいけない。(粗利15%で7億5000万円、
販管費6億5000万円程度、営業利益1億円(売上高
の2%)程度とすれば、当該会社の借入金の限度は
せいぜい20~30億円前後であり、金利3%平均として
年間6000~9000万円を支払っている計算である。)

 この金利につき、3%を平均2%へと、1%のレート
ダウンを実施していただくことで、年間2000万円~
3000万円の金利引き下げ効果が期待できる。
 先の賃金ダウン5400万円と約3000万円の金利
引き下げ効果により、年間合計8400万円の経費削減
効果となり、20名の特定人のスケープゴートを出さなく
て済むのである。
 もちろん以上はひとつの例であり、具体的ケース毎に
経費削減効果は異なるであろうが、要は諸経費の
見直し、金利の見直し、返済期限の延長等の内外一体
となった会社支援で、1人の犠牲者も出さずに難局を
乗り切る努力が肝要なのである。

5.以上、人員整理の前に、金融機関等の債権者に
ついても、若干の犠牲を覚悟(=協力)していただか
なければならないのである。
 企業の再建は、企業にかかわる全ての関係者が
少しずつ犠牲を負い、その会社の復旧に尽力し、
軌道修正後完全に再建のめどが立った時点で、
当該犠牲分を取り戻していけばいいのである。
 債権者としても、目先の利益や損失に目を奪われ
てはならないのである。
 真の債権回収とは、北風と太陽よろしく、良き指導者
の言に耳を傾けることが第一義なのである。
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倒産回避に向けたロジック

2006年03月29日 | 企業再建について
先週は業務が立て込んでしまったため
投稿できずに申し訳ありませんでした。

出張先の空港で購入して今年最初に読んだ本が
「国家の品格」著者:藤原正彦だった。
その中で、ディベート(討論)に関する記述があり、
討論の結果は、討論の出発点次第という下りを
この一週間掛かりきりになっていた案件の中で
思い出した。

事業再生・倒産回避案件にも全く同じことが
当てはまり、どのロジックからスタートするかが
非常に重要であり、私自身も論理の出発点に
徹底的にこだわって仕事をしているつもりである。

一言で言えば、他人事であるか・自分事であるか
である。多角的で冷静な分析は当然であるが、
最後はこのロジックの出発点いかんにより、
成果が全く異なってしまうと確信している。

倒産回避に立ち向かう場面では、本音ベースでの
議論が交わされることになり、ステークホルダー全員
のスタンスが複雑に絡み合い、それをどのように
調整するかが、ポイントとなる。

利害や価値観が対立する中での調整作業は
透明性・衡平性・倫理観そして何より人としての
慈愛精神が必要だと思う。担当先企業にとって
最大の理解者であり協力者になることが、ステーク
ホルダー全員の利益に資すると信じて頑張っています。

三省堂提供「大辞林 第二版」
慈愛  我が子を愛するようないつくしみの気持ち。


以下のコラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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99年6月21日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  

第1 「再建の見込み」とは何か
1.危機的状況下にある会社を再建させるべきか、
それとも閉鎖すべきかを判断するにあたり、
「再建の見込み」が問題となる。

「再建の見込み」があれば再建すべきであり、
その見込みがなければ再建すべきでなく閉鎖
すべきだからである。それも単なる主観の問題
ではなく。

2.そこで、そもそも「再建の見込み」とは何かが
問題となるが、その前にその見込み「あり」や
「なし」とは何なのかといえば、あらゆる角度から
見ても、再建の見込みが完全(100%)にないと
いえる場合以外は、再建の見込みありと考える
のである。

換言すれば、再建の見込みありとは、再建の
見込みが全く考えられないとはいえない場合と
いうことになる。

私としては、可能性として、90%はダメだろうと
見ても、10%は再建の可能性ありと考えられれば
再建の見込みなしとはいえない(再建の見込み
あり)と考えるべきと思っている。

そして、過去このような考えで会社の再建を進めて
きており、多数の関係者の意見においてダメ
だろうと言われていた会社を再建した例は枚挙に
いとまがなく、その体験が私の考え方の私の
自信となっている。

