しばらく投稿できず申し訳ありませんでした。
せめて週に1度は更新できるように頑張りますので
これからもこのブログに立ち寄っていただければ
有難く思います。
以前から何度か説明しているように、倒産回避に際して
金融機関に正直な現状を打ち明けることが大きな
ポイントです。さらに言えば、例えばご自身の年金まで
返済に充てているような場合は特に配慮が必要です。
人間の生存権を脅かす意味もあり、年金の差押は基本的
には認められないほど本来法的に保護されているものですが
年金からの任意での返済は個人の自由行為として認められて
います。つまり年金での返済を本来強要できるものでは
ないのです。
だからもし任意で年金を返済原資に充てているような方が
いらっしゃれば、年金部分を除いた資金繰り表を一度
作成して金融機関に交渉するのが大きなポイントなのです。
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
99年8月9日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング 弁護士 村松謙一
信用不安の回避=倒産の回避(下の2)
第7 金融機関側として、取引先会社の再建に
協力るべきか否かのメルクマール(指標)
1.資金繰り表(約定資金繰り表と変更資金繰り表)
金融機関側としては、まず会社の現状を正確に
把握し直す必要があります。
なぜなら取引先会社が、金融機関に会社の窮状
を知れれまいとして、早晩資金不足に陥ることを
承知で、せっせと約定返済を続け、その内実は
かえってますます資金繰りが悪化しているという
例は枚挙にいとまがないからです。
そこで、現在の当行に対する返済額を全債権者に
対する返済に置き直せば過剰返済であり、このまま
の返済を続けていると早晩資金ショートして、
ひいては、手形不渡り倒産、従業員の給料未払い、
信用不安等、経営危機に陥る事態にあることを、
まずは正しく知ってもらう必要があります。
案外、金融機関側は、自己の返済のみしか見て
おらず、債権者全体に対する総返済額を見ていない
ことが多いからです。
そのために必要なものが、「約定資金繰り表」
(過去実績3カ月、将来の予想6カ月)です。
これにより、金融機関側にも資金ショートに
陥らせない何らかの方策を考えざるを得ないと
気づかせることになります。
「資金ショートさせないための何らかの方策とは
何か」が次の問題となります。
これには、2つの方向があります。
①社内にあっては、経費削減により、営業収支を
黒字化する方策です。
この点をまとめ上げたのが、「合理化実施要領」
です。
具体的には、人件費の削減、その他経費の削減
により、どれくらいの営業収支の好転が見込めるか
です。
遊休資産等があれば、その処分により、有利子
負債がどれだけ減らせるかです。
②社外にあっては、経常収支の部分です。即ち、
金融機関との金利低減、毎月の元本返済の
低減により、翌月繰越金が毎月安定して、人件費の
2~3ヶ月分残せるかという視点です。
2.事業計画書の作成
これらの資金繰り表が企業でいう車の前輪とすれば、
後輪としては、事業計画書の作成、提出です。
ここで大切なことは、過去三ヵ年の事業実績を
必ず記載し、その実績の延長線上に将来五ヵ年の
事業計画案を位置付けることです。
そして、将来右肩上がりに売上高が増加する方式の
事業計画は、消費不況の今日では全く信用性が
ありません。
私共は、直前六ヶ月間の売上動向から、前年比
30%乃至40%前後の売上減を試算してスタート時の
売上高とし、以後も三ヵ年或いは五ヵ年は、売上増は
見込めないか、三ヵ年毎に若干の見直しをする手法を
用いています。
売上が今後、相当落ち込んだとしても、どの程度の
収益弁済なら安定して確実に履行出来るかを算出
するためです。
ここで大事なことは、経営危機の原因が、
(1)営業利益の段階で赤字が続く、いわゆる放漫経営
型に起因するのか、
それとも、
(2)営業利益、経常利益上は黒字であるが、資金繰り上
資金ショートが発生する、過剰返済、黒字倒産型に起因
するものなのか
の見極めです。
前者であれば、合理化の実施が再建の可否を握る
のに対し、後者の場合は、金融機関側の強調で十分に
再建に導くことが可能だからです。
そして、返済方法いかんで十分に再建に導くことが
可能である以上、銀行法上も公的、社会性を有する
金融機関側には、債権回収の視点及び企業支援の
社会的役割の視点から、会社側の調整案を協議
すべき「善管注意義務」を有していると私は考えて
おります。
換言すれば、あまりに理不尽な要求、公平性を無視
する要求を一方的に自己の都合のみ押し付ける
ことは、その社会性、公共性からみて権利「濫用」に
該当する場合も出てくると私は考えています。
次に、上記の事業計画書から、年間の返済原資を
算出するのでありますが、ここで注意すべきは、
返済原資(減価償却費+税引後利益)をそのまま
そっくり返済に充ててはいけないということです。
なぜなら、将来的に売上高が計画に反して更に
低下することもあり、加えて、設備の老朽化による
修理費、賞与等、将来特別に発生する経費に対応
する借入がもはや出来ないという事情を前提に
すれば、返済原資の80%程度を返済に回し、
残り20%相当額は、将来の不測の事態に備える
予備費として、会社に残しておくべきです。
債権者側から見ても、余裕をもった返済であれば
こそ、長期的かつ安定的な返済履行の確実性を
