アジア映画巡礼

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『DDLJ』ふたたび(3)

2015-07-14 | インド映画

さて、最後の回は、『DDLJ 勇者は花嫁を奪う』の字幕についてのお話です。でもその前に、この作品をまだご覧になったことのない方のために、簡単なストーリーを書いておきましょう。

©Yash Raj Films Pvt.Ltd.  

『DDLJ 勇者は花嫁を奪う』(旧題『シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦』)

1995年/ヒンディー語/190分/原題:Dilwale Dulhania Le Jayenge
監督:アーディティヤ・チョープラー
音楽:ジャティン=ラリト
主演:シャー・ルク・カーン、カージョル、アムリーシュ・プリー、アヌパム・ケール、ファリーダー・ジャラール

ロンドン在住のシムラン(カージョル)は、コンビニを営む厳格な父(アムリーシュ・プリー)と、友人のような母(ファリーダー・ジャラール)、そしておませな妹の4人暮らし。父はシムランが生まれてすぐロンドンに移住してきたが、その前に故郷パンジャーブに住む親友アジート(サティーシュ・シャー)に、シムランとアジートの息子クルジートとを将来結婚させる約束をしていた。学校を卒業したシムランは、インドに戻って結婚する前に、友人たちとユーレイルパスを使った1ヶ月の旅行を計画。父を説得して列車で旅立つことになった。

出発当日、列車に乗り遅れそうになったシムランをデッキに引き上げてくれたのは、やはりロンドン在住のラージ(シャー・ルク・カーン)だった。ラージは大金持ちの父(アヌパム・ケール)を持ち、大学時代も遊んでばかりで、ついには卒業取り消しとなったといういいかげんな青年。最初からシムランとは角突き合わす間柄になったが、ラージ側は男子3人、シムラン側は女子4人ということで、何かと一緒に行動することに。そんな中、ラージとシムランが列車に乗り遅れ、みんなとは別行動を取らざるを得なくなった。その旅の中で、二人は互いを意識し始める。

しかし、ロンドンに帰ったシムランを待っていたのは、「すぐにパンジャーブに戻って結婚式だ」という父の命令。インドに戻ったシムランを追って、ラージもインドへとやってくるが、果たしてラージは花嫁シムランを自分の胸に抱くことはできるのか....。

©Yash Raj Films Pvt.Ltd.  

見どころは、後半インドのパンジャーブにやってきたラージが、どうやって自分とシムランとの結婚を認めさせていくのか、というところ。ここの展開は好き好きでしょうが、ラストはやはり誰もが涙、じわ~となるはずです。多くの作品でパロディにされてきた列車乗り込みシーンや、芥子菜畑でのラブシーンなど、初めてご覧になる方には「これだったの!」シーンも出てくるはず。また、後年人気監督となり、いまやダルマー・プロダクションの辣腕プロデューサーでもあるカラン・ジョーハルが、ラージの友達として出演して天然のボケ演技を見せてくれるのも話題です。

1998年に字幕を作った時は私もまだ駆け出しで、今回残っていた最初の原稿のファイルを見てどっと冷や汗が流れました。そのへたくそ字幕からいろんな方、特に字幕制作会社のTさんがいっぱい直してくれて、まずまず公開に耐える字幕になったのですが、完成字幕は手元にないため、元のファイルを真っ赤にして訂正しました。それをしながら思い出したことを2つほど。

この時は字幕制作会社だけではなくて、もちろんクライアント様である配給会社のインディア・アクション・プランの方もチェックして下さったのですが、字幕とは何かがわかっていない方がいらして往生しました。中に出てくるお祭りカルワーチョートを「夫婦祭」と字幕に出し、”カルワーチョート”とルビを振ったのを見つけ、「そんなの、下に続けてかっこ書きで説明を書けばいいじゃないか」と言われて、字幕とは何かというのをえんえん説明する羽目に。まあ、その方に関しては、ほかにもいろいろありました....(もう、忘れたことにしよう)。

カルワーチョート(正確に書くと「カルワー・チョゥト」または「カルワー・チャゥト」)というお祭りは、10月か11月に北インドで主として行われる女性たちの祭りです。夫の無事を祈って妻が日の出から断食をし、月の出を待って夫の手から水を飲ませてもらい、食べ物を食べさせてもらう、というものです。月が出たのを確認してざるを月にかざし、それを通して今度は夫の顔を見る、というちょっと面白いことも、このお祭りではやったりします。映画に登場するようになったのは比較的新しく、1970年代人気だったホーリー祭やラクシャー・バンダン祭に代わって、1990年代後半から盛んに登場するようになりました。映画の中に出てくるお祭りにも、流行があるのですね。

©Yash Raj Films Pvt.Ltd.  