3.では、本題に戻って、「再建の見込み」とは
なんであろう。

ミクロ的には、組織としての企業を見ていくためには、
企業体を構成する「人」「物」「金」に照らしていく
必要があるが、その中でも特に重要な視点は、
次のマクロ的な視点である。(「物」については、
事業分野の特性、商品力、技術力等があるが、
ここでは割愛する)

①収益面から見て、営業利益段階で、近い将来
(1~2年)黒字化の見込みが確実視される場合。

②配当面から見て、今破産させた場合の将来の
将来の配当時点における破産配当率よりも、
1~2年五の収益弁済額の方が当該破産配当率
を上回る場合(或いは、会社更生法上の最長期限
の20年間の返済原資と配当率との比較)は、
会社を続けさせるべきとの判断。

③収支面から見て、旧債務の一時棚上げを前提に
向こう半年間で、会社の収入と収支を検討し、
そのバランス上少しでも繰り越し残が残る(営業
収支上黒字である)という資金繰り上の見方
(キャッシュフローの視点)等であり、そのそれぞれ
に理由がある。

④また、債権者側の視点として、会社を延命させる
ことでかえって自分の立場が今以上に不利益に
ならないか、換言すれば、会社の資産を食い潰して
いかないか、赤字のたれ流しがいつ頃止まって黒字
に反転するか等、債権者側の視点で把握することも
重要である。

4、但し、何よりも大切なことは、関与代理人弁護士
として、企業という船を操縦する船長たる経営者
その人から、「何としても会社を再建してみせる」
という意欲を読み取ることができるかに尽きるだろう。

そして、前述した計数上の利益・収益見通し、債権者
感情といった客観的判断要素を7割として、残りの
3割については、経営者のやる気といった主観的
要素にかかっているといっても過言ではない。

この利益見通し(客観的事情)と経営者のやる気
(主観的事情)を総合的に勘案して、当該会社の
再建の見込みを判断すべきである。

以降次回に続きます。
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村松謙一弁護士のコラム 2

2006年03月19日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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弁護士ウオッチング 99年5月31日 日刊帝国ニュース
     弁護士 村松謙一
「倒産」は決して悲惨ではないとの臨床的報告(その2)

第3 「倒産は悲惨ではない」との私の仮説の根拠の
大前提(憲法第25条)

1 私が倒産を悲惨的に考えてはいけないとする根拠の
大前提は、次のところにあるのです。
 確かに一方においては、借りたお金は返さなければならない
ことは、子供でも知っております。
 私もそれを否定するものでもありません。
 しかし、もう一方の極には、「健康で文化的な最低限度の
生活をする権利」或いは生命を維持する権利も我々国民は
基本的人権として併せ有しているのです。
 換言すれば、決して自己、家族の生活、生命を犠牲にして
まで、ましてや犯罪を犯してまで返済をしなくても良いと
いうことを日本国憲法は謳っているのです(憲法第25条)

 この憲法を受けて、前述の基本的人権を実践するために各種
法律が様々な人権擁護を謳っております。
(1)例えば、「生活保護法」では、「健康で文化的な最低
限度の生活」を維持できるよう一定額の金銭の支給を規定して
あります。
(2)「民法」の分野でも借入金を返済しない場合、貸主の
究極の債権回収方法として、強制執行(差押え=競売)が
規定されておりますが、但し、差押え禁止財産として、
①生活に必要な家財道具は、差押えを禁止されています。
特に東京地方裁判所では、破産法第6条3項により、
破産財団に属しないものとして、平成8年(96年)
11月に差押禁止動産目録を作成し、今後、家財道具に
ついては、特に高価なものがない限り、処分を要しない
扱いとしたい旨の通達が出されているくらいです。
 これによれば、ほとんどの家の家財道具は差押えが
できないことになっています。
 又、②年金受給権も差押えを禁止されていて、将来の
老後の生活の安定、安心を保証しています。
 ③差押えの範囲としても、例えば生活を維持するために
必要な「給料」については、上限があり(原則として
支給額の4分の1)、その全額を差押えできないことに
なっております。
 これは、給料全額を差押えてしまっては、その人の
生活権を奪うことになり、生きる権利すら奪うことに
なってしまうからです。
 同じことは、「退職金」についても4分の1しか差押え
できないという救済になっています。
 更に給料や退職金については、会社が潰れて払えない
場合、国が立て替えて払ってくれる「立替金制度」も
完備されています。
 このように、従業員は、法で厚く守られているのです。
(なお、役員報酬については別途の考察が必要)

