倒産回避コンサルタントからの救命ロープ

倒産回避コンサルタント・中逵努のブログです。
恩師村松謙一弁護士ご本人のブログではないことを予めご了解ください。

起死回生の再建事例

2020年05月11日 | 企業再建について
コラム記事の著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


ネットニュースで何度か取り上げられてえいた東京の大手運送会社が当初検討したように、
従業員と会社の両方を守るために、従業員を再雇用を前提に一旦解雇することで
会社都合による失業保険の即時給付で従業員の方々の生活保障をしながら、
会社も固定経費の大きな比率を占める人件費を一時的にほとんど削減する。
そうすることで、会社存続のために経営の種火を残し、
コロナ騒動が沈静化した時の再雇用を守るという労使双方の相互理解に
基づく取り組み姿勢なども散見されるようになってきました。

また私の実務経験では、さらに積極的な再建スキームとして、
給料の未払いが発生しているような瀕死状態に陥った会社の場合であっても、
未払い給与の立替払い制度を利用することで、従業員の方々に
未払い給与のみならず退職金まで支給(但し上限などの条件あり)しながら、
同時並行でスポンサー企業による経営の受け皿や、従業員の方々が事業を引き受けるような
受け皿を用意し、従業員全員と経営資源を新たな受け皿会社に譲渡移管することで、
事業そのものだけでなく、従業員の雇用および経営者の再雇用など三方良しの解決実現など、
企業再生の最先端ノウハウを重層的に活用することで、
まさに災い転じて福となす、再生事例も存在します。

このように起死回生で再建を果たした会社は、
社員が一致団結した協力関係で経営危機を乗り越えることで、
従来以上の発展を確信できるほどに元気な会社へと変貌を遂げています。

ドイツのメルケル首相が今後二年間は企業の経済活動がスローダウンすると述べているように、
今回のコロナウィルス騒動による経済活動停滞は、残念ながら当面継続する見通しで、
今後の対処如何により、企業活動が低迷するか、それともこの逆境を逆に利用して
アフターコロナのタイミングで上昇できる準備を始めるのかで
企業の命運が決まってくると考えます。
それぞれの会社の実情によって対処方法は変わってきますが、
今後の命運を決めるキーワードは、手元資金を有効に使うために温存するのか、
それとも砂場に水を撒くが如く結果的に会社再建に役立たないお金になってしまうのか
になるのかです。手元資金をいかに温存し、その資金をどのように活用することで、
再浮上のスキームに役立てるのかにつきましては、
個別アドバイスをさせていただきますので、メールにてご相談いただければと思います。

無料相談メールアドレスは consul-n@goo.jp

体験的会社救済の手順 <87-1>
債権者も債務者も「返済期間」に拘束されるあまり、企業再生の芽を摘み取っていないか

日刊帝国ニュース 2003年11月25日
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

1.再建計画を策定するにあたり、「返済期間」に縛られることが本当に必要か(本当に関係者に幸せをもたらすか?)
(1)民事再生手続きと返済期間の問題点
最近、経営危機に陥った会社の再建方策として、私にしては珍しく「民事再生手続き」を検討したところ、
「返済期間」の点で壁に突き当たり、結局、民事再生手続きを断念した事業があった。

ところで、民事再生手続きは、経営危機に陥った会社を救済する手段の一つとして既に認知され、
弁護士の世界での広く活用されていることは周知のところである。それはそれで好ましいことである。

ただ、「返済期間」が原則10年とされている(民事再生法第155条第2項)ことから、
例えば、売上高に対して有利子負債が過大な企業にとっては、使いづらい面がある。
そもそも体力の弱った企業が10年間で返済できる金額は、たかが知れている。
換言すれば、その湯利子負債に対比して、ごくわずかな「割合」でしかなく、
その大半(90%前後)が免除(債権放棄)の対象とならざるを得ないであろう。

