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鼓曲萬来

-×-=+?(再)

ずーっと昔、中学生の頃、
いわゆるリバプールサウンドなんてのがグッときてしまいまして
当然、楽器なんかはなかったから椅子をドラム代わりにして
レコードに合わせて歌詞覚えて、バンバンやっておりました
 
ビートルズ、ストーンズ、キンクス、ゼムにホリーズ、アニマルズってとこですね
 
で、そんな中にデーブクラーク5ってバンドの
「GRAD ALL OVER」って曲がありまして
それは2小節のドラムピックから入る曲なんですけど
最高にかっこいいと、もう事あるごとにそのフレーズを
机だろうが鞄だろうが叩きまくっておりました
 
で、ハルヲフォンの最初のツアーの頃の話なんですけど
オープニングは「シンデレラ」って曲に決まって
どうせなら派手にいこうぜ!って事で
やっぱり2小節のドラムピックアップから入って
左右からメンバーがそれに乗って走りこんで来るって演出にした訳です
 
まあ、それは置いときまして、
そこで、話はちょっと前に戻るんだけど
近田の家で曲合わせをやった時に
帰り際に「これ聴いといてくれよ」なんて感じで何枚かレコード渡されまして
それは、スペンサーデイヴィスグループとルーリードと
そしてSLADE
 
家に帰って聞いてみると、若干フレーズは違うんだけど
囲気雰やパワーはまぎれもなく、あのデイブクラークのあのフレーズだったんですな
 
で、それからしばらくして、ツアーのリハーサルに入ったスタジオで、
例の2小節
私は勿論デイブクラークのつもりでピックアップしたら
近田がこう言う訳です.... 「おおっ、いいじゃん!SLADEみたいで」って
 
本当は微妙なズレがあったと思いますよ、入り口からして
片方は60sトットナムサウンド、そしてかたやグラムロックですもの
若干テイスト違いますよね、
 
だけど、まあ、そういった事に関しては
「実は俺はね...お前はこう思ってんだろうと思うけど.....」なんて話、
当時の私たちにはあまりにも野暮ってもんで
とりあえず2小節、派手に決まったからいいか....
って事で、そのままその感じのままでツアーに入った訳ですわ
 
ところが、やがてその2小節がおかしな方向になっていっちまった訳で
 
ある日、例の如く派手な感じでライブ始めまして
私はデイブクラーク5、近田はスレイドだと思ってるドラムピックアップ
ダダダ!ダンダン!ダン!ダダって感じで
 
すると袖から飛び出してきた近田がいきなり妙なMCをそこに噛ましてきまして
 
なんていうか、そうですね表現するとしたら
場末の演歌の歌謡ショーの司会というか
3流GSがやたらと客を煽るようなそんな感じ
 
「東京の夜をリードするハルヲフォン!まずは、この曲からーっ!」
HIP HOPの原点みたいなものですね、ネタとMC
私たちは「叩き語り」なんて言っておりましたけど
 
そうなると、デイブクラークとかスレイドとか元ネタはもうどうでもいいですよね
なにか、こいつら何考えてんだ?という感じがのっけから客と会場を支配し始める訳です
 
つまり、これは、ROCKと捉えてここでウオー!なんて盛りあがりゃいいのか?
営業歌謡ショーみたいにおざなりに、横でも向いて拍手でもすりゃいいのか
その頃の客は完全にとまどっているのがはっきりとこちらにも伝わって参りました
 
ところで、昔、よく数学とかで、
マイナスとマイナスを掛け合わせるとプラスになるって奴
あれって未だによく解らないんだけど
ありましたよね.......
 
何かその新しいMC入りのオープニングは、
その時にスタートしたばかりのハルヲフォンに
ださいけど、これって凄いエネルギーが感じられるなって
そんなひらめきって言うか、アイデアっていうか、化ける機会というか
これからの方向性みたいなものをその時にくれたんですわ
 
其のときの日本に於いてはメジャーでも何でもない
マイナーなグループのドラムイントロと
これまた当時完全にマイナーな汚れ営業ショーのMC
 
アインシュタインとマンスフィールドの話じゃないけど
私のグラマラスなこの身体と貴方の聡明な頭脳が結婚したら
素晴らしい肉体と本当に優秀な頭の子が生まれるわというマンスフィールドの誘いに
私のような貧弱な身体と
君のようなどうしようもない頭脳の子が生まれるかもしれない
アインシュタインはそう答えたそうでして
 
しかし反対に、このマイナス同士が結合するとプラスの強力な磁場とベクトルと
巨大なエネルギーが発せられる事を我々は身体で知った訳なんです

そういったいきさつを踏まえまして
あのドラムイントロを聞くたびに
おお~っ!なんて
やっぱりこれ好きかも...なんて思いがふつふつと沸いてくる訳で有りまして
 
昔、70年代の初めの頃
ハルヲフォンはどんなのが好きなんですか?ってインタヴューで聞かれて
「GS! 歌謡曲!ロックンロール!」なんて答えていたら
思いっきり業界に退かれた事が沢山あったんです
当時はいわゆる日本のROCK創世記
外国の音に追いつけみたいな感じがあって
皆それはそれで、すごく真正面から真面目に考えてたとは思うんだけど
 
だけど、それらに感じられる、よく俺たちが使う言葉で言えば
「ちんぴら感」っていうのかな
構造的にも、音楽的にも実はよく出来ているのに、見てくれや、ふざけた感じや
皮肉をこめて笑ったり、馬鹿にしたり、すぐ喧嘩になったり、
刹那的で、結局汗だけしか残らなかったり
人としての行き方自体に信用がおけないというような駄目駄目感
それらは、こういった音楽にとても大切な大きな要素だと思うんですけどね
まあ、今の時代、コンプライアンス的にも、
モラル的にも、ちょっと非生産的かも知れません....
 
そして、大事なのは、そういうものが根本的に駄目っていう人もいるって事
いい意味でのひねったものや、いい加減さや
生理的になじみの無い逆撫で感が自分の中で許せないって
そんな人が確かに大勢いるんですわ..
 
私の場合は、CDやPCから聞こえる音だけじゃなくて、
その場の雰囲気、自分の心情、経済状態
もともと持ってる放浪癖、飽きやすく浮気性、落ち着きのなさ
あるいは、かっこいいレコードジャケット、着てるコスチューム、ファッション
そんなその時々の思い入れが色々重なり、
皆が合わさって好きな曲というものになった
 
イヤ、私だけじゃないと思いますよ、きっと
評価もされない、歴史的意義もあんまりない
人生の深みも悲しみもじわっと感じられない
それでもいいの、よく解らないけどそれでも私....、これが好きって感じ
 
ふーっ
って、やっぱり、好きな曲なんて考えたら、幾つあげてもきりがないな
まあ、又機会があったら書くとして
好きな曲なんてのは一人一人違ってて当然
そして好きになるのはその人也の理由がある訳で
好きや嫌いの向こう側には言葉に表しきれない目に見えないものが
沢山ある訳ですからね
 
それに案外、そんな曲の方が理解出来ないだけに
色んなものが詰まってる事が多かったり
良いところを寄せ集めて作ったとしても結果がもっと良くなる訳じゃ無いって事

最近はプラス思考っていうのか、誰も皆、向上心をもって物事にあたるけど
案外その上昇志向って奴がいきずまっているのかもしれませんね
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