(3)又、「倒産関係法律」の分野(例えば破産法)に
おいても、①一般破産債権の中でも従業員の給料等の
労働債権は生活のための必要最低な資金ゆえ、「優先
破産債権」として、一般破産債権よりも優遇されている
のです。
 ②又、破産宣告後に働いて得た賃金等は、破産者の
自由財産として、差押えも出来ず破産者の生活に使って
いいことになっています(解釈論)。

(4)「労働基準法」上でも、賃金(給料)については、
「現金払い」でなければならず、手形・小切手・現物支給
等現金以外の物で交付することは、厳しく禁止されて
おります。
 又、いくら貸付金があろうとも、その貸付金と「天引き
(相殺)」処理も禁止されているほど、給料というのは
厚く保護されているのです。

(5)「税法」の分野においてさえ、災害時には、特例に
より納税の猶予、延滞税の免除の規定が置かれているくらい
です(国税通則法第63条)

(6)そして、その最たるものが、「破産法」に言う
「免責」の決定でしょう。
 場合によっては、国家が借金を帳消しにしてしまう
「徳政令」を出してくれるのです。
 この免責は、借金がギャンブルや著しい浪費で増えて
いったものでない限り、原則として、「免責」となる
手続きなのです。

(7)又、再建するためにも、法は各種の法規を整備して
おります。
  会社更生法
  民事再生法
  商法上の整理
等です。
 特に法的手続きでは、①一時的に、一切の返済を停止する
「弁済禁止の保全処分」②借入金金利の劣後債権化(未発生)
③借入金残元金の大幅カット④会社の体力にあわせた返済
計画の是認、等の措置により、会社を救済するシステムが
用意されております。

(8)競売手続きにおいても、バブル経済崩壊後は、
不良資産の処理のためん、市場に競売物件が多く出過ぎて、
実際に買い手がつくものは本当に良い物などごくわずかで
あり、競落率も10件のうち、3~4件に過ぎないのです。
(注 執筆当時と比べ、不動産市況および競売環境が
少し変化しています。)
 競売の申立をされたからといって、直ちに立退く必要も
なく、競売を過度に恐れる必要はありません。最低競売
価格を若干上回る金額で、申立担保権者と協議して、
競売を取り下げてもらった例は多数あります。
 ただ、ここで誤解して欲しくないのは、なんでも
かんでも破産による免責を受けなさいと勧めているのでは
決してないということです。
 本当に八方塞がりで逃げ場を失ってしまった状態と
しても、いざとなったら「免責」という規定があるから
安心して事にあたりなさいという意味で、免責の規定を
頭の片隅で覚えてもらえば十分なのです。
 競売通知が届いたときに違法な手段を使ったり、暴力団、
事件屋、整理屋に依頼して事をすまそうとしては、絶対に
ダメです。
 法律に違反しては、せっかく倒産=悲惨ではないとの
考えが、倒産=悲惨に逆戻りしてしまうからです。
 寧ろ、「法律の範囲内での今まであまり知られて
いなかった様々な再建のテクニック」を次の章で説明して
いきますが、その根底には、債務者の誠意、真摯な対応
法の遵守と相手の立場に対する配慮、感謝の気持ちから
出発していることを決して忘れないで欲しいのです。
 特に再建の現場で大切なことは、「等しからざるを憂う。
知らざるを憂う。」という債権者心理と、絶対に裏切らない
という債務者の誠意です。
 特に債権者たる金融機関側の目で見れば、会社の収益力に
合った任意弁済であれば、金額の多い少ないではなく、
極論すればわずか10円の弁済でもよいのです。他の
債権者と比較して公平であれば文句のつけようがないのです。
誠実に返済努力をして、それしかできないならば仕方がない
のです。
 そして、私が説明するこれら様々な再建の手法の中に、
皆さんがこれまでに抱いていた怖さ、不安感、問題点の
対処方法を見出していただければ、このコラムを読み終える
頃には、「なんだそうなんだ。誠意を尽くして、真面目に
返済に取り組めば、直ぐには家屋敷が取られることも
ないんだ。競売ったって、場合によっては、しばらく家に
住んでいられるんだ。夜逃げをするまでもないのか。
一生借金に苦しめられることもないんだ。
 仮に借家住まいになったって、自分を頼りにしてくれる
妻や子供がいるじゃないか。暖かい灯し火が待っているじゃ
ないか。心の苦しささえ克服できれば、何よりも大事な
その家族を守れるんだ。生きていれば、きっと何か
良いことがあるさ。倒産と言っても命まで取られないさ」
と認識を新たにしていただければ、このコラムの役目は
十分にはたされたことになると考えます。