それから、1999年にいざ公開されてから、「訳が違ってる」と言われたのが次のセリフの字幕。

バレー・バレー・デーショーン・メーン・アイシー・チョーティー・チョーティー・バーテーン・ホーティー・ラフティー・ハイン
Bade bade deshon mein aisi chhoti chhoti baaten hoti rahti hain.
大きな大きな国々では  こんな小さな小さな事々が  よく起きるものだ

字幕は「大都会ではありがちのことさ」にしたのですが、「違っている」と言った人は「デーシュ(国)」は都会じゃないだろ、と思ったのかも。ただ、「デーシュ」には「地域、地方、故郷」といった意味もあるので、「大きな地域=大都会」でも間違いではないんですね。また、「大と小が対になっているのに、小が訳出されていない」ということから、こういう批判が来たのかも知れません。今回はそれを考えて、ちょっと違った訳を付けてあります。実際に言うと変なセリフになるのですが、半分書き言葉の字幕ならこれでもOKかな、という訳にしてありますので、ご覧になってみて下さいね。

しかし、今回も字幕の仮ミックスを見たらドジばかりしていて、クライアント様にいっぱい直していただきました。さて、明日はもう一度確認です。いい字幕で見ていただけるよう、がんばりますので、ぜひ、8月8日(土)の国立民族学博物館での上映で確かめて下さいね。上映のインフォメーションはこちらです。ご覧になって、「この字幕、おかしいのでは」と思われたら、コメントをいただければ幸いです。(と言いながら、内心ドキドキ...)

Lyrical: Tujhe Dekha Toh Yeh Jaana Sanam - Full Song with Lyrics - Dilwale Dulhania Le Jayenge

上は、ヤシュ・ラージ・フィルムズがアップしてくれている、歌詞も見られる『DDLJ』のソングシーン画像です。これで事前学習もバッチリ。当日に備えて下さい!


 


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4 コメント

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都会はいいですね。 (カンスケ)
2015-07-23 20:40:12
こんにちは。みんぱくのDDLJ 行きます!
なかなか私の住んでいる四国では、インド映画は観れません;; 8日は何ヶ月も前から私のお休みを取って楽しみにしています。

8月15、16には、神戸の新開地で「クリッシュ」を上映のようで、羨ましくてしかたありません。
チラシをスキャンしたのだけど、コメントじゃぁ添付できないのですね。

「インドで大人気のスーパーヒーロー新開地に参上!」
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カンスケ様 (cinetama)
2015-07-24 00:31:54
コメント、ありがとうございました。

おお、四国から民博の上映に!
四国も広いですが、徳島からでも大阪までバスで2時間半かかるので、ちょっと大変ですね。

『クリッシュ』は新開地に飛んできますかー。
ポートタワーの上に降り立って、タタタと地上に駆け下りてくるのかも。
あっこら辺は誘惑が多いさかい気ぃつけて、まっすぐ会場の神戸アートビレッジセンターに行くんやで~。
上映会形式のようで、主催者のHPはこちらです。
http://favorite0indiamovie.web.fc2.com/krrish.html
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Unknown (カンスケ)
2015-07-24 10:15:52
返信ありがとうございます。
私は香川県なので、日帰りでも行けなくはないのですが、家の事情でなかなか出かけられません;; 高松でもやってくれればなぁ。。。

「クリッシュ」の日本語吹き替え版が気になります、誰が声をやるんでしょうか・・ 楽しそうですねー

ここでのコメント内容から外れて申し分けないのですが、、サンジェイダットとマドゥリの「Thanedaar」という映画の中で「・・・タマタマ、、、」 という言葉がキーワード?というくらいに出てきています。歌のタイトルにもなってます。 今までにインド人、パキスタン人、ネパール人に聞いても意味が分からないと言うんです。。ヒンディー語の映画なのに。言葉はあまり重視しないんでしょうか?たしかに私でもそこそこ楽しめますが。
すっごく気になります! このDVDを貸してくれた友人は20年くらいずーっと気になったままらしいです。

私もこのモヤモヤを晴らしたいので、この場をお借りしてよろしければぜひ教えて下さい。
返信する
カンスケ様 (cinetama)
2015-07-24 21:43:56
再度のコメントありがとうございました。

香川県でいらっしゃるのですか。遠くから『DDLJ』のために...。
このブログで後日お知らせを告知するかも知れないので、時々訪問してみて下さいね。

『クリッシュ』はDVDに何も書いてないので気がつかなかったのですが、日本語吹き替えも付いていました。これをそのまま上映なさるのでは、と思います。
「日本語吹き替え」というのもジャケットでうたってないので、声優さんのクレジットもありません。
さて、どなたなんでしょうね~。

それから、後半のご質問は、記事の中でお答えしておきました。
ご覧になってみて下さいね。
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