アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

「熱風!! 南インド映画の世界」はオススメ作品揃い<その①>

2023-10-06 | インド映画

10月20日(金)より始まる「熱風!! 南インド映画の世界」上映。今回の上映作品4作はいずれもテルグ語映画で、年代順にNTR Jr.主演の『ヤマドンガ』(2007)、ラーム・チャラン主演の『マガディーラ 勇者転生<完全版>』(2009)、ラーム・チャランの父であるチランジーヴィ主演の『サイラー ナラシムハー・レッディ 偉大なる反逆者』(2019)、アッル・アルジュン主演の『プシュパ 覚醒』(2021)となります。アッル・アルジュンはラーム・チャランの従兄(母方の伯父の息子)なので、アッル=コニデラ・ファミリーの映画祭みたいになっていますが、そこはちゃんと対抗するナンダムーリ・ファミリーのプリンス、NTR Jr.主演作もありますので、バランスは取れていると言っていいでしょう。一部の人から、「南インド映画祭じゃなくてテルグ語映画祭だ」という不満も出たようですが、それに対しては主催者JAIHOは心の中で、「まあ、来年を見ていて下さい」とつぶやいているのでは、と思います。ただし、今回の第1回がポシャってしまうと来年はもちろんないわけで、今後タミル語、カンナダ語、マラヤーラム語映画も含めた南インド映画をコンスタントに見たい方は、今回の映画祭をぜひ応援して下さいね。

こういった映画祭方式の利点は、劇場一般公開だと基本に新しい作品が要求されるのに対し、以前の作品でもラインアップに加えることができる、という点です。このやり方はすでに、配給会社SPACEBOX主催のIMW(インディアンムービーウィーク)などで先鞭が付けられており、新作と共に多くの過去作も我々は楽しんできました。残念なことに、IMWでも、その他のインド映画関連映画祭でも、パンフレットはなかなか作られてこず、映画を記憶する資料はチラシのみ、という状態でした。しかし今度の「熱風!! 南インド映画の世界」ではパンフレットがちゃんと作られる予定で、それも期待していい点です。あとは、グッズもぜひ、というところですが、それはどうなるのかは楽しみにしていましょう。公開までに、ちょっと各作品のご紹介をしておこうと思いますが、まずはアッル・アルジュン主演作『プシュパ 覚醒』(2021)からどうぞ。

『プシュパ 覚醒』 公式サイト
 2021年/インド/テルグ語/179分/原題:Pushpa: The Rise-Part 1 పుష్ప
 監督:スクマール
 出演:アッル・アルジュン、ファハド・ファーシル、ラシュミカー・マンダンナ

プシュパ(アッル・アルジュン)は貧しい労働者ながら、なかなか頭の切れる男。それを知った年若のケサヴァ(ジャグディーシュ・プラタープ・バンダーリー)は、彼を兄貴と慕い、プシュパに付いていくことにします。二人が深い山中で、違法な紅木伐採の仕事をしていた時も、プシュパはゴヴィンダッパ警視(シャトル)が率いる警官隊による手入れを見事にかわし、さらにはトラック1台分の紅木を警察の眼から隠し通して、地方マフィアのボスであるコンダ・レッディに一目置かれるようになります。コンダ・レッディは切り出した紅木をマンガラム・スリーヌ(スニール)の仲介でチェンナイの港へ運んでいたのですが、プシュパはチェンナイのマフィアと直接交渉し、マンガラム・スリーヌが中間搾取して多額の金を儲けていたことを暴きます。こうしてプシュパは瞬く間に、マフィアたちの間でのし上がっていきます。一方、プシュパは意外と純情で、好きになった牛乳屋の娘シュリーヴァッリ(ラシュミカー・マンダンナ)にアプローチすることができず、ケサヴァがお金を使ってデートをアレンジしたりする羽目に。ところが、コンダ・レッディの下の弟で女好きのジャーリ(ダナンジャヤ)がシュリーヴァッリに目を付け、自分のものにしようとします...。

(注)役名の表記には当初試写させてもらった仮ミックスヴァージョンによるものがあり、公開ヴァージョンとは違っている可能性があります。


(資料スチール)

冒頭には、「大地に育つ金(きん)」と言われる紅木についての解説アニメが付いています。「なんちゃって日本」が出てくるのにはちょっとアララですが、紅木が三味線の棹に使われて珍重されるのは本当で、こちらなどの三味線のサイトでそれがよくわかります。そして本編が始まってみると、主人公プシュパのなんとも言えない奇妙なヒーロー性にすぐさま引き込まれ、観客はどんどんプシュパのファンになっていくという、とっても面白い作品です。プシュパのヒーロー性を補完するのが腰巾着となる若者ケサヴァで、アッル・アルジュンがいろんな映画賞で主演男優賞を総なめしたのに加えて、ケサヴァを演じたジャグディーシュ・プラタープ・バンダーリーも助演男優賞を獲得したりするほど、この二人の演技は見ものです。また、マフィアのボスたちもそれぞれにユニークなキャラクターに仕立てられ、上手な役者たちによって演じられており、ストーリーをフルに楽しむことができます。さらにはラスト近くになって登場する新任警視(ファハド・ファーシル)は文字通りのラスボスであり、第2部への期待をつなげてくれて余りあります。

(資料スチール)

『ランガスタラム』(2018)の監督スクマールによる脚本は、もう素晴らしいのひと言。そして、特異な男プシュパを魅力たっぷりに演じたアッル・アルジュンの演技もまた、素晴らしいとしか言い様がありません。それまでは「都会の洒落者」的イメージの強かったアッル・アルジュンですが、プシュパを演じるにあたっては皮膚の色も日に焼けた色黒肌にメイクし、目つきや話し方、動作、服の着こなし等々、田舎者そのものになりきった演技は見ていて惚れ惚れします。ソング&ダンスシーンもいつもの超絶足技ダンスを封印して、ダサダサのステップを見せるなど、どこまでやるんだ~、とあきれるほど。極めつけがあごひげをしごく”プシュパ・ポーズ”(↓)で、本作を見た人は全員、帰宅すると鏡の前で一度はやってみたに違いないと思えるほどです。

コロナ禍のインドで、2021年興収トップになったのも大納得。二度、三度とリピートしても面白さがまったくあせない、極上の傑作作品です。最後にインド版予告編と、ダサダサ・ステップのソング&ダンスシーンを付けておきますので、ぜひ事前学習してみて下さいね。

Pushpa Official Trailer | Allu Arjun | Rashmika | Fahadh Faasil | Sukumar | DSP | 17th Dec

 

Srivalli (Video) | Pushpa | Allu Arjun, Rashmika Mandanna | Javed Ali | DSP | Sukumar

 


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