 現に、私の周りには、生の絶望の淵から何とか生還して
新たな人生を迎えている経営者が多勢いるのですから。
 
 最後に、これだけは断言できます。

世の中で一番大切なものは、
お金や名誉や家(物件)の存在ではありません。
 そんなものは、後からどうにでもなります。
 本当の幸せとは、自分を励まし、勇気を与えてくれている
「家族の存在」なのです。
 逆に倒産で一番おそろしいのは、孤独感です。
そして家族の絆は、何人も、絶対に倒産によって
断ち切ることはできません。
否、絶ち切らしてはならないのです。
万一倒産しても、全てを失うわけではありません。
そして、このコラムは経営に苦しんでいる経営者の
奥様方にもぜひ読んでもらいたいのです。
さあ、勇気を出して、経営にあたってください。


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村松謙一弁護士のコラム

2006年03月17日 | 企業再建について
前回のブログでご紹介したように、
神戸の大震災を契機として私の人生は
絶望への坂を転がり始めることになりました。

しかし溺れて沈む私の指先に倒産回避・再建指導
の第一人者である村松謙一弁護士につながる
最後の藁がありました。
当時私の回りにいた顧問弁護士・顧問税理士などの
専門家が例外なく「倒産やむ無し」と断言した
経営状況を村松先生に救っていただいただけでなく
倒産回避のための実務ノウハウや法律知識 
それ以上に何物にも代えることのできない
人間として最も大切なものを
学ばせていただくことができました。

帝国データバンクが発行している日刊帝国ニュースで
村松弁護士が1999年5月から弁護士ウオッチングの
連載を開始され、血の通った再建の真髄が連載されて
いたことをご存知の方は少ないと思います。
貴重な村松弁護士のメッセージが歴史に
埋もれていくことは大きな社会的損失であると同時に
今の厳しい時代だからこそ、このメッセージを必要と
している方々に読んでいただきたいと思い、
村松弁護士に相談したところ、このブログでの掲載を
快くご了承いただくことができましたので
今後順次掲載させていただきます。

100回近く続いた非常に中身の凝縮されたコラム
なのですべてをご紹介するにはかなりの時間が
かかると思いますが、仕事の合間を縫って投稿
させていただきます。
この場をお借りして村松弁護士には改めて
心より御礼申し上げます。

なおご紹介するコラムの著作権は村松弁護士が保有
されています。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


弁護士ウオッチング 99年5月17日日刊帝国ニュース
        弁護士  村松謙一

第1 「倒産」は決して悲惨ではないとの臨床的報告 1

相手を知り、己を知れば、百戦して危うからず
(孫子)

1. 夜逃げ、精神破壊、病気、最悪は自殺や
犯罪行為等、これら私が現実に目にした倒産に
起因した悲惨な光景は、とても一口で言い表される
ものではありませんでした。

しかし、これらの悲惨的結末は、倒産を「悲惨なもの
と考えた」(認知)その結果、倒産=悲惨という考えが
人間をして絶望感、不安感等の奈落の底に突き落とし
極限状態に人間を落としめらしたことによる
その人間の次なる行動パターンが、これら逃避、
破壊、犯罪等の悲惨的行動となるわけです。

