高度成長期の終わり頃だったと思うが、東京の人がゴダッべを釣って、食べて喜 んでいる、と知った。 平成になってこんどは天皇陛下がゴダッべの研究をしていることを知って驚い た。 ゴダッべとは道南方言でハゼのことだ。 道南海岸育ちの私にとってゴダッべ(ハゼ)はマグロやヒラメに比べれば最下級の魚だ。ムツゴローの仲間で肌はぬるぬる、姿形もみっともない。 天皇陛下と東京の人がなぜあんなしょうもないざこ(雑魚)を相手に!と、驚いたのである。 ▼ ゴダッベ釣り 子供の頃最初に覚えた釣りはゴダッベ釣りだった。 餌はミミズ、川でも海でも簡単に釣れた。一度外してもしばらくして釣り落とした場所で針を下ろすとまた食ってきた。貪欲な魚だった。 釣ったゴダッべはニワトリを飼っている家へ持っていってニワトリの餌にした。 いくらでも釣れたが子供はすぐゴダッべ釣りを卒業してウグイ釣りやカジカ釣りに移っていった。ウグイはヒラメ釣りの生き餌に使えるので大人にも喜ばれた。カジカは姿形はごついがおいしい魚である。 ▼東京人とハゼ 東京の人は地方人をちょっと見下している、と、地方の人は感じる。当人がえら いわけではないのだが昔から中央の人は地方人に対して優越感を持っている。 そんな人達が東京湾でハゼ釣りを楽しんでいる。そこへ田舎ではハゼはゴダッ ベというニワトリのエサ程度の低級魚だといったらどうなるか。 いや、これは言わない方がいい。東京人、自称江戸っ子はハゼ釣りの面白さ、味の良さについてまくし立てるに違いない。田舎の子供の評価など鎧袖一触、夜郎自大のたわごととして無視され るのがオチだろう。 ▼天皇とハゼ(ゴダッべ) 昭和天皇がウミウシ天皇といわれ、明仁(平成)天皇はハゼ(ゴダッべ)、秋 篠宮はナマズの研究で有名だ。なんとなくほほえましいが、それにしてもみっともない取り合わせばかりだ。 ウミウシはうっかり踏みつけるとぐちゃりという感触で、黒い墨を吐く。普通の 人には気味悪い生物だ。 ゴダッべ(ハゼ)はムツゴローの仲間なので、よく見るととぼけた愛嬌があるが ムツゴローほどではない。 ナマズはご存じのとおり大阪のおっちゃん顔だ。 いずれにしろやんごとなき高貴の人との相性が良いとは思えない。よりによってこのような格好の悪い生物がなぜ研究対象になったのか知りたいと思う。野次馬根性的好奇心だ。 ▼ハゼはゴダッベ、ゴダッベはハゼ 子供の頃、南部出身の近所の嫁さんがホヤを食べていると聞いてたまげた。 私の村ではハゼもホヤも食べなかった。食習慣は簡単には変わらない、私はいまでもハゼはもちろんホヤも気味が悪くて食べられない。ゴダッベはニワトリの餌という思い込みも抜けない。ホヤについては食わず嫌いというしかない。 ガイジンは生魚や海苔は食べないと覚えていたのに今や世界中で生寿司が流行っている。 東京の人はみっともないゴダッベの釣りや料理に興じ、皇族がみっともない海生物を研究している。いずれにしろ、平和でいい話なのだなぁと思う。 (2022/06/07)