インド映画『RRR』の公開まであと2日。21日(金)と22日(土)には新宿ピカデリーと川崎チネチッタで来日ゲストの舞台挨拶があることはご存じだと思いますが、何とラーマ役のラーム・チャランは早々に18日に来日、インドのニュースサイトには、奥さんのウパーサナーさんと一緒に日本のファンに囲まれてお好み焼き?を食べている写真がアップされています。また、NTR Jr.も、日本のファンにテルグ語で書かれた色紙?をもらってびっくりしている動画がアップされていますね。皆さん早々に来日してらして、よほど日本行きを楽しみにしてくださっていた、ということでしょう。スターお2人は自費でいらしている、という話も聞こえてきたのですが、『RRR』の日本での公開のために、力を注いで下さってありがたいですね。
©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.
S.S.ラージャマウリ監督ももう来日しているのか、明日の夕方のラジオ出演予定が公式ツイッターに出ています。そのラージャマウリ監督が前回来日したのは、2018年の4月末。こちらにその時の舞台挨拶のレポートがありますが、あれから4年半、コロナ禍とかいろいろあったのに、それを乗り越えてまたお姿が拝めて嬉しいです。21日(金)の舞台挨拶がある回はもうチケット完売だそうですが、22日(土)の2回はまだわずかながら残席がある、とのことなので、よかったらご一緒にどうぞ。私もこの日に拝みに行きます。
©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.
ところで、つい先日、『RRR』や『バーフバリ』2作等のテルグ語監修をやって下さった山田桂子先生(友人なので以下「山田さん」で)に聞いた、2018年ラージャマウリ監督来日時の面白いエピソードがあるのでお伝えしたいと思います。山田さんによると、すでにあちこちでお話しているそうで、私も先日のNHK文化センター青山教室の講座でご披露したため、もうご存じの方がいたらごめんなさい。
ラージャマウリ監督に会った時に山田さんはもちろんテルグ語で話しかけたのですが、すると監督はびっくり仰天、まさか日本にこれほどテルグ語が達者な人がいるとは、思いも寄らなかったのでしょうね。山田さんによると、「私に会って、ひっくり返るぐらい驚愕していました。挙げ句、『ビデオを撮るからテルグ語をしゃべって』と言われ、スマホで撮った動画をその場でプラバースに送っていました」とのこと。ヒンディー語をしゃべる日本人は結構多いでしょうが、テルグ語をきちんとしゃべれる日本人は本当に希有だと思います。今、テルグ語を勉強しておられる皆さん、言葉ができるとこんないいことがあるのでがんばって下さいね。
もう少し、山田さんに語ってもらいましょう。「ラージャマウリ監督と会って、非常に良かったことがありました。それは、彼が日本では字幕をテルグ語から作っていることを知り、また日本では一般的に字幕に非常に力を入れているということを理解してくれたことです。実は私にとってテルグ映画の聞き取りは難易度が高く、監修を引き受ける際には必ずスクリプトが取り寄せられること、というのを配給会社に伝えています。しかし、『あなたがいてこそ』も『バーフバリ』2部作も、度重なる催促にも関わらずスクリプトを送ってもらえませんでした。ラージャマウリ監督が来日した時『マガディーラ』公開の話が進んでいたので、テルグ語のスクリプトを送って欲しいと頼んだところ、字幕監修と言う仕事の意義をすごくガッテンしたようで、帰国後早々に送ってきてくれました。今回の『RRR』では、最初から本編映像と一緒にインドからスクリプトを送ってきてくれました」
「この話にはもう一つ続きのエピソードがあります。私は、送ってくれた『マガディーラ』のスクリプトがあまりに本編とそっくりなので何かヘンだなと思ったのですが、それから少し経って、ラージャマウリ監督の映画には実はスクリプトなどなかったことが分かりました。正確には、検閲用のスクリプトはあるのですが、彼は検閲後の撮影で元のセリフをほとんど変更してしまうのです。だから催促しても送ってくれなかったんですね。私が手にした『マガディーラ』のスクリプトと思ったものは、映画完成後の(セリフを聞き取って文字にした)ディクテーションだったのです。つまり、日本公開のためだけに作ってくれたのでしょう。今回『RRR』で送られてきたのも、ディクテーションのファイルでした」
すごいですねー。本当に、感動的なエピソードです。山田さんは「私にとってテルグ映画の聞き取りは難易度が高い」と書いていますが、映画のセリフは相手が目の前にいてしゃべったり、あるいは本を朗読してくれるのと違い、いろんなシチュエーションでしゃべられるので、音がはっきり聞こえるとは限らないのですね。固有名詞も無造作に入りますし、書いたものがないととても正確な内容はつかめません。『バーフバリ 伝説誕生』(2015)が2017年4月に公開される前、配給のツインさんに「必ずテルグ語の監修を山田桂子先生にお願いして下さい」と言って、「は? 監修?」と変な顔をされたことを思い出します。それでもそれを聞き入れて下さり、藤井美佳さんの字幕+山田桂子先生の監修、という鉄板字幕コンビができあがったことが、ツインさん配給の『バーフバリ』2部作が大成功を収める第一歩になったのだと思います。
ぜひラージャマウリ監督がテルグ語映画界で、「日本人は字幕をきちんと作る。なので、テルグ語台本を必ず映像と共に送ること」というのを広めて下さることを願うばかりです。今回の滞在でも楽しい思い出をいっぱい持ち帰って、ついでに、テルグ語台本のこともあちらのマスコミにお伝え下さいね。日本とインド、ビームとラーマのようにがっつりと手を結び合って、インド映画の素晴らしさを伝えて行けたらと思います。