これらの行動は、心理学にいうところのフラスト
レーション耐性なのです。

倒産(事実)→頭の中で倒産を悲惨と考えること(認知)
→夜逃げ・自殺・病気(行動)

2. 倒産=悲惨でない との仮説と
その立証をすれば、
事実→認知の段階で、そもそも倒産は本当に
悲惨と言えるのか(大前提)、即ちこの大前提が
否定され、「倒産→悲惨でない」との認知ができれば
この認知からくる夜逃げ、病気、自殺・犯罪などの
悲惨的行動に至らずにすむのではないか、との疑問
から、このコラムは出発しているのです。

私は、皆さんに倒産→悲惨でないとの認識を持って
もらいたい。
これは、単にプラス思考になりなさいと言っている
のではありません。
私のこれまでの体験から、「倒産→悲惨」との
大前提こそが、あまりよく解明されずに伝えられて
きたものであり、この大前提を否定するだけの事実が
数多くの倒産現場を扱った私の体験からも様々な
点で見えてきたからです。

3. ハイジャック事件での教訓
少し前になりますが、1995年6月に函館行きの
全日空機がハイジャックされた事件を記憶している
方々は多いでしょう。
あの事件は、犯人に某宗教の影がちらつくという
誤った情報が、毒物のサリン、プラスチック爆弾等を
連想させて、恐れ、恐怖の時間を過ごさせ、誰も
その間手が出せない状態を作り出してしまった
のでした。
その後、犯人は教団とは関係のない単独犯との
情報が入ったことで、その恐怖心も薄らぐことができ
全員救出という好結果が出せたのです。

4. 弁護士の使命
倒産もこの「情報→認知→行動」と全く同じなのです。
誤った情報の否定、最近の事例・情報を正確に
伝えることで、従来のような恐怖心を取り除き、
その結果、十分に悲惨的行動は回避できるのです。
悲惨的行動に出る人を少しでも少なくすることこそ、
人権擁護をむねとする弁護士の社会的使命であると
私は考えているのです。

第2 具体的不安内容の解明
もう少し分かりやすく説明しましょう。
皆さんは、倒産するといったい何が怖い・不安
なのでしょうか。
そもそも倒産に基づく不安・恐怖・悲惨とは具体的に
なんでしょうか。(思考段階を追ってみると)

(1) おそらく、金融機関に経営悪化が分かってしまう
(2) 融資ストップ、或いは返済の強制の怖さ
(3) 融資ストップによる資金の手詰まりの怖さ
(4) 資金手詰まりによる手形不渡りの怖さ
(5) 手形不渡りによる会社倒産および債権者の
    憤りの怖さ
(6) 会社倒産によりこれまで手に入れた資産、
   家を根こそぎ全部取られて無一文になってしまう
   のではないかとの怖さ
(7) 家・屋敷を取られてしまうことにより、一家が
   生活できなくなるのではないかとの怖さ
(8) 債権者に対する責任感および一家が生活できなく
   なることにより、人生に絶望し、もはや死ぬしか
   ないのではないか

多くの会社経営者の方々は、このような思考回路を経て
倒産=悲惨、恐怖、不安と何の疑いを持つこともなく、
言わば世の常識として考えていたのではないでしょうか。

しかしこれら(1)~(8)がそれぞれそのような怖さ、不安
は、昔と違ってそんなに怖いものではないのですよ。
或いは十分に回避することができますよ、と気休め
でなく、その具体的根拠・事例に基づいて答えてあげら
れれば、経営者の方々は、どんなにか勇気付けられ、
救われるのではないでしょうか。

現実に倒産=悲惨ではないということを理解した
おかげで、会社の再建に邁進し、今では立派に
会社を立ち直らせた経営者を私は何人も知っています。
次回は、倒産=悲惨ではないということを、法的根拠を
示して解説しましょう。

コラムは次回に続きます。


倒産回避のお手伝いをさせていただいている担当先の
皆様にこのコラムをお渡ししたところ、社長様以上に
奥様やご家族の方々の苦悩が和らいだとのお言葉を
多数いただきました。読者の方の周りで経営に苦しま
れている方に、このブログを通して村松弁護士の
メッセージが届くことを願っています。


コメント (1)
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