外来カミキリに農家苦慮 佐野、足利の桃など被害 幼虫食害で枯死の可能性も
桃や梅、桜などに寄生し、食害で樹木を衰弱させる外来種の昆虫「クビアカツヤカミキリ」。昨年は佐野、足利両市の桃農家で被害を確認、今年は同市の民家の庭木からも幼虫が見つかるなど、影響が広がりつつある。しかし防除方法は確立しておらず、完全駆除は困難。今月半ば以降は幼虫が成虫へと羽化するピークを迎えるだけに、農家などは対応に苦慮している。
「これがそうですよ」。5月下旬、佐野市吾妻地区の桃畑。JA佐野果樹部会長の小林靖明(こばやしやすあき)さん(64)が指さしたのは、「フラス」と呼ばれるクビアカツヤカミキリの幼虫のフンが混じった木くずだ。幼虫が食い入った樹木の穴や割れ目などから排出され、幼虫を発見する際の目印にもなる。
フラスが見つかった桃の木の表皮を剥がすと、幼虫が形成層を食べ進めた形跡が確認された。桃の味や品質に影響はないが、形成層を食べ尽くされると水分などが木全体に届かず、いずれ枯死する可能性があるという。小林さんは「この木は冬に切り倒し、燃やすしかない」と肩を落とす。
▲殺虫剤でも不安▼
幼虫退治には農薬として登録されているノズル式の殺虫剤が有効とされる。しかし、幼虫は木の中を奥まで食べ進めるため、数センチのノズルでは成分が直接届かず、確実に駆除できないのが実情。小林さんも「効いているか不安がある」と明かす。また木を一本ずつ確認するのは農家の負担だ。
クビアカツヤカミキリは2012年に愛知県で発見されて以降、16年に足利市で県内初確認されるなど、生息域を急拡大。小林さんによると、佐野市吾妻地区では今年に入り、畑で15本以上の桃の木を伐採した農家も出るなど、果樹園への影響が広がりつつある。
▲自宅もチェックを▼
また足利市では4月以降、民家のハナモモで幼虫1匹を確認するなど農家以外への影響も出始めた。同市環境政策課は「場所を選ばず住み着くので、(桃や梅、桜など)自宅の木もチェックし、見つけたら連絡してほしい」とし、市の広報誌で注意喚起を促している。
影響が拡大する中で、防除方法はいまだ研究段階だ。県農業試験場病理昆虫研究室の福田充(ふくだたかし)室長は「(現状では)食い入った幼虫、成虫を完全駆除するのは困難」と指摘。その上で、農家だけでなく一般家庭に対しても、発見時に確実に駆除したり、成虫が木から出られないよう編み目の細かいネットを木に巻いたりするなどの地道な対策を推奨している。
同試験場は今月から、佐野市で成虫を捕獲し、有効策の研究を進めている。他の樹木害虫への対応などこれまでの知見を生かし、駆除や産卵抑制の方法を探るという。