例えば、売上高10億円の会社が、20送苑の借入金(有利子負債が売上高の2倍)を
追っている例を考えてみて欲しい。
「償却前営業利益」を比較的優良な会社の2%程度としても、年間の返済額は2000万円となる。
10年かかって2億円を返済し、8億円は当然カットとなる。
但し、収益の柱となる工場等が担保となっている場合が多いであろうが、
その場合は、担保権者との「弁済協定」を締結するため、
半分前後の1億円は担保権者への弁済に使われるであろうから、一般の債権者への返済は更に少なく、
その分カット額が大きくなる(原則10年間との枠がはめられているため)。
会社にとっては借金が消えて助かるところだが、大きなカット(債権放棄)は、
逆に大きな「免除益」を生む。

累積赤字が多大な会社やバブル期に不動産を多量に仕入れて負債が膨らんでしまったが、
不動産を処分すれば、今度は多量の特別損失を生み出せるようなバブル会社なら、
この多額の債務免除益を吸収できようが、それらの損失すら作り出せないような中小企業では、
免除益による税金の発生で、かえって行き詰ってしまう場合がある。
10年という期間が、かえって足かせとなってしまうからである。

しかし、最近の倒産法制の動向は、より早期の弁済を促す方向である。
新会社更生法ですら、原則15年(従来は20年)で終了させるようにしている(新会社更生法第168条5項)。
また、「債務償還年数」という言葉も、最近よく耳にする言葉だ。
簡単に言うと、有利子負債(借金)をキャッシュフロー(減価償却前営業利益)で除した期間のことである。
産業再生機構の再生基準の一つに、債権放棄後の残有利子負債額は償却前営業利益の10倍以内という使われ方もする。

(2)返済期間に対する債権者の声
ところで、再建の現場において、「返済期間」を10年等そんなに急がせる必要が果たしてあるのだろうか?
私の疑問はここから始まる。

 すると立法者は言う。
あまりに長い返済を強いることは、社員の士気にも悪影響を及ぼすから、
再建期間は短期にして、やる気を起こすことがよい。
 
また、他の知識者は言う。
あまりに長い返済計画案は、履行が確実にできるか、不明な点が多い。
債権者側にとっても、そのような計画は、履行の確実性の点から見ても信頼できないから、
ちょうど10年前後が好ましいと。

しかしである。

5年や10年足らずで会社の借入金の「全額」を返済完了できる会社は、残念ながら見たことがない。
5年や10年で全額返済できないからこそ、金融機関と対立し、私の事務所の扉を叩くのである。
そして、私が多くの債権者と交渉していると、決して5年や10年分を返して、
残りは返さなくて構わないとは言っていない。
むしろ、返すものはきちんと全額返して欲しい、という意見が大半である。当然である。
しかし、その全額を5年、10年で返せと言う。自己矛盾であり、自己中心的要求である。

そもそも、会社が長年かかって作った借金を、
どうしても5年や10年でゼロにしなければならないのであろうか。
そんなにも急がなければならないのだろうか。回りを見回しても、借金のない会社など皆無であろう。

(3)返済期間に拘束されることの弊害
誤解を恐れずに言わせてもらえれば、先に「返済期間」ありきゆえ、
その返済期間に合わせようと、会社は大車輪の動きをし、利益を獲得せんがため、無理をしすぎている。
一方で、売上を上げるため、競争力を高める一環として、値段を下げ、価格競争に走らされる。
結果として、デフレの後押しをする。人工的に「弱肉強食」の社会を作り出そうとしている。
見えない社会の力によって、価格競争に走らされているのだ。
従業員の給料をカットして、かえってその士気を奪っている。
経費を下げるため、仕入れ先を泣かせて、値下げ要求している。
従業員の数を少なくするため、希望退職者を募っている。
そのため、残った社員に負担がかかりすぎ、「過労死」が増加している。

総じてみれば、世の中の誰もが借金返済のため、疲弊しきっている。
生き残りをかけて、「競争社会」をあおっている。
会社が過大な借り入れをしたのだから仕方ないということですませてしまうことは簡単だ。
そして、これらの過大借入金を解決するために、民事再生手続きがあるのだと結論付けるのは早急にすぎないか。
民事再生手続きを使うにしても、前述した「免除益」の問題もあるが、それよりも民事再生手続きも含め、
法的再建手続きを選択するには、法的再建手続きを選択せざるを得ない状況で使われるべきとの
二次的性質をもっと明確にすべきと思う。
(つづく)

無料相談メールアドレスは consul-n@goo.jp
コメント
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