er 型動詞 aimer その2
今回は直説法現在2人称単数の tu と vous の活用を見ていきます。
まずは、2人称単数の tu の活用 : tu aimes を、Kana 版テクストから。
Tome 2
命をかけて、父・ジャルジェ将軍の刃から自分を守ってくれたアンドレ。
そのアンドレに、ついに、愛を告白したオスカル・フランソワ。
しかし、自分の無力さに打ちのめされている彼女は、まっすぐアンドレの胸に飛び込むことが出来ません。しかし、アンドレはそんな彼女の自責の言葉を、言葉を失いながらも、強く否定します。そんなアンドレに、オスカル・フランソワは問います。
M'aimes-tu malgré cela !?
( メーム テュ マルグレ スラ!?)
「それでもおまえは私を愛しているか!?」
OT「それでも愛しているか!?」 (集英社文庫第4巻)
◇ m =me (ム):私 ; 1人称単数の人称代名詞
Je t'aime. 同様、aimer には目的語が不可欠。ここでの目的語は me
◇ aimes-tu ?: tu aimes を倒置した疑問文。
M'aimes-tu ? =Tu m'aimes の倒置疑問文
◇ malgré :(prep)~にもかかわらず、~を無視して
◇ cela : (pronom démonstratif ) そのこと、それ、
◇ malgré cela : いずれにせよ、とにかく
フランス語の疑問文の作り方は3通りあります。
Tu m'aimes. (テュ メーム)を例にしてみますと、
①主語と述語を倒置する。 M'aimes-tu ?
(メーム テュ?)
②文頭に est-ce que をつける。 Est-ce que tu m'aimes ?
( エ ス ク テュ メーム?)
③文末をあげる。 Tu m'aimes ?
( テュ メーム?)
①の倒置疑問文は、最も格調高い一方、現代では、会話にはほとんど使いません。しかし、18世紀のフランスを描いた La Rose de Versailles では、高頻度でこの疑問文が使われています。
オスカル・フランソワの激白、熱情的ですが、格調高いお言葉です。
次に、2人称の vous の活用 : vous aimez を、Kana 版テクストから。
Tome 2
アンドレの大犯罪・毒殺未遂事件、パリの暴徒による襲撃事件などを経て、アンドレに対する自分の気持ちの変化に気づき、そして優しいお母さまから父・ジャルジェ将軍の気持ちを知らされて、揺れていた気持ちの整理がついたオスカル・フランソワは、求婚者・ジェローデル少佐を呼び出します。
Est-ce que vous m'aimez vraiment
( エ ス ク ヴー マヴェ ヴレマン
comme vous me l'avez dit ?
コム ヴー ム ラヴェ ディ?)
「あなたが(以前)私にそうおっしゃっられたように、本当にあなたは私を愛していますか?」
OT「いつぞやのことばどおり……
…ほんとうにわたしを愛してくれているか……?」(集英社文庫第3巻)
◇ vraiment :(adv)本当に
◇ comme : ( conj )~のように 〔 な 〕 、~と同じように 〔 な 〕
◇ l' =le : 中性代名詞 pronom neutre ここでは、vous m'aimez を受けている。
◇ avez > avoir (aux) 2人称複数
◇ dit > dire 言う の過去分詞 participe passé
◇ avoir dit で複合過去を作る。複合過去については、別の機会に。
ともかく、過去のことを表現しているものです。
オリジナル・テキスト(日本語)と比べ、甚だ他人行儀なオスカル・フランソワのお言葉。
ここでは、倒置疑問文ではなく、文頭に est-ce que を付けた疑問文です。
あくまでも筆者の印象ですが、me =自分=オスカル・フランソワ が目的語になっているこの問いの場合、M'aimez-vous といきなり自分を文頭に出して問うよりも、est-ce que から始まる疑問文で、me =自分を文の途中に置く方が控えめで上品のような気がします。
アンドレには、M'aimes-tu … とme =自分を文頭に置いて問うていて、倒置疑問文ではあるのですが、ストレートに気持ちをぶつけているような気がします。
筆者の思い込みかもしれませんが、ここにも、ジェローデル少佐とアンドレ・グランディエに対するオスカル・フランソワの気持ちの温度差が現れているのかもしれません。
このとらえは、フランス語の理解として正しいかどうかは、わかりませんが…
ただし、激しい愛の方が 「 強い愛 」 であるかどうか…
それはまた、別問題であると筆者は思うのですが。
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