読み取ることができるからです。
せめて週に1度は更新できるように頑張りますので
これからもこのブログに立ち寄っていただければ
有難く思います。
以前から何度か説明しているように、倒産回避に際して
金融機関に正直な現状を打ち明けることが大きな
ポイントです。さらに言えば、例えばご自身の年金まで
返済に充てているような場合は特に配慮が必要です。
人間の生存権を脅かす意味もあり、年金の差押は基本的
には認められないほど本来法的に保護されているものですが
年金からの任意での返済は個人の自由行為として認められて
います。つまり年金での返済を本来強要できるものでは
ないのです。
だからもし任意で年金を返済原資に充てているような方が
いらっしゃれば、年金部分を除いた資金繰り表を一度
作成して金融機関に交渉するのが大きなポイントなのです。
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
99年8月9日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング 弁護士 村松謙一
信用不安の回避=倒産の回避(下の2)
第7 金融機関側として、取引先会社の再建に
協力るべきか否かのメルクマール(指標)
1.資金繰り表(約定資金繰り表と変更資金繰り表)
金融機関側としては、まず会社の現状を正確に
把握し直す必要があります。
なぜなら取引先会社が、金融機関に会社の窮状
を知れれまいとして、早晩資金不足に陥ることを
承知で、せっせと約定返済を続け、その内実は
かえってますます資金繰りが悪化しているという
例は枚挙にいとまがないからです。
そこで、現在の当行に対する返済額を全債権者に
対する返済に置き直せば過剰返済であり、このまま
の返済を続けていると早晩資金ショートして、
ひいては、手形不渡り倒産、従業員の給料未払い、
信用不安等、経営危機に陥る事態にあることを、
まずは正しく知ってもらう必要があります。
案外、金融機関側は、自己の返済のみしか見て
おらず、債権者全体に対する総返済額を見ていない
ことが多いからです。
そのために必要なものが、「約定資金繰り表」
(過去実績3カ月、将来の予想6カ月)です。
これにより、金融機関側にも資金ショートに
陥らせない何らかの方策を考えざるを得ないと
気づかせることになります。
「資金ショートさせないための何らかの方策とは
何か」が次の問題となります。
これには、2つの方向があります。
①社内にあっては、経費削減により、営業収支を
黒字化する方策です。
この点をまとめ上げたのが、「合理化実施要領」
です。
具体的には、人件費の削減、その他経費の削減
により、どれくらいの営業収支の好転が見込めるか
です。
遊休資産等があれば、その処分により、有利子
負債がどれだけ減らせるかです。
②社外にあっては、経常収支の部分です。即ち、
金融機関との金利低減、毎月の元本返済の
低減により、翌月繰越金が毎月安定して、人件費の
2~3ヶ月分残せるかという視点です。
2.事業計画書の作成
これらの資金繰り表が企業でいう車の前輪とすれば、
後輪としては、事業計画書の作成、提出です。
ここで大切なことは、過去三ヵ年の事業実績を
必ず記載し、その実績の延長線上に将来五ヵ年の
事業計画案を位置付けることです。
そして、将来右肩上がりに売上高が増加する方式の
事業計画は、消費不況の今日では全く信用性が
ありません。
私共は、直前六ヶ月間の売上動向から、前年比
30%乃至40%前後の売上減を試算してスタート時の
売上高とし、以後も三ヵ年或いは五ヵ年は、売上増は
見込めないか、三ヵ年毎に若干の見直しをする手法を
用いています。
売上が今後、相当落ち込んだとしても、どの程度の
収益弁済なら安定して確実に履行出来るかを算出
するためです。
ここで大事なことは、経営危機の原因が、
(1)営業利益の段階で赤字が続く、いわゆる放漫経営
型に起因するのか、
それとも、
(2)営業利益、経常利益上は黒字であるが、資金繰り上
資金ショートが発生する、過剰返済、黒字倒産型に起因
するものなのか
の見極めです。
前者であれば、合理化の実施が再建の可否を握る
のに対し、後者の場合は、金融機関側の強調で十分に
再建に導くことが可能だからです。
そして、返済方法いかんで十分に再建に導くことが
可能である以上、銀行法上も公的、社会性を有する
金融機関側には、債権回収の視点及び企業支援の
社会的役割の視点から、会社側の調整案を協議
すべき「善管注意義務」を有していると私は考えて
おります。
換言すれば、あまりに理不尽な要求、公平性を無視
する要求を一方的に自己の都合のみ押し付ける
ことは、その社会性、公共性からみて権利「濫用」に
該当する場合も出てくると私は考えています。
次に、上記の事業計画書から、年間の返済原資を
算出するのでありますが、ここで注意すべきは、
返済原資(減価償却費+税引後利益)をそのまま
そっくり返済に充ててはいけないということです。
なぜなら、将来的に売上高が計画に反して更に
低下することもあり、加えて、設備の老朽化による
修理費、賞与等、将来特別に発生する経費に対応
する借入がもはや出来ないという事情を前提に
すれば、返済原資の80%程度を返済に回し、
残り20%相当額は、将来の不測の事態に備える
予備費として、会社に残しておくべきです。
債権者側から見ても、余裕をもった返済であれば
こそ、長期的かつ安定的な返済履行の確実性を
読み取ることができるからです。