アジア映画巡礼

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緊急事態が明けたなら...②これでオーラス『イップ・マン 完結』(上)

2020-04-20 | 香港映画

もう1本の5月8日(金)からの公開予定作品は、『イップ・マン 完結』(2019)です。ドニー・イェン(甄子丹)主演、ウィルソン・イップ(葉偉信)監督による『イップ・マン(葉問)』シリーズは、第一作『イップ・マン 序章(葉問)』が世に出たのが2008年。その後『イップ・マン 葉問(葉問2)』(2010)、『イップ・マン 継承(葉問3)』(2015)、そしてスピンオフ作品『イップ・マン外伝 マスターZ(葉問外傳:張天志)』(2018)があり、11年かかって本作『イップ・マン 完結』(2019)により、ようやくシリーズも終わりを迎えたのでした。第1作撮影時に45歳だったドニー・イェンもすでに56歳、とてもそんなお年には見えませんし、今回もアクション監督を担当するユエン・ウーピン(袁和平)が75歳であることを思えば、79歳で亡くなった葉問師父ともっと近い年齢まで演じてもよかったのにと思いますが、イップ・マンを必要としていた時代は終わった、ということでしょうか。それに関しては、次の機会に(下)としてまとめてみたいと思いますので、今回は『イップ・マン 完結』のご紹介だけをしておきます。

(c)Mandarin Motion Pictures Limited, All rights reserved.

『イップ・マン 完結』 公式サイト
 2019/中国・香港/広東語・中国語・英語/105分/原題:葉問4:完結篇  
 監督:ウィルソン・イップ(葉偉信) 
 主演:ドニー・イェン(甄子丹)、ウー・ユエ(呉樾)、ヴァネス・ウー(呉建豪)、チャン・クォックワン(陳國坤)、スコット・アドキンス、ヴァンダ・マーグラフ(李宛妲)
 配給:ギャガ・プラスGAGA
※5月8日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

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1964年、香港。イップ・マンは妻亡き後、次男チン(正)との間がぎくしゃくしていることに悩んでいました。また、自身の体にガンが見つかり、将来への不安も覚えたイップ・マンでしたが、チンが学校の勉強にも身を入れず、退学寸前ということにも懊悩していました。ちょうどその頃、アメリカで多くの弟子をとって教えているブルース・リー(チャン・クォックワン)からイップ・マンのもとへ、アメリカで開催される国際空手大会への招待状が届きます。この機会に、チンにアメリカ留学させるための学校を選んでこようと、イップ・マンは留守を親友の警部(ケント・チェン)に頼んで、サンフランシスコに向かいます。この頃、在米中国人が学校に入るためには、中華総会の紹介状が必要でした。ところが中華総会の会長で中国武術の師父でもあるワン(ウー・ユエ)は、イップ・マンの弟子であるブルース・リーが勝手にアメリカ人にも中国武術を教えていることに腹を立てており、紹介状を拒否します。イップ・マンは現地の高校を訪問しますが、校長からはやはり紹介状を要求されました。その高校から帰ろうとしていた時、大勢からいじめられている女子生徒を見つけたイップ・マンは、彼女を助けてやります。偶然にも彼女はワン会長の娘ルオナン(若男/ヴァンダ・マーグラフ)で、彼女はイップ・マンに信頼を寄せるようになります。

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ルオナンは父であるワン会長のもとにイップ・マンを連れていくのですが、結局ワン会長とイップ・マンは武術で対決することに。ところがその最中に大きな地震が襲い、それを機にワン会長を諭したイップ・マンに、ワン会長も心を開き始めます。そんな時、アメリカ軍の訓練に中国武術を取り入れることを推進しようとしていた海兵隊軍曹ハートマン(ヴァネス・ウー)は、人種的な偏見を持つ上官バートン(スコット・アドキンス)と、バートンの意を受けた軍の空手教官コリン(クリス・コリンズ)にことあるごとに痛めつけられていました。中秋節の日、コリンはチャイナタウンに乱入し、中国武術の師父たちに闘いを挑みます。彼らが次々とコリンに倒されるのを見て、イップ・マンがコリンの前に立ちはだかります...。

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最終章の舞台は、香港とサンフランシスコ。それをつなぐのがブルース・リーの存在で、今回は結構バッチリ出演してくれます。演じるのはもちろん、『少林サッカー』の黄色トラックスーツ姿ゴールキーパー役、チャン・クォックワン(陳國坤)です。前作『イップ・マン 継承』(2015)にもチラと登場しましたが、やはりブルース・リーの師父としてのイップ・マンが見られないと、観客はがっかりしますからね。そう言えば、第2作の『イップ・マン 葉問』(2010)の最後にも、少年のブルース・リーが出ていましたっけ。ブルース・リーの本名はご存じの通り、三藩市(サンフランシスコ)で生まれたことからその1字が入った「李振藩(レイ・チャンファン)」と言うのですが、彼のアメリカ時代の本拠地はシアトルだったものの、アメリカ各地で開催される武術大会に出ていたようなので、今回は彼との縁が深い町、サンフランシスコが舞台に選ばれたのでしょう。

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また、本作のもう一人の意外な出演者は、F4のヴァネス・ウー。久しぶりですねー。中国系アメリカ人軍人というピッタリの役柄で、りりしく、カッコいいです。当たり前ですが、すでに41歳なので「流星花園」時代の面影がうすくなっているものの、スッキリしたクールな顔立ちはやはり映画に向いています。ファンの方は、お楽しみに。さらに、ストーリーで紹介したルオナン役ヴァンダ・マーグラフも要注目です。2003年、雲南省シーサンパンナのイ泰族自治州生まれで、姉と一緒に歌コン番組に出たことで芸能界入り。『イップ・マン 完結』が初めての映画出演で、2作目は何と田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)監督の2020年作品『鳥鳴嚶嚶』なのだとか。期待の星のようです。

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イップ・マンの迫力ある闘いも、中華総会でのワンとの闘いから始まって、コリンと闘うクライマックスまで、様々な闘いが見られます。ドニー・イェンは年相応の闘いの姿を上手に見せており、これで最後か、と寂寥感も漂うものの、拍手をしたくなる優美さもあって、イップ・マン師父、お疲れ様でした、と言いたくなってしまいます。どの作品にも、ちょっと事実とは違ったりしながらも、その時代時代の雰囲気を出し、ありそうなエピソードを積み上げていった監督のウィルソン・イップと、脚本の黄子桓(エドモンド・ウォン)&陳大利にも、ご苦労様を言いたいです。これら「葉問電影」が香港でどんな意味を持っていたのかを、のちほど少し検討してみたいので、(下)にもお付き合い下さい。

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実際の葉問師父は、1972年12月2日に79歳で亡くなります。生年が1893年説から1899年説までいろいろあるので、実際の享年はわからないのですが、まだ清だった時代の中国で広東省の佛山に生まれ、数々の苦労をしたのち香港に落ち着き、詠春拳を根付かせた功績は大きいと言えます。本作シリーズの中で、ドニー・イェン演じるイップ・マンが構えてから、「詠春、葉問(ウィンチョン、イップマン)」と名乗るシーンは観客の印象に強く残っていると思いますが、あれで長く詠春拳の名が伝わるに違いありません。最後に予告編を付けておきます。

【公式】『イップ・マン 完結』5月8日(金)公開/本予告

 


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